第8話 七不思議
※
「あ、リドルリドルー! この前言ってた七不思議、調べてみたらあったよ、この学校でも」
「へぇん?」
すでに殆ど忘れ掛かっていた俺は適当にあざみに返事をする。しかしあざみはちょっと困った風に『ネタ帳』をぱたぱた言わせた。
「あったことはあったんだけど、これが不思議八不思議なのよさ」
「よくあることだぞ、それ」
「そなのん?」
「本所七不思議は八つある」
「オーゥ……江戸時代からの不思議風習……」
「で? で? どんにゃのどんにゃのー?」
「まずは元気でおちゃめな……あ、はい止めます。学校に繋がる橋にいる橋姫の贈り物を受け取ると、恋が叶わなくなる」
「え!? 私と小坂識君貰ってますよ!?」
「うちは結界に入れてお前も埋めたからダイジョーブ。次は?」
「古井戸を覗き込むと守護霊がいなくなる」
「炉吏子……」
「古井戸自体知らないよっ! シツレーだにゃあっ」
「半鐘をいたずらに鳴らすとその家が火事になる」
「ハンショウってにゃに?」
「江戸ではよくあったもので、火事があったら鳴らす小さな鐘の事ですよ」
「ほへー、サラちゃん物知りっ」
「夜歩く二宮金次郎像……は、うちの学校網撤去されちゃったからねー」
「よそ見歩行が危険だからね。言うなればながらスマホ?」
「軽っ!」
「裏池で釣った魚は持ち帰ってはいけない」
「置いてけ堀だな。本所七不思議にもある」
「防空壕跡に入ったら二度と出て来られない」
「埋め立てられてるな」
「十年ぐらい前にね」
「体育館で雨の日は必ず三粒雨が落ちる」
「諏訪大社七不思議に似たようなのがあったな……雨漏りじゃないのか?」
「それは神のみぞ知るだよ。院様は?」
『さて我には』
最近は積極的に会話に入ってくる院である。
「ラスト、裏山の人魚像に触れると不老不死になる!」
「人魚像? そんなのあったか?」
「隠し仏として祀られてるらしいけど、どんどん木が育って場所解らなくなっちゃったんだって」
さあどうだ! と、ふんっと胸を張るあざみには、ご苦労様としか言いようがない。否まさかとは思うが。こいつもしかして。
「さ、今日から怪奇倶楽部的にこれらを検証していくよー! 監修はリドル! 危ない時は院様! おっねがいねー!」
「帰る」
「まだ昼休みだよ、ズル早退良くない」
「俺は絶対関わらないからな。大体いくつか潰れてるのもあるし、院様だけいたら十分だろ」
「リドルの知らにゃーところであたし達がピンチになってても良いのん?」
「う」
「リドルのせいで乙女の花を散らすことになっても良いのん?」
「その言い方止めろ」
「リドルのせいで――」
「あーもう解ったから!」
どん! と立ち上がりかけていた椅子に腰掛け、俺は腕を組む。
毒食わば皿までだ。俺は炉吏子を見張るだけ。危なっかしい炉吏子を見張るだけ、それだけだ。
自分に言い訳している時点で、俺はもうあざみに負けていたのかもしれない。
まずは古井戸だが、これは学校が寺子屋時代にあったものだそうですでに埋まっていた。手水跡として木切れが刺さっていたが、それだけだ。ほっとしたのは炉吏子とサラ。元々いないものがさらに抜けるかもしれないのは恐ろしいらしいのと、現在のご加護を残しておきたいから。ちなみにあざみの守護霊は戦国時代の武者で、これもまた結構強いのに加え御朱印帳の守りもあるのでカタい。俺自身はとーちゃん達が見るところメガネをくれた曾じーちゃんであるらしい。でもスパルタで滅多に守ってくれないから、切ないもんだ。
半鐘に関しては塔こそ残っているものの鐘は市の文化財登録されてて学校にはないらしい。まあ六回目の立て直しは勘弁だしな。本堂だけ残る、ってのも割と不思議な事じゃないだろーか。言いはしない。全員に押しかけて来られると俺が困る。色々と。全員女子だし。油土塀で囲ってあるからだろう、多分。きっとそうだ。
裏の池はそもそも水たまりレベルになってしまっていて、魚なんてめだかすら見付けられないレベルだった。いやめだかはめだかで珍しいんだったか。オタマジャクシすらいないそこで釣りをする気にはなれず、そもそも誰も釣り具に関して得手ではないと言う事で、こちらもパスになった。体育館に関しては雨が降らないと検証不能、残るは――人魚像だが。
「なんで人魚なんだ?」
俺の素朴な疑問である。
この辺、海なんかねーし川は浅いし。
いや別に山狩りに行くのが面倒だとかそういう事ではないのだが。
「橋姫から聞いてみる? 昔の事に詳しそうって言うと」
「そうだな。炉吏子、あざみ、サラは橋の上で待機しててくれ。俺一人の方が多分話しやすい」
「はーいなんだよー」
「わかったにゃー」
「わかりました」
と言う訳で、一気に場所は変わり、とは言え一つ目の謎である、橋姫の橋である。
「いるかー橋姫ー」
『童!』
ぱっと犬のように顔を上げて出迎えてくれるのが、たまんねえわな。仲良くするには本当にさ。
『七不思議とな? ほう、橋姫の事も書いてあるとは感心じゃが、人魚……はて。河口でもないこの辺りで人魚とは聞かぬなあ……人魚信仰も、あまり聞かぬが』
「そっか。悪かったな、邪魔して」
『邪魔なものか、また何かあったら来るがよい。と、その前に』
「ああ、髪梳いてやるよ」
『うむ!』
「――と、この辺で百年以上は番張ってる橋姫さんのご意見がこちらでした」
俺はスマホでとったやり取りを聞かせる。橋姫の声が聞こえるかは心配だったが、全員の顔を見るに聞こえているようだった。
「じゃあ最後の頼みは決まってるね」
「は?」
まだどっかあったか?
俺が首を傾げると、炉吏子が俺を指さした。
「リドルんちの蔵!」
期せずして。
我が家に隅川小怪奇倶楽部が集まることか、決定してしまった。
いや、たしかに本堂と同じ敷地内で火事に遭った事はなかったけれど、そこを突かれるとは思わなかった。本当に。大体蔵なんて何が入ってるか色んな意味で解らないところ開けられる権限が俺にあると思うのか。下手したら変な怨霊封じ込めて三百年とかかもしれねーんだぞ。
その時はその時! とすっかり前向きになっている炉吏子から思わずお守り取り上げてやろうかと思ったが、それはそれで霊感ばっちり体質のこいつには命に関わるのでやめておいた。下手なものが出てきたらノーガードどころか手ぶら状態の炉吏子は一発で即死だろう。冗談でなくそうだから、俺は蔵を開けるのに否定的だった。せめて両親とじーちゃんから話を聞いてからにすること、と条件を付けると、渋々あざみが了解する。炉吏子はのんきなもんで、リドルんち久しぶりだなーなどと言っている。俺はお前の命を守るためにだな……まあ良い、それは。サラも消極的ではあったが、院が興味津々で憑いてくるのを止めなかった。
と言う訳で、我が家である。
東京大空襲も切り抜けた築百年ほどの母屋と、江戸の大火すら寄せ付けなかった築三百年ほどの本堂、それと同じぐらいの蔵が大体の構成物だ。
「ただいまー」
「おじゃましまーす!」
「おじゃまします」
「おしゃま致します……」
明らかに多い声に出てきた母はあらまーっと声を上げた。
「リドルったらいつの間にこんな彼女作って。炉吏子ちゃん一筋じゃなかったのあんた」
「誤解を招く言い方はやめろ! こいつらは倶楽部のメンバーだよ、例の。話したことあるだろ、何度か。っとサラの事はまだか。新入部員の曼荼羅沙羅だ。あとは以下略」
「あ、あの、初めまして、曼荼羅ですっ」
「まー眩しい子連れちゃって。始めまして、母です。で、今日は何をしに来たの?」
「じーちゃんととーちゃんいる?」
「いるわよー何々相談ごと? お母さんも混ぜなさいよ」
「混ざってもらうよ」
「あら素直」
「まあ取り敢えず、茶の間に集まってくれ」
寺と言うのは人の出入りが絶え間ないので、玄関は広く作られている。だがそれは本堂の話で、母屋はそうでもない。さすがに子供でも四人もいると、ちょっと狭いのが本音だった。なのでまず靴を脱ぎ、俺から炉吏子、あざみ、サラと順番に入っていく。かーちゃんに何聞かされたのか知らないがわくわくした様子のじーちゃんととーちゃんは、サラが入った途端『うおっまぶしっ』と言って目を抑えた。慣れた俺でもちょっと眩しいぐらいだしな。院様、どうどう。
『これがお前の寺かえ、随分自由が利くな! これは良い、後で沙羅にも勧めておいておくれ!』
「お、お褒めにあずかり光栄ですが、なにとぞ後光をお緩め下さい。私達には何も見えませぬ」
「? あの、何か……?」
「俺の時と同じで見えなくなってんだよ。院様の後光で」
『仕方ないのう、本堂で少し神気を交えて来るか』
「壊さないでねうちの本尊壊さないでね」
『そこまでの力はないわい、神ではないのだからな』
ほっほと笑って院が気配を消すと、はーっととーちゃんとじーちゃんはやっと落ち着いた様子で俺達を見た。院様強い。だがこうして見てみると、天パーの炉吏子にシャギー入りショートカットのあざみにストレートサイドテールのサラに、よりどりみどりだよな、俺の周り。最近男子に声掛けられなくなった理由がなんとなく解って、陰鬱になる。
「ま、お茶とお菓子でもどうぞ。リドル、座布団」
「へいへい」
「で、何の相談ごと?」
かーちゃんは一番霊感が薄いので、院の事はそれほど気にしていないらしかった。
さて麦茶で一息ついて、あざみが話し始めるのは大体の現在の俺達の活動の外郭だった。七不思議最後の一つ、人魚伝説、それを追い掛けていると言うと、じーちゃんが気を引き締めるのが気配で分かった。これは何かを知っているな、と思う物の、口には出さずに麦茶を飲む。我が家には年中麦茶があるのだ、来客の関係で。常に二リットルは準備している。一リットルずつ分けて。流石に全部なくなることは無いし、基本的には子供以外には普通のお茶を出すから、困ったことはない。買い物がてら腰掛け話に来るじーさんばーさんが基本だ。ここを休憩所か何かと間違えてないかとその入れ替わり立ち代わりさ加減にうんざりすることは、三年ほど前に諦めている。俺が炉吏子の除霊をした頃からだ。仏にも縋る思いでやって来ているのだ、彼らは。嫁の性格やら息子の反抗期やらを。いや、全部聞いてたら仏様もやってられんと思うんだがな?
あざみが話し終えると。とーちゃんとかーちゃんは知らんなあと顔を合わせたが、じーちゃんだけが難しい顔をしていた。これは食い付きアリか、とわくわくした様子を隠さないあざみ、ちょっと怯えるサラ、家の結界にぼんやりなごんでいる炉吏子。いやなごんでる場合じゃないからな? まあ、あとで本堂連れてってここ数か月分邪気は払ってもらうつもりだが。こまめに払えば年に一回の高熱も出ない。はずだ。多分。
「解らんな。わしには」
溜めに溜めた後でのじーちゃんの言葉に、あざみはしょぼんとする。
「あの、だったら蔵の記録見せてもらっても良いですか? 何か手掛かりがあるかも、」
「ならん!」
くわっとしたじーちゃんの声に、俺たち全員がビビる。とーちゃんかーちゃんまでだ。これは怪しい、怪し過ぎる。思うもののこの家の法律であるじーちゃんに逆らえるものはいない。じーちゃんはすぐににっこり笑い直して、炉吏子を見た。
「炉吏子ちゃん、また邪気がちょっと溜まっとるようじゃの。払うから本堂においで。他の子も見てみたかったらおいでなさい。リドル、お前は強制じゃぞ」
「へいへい解ってますよー」
「は、はい」
「はあ……」
「はいなー」
サラが転校して来てから炉吏子の邪気の溜まり具合は格段に変化していた。まだじーちゃんが必要なほどじゃないはずだ。つまり、話を逸らされた。あざみももごもごしているが、俺だって気になる物は気になる。かと言って蔵の鍵を勝手に持ち出す度胸もない。
つまり、試みるのは対話だろう。
院様とご本尊でいっぱいになった本堂では、眠気さえ誘うほどの神気が溢れていて、かくんっと首を落としそうになった。
「それじゃ、またな。三人とも」
「じゃーにゃーリドル!」
「お邪魔いたしました」
「お邪魔しましたー……」
すっきりした顔の炉吏子と対極的に、あざみはぶーたれていた。だが俺は何食わぬ顔でそれを見送る。ぱたん、と引き戸が閉じられた瞬間、走ったのは本堂だ。じーちゃんも満たされてる神気になごんでいる。じーちゃん、と呼びかけると、何じゃいリドル、といかにも面倒くさそうに返事をされた。
「じーちゃん、人魚の事知ってるな?」
ぴり、としたものが肌に走る。じーちゃんもじーちゃんで力は強い。代わりにとーちゃんがちょっととぼけ気味だと、昔はよく言われていた。俺みたいに小さな頃からの実績がなく、じーちゃんの後ろをカルガモ状態で歩いているのが基本だったからだ。でも違う。とーちゃんだってやろうと思えば本尊の不動明王をちょっとぐらい動かせる術師だ。それを隠しているだけで。ムダな力はムダな争いを呼ぶ。とーちゃんの基本理念だ。でもじーちゃんは。力を盾に戦ってきたじーちゃんは、違う。
「……何故そう思う」
「蔵を開けるのをあれだけ強硬に反対すれば、そりゃ解るよ。だから俺は開けない。代わりに教えて欲しい。じーちゃんの知ってること。人魚のこと。本当はいたんじゃないの? この辺りに、人魚って」
橋姫にも解らない水脈があったとか、人魚って実は淡水魚だったとか。海のイメージがあるけれど、川にいたっておかしくはない。
ふーっと息を吐いて、じーちゃんは立ち上がる。
「付いてきなさい。リドル」
何かを諦めたような声で、じーちゃんは立ち上がった。
蔵の鍵はじーちゃんが手首にかけて離さないものであるらしかった。いつも数珠か何かの音だと思っていただけにちょっと驚きながら、真っ暗な蔵の中を見る。じーちゃんはしゃがみ込み、床に手を掛けたらしかった。ふんっと気合いの一発、上げられた床板の下に地下室への階段が現れる。
蔵に入るのも初めてならこんな階段の存在を見るのも初めてで、俺は呆気に取られてしまう。
「はよう行くぞ」
下駄をかんかん言わせながら降りて行くじーちゃんに、俺は慌ててその背中を追う。
広がっていたのは地底湖だった。
やっぱ淡水な人魚もいるのか、ふむと納得して俺はじーちゃんに続いて降りて行く。
「お前には刺激が強いと思うが――」
じーちゃんは懐から出した麩をいくつか水面に投げかける。するとばしゃばしゃ音がして、それに食い付く頭が見えた。
それは魚の頭で――
足は人の、ものだった。
「ひッ」
人魚と言うよりは魚人だ。神秘的と言うよりはグロテスク、妖怪ならそれも当たり前だろうが俺は思わず足を竦ませる。だから言ったじゃろう、とじーちゃんは少し笑ったようだった。未熟な孫の俺を。
「あれじゃ」
じーちゃんが指さした先には、魚人の像が祀られている。
「元々は学校裏の池に住んでいた者たちなんじゃがのう、開発で池が枯れていた所を助けて、この地底湖に放ったのがお前の曾祖父さん――わしの父親じゃ。ついでに彼らを祀った神像も持って来た。あの怪談は二つで一つなんじゃよ。置いてけ堀と、人魚とは」
「確かにこれは持ち帰りたくない……」
「リドル。メガネを外してみい」
「へ?」
言われるままに俺はメガネを外す。
そこにいるのはただの魚だった。
あれ、と思う。
もう一度メガネをかけ直すと、確かにそこには足が見えるのに。
「彼らも彼らで適応しようと、化けるすべを求めていたんじゃ。だから何百年も暮らしていられた。だが人間の方の開発で、それも無駄になった。祟りでも起こしてやろうかとしてたところを、見かねた父がここに放った。お前の眼にも魚に見えるほど高度な擬態じゃ。恐らく炉吏子ちゃんたちも納得はすまいて。だから煙にまいた。それが大体の所じゃ」
「人魚像に触れると不老不死になるってのは――」
「人魚伝説との習合じゃろう。実際彼らはそう力の強くないあやかしじゃ。麩を食って満足する程度の、の」
ほっほ、と笑ったじーちゃんは。
次に俺を睨んだ。
「これはお前にしか話さん秘密じゃ。あのお嬢さんたちには絶対に言うでないぞ。良いな、リドル」
「――はい」
「ところで」
「え?」
「誰がお前の本命なんじゃ? うりうり、じーちゃんだけに教えんかい」
「逆にじーちゃんだけには教えたくなくなったよ! 良いだろ、俺は橋姫で十分なんだよ。あんなの抱えて他の女なんか見たらちょん切られる」
「なーんじゃお前。まだ橋姫ちゃんと続いとったのか」
「この前仲直りしただけだよ!」
「なら良い事じゃの。だがリドル、あやかしにはあまり近付くなよ。変な情が湧けば、お前もあやかしになるやもしれぬ。そうなればわしも容赦はせんぞ。良いな、リドル。神もあやかしも、人ならぬものは同じじゃ」
「……院もか?」
「あの守護霊様もじゃ。神に近すぎる」
神に近すぎる――。
サラの顔を思い出して、俺はじーちゃんに問う。
「サラ自体は、人間なんだよな?」
「お嬢ちゃん方は人間じゃよ。時折守護霊様がいたずらに憑いたりはしているようじゃがな。じゃから霊力も高いが、それは自覚せんでおいた方が良い事じゃろう。知の無知とでも言うか。じゃが何かに連れて行かれそうなときは――」
「俺が引き留める」
「そうじゃ。さすがこのじーちゃんの孫じゃぞ」
言ったじーちゃんは階段に向かう。俺も続きながら、白魚の脚を眺めた。
……いやほんと、白魚のような足だよな。字の通り。
次の朝はあざみにじっと覗き込まれて非常に居心地は悪かったが、俺は何もしゃべらなかった。
「院様はうちの不動明王と何か話したりしたのか?」
『跡継ぎが頼りなくて心配だとはいっておったかな』
頑張れとーちゃん。
『他には何も。隠し立てすることは無いとでも言いたげな堂々としたお姿に、我も少々惚れそうになったぐらいじゃ』
「冗談でもやめろ……」
「にゃーにリドル、院様何か言ってたの?」
「なんでもねー……しかしそうか、お不動様はそういうスタイルの仏さんなのか」
あのあやかし達も害がないなら認めている、そういう事なんだろう。ふところの広いお方で良かった。
「ほんっとーにおじいちゃんからは何にも聞いてないの? リドル」
「きーてねーきーてねー。良いから最後の雨漏りでも調べろ」
「それは似てるのリドルが知ってるんでしょ? 諏訪大社七不思議だっけ?」
「ちなみにその雨水で日照りの日に雨乞いをすると雨が絶対降るそうだが、気象衛星の方が確かだろうな」
「よし溜めて運動会を中止に」
「こころざし低っ」
「万年ビリに言われたくないわよ」
「にゃー……これでも体力ついて来たんだけどな」
「ああっ炉吏子ちゃんの事じゃなくて! 普通に健康な体してるのにドンケツなリドルの事で!」
「自分の組が優勝しても喜ぶなと言われた俺の心の傷は誰も癒してくれない」
「が、頑張った~、頑張った~」
サラの言葉が胸に痛くて思わず泣いてしまいそうだった。逆に。
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