第3話 戦争
戦争は、ついに始まってしまいました。二国のにらみ合いの中、レジスタンス軍側が敵軍、王国軍の武器庫を破壊したことにより、王国軍はこれを宣戦布告と受理。互いの魔力をぶつけるかのように、あちこちで魔法が飛び交うようになりました。
戦火はまだ都市部のみで激しく散っていて、農村地帯では避難しようとする人が殺到しています。できるだけ戦火から逃れようと混乱が起きているのです。
「ついに始まってしまったか……」
そういって地図を眺めていたのはケミンズ。彼女はケルアの家を拠点にして少しずつ戦争の状況を調べていた。
「ケミンズさん、お茶いります?」
そういったのはレリィ。カミールは僕の膝の上で寝ている。
「ああ、すまないな。じゃあ一杯頂こうかな」
こうしているうちにも確実に戦争は広まっているはずだ。当然、僕たちが何もしていないのかといえばそんなことはない。
「出来るのなら、明日にも軽い結界を張っておきたい。レリィとカミールは魔力がある安全なところへ避難すべきだよ」
僕はそう言ったが、レリィは首を横に振った。
「そうしたらケルアはたった一人でこの森を守ることになるでしょう?でもこの森は、私とカミールがいないと魔力の量が減ってしまうのよ?」
「けど、レリィとカミールが逃げていればこの森が焼けたとしてももう一度作り直せるだろ?」
お互いがお互いのことを心配しているのだ。それが相手にとっては望んでいないことだったとしても。相手を助けることが役目なのだから。
「森を作り直すことが出来るのか?」
ケミンズが不思議そうに問いかける。
「ああ。精霊の力は魔力があることによって保たれているが、同じように魔力は精霊がいることによって保たれている。だから、たとえこの森が焼けてしまったとしても新しい種が残っていれば、もしくは若い苗木が残っていればレリィやカミールの力で復活することもできるんだ」
「へぇ。じゃあこの二人は木の実の精霊と、葉の精霊っていうことなのか?」
彼女はなかなかに頭の回転が速い。同じ精霊といってもどの魔力が元で生まれたのかによって使える魔力は異なるということをすぐに理解したようだ。
ちなみに僕は木の幹の精霊。幹はしなやかで丈夫だが、新しく作り直すことも育てることもできない。だからこそ率先してレリィやカミールを逃し、森を守ろうとしているのだ。
そしてその森に、自分達以外の気配があることも感じ取っていた。はっきりとはわからないが、この森の中を走っている。そしてその気配がこっちへ近づいていることも。
だいぶ近づいてきたところで僕が外に出ると、そこには青い髪の少女がいた。見た感じは人間だ。こちらに危害を与えようとは思っていないようであるが……。
「お願いです。精霊様……」
彼女はそう言うと、膝から崩れ落ちるようにして倒れ込んでしまったのだ。
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