第2話 悪魔将軍降臨
慎太郎達が、朝鮮半島での戦いに勝利して、一息ついていた。
甲賀の里と伊賀の里にまたがって建てられた龍門館道場では、戸澤白雲斎が、慎太郎達の帰還を待ちわびている。
白雲斎の隣では、慎太郎の妻となったばかりの、望月雅がそわそわしている。
慎太郎達が、龍門館の正門をくぐったと、報告が入ると雅は涙ぐんでいる。
龍門館道場は、忍術道場ではあるが、天守閣を持つ城郭である。
正門は、そのまま城門であり、白雲斎と雅が待っている天守閣の前までは、かなりの距離がある。
もちろん、慎太郎の軍勢は、日本最強の忍者軍団であるので、忍術で一気に移動することもできるのだが。
凱旋行進の時は、ゆっくりと歩いた。
日本では、のんびりした空気が流れていたが、北欧アイスランドのミールダルスヨークトル氷河では、大きな異変が起こっていた。
ミールダルスヨークトル氷河の氷の底にある、氷底火山という分類をされる、標高1512メートルのカトラ火山がある。
アイスランドは、北大西洋に浮かぶ島国で、火山と温泉の国。
『魔女の山』とまで呼ばれるカトラ火山は、島の南側の、大西洋に近い場所で、今も火を吹いている。
その魔女の山が、魔将軍ヒトデナシに目をつけられたのだが、もともと、魔女の山と呼ばれるほど、悪魔が棲みやすい山。
ましてや、アイスランド共和国は、総人口が35万人を少し超える程度の人口で、ミールダルスヨークトル氷河ともなれば、まず人目に触れることはない。
魔将軍ヒトデナシに目をつけられても、不思議はない。
人目につきにくいということは、慎太郎達、に気付かれる危険が少ないと考えられる。
しかし、魔将軍ヒトデナシは、まだまだ、慎太郎を侮っていた。
当の霧隠慎太郎、忍術学校龍門館道場の天守閣の前で、祖父の戸澤白雲斎と挨拶をかわし、新妻の雅と共に、新居龍神池の龍神屋敷で寛いでいるが、頭は、北欧の島国での闘いに向けてフル回転している。
慎太郎にしても、魔将軍ほどの悪魔と闘うのは初めてのこと。
さすがに、作戦は考えようとしていた。
とはいえ、ミールダルスヨークトル氷河カトラ火山内における魔将軍ヒトデナシの動きは、慎太郎には、手に取るように読めている。
ただし、慎太郎自身が一番慎太郎を疑っている。
ゼウスの力、大日の力をもっての視点である。
魔将軍ヒトデナシの動きが読めてもある意味では、当たり前なことである。
しかし、さすがに数千キロ離れた北大西洋の島国の、しかも氷が分厚く覆い尽くした氷河の下の小さな異変にまで気がつくというのにも、何か嫌な気持ちになるというのが正直なところ。
しかし、日に日に鮮やかさを増すイメージに、ついに動く決心をして、とりあえずは、アイスランドの首都レイキャビクで情報を集めることにした。
数日後、慎太郎と雅がアイスランド共和国の玄関口、ケプラヴィーク国際空港に降りたっていた。
慎太郎と雅の新婚旅行にもなるということだが、雅にしてみれば、それではなんだかなぁと思うのだ。
空港から出た2人、まずは、世界最大の露天風呂と言われるブルーラグーンに向かった。
慎太郎も、せっかくの雅との旅に、少しぐらい観光もしたい。
魔将軍ヒトデナシの動きなど、そこまで急ぐ必要を感じていない。
しかし、魔将軍率いる悪魔の軍団は、慎太郎がアイスランドに入ったと知って、騒ぎ出した。
その騒ぎは、慎太郎に筒抜けしているのだが。
慎太郎と雅は、水着に着替えて、混浴の温泉を楽しんでいる。
雅のビキニ姿を眩しそうに見つめながら、慎太郎は魔将軍軍団に思いを馳せる。
妖魔8体に魔将軍か、パワーはどれぐらいあるのかな?
なんだか、それほど強くないなぁ?
日本から、宗幸と小太郎を呼び寄せるほどのパワーを感じない。
魔将軍ヒトデナシの計算は、分厚い氷が、魔将軍軍団のパワーをカモフラージュしてくれるということ。
魔将軍ヒトデナシの思惑としては、自身の軍団の実力を、極力慎太郎に知られたくない。
幸か不幸か、慎太郎と雅の2人は、アイスランドの新婚旅行を、ゆっくり楽しんでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます