曼珠沙華


毎年蝉時雨の時期には

田舎の祖父母の家に帰省していた


お盆にはみんな揃って

お墓参りに行く


山の中に続く真っ白い階段を登ると

手入れの行き届いていない曼珠沙華の無法地帯

日光で黒光りしたお墓が佇んでいる



「妹達は入れないけど

お前は跡取りだからこの墓に入るんだぞ」



嬉しそうに話しかける祖父の顔が

悪魔に見えた


生誕から二年

長女として妹たちを守るべきだと思っていたし

三人姉妹みんな一緒だと思っていた


入れないと言われた妹達は

どんな気持ちなんだろう

どうしてそんなこというんだろう


べたついた汗が背を伝う

後を継ぎたくないと思った



「私、後継がない」



初めて祖父に逆らった



「継がないならお前をこの墓に

入れてやらないからな」



馬鹿な子どもだなぁと

風に吹かれた曼珠沙華が

クスクス笑っていた


勇気ある子どもは

帰る場所と存在意義を失って

胸に真っ赤な曼珠沙華を咲かせていた


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