第24話
埼玉県1位 埼玉県立籠原南 - 群馬県4位伊勢崎市立駒形高校
関東大会、私たちからすれば緒戦の相手は群馬県4位の高校になった。
まぁ、こんなことはあまり言いたくないけど相手は初の関東大会出場でそこまで強くはない。下馬評でも私たちが勝つと予想されている。
その予想通り、大原さん、瀬南さんペアが21-9 21-7で圧倒的差で勝利。その次の岡部さん、田谷さんも21-8 21-11。
続く原島さんが勝てれば勝利……というところで19-21 21-19 24-22 のギリギリの勝利。
勝った。だから問題ないはず。
だけどその試合には少し原島さんらしくない部分があった。
試合中、原島さんにしては珍しいミスが多々見受けられた。空振り、コントロールミス……
これはこの試合のコンディションが悪かったとか、相手が偶々原島さんの苦手な人だった。だから次の試合は大丈夫。取り合えずそう思うことにした。
続く三回戦。
埼玉県 籠原南高校 - 茨城県 中神立国際高校
茨城というのは常陸学院が近年連続で全国大会に出場している。その対抗馬として毎年この中神立国際が決勝へ。県内の地位で言えば私たちと一緒ぐらい。
だから緒戦のように楽には勝てないと予想されていた。
まず大原さん、瀬南さんペアがゲームをとる。続く岡部さん、田谷さんのペアがゲームを落とす。
これで1-1。
そして迎えた原島さん。
しかしここでも本調子ではなかった。
序盤に8連続得点を許し、相手を調子に乗らせてしまった。そして結局点差は広がったまま21-12。
その次も21-11でまさかの原島さんが敗北。
しかも意外だったのは原島さんがそこで悔しそうな顔をするかと思ったら、そんなことはなかった。
涼しそうな顔をしていたのだ。
そりゃ、誰だって負けることはある。
だけど私は何か嫌な予感がした。
その敗けが試合を放棄しているかのような、そんな感じ。
まるで勝ち負けなどどうでもいいように思っているのではないか。
いや、私自身もその考えだ。しかし原島さんのそれと私のそれはどこか根本的に違うような気がする。
その後、大原さんがゲームをとり何とか準々決勝へ進出。
この原島さんの敗北については誰も何も触れなかった。
その準々決勝。
埼玉県 籠原南 - 東京都 圏央第一
ここで来たか。
そう思う。
圏央第一はバドミントンの名門校。ここは毎年全国大会に出場をしている。
塾徳駒込と圏央第一。これが東京大会での2トップ。
これこそ本当に厳しい試合が予想される。
まず瀬南さん、大原さんペアは21-18 21-17と勝利。こんな全国大会常連の相手でもあっさりと点をとれるなんて素直にスゴいと思う。
そして続く岡部さん、田谷さんペアは試合を落とす。
1-1で迎えたのは原島さん。
しかしその原島さんはやはり絶不調である。
相手は全国レベルで強いのである程度点をとられることは想像できた。だが初回から12連続得点はあまりにも痛すぎる。
それもラリーが一切続かない試合。
相手がサーブを打って、原島さんが遠く高くシャトルをあげてそれを圏央第一の選手が打ち込む。
それの繰り返しだった。
見ていて面白くない。その感想しか出てこない。
圏央第一の選手もちらほら欠伸をしている人がいた。しょうがない。それは私も思う。
明らかに原島さんの足が重い。
動きが鈍い。
やはり怪我の影響があるのか。いや、昨日の状態ではそのような雰囲気はなかった。
それじゃ、どうしてなのか。
体育館の床があわないのか。
体育館をあまり使うこと人にとって……またよく使っても私みたいに鈍感な人はその違いなど分からない。
しかし人によっては床の滑り具合(これは私でも感じることがある)照明の位置、またj観客席の位置や、カーテンの長さまでもの違いを気にする人がいる。
だから結構な数で最初のサーブ権よりもコート権……つまりどちらのコートから始めるかを選択する人がいる。
原島さんもその一人なのだろうか。
いや、でもやはりそれだけではない。
21-0。それで負けた瞬間確信に変わる。
やはり原島さんはどこかおかしくなっている。
圏央第一は名門。だから負けることはあるだろう。しかし……それでも1点もとれずに負けるとは。
続くゲームも21-0の大敗。
彼女は負けた瞬間、ベンチに戻らずそのまま体育館の外へ歩きだした。トイレだろうか。
追いかけようか。そう思ったが私の足が動かない。今、下手に話をかけたら怒られるかもしれない。それだけならまだいい。
私が下手に声をかけてますます調子が悪くなることが怖かった。
その後、大原さんも破れて私たち籠原南高校は関東大会ベスト8という記録で終わった。
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