第10話

 入学式初日から籠原南高校バドミントン部は活動していた。

 それだけではなく、すぐに春の関東大会選抜メンバーを参考にするため初日から経験者は試合形式の練習をすることに。


 当然、私は経験者なので体育館で試合の準備を。

 あの原島さんも試合の準備をしていた。

 原島さんはラケットを握って、コートの中でフットワークの練習。

 ……すごい。本気だ。


 そして試合形式の練習。オールコートで5点マッチの簡易版の試合だ。


 まずは原島さんと、二年生先輩の田谷さん。


 原島さんは彼女に圧倒的な力の差をみせつけた。彼女がサーブをあげる。田谷さんが打ち返す。そして原島さんが隙にスマッシュを打ち込む。その繰り返し。


 そして5-0で原島さんが勝利。


 その圧倒的な強さで周囲からはスゲーとかあの新入生何者? とかという声が聞こえる。


「何、あの子。本当に私と同級生?」


 都もそのうちの一人だった。私自身もずっと鳥肌が立ちっぱなし。

 何故、あの子は関東大会にいかなかったのだろう。

 疑問に思う。


 今の原島さんの力だと、私なんか一瞬で倒すことができるだろう。埼玉県内でもあそこまでの実力者なんていなかったと思う。


 もしかして大会本番、緊張して本当の力を出せなかった?


 いやいや。原島さんに限ってそれはなさそうな気がする。


 それじゃ、どうして?

 関東大会ところか、県大会で敗退したの?


 いつか本人に聞いてみようかな。もし聞ける機会があれば。


 とか何とか行っているうちに、今度は私の試合の番になった。

 相手は二年生の岡部さん。


 緊張する。だって相手は私よりも年上だもの。つまりそれだけバドミントン歴が長いということ。


 でも……楽しみでもある。だって高校生とバドミントンできるのだから。

 とにかく勝ち負け気にせずに試合を楽しもう。そう思った。


 そして岡部さんとの試合。

 初期サーブ権は私が持っている。


 私はサーブを打った。岡部さんはそれを奥に……クリアーと呼ばれる山なりのショットを打ち返した。


 私はそれを同じように打ち返す。

 すると今度は岡部さんが飛んだ。


 来る。


 そして私の予想通りスマッシュが来た。それはコートに突き刺さった。


「サービスオーバー1-0」


 早速、一点をとられてしまった。

 流石ですね。先輩。


 やはりバドミントン歴が一年も違うとここまで変わるのか。よく見たら慎重とかもあっちの方がいいしガタイもいい。私なんてまだまだ子供だ。


 その次のラリーもスマッシュを決められて2-0。

 この先輩、かなりコントロールがいい。この先輩を。そんなことを思う。


 私は深呼吸。まだ2点差。バドミントンの世界ではよくあること。


 私がやることは丁寧に、丁寧に、相手を攻める。5点という短いゲームだからひとつのミスさえも許されない。


 クリアー。前に落ちるドロップ。そしてスマッシュ。岡部さんは様々な方法で私に揺さぶりをかけてくる。


 私はそれを次々に拾う。

 これが私のプレースタイル。


 そして、最後に岡部さんはスマッシュを。しかしそれは大きくコートの外へ。


「サービスオーバー1-2」


 これで一点取り返した。


 その後も私は粘り何とか点を稼ぎ5-2で勝利を納めた。


 初日から先輩に勝てるとは。今日の私は絶好調なんだなと思う。


 その横で、原島さんは次から次へと勝利を積み重ねていった。その中には副部長である瀬南さんも含まれていた。

 スゴい。


 取り合えず原島さんは次の団体メンバーに入りそうだ。


 そんな私はその日の戦績は4勝3敗で終わった。なんとか初日勝ち越してよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る