焼きバナナ

 さつまいもが焼き上がるには時間が掛かる。ぱちぱちと爆ぜる葉っぱにも飽きて手持ち無沙汰になってきた頃、融が称賛されることになろうなどと誰が想像しただろう。

 甘い香りが辺りに漂い、おっさんの腹がぐうと鳴く。バナナだ。いい感じに焼けたに違いないバナナが、甘く香って俺たちの胃袋を刺激する。

 早速炭の中から掘り出してバットの上に並べてゆく。軽く灰を落として銀紙を剥こうとするが、あっつい。軍手をしてても熱い。熱いけど熱々の内に食べたい。なので頑張って剥いた。六本。一人一本ってことだろうか。おっさんたちも一人換算か。融よ……。


「ちょうど好かった。お皿とフォーク持ってきたんです」


 美鈴ちゃんが皿を並べてひょいひょいと一本ずつバナナを載せてゆく。素手で!


「美鈴ちゃん、熱くないの?」


 俺は軍手越しでも熱かったのに。


「熱いですけど、渚さんがアルミホイルを剥いてくれたからそれほどでもないです。それに、お料理してたらまあまあ慣れてきますよ」


 そうなのか。美鈴ちゃんは手早く皮も剥いて一センチくらいの輪切りにしたバナナをおっさんたちの前に置いた。


「はい、どうぞ」


 ちゃんと小さなフォークも添えている。


「「「いただきまーす」」」

「「おいしーい」」「うめー」


 おっさんたちがバクバクいく間に、美鈴ちゃんは次の一皿も用意する。


「こっちにはシナモンシュガー掛けてみたの。どうかな?」


 女の子だ。すげえ。

 どっちも旨いと絶賛するおっさんたち。俺の腹もぐうと鳴く。熱さと格闘しつつ皮を剥き、美鈴ちゃんが手渡してくれたフォークで切り分けて口に運んだ。


「うま」


 融、お手柄だ。これは旨い。

 焚き火の隅っこで沸かした湯でコーヒーを淹れて、皆で焼きバナナを堪能する。シナモンシュガーを掛けたやつも旨かった。


   🍌🍎


 バナナを食いつつきゃっきゃしていると、リンゴもそろそろ食べ時だとかずこさんが教えてくれた。トングで炭から取り出し、再びあっつあっつ言いながら銀紙を剥く。


「慎重にね」


 かずこさんが言うので、紙皿の上に置いて慎重に捲った。銀紙を開くと、しわくちゃになったリンゴから熱いバターが溶けだして、シナモンがふわりと香る。


「「「ぐうううぅっ」」」


 一人頭一本バナナを食った筈のおっさんたちの腹が盛大に鳴った。そうか。三人とも四次元なのか……。

 

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