第6話 毎日一緒に登校しましょうね!
風祭と再会した翌日。
登校すべく玄関を出た俺を待っていたのは、ニコニコ笑顔の風祭だった。
「おはようございますっ」
丁寧なお辞儀。ふんわりウェーブが肩からさらりとこぼれ落ちる。
「え、何してるのお前。待ち伏せ? こっわ」
「え、何ですかその反応!? 普通喜びません!?」
俺が喜んでくれると期待してたのか、露骨にガッカリしている。
「特定の件といい普通に怖いわ。てかその制服」
「はいっ! 今日から同じ学校ですね! 毎日一緒に登校しましょうね!」
「それはちょっと。クラスの人間の目も気になるし」
「なんでそんなにドライなんですか!?」
「風祭の距離が近すぎるんだって。俺たち良い年した男女なんだぞ。光里でさえ自重してるってのに」
「なんでそこで光里さんの名前が出てくるんですか!」
朝から元気だなぁ。顔真っ赤にさせて。元の肌が白いから顔色の変化が分かりやすい。
ギャンギャン吠えている風祭を置き去りにするように、通学路を歩き出す。
「待ってくださいよぅ。あと気になってたんですけど、なんで名字呼びなんですか? 昔みたいに伊吹って呼んでくださいよ」
「まだ再会したばっかりで戸惑ってるんだよ。それに学校でうっかり名前呼びしたらマズいし」
「なんでマズいんです?」
「そりゃお前、からかわれるからだよ。幼なじみだってこと隠した方が無難だろ。転校したてで波風立てるのは危ない」
「わたし、そういうの気にしたことないんですけど」
「気にしろ」
どういう学校生活送ってきたんだ。普通は身につくだろ。そういうバランス感覚が。高校生ともなると、中学生時代に培ってきた身の振り方を使ってある程度落ち着いて人間関係を形成できるようになるというのに。ある程度って部分が重要。何事にも例外が存在する。目の前の人物みたいな。
うちから学校までは徒歩三〇分。自転車使ってもいい距離だけど、歩きながらイヤフォンで音楽を聴くのがすきなので、あえて徒歩通学にしている。
今日は普段聴いてるアニソンの代わりに風祭のアニメ声を聴くはめになっている。
「そういえばSNSで絡んでて思ったんですけど、ゆうちゃんってコスプレに異常に詳しいですよね。レイヤーさん好きなんですか?」
「ん、まあ、好きだったな。今はそうでもないけど。ほら、あるんじゃん。自分の中のブームみたいな。一時期声優好きだった、一時期特撮好きだった、ってな具合で、俺の中ではもう過ぎ去ったんだよ」
「ええ〜。わたし、せっかく最近コスプレに出会って、その魅力に取り込まれたのに。SNSでのリプみたいにリアルでも色々教えてくださいよ〜」
「もう何も教えん。自分で調べて自分で上達しろ。それかコスプレ仲間見つけて情報共有しろ」
「わたし、そういう仲間作るの苦手なんですよぅ」
こんなに人懐っこいのに友達作るの苦手とか信じられない。
「大丈夫だ。そりゃ厄介な人もいるけど、基本優しくて礼儀正しい人たちばっかだぞ。何かしらアピールすればきっと反応してくれる人がいる」
「その物言い、もしかしてレイヤーさん好きで詳しくなったというより、自分がレイヤーさんだった、とか?」
鋭い。いや、俺が隙だらけだっただけか。ボロ出さないように気を付けない
と。
「違う違う。ネットの知り合いにコスプレ好きなやつがいて話を聞く機会があっただけだ」
「交友関係広いんですね〜」
そこから何とかコスプレ関連の話題から別の話題に移し、事なきを得た。
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