ヨルとヒノハナ
パEン
第1話
1ヶ月ほど前、とある高校1年生の少女がひき逃げ事故にあった。
犯人は30代後半の男性。飲酒運転が原因だったらしい。
普段の僕なら『恐ろしいこともあるもんだね』と聞き流すようなニュースだが、今回は僕でもそんなニュースを聞き流すことができない事情があった。
事故にあった不幸な少女こと、
彼女は僕のクラスメートなのだ。
特に親しい訳でもなかったが、こんな根暗な僕にでも何故かよく話しかけてくれていた。いわゆる陽キャ、と言うやつなのだろう。
いや、違うな。彼女の性格に関して僕は自問自答した。
彼女は、単に変わり者なだけだった。
どこか人と違うところがあるというか。まあ要するに彼女はクラスで浮いていた。
だからクラスに馴染むつもりのない僕とよく話していたのかもしれない。
確か、小宮が僕に話しかけた記念すべき一言目は『君、見た目からして根暗そうだな』だった気がする。
いかにもこだわりのなく、艶やかさの欠けらも無いアシメの黒髪。中途半端に焼けた肌。そして無駄に高い、180cmを超える身長。しかし平均より明らかについていない肉。ノッポってやつだ。今着ている服の色は、上は灰のTシャツ、下は黒の長ズボン。言われてみれば、確かに自分でも根暗そうな要素を詰め込みまくった外見をしていると思う。
まぁ、今となってそんなことを思い出したところで、僕と彼女の関係が変わる訳でもない。不毛なのでやめにした。
⋯⋯勘違いしないで欲しいが、別に小宮は死んでなんていない。縁起でもないからやめてくれ。
酔っぱらいの引き起こしたひき逃げ事故、なんて聞くと、被害者が生きているところはまあ想像しにくいとは思うが、奇跡的に彼女は軽傷で済んだらしい。不幸中の幸いというやつだ。
⋯⋯にも関わらず、小宮が入院している時間は少し長すぎる。
事故から既に1ヶ月が過ぎている。軽傷であるならもっと早く退院できるんじゃないのか?
そう疑問を抱いた僕は、浮いているせいか誰もお見舞いに来て貰えなかった彼女の元へ行くことにした。
普段、絶対にしないような気まぐれだったが、たまにはこういうのも悪くないだろう。
担任に見舞いに行きたいから病院と部屋番号を教えてほしい、といったら電話で家族に許可を取ってくれたらしく、何やら『君は小宮さんの家族に良く思われてるね』とか言われた。小宮は僕のことを家で話していたりするんだろうか。こそばゆいな、それ。
「お」
ようやく病室を見つけた安心感からか、思わず声が出た。
207号室。いかにも『部屋』っぽい感じのありふれた数字のくせに、中々見つからなかった。部屋のくせに生意気だ。
⋯⋯さて。
⋯⋯⋯⋯なんか、こう⋯⋯入るの、すごい緊張するな。
⋯⋯⋯⋯帰ろうかな。
「⋯⋯気持ちはわかるが頑張れ、僕」
自分を励ました。コミュニケーションが苦手な僕が、ここに来て全面的に僕を帰宅させようと考えているからだ。
入ったら寝ていないだろうか?
誰かほかの人が居ないだろうか?
ヤバい薬でもやっていないだろうか?
ありもしない心配事を脳内で会議し、ふと周りを見て、ギョッとする。
(⋯⋯他の患者さんから変な人を見る目で見られとる!?)
扉の前で実に5分もの間、右往左往しながら何かに悩む高校生は、病院生活で刺激が足りない方々には大いに興味の対象となったようだ。
ここまで見られてしまうと、少しではないくらい居心地が悪い。大人しく部屋に入った方がマシというものだ。
ぐったりと項垂れながら、こんこん、とノックをする。
「⋯⋯どうぞ」
小さくて落ち着いた、儚げな声が聞こえてきた。多分小宮のお母さんだろう。もしこれが小宮なら、
『どうぞっていったら入ってきちゃうから、酵素って言っておくよ』
とか言ってくるだろう。それも、あんな儚げな声ではなく、不遜極まりない声で。
⋯⋯理解し難いとは思うが、そういうやつなのだ。小宮というやつは。
「し、失礼します」
挨拶に不慣れなりに、精一杯勇気を振り絞って、しっかりと挨拶をした。流石に同級生のお母さんに不甲斐ないところを見せるわけには______
「⋯⋯⋯⋯ん?」
部屋にいたのは、先程まで語っていたクラスメイト⋯⋯小宮奏、一人だった。
ベットの上で、下を向いて困ったようにして座っている、小宮一人。
⋯⋯一人?
前述した通り、彼女は変わり者で、不遜な態度と声がデフォルトなやつだ。
さっきドアをノックして聞こえてきた声が小宮のお母さんとかではなく小宮本人だとしたら、それはおかしい。
彼女にあんな静かな、いかにも大人しげで儚げな声は出せない。絶対に。
⋯⋯部屋、間違えてないよな?
「こ、こんにちは小宮。お見舞いに」
「ひっ」
小宮が、とても可愛らしく怯えた。⋯⋯え、えぇー。
彼女はやっぱり小宮とは思えない。妹さんとかなんじゃないのか⋯⋯?
いや、でもなあ。姉妹同時期に入院しているとは考えにくいし、もしそうであったとしても先生が小宮のお母さんに聞いてくれたんだ。まさか実の親が伝え間違えるとも考えにくいしな。
何より、彼女の見た目がどうみたって僕の知っている小宮だ。今はおろしている、肩まで伸ばしたきめ細やかな黒い髪。白磁のように白い肌。そして左目の下にある特徴的なほくろ。いくら血が繋がっていようと、ほくろまでは似まい。ベッドに座っているから分からないが、僕の知っている小宮なら身長が僕より一回り以上小さいはずだ。
彼女が着ているザ・病衣服といった感じの薄い青の服は、肌の白と合わさって、不謹慎ながらなんだか夏らしかった。
認め難いが、やはり彼女は僕の知っている『小宮奏』なんだろう。
しかし。しかしだ。今の彼女は僕が会話したことがある『小宮奏』では、断じてない。これは間違いない。
⋯⋯じゃあ、なんだって言うんだよ? もやもやとした、掴めない、霧のような違和感が、僕の中に渦巻いた。
「あ、あの」
おずおずとかけられた小宮の声は、ノックした時に聞こえてきた声と同じ大人しげな声だった。
あの声の主は、本当に小宮だったというわけだ。⋯⋯マジかよ。
「どちらさま、ですか」
「へ? 僕だよ、クラスメイトの」
「あ⋯⋯す、すいませんっ」
やけに焦った様子で、小宮はベットに座った状態ながら頭を深く下げた。
「いや大丈夫だけどっ。僕のことそこまで覚えてはいなかったんだね⋯⋯」
友達なんていらない、と斜に構えている僕であっても、その事実はそれなりにショックだ。
「ち、違うんです。その⋯⋯」
口をぱくぱくさせながら何かを言いたげな彼女を、僕は黙って待った。
⋯⋯何となくだけど、大切なことが語られそうな気がしたからだ。
しばらくそのままぱくぱくしたあと、彼女は意を決したように、けれど僕に目を合わせることはなく、ゆっくりと言葉を発した。
「記憶をなくしてるんです、私」
ゆっくりと発された言葉は、ずっしりと実体を持ったように重く感じた。
「事故の、衝撃で。いつ戻るか分からないから退院するわけにもいかないらしくて。だからあなたの知ってる奏は、今ここにはいないんです。騙していたみたいになってすいません⋯⋯」
なるほど。やけに納得がいった。
顔が瓜二つの家族と言われるよりよっぽど説得力があった。
記憶喪失⋯⋯か。
「で、でも」
焦った様子で彼女は言った。
「私、分かるんです。一時的なことではあるんですが、自分の身体となっている身体のこと、なので」
「何が?」
「私の記憶喪失が治る日です」
「⋯⋯いつ?」
少し迷うように手を小さく上下に降っのあと、観念したように斜め下を見つめながら彼女はこう口にした。
「だいたい一週間後⋯⋯くらい。その辺りに、治ると思います」
⋯⋯ミンミンと、セミがうるさい。
いっそのこと夏らしく、花火など咲いたなら、今の言葉も聞かないで済んだかもしれなかったのに。
*
小宮が記憶をなくしたと聞いた日は、看護師さんが入ってきて何らかの検査を始めるようだったので、そそくさと帰ることとなった。
慣れというのはいいもので、昨日の僕より今日の僕は小宮の病室に入るのがスマートだった。
病室の前で入るか悩んだのはたったの1分。昨日の5分の1。この調子で行けば10秒も夢ではないだろう。世界を狙えるタイムだ。小宮の病室入場選手権。参加選手の人数に期待だ。
「なんで今日も来てるんですかぁ⋯⋯」
一方の小宮は僕に慣れる様子はなかった。悲しいことだ。
「私、記憶喪失って、頑張って伝えましたよね」
「来ないで、とは一言たりとも言われてないからな」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯言ったら来なくなるんですか?」
「⋯⋯検討しないでくれる?」
普段の小宮なら、『冗談さ。毎日来たまえ』とか笑いながら言いそうなもんだが。
やはり目の前にいるのはいつも話していたあの小宮ではなく、『知らない誰か』なんだな、と改めて感じる。
見た目がいつもの小宮でも中身が違うというのは、中々どうして調子が狂う。
「小宮はさぁ」
「⋯⋯なんですか」
警戒心バリバリで返される。会話がしたいだけなのに。
最初こそ恐怖が勝ってビクビクしていたが、少しだけとはいえ話をするうちに、『コイツは面倒だ』とでも思われたのかもしれない。態度は明らかに悪くなっていた。喜ばしいやら悲しいやら。
とすん、と備え付けの椅子に腰掛けて、僕はなおも会話を続けた。
「普段何してるの? ずっと病室だと暇そうだけど」
「目の前にある本の山から察せませんかね」
「枕代わりにして寝ているかもしれないから聞いているんだ」
「枕がデフォルトで置いてある病院のベットの上で生活しているのにそれはないでしょう!?」
そういうもんかね。
はぁ、と露骨なため息を漏らし、小宮は渋々といった様子で話しだした。
「本を読んでいるか、お外を見ています」
「外?」
「はい。小さな窓ですけど、街が見渡せて悪くない景色なんです」
見てみると、確かに街が一望できるいい場所だった。僕はこの街を美しいと思ったことなど1度もないが、こうして外面だけの街を見ると、少なくとも汚くは見えない。
「夜になると、星もよく見えます。窓を開けてはいけない決まりなのでガラス越しなのは残念ですけど」
そう言いながら、小宮は何かを諦めたように、こんな小さな街よりはるか遠くを眺めていた。
その顔に辛さは見えなかったが、心なしか悲しそうだった。だからというわけでもないが、僕は1つ提案してみた。
「ちょっとだけ外に出てみたら? 少しくらい外を見てもバチは当たんないと思うけど」
「もしも途中で記憶が戻ったらどうするんですか。そこがどこかも分からない奏が1人残るだけですよ? そのまま行方不明にでもなったらと思うとそんなことやる気になりませんよ。そもそも、病院側から外出は一切禁止されています。病院側もきっと同じ考えなんですよ」
そんなことも分かりませんか、と小宮に呆れられた。
確かに、記憶が途中で戻ってしまえば全く状況を理解出来ていないであろう『本当の』小宮が混乱してフラフラっとどこかに行ってしまう可能性は大いにある。
「やけに具体的に語るな? 前々から考えたことがあるみたいな話し方をしてる」
「⋯⋯意地悪なこと言いますね」
「自覚はある」
彼女は小宮。その事実は変わらない。
けど、今の小宮はいつもの小宮じゃない。自我のある、もう1人の小宮とでも言ったところか。
彼女にもやりたいことはあるし、見たいものもあって当然だろう。
それを、本来の小宮の万が一を考えて我慢する。
その思いやりを無理やり聞き出した僕の質問が、意地悪でなくてなんだと言うのか。
「⋯⋯」
「怒ってる?」
つまりは無神経なことを言ったわけだ、僕は。彼女が怒っても仕方あるまい。
「いえ、分かってくれるんだな、と思いまして」
「と、いうと?」
少し長い爪の先で首を触りながら、小宮は言った。
「みんな言うんですよ。早く治ってねーって」
表情に苦笑いが出るのを隠すつもりもないのか、そのまま続けた。
「こう⋯⋯少し悲しくなるんですよ。私は必要ないんだと再認識させられて」
「そんなことは」
「ありますよ」
小宮はハッキリとそう言いきった。
「私は、奏の癌みたいなものですから。取り除かれて然るべきなんです」
「生きたくないのか?」
「私は消えるだけです。もとより生きてなんていません」
その言葉を最後に、部屋は静かになった。
クーラーの稼働音だけが響く部屋の中、僕は思った。
うるさく鳴いて止まない、自由あるセミの方がまだマシだろ、って。
「⋯⋯そろそろ検診の時間です。今日はここでお別れですね」
「それ、明日も来ていいってこと?」
僕と目を合わせない小宮に、僕はニヤつくのを止められないまま、そう言ってやった。
小宮は気のせいかもしれないが、頬を赤らめたように見えた。
「言ったじゃないですか。暇なんですよ」
「僕が暇そうだなって言っただけだったと思うけど」
「本当に意地悪ですね」
少し拗ねたような小宮の言葉に少し、確実に近くなった距離を感じながら、僕は「また明日」と言って、207号室を出た。
*
「ッ」
今の小宮と、少し仲良くなれた翌日。頭痛が僕を叩き起こした。
目覚めは最悪。こんな感じのやつが、二日酔いというのだろうか。そうなのだとしたら、僕は一生酒を飲むことはあるまい。
今日も小宮の見舞いへ行きたい。そう考えながら、既に親が仕事に出かけ、誰もいない家の中、僕はいつものようにテーブルに置かれている朝食のパンをかじりながら、同じくいつも通り横に置いてある昼食代と親の書き置きのメモ書きを見た。
『今日はお刺身がスーパーで安いみたいだから、お昼にどうでしょうか』
「あっそ」
僕はメモをゴミ箱に放り込んだ。メモの下にさらに置いてあったメモを見てまた舌打ちする。
『早く治ってね』
*
コミュニケーションが苦手な子供であったと自覚がある。
小学生の頃から友達と呼べるようなヤツがいたような記憶はないし、それは中学生になっても何ら変わらない事実だった。
いや、違う。
いないだけで終わりはしなかった。
俺はいじめられていた。友達がいない異端者は、望んだ訳でもない特別のせいで迫害を受けた。
上履きは3日に1度は消えていた。
なけなしの小遣いは奪われ続けた。
身体のアザが絶えることは無かった。
⋯⋯俺はとうに限界だった。
俺は、ある私立の高校を受験し、無事合格した。遠い県の、地元のヤツらはまず行かないような高校だ。
これで逃げ出せる。これであの地獄をもう見ないで済むんだ。
俺は高校の合格を確認するや否や、中学校に行くのを辞めた。もう行く意味なんてなかった。卒業式は入場の時にサッと入り、退場した瞬間に逃げ出した。
俺の3年間は、こうして逃走により幕を閉じた。
⋯⋯卒業式が終わって、次の日。
俺は仕事でしばらくはこっちに残らざるを得ない父さんに一旦の別れを告げ、母さんと高校のある県に引っ越した。
数日過ごしてみたが、良い街だった。
⋯⋯けど、そこから1日。また1日過ごしていくうちに。
不安が募った。
また、あの地獄は再現されないか?
また、俺は死んだような毎日を過ごすことにならないか?
そうやって考えていくうちに、俺の心は死んでいった。
あの、思いっきり殴られた痛みが。
あの、持ち物を壊し続けられる悲しみが。
俺の心を殺した。
不安で。不安で。不安で。怖くて。怖くて。怖くて。
⋯⋯高校になんか、行きたくなくて。
自己防衛本能か。もしくは逃走したかったのか。
俺の記憶は、消え。
⋯⋯⋯⋯今ここにいる僕が記憶の中に補填された。
当初はなぜ僕がここにいるのか、僕は誰なのかすら分からず発狂すらしたものだ。もっとも、彼の母から聞いた道永の過去を知った時は、そんな理由から存在を許された「僕」への憎しみでまた発狂しかけたが。
ここにいるのは僕じゃなかったはずだ、というフィルターから見た街は、汚くて仕方なかった。
己で己を名付けて自分を主張してみたって、それは結局ただの自己満足にすら満たなかった。
⋯⋯こうして。
僕の短い人生は今日も進行している。
*
「今日も来てくれたんですね。ありがとうございます」
「⋯⋯あぁ」
刺身など食べず、大手ハンバーガーチェーン店で昼食を済ましたあと、僕は昨日のように小宮のお見舞いに来ていた。
やけに気分は悪かったが、それでもあの家に引きこもっている方がよほど不快でここに来た。気分の問題か、いつもより椅子が硬い気がする。
「あの」
「?」
小宮が遠慮がちに手を挙げ、何か提案があることを示す。
「今更、聞くことでもないんですけど。貴方のこと、なんて呼んだらいいですか? 失礼な話、記憶が無いので名前がわからなくって」
⋯⋯ついにこの質問が来たか、と思った。
僕は彼女⋯⋯今の小宮に出会ってから、一度も名乗っていない。
名乗らない方が、幸せだと思ったから。
あの日、僕が誰だかわかっていないような態度を見て、このまま貫き通せたらって思ったんだけどな。
1度、深く息を吐いてから、僕は日常会話の延長線のように自然を努めて言った。
「
「高村、くん」
「が、こっちの名前」
言いながら、自分の胸板をドンと乱暴に拳で叩いた。痛みを感じるほどの強さだったが、そのくらいがちょうどいいと思った。
「え?」
「改めて名乗らせてくれ。僕は
「えっ⋯⋯」
そう。
僕も、記憶喪失者なのだ。
この春から、ずっと記憶が戻らない、重度の。
⋯⋯初めてだ。
この2つの名前を、1度に名乗るのは。
「湖心、くん」
「なに?」
「湖心くんは、いつ頃⋯⋯その」
「消えてしまうのか、って?」
「⋯⋯はい」
聞きにくかったのだろう。目線は気まずそうに逸らされていた。
「君と出会ってから、やけに高村道永の記憶が僕の中に流れてくるんだ」
「っ」
「⋯⋯僕も、もうじき消えるんだろうな」
最近、やけに高村道永の記憶が僕に干渉してくるようになった。朝、何故か強く頭の片隅にこびり付いて消えなかったあの過去の記憶がいい例だ。
僕も、危ないということなのだろう。
「いつから、記憶がないんですか?」
小宮は、僕にそう問うた。
「高校に入学する、1ヶ月くらい前。だからもう1人の小宮の方では、僕は湖心破音で、高村道永じゃない。勿論記憶をなくしてるから中学までの友人も誰も分からないし、高校に入ってからできた友達もみんな僕が記憶をなくしていることを知らない。小宮だけだよ、僕が⋯⋯いや、僕も記憶喪失だってことを知ったのは」
「なるほど⋯⋯じゃあ奏は高村さんのことを知らないんですね」
「あぁ」
「そうですか⋯⋯」
小宮が、眉間を抑え、あちゃー、という言葉をそのまま表現したみたいな顔をした。
「どうした?」
「その。⋯⋯湖心くんは彼女とか欲しいと思いますか?」
「⋯⋯消えてしまうとわかっているのに、そんなもの要らないよ」
「その⋯⋯奏は湖心くんのことが好きだったんですよ。5月の、頭くらいから」
「⋯⋯何故そう思う?」
「奏の日記に書いてありました。まさか、貴方がその湖心くんだったとは思っていませんでしたけど」
「⋯⋯僕は、騙していたんだな。君ではない方の小宮、を」
満足に存在も出来ない僕のことを好きになるなんて、意味の無いことだ。なにかの気の迷いか知らないが、申し訳ないことをした。
「救われていましたよ、奏は」
「救ってないし、救えるはずがない。所詮贋作だぞ、僕は」
「それ、嫌味ですか?」
「⋯⋯そう、聞こえるよなぁ」
同じ境遇どうしというのは、自虐のひとつも言えなくて困る。
「奏が虐められてたの、助けてあげたんですね」
「そんな大層なことはしてない⋯⋯なんとなく気分が悪かった時に気分が悪いものを見せられたから起きた事故だ、あれは」
「それは絶対に故意ですよね!?」
確かに、以前明らかに本人に聞こえるように小宮の悪口を言っていた女子数人を少しビビらせてやったこともあった。⋯⋯気がする。
記憶が混同しているせいか、それも言われるまで思い出せなかったが。
思い返せば、そこから小宮とは接点ができた気がする。
「⋯⋯なぁ、小宮」
「なんですか、湖心くん?」
「君ではないもう1人の方の小宮の想いを知って、死ぬ前にやりたいことが出来た」
⋯⋯そうだな。感情というものを言葉で表すのは難しいけど、強いて表すならばこの時の僕は『頭がおかしかった』。
柄でもないことはすべきでない。それは初めてこの病室に来た時に恥をかいて学んだはずだ。その教訓を行かさない馬鹿な僕は、ここでも柄でもないことをする決心をしていた。
「最期、になると思うんだ。これから僕がしたいことは」
「⋯⋯最期、ですか」
「あぁ」
口に出してこそいないが、抗えない眠気が襲い来ることが増えていた。記憶が飛び、その日その日の記憶が曖昧な時もあった。
少しずつ、僕の⋯⋯湖心破音の時間が喰われていることはよく分かっていた。
死ぬんだ。もうすぐ。
だから、僕は、最期のワガママを、自分でも情けない顔をしている自覚のあるまま小宮にぶつけた。
「最後に、君を本当の意味で救わせてくれ」
「⋯⋯ふふっ。なんですか、それ。クサいにも程がありますよ」
「ぐ。お前なー⋯⋯」
「第一、私はあなたの知っている奏ではないんですよ?」
「⋯⋯それでも! 君は避けられない死と向き合っているんだ。怖いに決まってる。苦しいに決まってる。救わせて、欲しい。他の誰でもない、君を」
「⋯⋯ずるいです、そーいうの」
小宮は、唇を尖らせて、少し拗ねたように。しかしすぐに破顔し、とても嬉しそうに微笑みながら僕を見て、言ってくれた。
「えぇ、いいですよ。絶対私を救ってくださいね?」
こうして。
僕らの、夏の終わりは導火線に火をつけた。
あまりに短い、導火線に。
*
仮眠から目を覚ました私は、まず真っ先に湖心くんが帰る前に言った一言を思い出しました。
「2日間、僕に時間をくれないか。やらないといけないことがあるんだ」
その申し出に、私は勿論イエスを返しました。元よりノーと言える立場ではありませんし、彼には好きなことをして欲しかったのです。
⋯⋯その『したいこと』が、私を救う、なんて。ロマンチックすぎやしませんかと思わないことは無いですが。
「⋯⋯救うって、何をするつもりなんですかねえ」
身体を起こしながらそんなことを考えました。
実際、彼の言う救いとやらの招待はわかりません。私の死を防いでくれるんでしょうか。
いや、そんなことはないはずです。私は誰も話している訳でもないのに首をふるふると横に振ります。
私の死は、悲しいことじゃなくて、喜ばしいことだから。それは、記憶喪失の完治という涙を流して喜ばれるハッピーエンドだから。
だから、たとえ死を防ぐことが出来ても、それは私を、奏を救ってなどいないのです。
「あ、奏ちゃん、おはよー」
「おはようございます」
看護師さんが検診に来てくれました。いつもより時間がかなり早めですが、何かあったのでしょうか?
「やっと起きたんだね! 丸々一日寝てたからびっくりしちゃった!」
そう元気よく言い、二言三言さらに何か言ったあと、看護師さんは部屋から出ていきました。
⋯⋯あぁ、だからこんな時間に来たんですね。
湖心くんに2日時間をくれ、と言われてすぐ、私はやけに眠くなって仮眠をとりました。
次に目覚めたのは、仮眠を始めた時間と、同じ時間。15時でした。
⋯⋯日付は、1日進んで、8月の11日になっていましたが。
私は丸1日寝ていたのです。
それを心配して看護師さんは私の様子をいつもよりこまめに見てくれていたようです。
その異常な睡眠時間は、まるで本来の奏と私が入れ替わる、準備のように私には思えました。
⋯⋯そして。何故か、この短い期間で読んだ数少ない本の記憶が、ハッキリと思い出せない程度には薄れています。今まで、思い出そうと思えば少ない記憶の引き出しからすぐに取り出すことのできた記憶なのに。
完治しつつあるってこと、ですよね。私の⋯⋯いえ、奏の記憶喪失は。
残り少ない私の時間さえ、奪われて。ほとんど存在しない、私の、私だけの記憶すら消えていって。
時間も、記憶も、私のアイデンティティと共に消失して。
⋯⋯私は、贋作の奏は。壊れてしまいそうでした。けど。
高村くんが、救ってくれるって言ったから。
私は耐えられるんです。この、果てのない恐怖と。
1日寝て過ごしたので、もうあと1日で高村くんがきてくれます。
それまでの、辛抱なんです。
⋯⋯まだ、少し眠気を感じます。
あれほど寝た後です。寝ても1時間くらいでしょう。
少しだけ⋯⋯横に⋯⋯⋯⋯
________________。
___________________________________。
______。
「ん、ぅ」
思ったより早く目が覚めた気がします。やはり仮眠というのは本来、大して眠れないものですよね。
時計を見ると、19時です。4時間ほど寝てしまっていたのでしょうか。思ったよりは寝てますね。
「奏ちゃんっ」
「ふぇっ!? 」
急に看護師さんが入ってきます。今日、何回入ってくるんですか。ちょっとした狂気すら感じますけどね、ここまで行くと。
「よかった⋯⋯目覚めたのね」
「そりゃあ寝たんだから起きますよ」
「奏ちゃん、頭痛くない? 身体だるくない? 記憶に変化は?」
「だ、大丈夫、ですよ?」
「よかった⋯⋯何か身体とか体調に異変があったら、すぐに呼んでね」
「分かりました」
そう言って看護師さんが出ていってから、私は違和感を覚えました。
「⋯⋯?」
何か、変です。ただ少し仮眠して起きただけであんな念入りに体調のチェックをされる意味がありません。
⋯⋯まさか。
最悪の可能性を思いついてしまいました。いや、でもまさか。ありえないはずです。
あっては、いけないはずなんです。
そう自分に言い聞かせながら、私は部屋のデジタル時計の日付を見て。
戦慄しました。
「じゅう、に、にち?」
また、日付が進んでいたのです。
私は、また丸一日。いえ、それ以上の時間、寝続けていたらしいです。
⋯⋯次眠ってしまったら、目覚めた時、この小宮奏は。
消えてしまっているかもしれない。
この、起きている時間が。私の最期の時間だ、と。
じっとしているのがやけに怖くて、指を意味もなく動かし続けます。
根拠があるわけでもありませんが、私はそう感じました。
ですから、湖心くん。
早く、来て⋯⋯!!
「ようやく出ていった⋯⋯」
「ふわ!?」
ベッドの下から湖心くんがにゅっ、と出てきました! すごくびっくりしました!!!
「た、湖心くん!? いつからそこに!?」
「しー。あんまし大声出すなよ⋯⋯。ここに来たのは5時くらい。小宮が寝てるから、起こすのも良くないと思って起きるまで隠れてたんだ。⋯⋯それに、俺みたいに記憶が戻る準備であろう睡眠だったなら、起こしてしまって変に影響が出たら小宮の本意じゃないだろうし」
「湖心、くん?」
「なんだ?」
「今、俺、って」
「⋯⋯言ってたか。ごめん、忘れて」
きっと、私より記憶の混同が激しいのでしょう。高村くんの一人称であろう『俺』を、無意識のうちに使ってしまっています。
⋯⋯きっと、2人ともこれが最期の夜なんでしょう。
悲しくてたまりません。
悔しくて、壁を殴りたいくらいです。
消えたくない、と思う自分を嗤うしかありません。
⋯⋯けど、どんな感情より。
「湖心くん」
「どうした、小宮」
「救ってください。私を。他の誰でもない、私を」
「当たり前だろ。任せとけ」
そう自信満々に答えてくれた彼と、2人で過ごす最後の夜が、楽しみで仕方ないって想いが。全部塗りつぶしてくれました。
*
小宮とお世辞にもかっこいいとは言えない、2日ぶりの再会を果たした僕は、小宮を救うため、まずは病院からの脱出をすることにした。
とはいえ、その方法は実にシンプルで。
「ほっ」
2階にある小宮の病室から、真下にある庭みたいなところに布団をおとし、そこに飛び降りるだけだ。
僕は小宮が極力怖がらないようにパッと飛び降り、無事に降りられたとピースを向けた。
⋯⋯いや、正直めちゃくちゃ怖かった。高いし、最悪骨が折れる可能性もなくはなかった。下の土がかなり柔らかかったのと、布団がかなり衝撃を緩和してくれたので、これなら布団の上に落ちれば間違いなく怪我なしで降りられることだろうけど。
「小宮、怖かったらゆっくりでも」
さすがに怖いだろうと思い、僕がそう声をかけた、その瞬間。
ばふっ、と。
目の前で布団の上に何かが落ちる音がした。
「わ、ほんとです。あんまり痛くないですね」
「⋯⋯怖くなかったか?」
僕でも結構怖かったのに、小宮に恐怖心は芽生えなかったのだろうか。
「え、あー⋯⋯」
そう言えば確かに、と答えに悩むように首を斜めに傾げ考えたあと、なにかに納得したように小宮はこう口にした。
「湖心くんと、早く行きたすぎて、つい」
「⋯⋯期待に応えられるか分からないけど」
「応えてくれますよ。絶対」
そう嬉しそうに僕を見た小宮の目が、ある1点で止まった。
「わぁ⋯⋯!」
小宮の目には、綺麗な三日月が映っていた。こっちの小宮は、初めて何も隔てるものなく月を見たのだろう。
「⋯⋯この短い、生の中で。初めて美しいと思えるものに出会えました。ありがとうございます、湖心くん」
「⋯⋯⋯⋯」
「湖心、くん?」
月は、確かに美しい。でも僕みたいな感受性が乏しい男では、それを小宮みたいに本当に感動して見ることは出来ない。
けど、小宮の瞳に映る三日月は。
同じ、短い生の中で。最も⋯⋯いや、唯一美しく思えたものだった。
濡れたナイフのように妖しく光る小宮の瞳の中の三日月は、恐らく、今夜で消えてしまうであろう僕らの持つ不安さえも切り裂いてしまいそうな鋭さを持っていた。
その、あまりの妖艶さに。僕は何も考えず、言葉を発していた。
「夜」
「え?」
「
「あの?」
「君の名前。小宮奏じゃない、君の」
美しいものに、名前がなかった。
だから、それに名を持って欲しかったのだ。
「⋯⋯私なんかに、名前があっていいんですかね」
「最後の夜くらい、なにしたっていいんじゃないか」
「ふふっ。そうですね」
そう、嬉しそうに月刃が笑うだけで、僕は幸せな気持ちを得れた。
だから、もう一押し。
本当の救いを、彼女に。
*
僕らは少し歩いて、僕達の通っていた学校にやってきた。
いや、高村と小宮が、か。
「月刃。僕達の最後は、ここの屋上で迎えないか」
「そこに、救いがあるんですか?」
「あぁ。けど時間が無い。早く行こう」
「夜の学校⋯⋯素敵ですけど、侵入できるんですか?」
「そのための、空白の2日間だったわけだ」
僕はポケットから学校のマスターキーを取り出し、指先でくるくると回してじゃらじゃらと鳴らしながら、月刃に見せてやった。
「⋯⋯盗んだんですね?」
「人聞きの悪い。拝借しただけだよ」
「物は言いようですねぇ」
はぁ、とジト目を向けられ呆れられながら校門の鍵を開け、正面玄関の鍵を開け。僕と小宮のいた教室を通り過ぎ。暗い化学室にびっくりしたりしながら。僕達は、屋上の扉前に辿り着いた。
「⋯⋯ここで、私達は」
「最高の救いを迎える」
暗いトーンで切り出した月刃に、僕は努めて明るい声で返す。
ポカン、とした月刃は、すぐにクスッと笑ってくれた。
「物は言いようですね、ほんとに」
さっきも聞いたが、ニュアンスは違うのであろうその言葉を背に受けながら、僕は屋上の鍵を開け、ガンッと勢いよく扉を開けた。
僕らは、屋上の中心に向かって歩を進める。さっきよりいくらか近くなった月は、僕達の最後を見届けてくれるかのように淡く光っている。
「湖心くん。救い、って」
「少し、待っててくれ」
「分かりました。ふふ、ワクワクしちゃいますね」
そういって、無邪気に目を細めて月刃は笑った。
「月刃はさ」
「はい?」
「怖くないのか? もうすぐ、その⋯⋯消えてしまう、って」
「さっきから、そればっかり。湖心くんは私のことを怖がりと勘違いしていませんか? 怖いのはお互い様でしょうし、それに」
そこで月刃は何故か僕から目を逸らし、呟いた。
「これも、さっき言いましたけど。どんな恐怖より、苦しみより、辛さより。今は、湖心くんと終われることが嬉しくてたまらないんです」
「⋯⋯ごめん。終わることを前提にしてしまって。僕は、君を生かしてあげることはできない」
「わかってます。わかっていますよ、湖心くん」
「だからさ」
僕は、夜空を背に、言った。
「これが僕の思う救い。有終の美を飾ることに特化した、最終兵器さ」
終わりを全うする。その言葉の意味にふさわしい、最高の終わり方をするために。
僕はこれを選んだ。
ドン、パラララララ⋯⋯と。
暗闇が、光と弾ける音がした。
僕らに、花火の名前の知識なんてないから。言葉でいい表すことは出来ないけど。
名前なんて知らないたくさんのヒノハナが。
暗闇の中に咲いて、咲いて、咲き続ける、その光景が。
僕らを煌々と照らして、止まない。その事実だけが。
きっと僕らの救いだった。
「はな、び、です」
月刃の目には、今度は仄かに光る月ではなく、鮮やかな大輪が咲いていた。
ぺたん、と。月刃はその場に膝をついた。
「すごいです⋯⋯最高です、湖心くん! 最期にこんな綺麗で、全部、ぜーんぶ! 今までの嫌なこと、吹き飛んじゃうような景色を見れて、私、私っ⋯⋯」
本当なら。ここで、『最期じゃないよ。この先も、きっと』なんて、気の利いた言葉をかけるべきであったのかもしれない。その言葉に応じた結果を持ってくるべきであったのかもしれない。
でも、僕らの最後は避けようがなくて。最期を最高に美しくしようと、救おうと努力した結果がこれだから。
だから僕は。
涙を流す美しい夜に、こう返事をした。
「救われてくれたなら、幸いだよ」
そう言った直後。僕は、立っているにも関わらずあまりにも酷い眠気に襲われた。
眠気に逆らうことは出来ず、僕はヒノハナで点灯する屋上の床に倒れ込んだ。
横には、月刃も同じ体制で倒れている。
⋯⋯ついに、終わりということだろう。
ドン、と。花開く音が届いた、すぐあとに。
パララララ、と。花が散る音がする。
花は散るからこそ美しい。そんな言葉をなにかの本で読んだ。きっと、それはめちゃくちゃな言葉だ。
散らなければ美しくないなら、散るまでの花はなんで咲いてるのかわからないじゃないか。
僕らはなんのために生きていたんだ。
やることはやった、のに。
今までやってきたことの意義が分からなくなる。
「こし、ん、くん」
月刃が途切れ途切れの声で僕に話しかけてくる。
話すのもキツいくらいには意識は朦朧としているはずだ。そんな不安定な存在の彼女は、最後になる会話を咲かせる。
「さいごに、なまえよんでもいいですか」
⋯⋯あぁ、そうか。
隣に咲く花が1輪で散らないように、咲いていたんだ。僕は。
1輪で散るより、2輪で散った花の方が、きっと綺麗だから。
そのために咲いたのだ。
例え何の役にもたたない花でも。
隣の、たった一輪の花のために咲けたなら。
それは、きっと幸福だから。
「ぼくも、なまえでよばせてくれ」
ドン。パララララ。と。また散った。
あと何輪の大輪が散るだろうか。
「はいん」
ドン。ドン。パララララララ。何輪も散った。
もう、尽きるだろうか。
「よる」
ド、ンと。
一際重く、大きい音が鳴る。
もう、あとわずか。
「だいすきです。あなたが。はいんが」
「もっといっしょにすごしたかった。きみと。げつばよる、と」
「⋯⋯そのいいかた、ずるいです」
「よるこそ、こみやはぼくのことがすきだってしってたんじゃないの?」
「もう、はいんはいなくなりますから。あなたのそんざいすべて、わたしがあいしてきえるんです」
「⋯⋯めんへらか」
「それ、けっこうしつれいですよ?」
「⋯⋯よる」
「なんですか? はいん」
「さようなら」
「えぇ。さようなら」
最後の割に、淡白な挨拶の後。
僕らの命の導線が燃え尽きて。無数の花火が同時にあがり、弾け、消えていく音で鼓膜が埋まった。
こうして、夜は更け朝となる。
泡沫の夢も、騒がしい夜も、消えて。
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