ゲームはまだ終わってない
連結させた六尺棍を上方へ向かって突く。こちらへ向かって急降下してきたドローンが、その場でピタリと静止した。棍に接触したことにより、メイナルドの苗を植え付けられたからだ。
メイナルドの苗——レオーネが説明するには、触れた既存のOSをSephirOSへと強制的に書き換えるソフトウェアだそうだ。それを聞いた時、俺は神経をジャックして意識そのものを完全に変えてしまう恐ろしい寄生生物をイメージした。レオーネが答えるには、だいたいあってるそうで。
制御するOSをQliphOSからSephirOSに書き換えられたから、俺の着地点を崩してしまった乗用車は俺を守るような挙動を取ったし、さっき突っ込んできたドローンも俺の意志によって動かなくなってしまったってわけだ。
苗を植え付けたドローンめがけて跳んだ瞬間、俺の姿が消えた。次の瞬間、ドローンから蒼い幻想月影が軍勢となって一斉に飛び出した。まるでドローンが蒼い火花を散らしたかの如く散会した幻想月影の行く先は、未だ敵の手中にある別のドローン。
電光の爆ぜる音がした。とあるドローンから放たれたショックガンが幻想月影に命中したからだ。しかし、その幻想月影は幻影となって消えた。本物は一体だけ。その本物が突き出した棍により、また一機にメイナルドの苗が植え付けられる。
事の重大さに気付いてドローン部隊は散会しようとしたんだけど、時すでに遅し。既にSephirOSの影響下となったドローンの間を巧みに飛び交う霊月型により、一機また一機とSephirOSへと書き換えられていく。
ならばとSephirOS制御下にされたドローンを撃ち落とさんと他のドローンや地上のアンドロイドが攻撃してくる。実際に苗を植え付けられる本体は俺一人だけだけど、こちらで操れる無数のドローンに自在に憑依し、尚且つ縦横無尽かつ俊敏に動き回り、まして分身までして翻弄する霊月型の中から本体だけを狙うなんて至難の業だ。いくらドローンのカメラの向こうから俺を眺めてる奴とて、容易に出来まい。
「はぁっ!」
本体の俺が声を張り上げた。憑依した虚空のドローンから飛び出した俺は、急降下しながら六尺棍をビリヤードキューのように構え、真下のアンドロイド部隊に狙いを定める。対するアンドロイド部隊の狙いはてんでバラバラで集中していない。
本物の判別がつかぬアンドロイドめがけ、落下しながら突きを放つ。雨霰の如く。棒をしごく動作を無数に繰り返し、先端の軌道を何度も変えながら、棒突の驟雨を浴びせかける。
メイナルドの苗が植わったアンドロイドのバイザーが緑色に灯る。こうなってしまえば、もはや趨勢は決まったようなもんだ。味方の過半数がこちら側になってしまえば、アンドロイドとて俺ばかりを相手にする余裕なんてなくなる。
混乱。苗の植わった者とそうでない者、霊月型の幻想月影の入り混じるカオス。ちなみに本体の俺はどこにいるかというと――メイナルドの苗を植えられるのを警戒してこの場から離れていくドローンが数機あるんだけど、そのひとつの中にいる。方角から察するにLNMの本拠地に向かってるっぽいので、そのまま着いていく。
さて、この『メイナルドの苗』って兵器、実はレオーネが開発したものではないそうだ。
『ちがうの? 試作段階のものをくれるって言うから、てっきりレオーネが作ったもんだと思ってたんだけど』
『ちげーって。試作段階なのは、あくまで
『軍が? なんのためにそんなことを?』
『分かんねえのか? まあ、異世界人だからセフィアの事情は疎くて当然か。まあ、話せば長くなるけど、簡単に言やあ、このセフィアの暮らしを世界中に広めるためさ』
以上が、クリフ自治区へ行く前にレオーネとちょっと話した内容だ。なんか重要そうなのをレオーネは言ってたけど、生憎、今の俺には国境の外の事情なんて重要じゃなかった。だから、あの後も彼女はなんか言ってた気がするけど、記憶に残ってない。
レオーネとのやり取りを思い浮かべていると、ラナマの中でもひときわ目立つ建築物が目の前に迫ってきた。
その外見は、とにかく異形。ラナマ中に張り巡らされた太いパイプや電線が集合し、ひとつの城砦が築かれている。剥き出しとなった鉄骨や乱雑に積み上げられた鉄くずの隙間から悪趣味な電飾の光が覗き、正面には身の丈以上もある高さのディスプレイが傾いて備え付けられ、付近のネオンには棲み付く奴らの名前が憎らしいほど堂々と書かれている。
あれが、c『L』azy 『N』oizy 『M』ashineの根城。今のディスプレイはさざ波しか映っていないけど、代わりに『聞いてねえぞこの野郎』『まあでも、これで上手くいったと思うなよ』『幻想月影様よお、もっと俺を楽しませてくれよ』みたいなぼそぼそとした声が聞こえてる。
かなり目立ちそうな見た目だけど、ラナマ自体がごちゃごちゃしてるせいで外からは良く見えなかったんだよな。ドローンに憑依したおかげでやっと全貌が分かった。さて、侵入するならどこから忍び込めばいいんだ……?
なんて思っていた次の瞬間だった。強い衝撃が、俺の憑依していたドローンを襲った。
根城に備わっていたクレーンアームが襲い掛かって来たのか、隙間に仕込まれていた銛が飛んできたのか、隠れていた歩哨が撃ち落としたのか――施設の全貌に注意を奪われていた俺が認識できたのは、ドローンが破壊された事実だけだった。宿主を喪って強制的に外に出された俺が見たのは、こちらに向かって大口を空ける剥き出しの通風孔だった。
★★★
錆色の硬い管を何度も全身を打ち付け、換気扇のファンと思しき何かを突き破って、俺は何もない空間に落ちてきた。
いや、何もない空間というのは間違いだな。埃っぽい蛍光灯が照らす部屋は細かいタイルで覆われており、第一印象はバスルーム。だけど、バスタブや便器の類はまるでなく、壁にあるのは鏡と錆付いたシャワーと……監視カメラと車椅子くらい。
なんなんだろう、この部屋。排水溝こそあるんだけど、タイルの隙間に残った汚れが妙に赤黒い。そもそもあの排気口から落下した先がこんな場所って時点でおかしいし、嫌な予感しかしない。それと、もう一つ不自然なのを見つけてしまった。バスルームみたいな壁に『エレメンタルグループ』のロゴが入ったステッカーが貼られていたんだけど。
『ようこそ、俺様たちの城へ。我らが主の代わりに、この俺様が挨拶をしてやったぞ』
カメラのスピーカーから声。例のミキシングされた音声だけど、やたら鼻に付くイントネーションから察するに、喋ってる奴は一緒だ。
『最初の関門を見事に突破したことは素直に褒めてやるよ。喜べ。この俺様が褒めてやったんだ。ありがとうと言ってくれよ? さて、ゲームはまだ終わってない。ここから脱出したければ参加しろ。扉を開けるんだ。幻想月影様の化けの皮を更に剥いでやる』
頭を抱えそうになった。なんてこった。警察機関の支援のつもりで来たはずが、まさか敵のゲームに参加させられるとは。嫌な予感しかしないが、あいつの言う通り、この流れに乗る以外今は選択肢がない。アルミとガラスで作られた、いかにも施設のトイレにありがちな簡素な扉を開ける。
生首。
思わず声が出そうになってしまった。いや、扉開けた瞬間、目の前に生首が出たら誰だって驚くわ。
よく見たら、人間ではなくてアンドロイドだ。だけど、その根拠であるこめかみ辺りのセンサーが、鋭利なフックで貫通されている。クジラでも釣り上げるような巨大なフックで生首が吊り上げられている様は、見ていてなんとも気分が悪くなる。実に趣味が悪い。
『なんだあ? 天下の幻想月影様がビビってるのか? おいおい、子供達も見てるかもしれねーのに無様な姿見せてんじゃねえよ。幻滅した子供達が可哀想だろ?』
煽ってくる声はさておき、生首をどかして俺は足を踏み入れる。見た所、廊下というよりは、わりかし広めのフロアのようだけど……なんかいろんなもんが短冊みたいにぶら下がっている。
すぐに分かった。これ、全部アンドロイドだ。アンドロイドの腕や胴体といった様々な部位が、フロア中のありとあらゆる箇所に散らばり、組み合わさり、ぶら下がっている。まさに肉の壁。胴に脚、手の平の先から腕、鼻の下がない頭部の下に脚……人間の死体を集めて部屋の中に固めたような光景に、俺は気分が悪くなってきた。
フロアを出るため、肉の壁をかき分けながら進む。これらがアンドロイドなのは幻想月影のスキャン機能から判別出来たけど、分かってても正気を失いそう。
今、手足の山を押しのけた目の前に、逆さ吊りでぶら下がってるアンドロイドがいるんだよ。ここにある中では五体満足で行くぶんかマシなんだけど、露になった肌に鉄筋みたいなのが何本も刺さっている。なんと痛々しい。その近くにぶら下がっているのもそうだ。もしこれが生身の人間だったらって思うと
「うがああああああ!」
次の瞬間、目の前のアンドロイドが俺の喉元を掴んできた。幻想月影の膂力を以てすれば引き離すのは造作もなかったけど、まだ稼働する個体もあったとは。驚きすぎて、口から心臓が出そうになった。驚きすぎたのか、胸に手を当てて肩で息をしている俺がいる。
『おいおいビビってんじゃねえよ。情けねえ。天下のヒーロー様も、所詮は心臓の小せえ小心者ってわけか?』
スピーカーの向こうから笑い声がする。笑い声の数から察するに、向こうはわりと大人数のようだ。離れた場所から俺を笑い者にして楽しんでいるようだが、今はそれどころじゃない。
アンドロイドの肉壁をかき分けていくと、目の前に扉。このフロアに入った時と同じ簡素な作りの扉だけど、皮下循環剤すら付着していない綺麗な外見が、なんかかえって不気味だ。
これまた広い部屋だ。ごちゃごちゃしたアンドロイドの肉壁とか全然ない。錆色の中二階まである。天井を見れば、回る換気扇の隙間から陽光が零れ、太いパイプが縦横無尽に走っている。
さて、どんな仕掛けが隠されてるんだ? と、部屋の中央辺りに差し掛かった辺りで、周辺から殺気。周囲の壁付近の床から竹林のように伸びたパイプ群の隙間から、小銃を構えた集団がぬぅっと姿を現し、扇状に俺を囲んだ。
「……え?」
LNMの暴徒が出やがったか。と、構えた俺は現れた人物を見て驚いた。同じような姿を、俺はLNMの襲撃事件の際に何度も見た。警察機関が身に着けている防弾着。その上に、例のLNMのペイントが悪趣味げに塗られている。
「部下に警察の恰好をさせて俺にけしかけるなんて、これまたいい趣味してるね!」
あまりの趣味の悪さに吐き捨てた俺だけど、返ってきた反応は違った。
『はあ? 部下とかじゃねーし。よく見ろよ。てか、思い出せよ。記憶力もねえのか幻想月影様は。ラナマに来てからここに来るまで、なんで幻想月影様は生身の警察には遭わずに済んだか分かってるのか?』
喋り方に苛立つ前に、敵の発砲。それよりも早く、俺は一番隅の隊員に接近。お得意の武装解除で小銃を取り上げ、同時に重心移動で体当たり。バランスを崩した隊員は隣の仲間にぶつかって玉突き事故を起こす。
と、倒れる隊員達を見て気が付いた。みんな、防弾着の下に何か着てる。電動アシストで筋力とか強化させるのに使う強化外骨格だ。けど、真に俺が愕然としたのは、防弾着越しに背中の方から赤い光が漏れている点。不正な干渉があるとあそこが光るとテンプル美術館で学んだんだが、それって要するに……。
「こいつら、先に潜入してた警察の人達?」
『ご名答! 気付くの遅すぎだぞ。幻想月影様は腕っぷしはいいみたいだが、やはりオツムはよろしくないみたいだな。その通り、幻想月影様のおっしゃる通り、こいつらは俺様達の根城に勝手に忍び込んできたネズミ共だ。もっとも、今は
反対側の端っこの集団がこちらへ発砲。一方の俺は、取り上げた武器を破壊し、倒れて塊となった敵集団の方へ逃げる。こうすれば、味方への被弾を懸念して他の敵はこちらへ撃ってこなくなるし、万が一の時は壁になる。倒れた敵から小銃を引き抜いて明後日の方角へ投げ、敵の半数から銃を取り除いてやった。
『セフィアの治安を守る警察共対セフィアの正義のヒーロー様……こいつは見ものだねえ。……おっと、
発砲してくる隊員から銃を奪って無力化してると、スピーカーからそんな苦情が。
と、死角からの攻撃。のけぞって後退した俺の手前を、電光を纏った警棒が通り過ぎる。下がって全体を見ると、銃を失った隊員達の武器が、警棒やらスラッパーやら白兵戦用の武器に変わっていた。
前方から二人が襲い掛かる。それに気を取られていると、反対側から誰かが回り込んでいて俺を抑え込もうとしてくる。少し反応が遅れれば、あいつらの持っている手錠のような拘束具で動きを封じられ、集団でタコ殴りにされる未来が見える。
お得意のカリスティックを手首から射出し、構えて対処する。スーツに予め導入されている戦闘プログラムに従い、得意の棒術で隊員たちの猛攻をいなしつつ――反撃を叩き込む。背後を取られないように、防御と攻撃を交えつつ、有効打を与えて……。
正直、いう。LNMの暴徒なんかとは強さが違う。相手は、悪を懲らしめるために徹底的に訓練された兵だ。『傷付けたくない』みたいな半端な心構えでは、有効打を与えることすら敵わない。
前方から敵二名。左右の腕を鞭のように素早くくねらせ、連打。膝やわき腹に乱打を浴びせ掛けてダウンさせる。
後方から気配。振り下ろされる一撃に対し、片方の棒の先端を相手の脇の下に差し込み、腕を絡ませて拘束。そのまま俺が身を転換させると、敵の体が宙に舞った。放り投げられた敵は先程ダウンさせられた集団に衝突し、まとめて戦闘不能に。
さて、次はこの無力化された三人の強化外骨格にメイナルドの苗を植え付けて自由にしてやりたいんだが、他の奴らが道を阻む。しかも、彼らを相手する間に倒された隊員たちが起き上がる。なんで何事もなく置きがれるかというと、多分、あいつらが単にタフだからじゃない。
『これだよこれ! 幻想月影様を追い詰める不死身の兵士! どれだけ幻想月影様がダウンさせようとした所で、強化外骨格さえ動かせれば中身がどうなろうがお構いなしなんだよなあ! さあ、どうするよヒーロー様よお。このまま市民の大切な警察官を死ぬまで痛めつけるか? それとも、自分が痛めつけられて終わるか!?』
やっぱりか。思考を操られている類ではなく、強化外骨格によって意識とは別に無理やり動かされているって寸法か。全く、悪趣味だ。
最もガタイの良い隊員が、こちらへ大得物を振り下ろす。スレッジハンマー。壁やドアを強引に打ち破って突入するのに使われる代物だ。そんなもん受け止められるわけがない。横っ飛びで回避した俺の残像をハンマーが薙ぎ払い、背景にあったパイプを直撃した。その衝撃たるや、錆びた部分からパイプが折れ、からんからんと床に散乱する。
間髪容れず、隊員はハンマーを振るってくる。右から、左から、遠心力を殺さず一回転しながら――。鍛造された金属の塊が、回避する俺の付近を何度も掠める。その度に、直撃した哀れなパイプが床に散乱する。
「……そっか、その手があったか」
パイプを見て閃いた俺は、まず中二階を目指す。目の前に邪魔な敵がいたけど、相手の腕を絡めて自身を一回転、パイプの林立する壁際へと放り投げる。ボウリングのピンよろしく折れたパイプが再び床に散乱するのを見た俺は、中二階へと駆け上がった。
相手は銃器を取り上げられているわけだから、当然追いかけるべく駆け上がってくる。だから、こうする。
突然、俺を追い掛けてきた隊員の先鋒が大きくバランスを崩した。なぜかというと、いつの間にか階段がヌルヌルの油まみれになっていたから。
瞬達。連結させて六尺棍にした棒の先端を床に当て、そこから油を流し込んでやった。後は、バランスを崩して大きく空いてしまった胴体へ棒を突いてしまえば……後はコントよろしくみんな床へ滑り落ちるのみだ。
案の定、俺を挟み撃ちにすべく別の階段から上がってきた隊員もいた。けど、一足遅かった。相手からの攻撃を防ぎつつ六尺棍を当てて動きを封じ、仲間が転落した階段の所まで押し込む。そのまま突き落とす――だけじゃない。仰向けに倒れるそいつの上に俺はボードよろしく乗っかり、共に下階へと滑り落ちた。
さて、これで全員転ばしてしまえばこっちのもんだ。隊員の上に乗っかったまま、俺は床に落ちたパイプを一本拾う。これを抵抗する隊員の二の腕の装甲と防弾着と反対側の二の腕に通せば――案山子みたいに両腕を広げたまま拘束された形になり、動けなくなる。後は、再び一対のカリスティックに分けた棒の片方の先端を防弾着の背中側に突っ込み、強化外骨格の中枢にメイナルドの苗を植え付ければ――隊員の救済完了だ。QliphOSの操り糸から解放された彼は、ぐったりと仰向けに倒れたまま動かなくなった。
他の隊員? 確かに俺を妨害しようとはしてたけど、どんなに屈強な隊員とてオイルでヌルヌルの足場というのは中々対応しかねるようで、滑稽なくらいその場で何度もこけている。
「QliphOSから解放されたのに、まだ乗っかっててごめんね。君の仲間を救うため、もうちょっと協力してもらうよ」
足元に一言フォローを残し、大の字になっている隊員の踏み場に注意しつつ、うつぶせに転んだ直近の隊員の背中に六尺棍の先端を差し込む。メイナルドの苗が植わったのを確認——その隊員も動かなくなる。瞬達で棒の先端から水を飛ばし、その隊員も足場に出来るようオイルを飛ばす。安全な足場を二つ得た俺は、他の隊員も続けざまにQliphOSから解放する。
四人目を解放したところで、未だQliphOS支配下の隊員がぬめぬめした床を這いながら俺に掴みかかってきた。とっさに足元のパイプを拾い上げてその手を払い、次に伸びてくる手の動きに合わせて、そいつの袖にパイプを通す。
よし、これで片腕は拘束した。と思った刹那、あの大柄な隊員がこちらへスレッジハンマーを構えて迫っていた。おいおい、万が一あれが味方にぶつかったらひとたまりもないぞ。
上段に振り上げたのを見た俺は、さっきパイプを通した隊員をそちらへ向かって蹴飛ばした。カーリングのストーンよろしく床を滑った彼は、ハンマーを振り上げる隊員の脚に激突。大柄な隊員は彼に折り重なるように転倒した。
接近。案の定、俺も転んだ。スケルトンの選手よろしく頭から彼らへ突っ込んだ俺は、再びカリスティックに分けた棒の先端を、折り重なるように倒れた二人の背中へと差し込む。強化外骨格の赤い光が再び正常な光になった時、最後の隊員がQliphOSの呪縛から解放された。
『あーあ、こうなっちまったらもう続けようがねえなあ。もう終わりか。ま、充分楽しませてくれたぜ。次、行けば』
……どこかで隠し扉の開く音がした。瞬達を使ってオイルを全て流し、俺は見つけた扉から部屋を出る。隊員たちは満身創痍だったけど、俺よりもずっと色々積み重ねてきた手練れだ。放っといても、多分大丈夫だろう。
扉の先は長い廊下になっていた。で、その向こうにさらに扉がある。
参ったなあ。このゲームは、まだ付き合わないといけないようだ。
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