俺の蒼さに――

 路地の壁に寄り掛かる者、空調に座る者、建築途中の足場に立つ者、屋根の上から覗き込む者……みんながみんな、同じ姿をしている。一文字のバイザーを閃かせ、左胸に三日月の紋様を煌めかせた装甲を纏っている。


 しかし、そいつはカマビスが先刻まで知る漆黒ではなかった。彼を眺めるバイザーは青白く、纏う装甲の色もまた――蒼。ソーダライトの鉱石を彷彿とさせる蒼一色で塗り潰されていた。


 敵が増えている。流石の荒くれの巨漢も、眼前の光景が信じられないようだ。


 無数にいる俺のうちの一人が、カマビスの前に立つ。


「驚いたかい? だけど、こいつはまだまだ序の口さ」


 別の俺が口を開く。


「これ以上好きにはさせない」


「俺達が、ここでお前達を止めてやる」


 カマビスが、目の前に立つ幻想月影を腕で薙ぎ払った。巨体に似合わぬ素早い振りで通りの壁が破壊され、余波だけで壁に貼られた宣伝ホログラムがチラつく。


 しかし、そいつには手応えは無かっただろう。なぜなら、今カマビスがぶん殴ったのは、幻想月影によって生成された立体映像――幻影だったのだから。


 偽物をスカしたのが気に入らなかったのか、カマビスは隣接する別の俺をぶん殴る。が、それも偽物。次のを殴っても偽物。偽物。どれも偽物。代わりに空調や足場などのオブジェクトが盛大に壊れるが、いずれも本物には至らない。


 狭い通り一面にいる幻想月影の数は一向に減ることない。むしろ逆に増えていた。


「ぐおぁっ!」


 唸るような悲鳴。カマビスが手を止めた隙に、俺が奴の懐めがけて飛び蹴りしたからだ。電脳の力――電磁干渉リーガルハックによって強化された一撃は、俺の倍ほどもある巨体すら退かせる。


 吠えたカマビスが応戦するも、カマビスを蹴った幻想月影もまた、虚無を掴むように奴の凶悪な腕をすり抜けてしまった。蹴ったのだから本物なのかと思いきや、いつのまにかホログラムの偽物とすり替わっていたのだ。


 ここでやっと、カマビスは自身が相当厄介な相手と対峙していると理解したようだ。包囲する幻想月影の一人が言い放つ。


「覚悟しな。俺の蒼さに、お前はもっと青くなるのさ」


 ★★★


「なんだそのセリフ~!? もしかして、それもまた異世界人センスか?」


 蒼い幻想月影については、レオーネからあらかじめレクチャーを受けていた。いくら使い方を頭で分かっていても、実際にやるのとは全然違うからね。というわけで、俺は出発の前、またガボン相手に戦闘訓練を受けていた。


 で、一通り実技をこなして、さあ決め台詞とかどうしようかってなって、俺が案を出したらレオーネからそんな反応をされた。


「ダメかな? てか、なんだよその評価。ポジティブだかネガティブだか分かんないよ」


「少なくとも、あたしは大好きだね。一般受けするかどうかは分かんねえがな」


 評価に不安がる俺に、レオーネはケタケタ笑った。


 ちなみに、俺はまだ蒼い幻想月影のスーツ姿だ。このスーツ、装甲の質感も通常のと違っていて、腕を表と裏に交互に返すだけで、表面に荒い画像のようなザラツキが生じる。当然ながら、俺がホログラムに移された映像だからではなく、このスーツの仕様に過ぎないのだが、なんか見ているだけでも飽きないなこれ。


「面白いだろ、能男。で、どうする? 名前はどうする? あんたの異世界人センスは、どんな名前を望むんだ?」


 おいおい、何を期待してるんだ、レオーネは。


 まあでも、そうだな。ここは直感で行こう。せっかくだから、幻想月影にちなんだ名前が良いよな。


「今までのは、幻想月影から取って『幻月げんげつ型』にしよう。で、この蒼いのは、この装甲の雰囲気とか能力とかの雰囲気から……『霊月れいげつ型』にするのはどうかな?」


 ★★★


「わけわかんねえこといってんじゃねええええ!」


 雄たけびを上げながら、カマビスが腕を振り上げる。雑居ビル脇に備え付けられた非常階段の一階部分が跡形もなく破壊され、曲がった鉄骨に引っ張られるようにして上階がビルから引っぺがされる。


 もはや非常階段だったものは倒れ、向かいに立つビルを上方から半ば抉るようにして止まった。おかげで、狭い通りの反対側は通行止めになってしまった。


 てか、そんなことよりも……。


「ごめん、勝手に思い込んでたよ。カマビスって喋れたんだね」


 どれかの幻想月影が皮肉を言った。非常階段の踊り場にも確かに俺はいたが、あれもまた偽物。俺はあそこ以外にもいろんなところに立っている。


「くそがああああああ! なめてんじゃねええええええええ!」


 激昂したカマビスが再び近くの俺を殴り飛ばす。手ごたえあり。俺の体が吹っ飛んだ。仮面の下部でカマビスの口元が笑んだのが見えた。


 が、その笑みはすぐに消えた。理由は明白。俺達はまだ消えていなかったから。カマビスが殴ったはずの俺は、吹っ飛んだ先で全身から電流を吹き出しながら仰向けに倒れていた。


 あれは俺だけど俺じゃない。瞬達システムを応用して資源をワープ運送しながら生成した、俺の姿をしたアンドロイドだ。カマビスを囲う俺達の中には、本物と偽物のホログラムのほかに、ああいう実体も混じっている。


 苛立つカマビスが脚を振り上げた。前蹴りの狙いを定めた先は誰もいない壁。


 次の瞬間、カマビスの目の前——コンクリートの無機質な壁面に液晶画面のような光沢が煌めいたかと思いきや、そこから無数の幻想月影が飛び出してきたのだ。飛び出す勢いを乗せて放たれた飛び蹴りを胴体にまともに浴び、カマビスの巨大な背中が反対側の壁にぶつかる。


 カマビスが気付いた時には、自分を蹴った幻想月影は姿を消していた。代わりに、幻想月影が湧いた方の壁に棒を当てている俺が立っているだけだった。


「ダメだよ、いくら腹が立っても街を壊すのだけはね」


 俺が挑発すると、カマビスは飛び起きるように立ち上がり、瞬時に俺へ肉薄してきた。


 そして、おそらく次に起きた出来事に驚いただろう。なぜなら、俺が壁に近づいたかと思いきや擦り抜けるように消えてしまったからだ。あっちの世界に伝わるネタで例えるなら、9と3/4番線の入り口のように。


 突然消えた敵に呆気に取られる暇などカマビスにはない。次の瞬間には、壁から飛び出した俺が、カマビスの側頭部に飛び蹴りを食らわせたからだ。頭部を攻撃され、カマビスの巨体がまたよろける。


 霊月型は、幻月型のように合法的干渉リーガルハックが出来ない。その代わり、SephirOSの根が絡むあらゆるインフラの中に、自身そのものをデータ化させて侵入することができる。


 ミルトンステップにあるほとんどの建物の壁には、ホログラムの広告情報を投影するため、ガスのように薄ーいディスプレイが仕込まれている。ガスのようにって言ったけど、実際ディスプレイがあるところを触ってもガラスみたいな何かを触っているわけじゃなく、ただ壁を触っているだけみたいな感覚になるんだよね。この薄いディスプレイを通って、俺は自在に移動していたわけだ。


 で、その能力とは別で、俺はホログラムから非実体の分身を、または速達のドローンから実体の分身を、それぞれ生成しながら戦うこともできる。


 虚実交えた分身で翻弄しつつ、自身もまたSephirOSの根が絡む装置に隠れて移動しながら戦うスタイル――まさにお化けみたいだろう? だから、霊月型って命名したんだ。


「さて、こっちの手は全部明かしたし、いい加減、お前には大人しくしてもらわないとね」


「なんだとおおおお!?」


 俺が宣言するや否や、吠えるカマビスが襲い掛かる。けど、もちろん偽物。しかも次の瞬間、そいつがいた個所から無数の分身が発生。しかも、カマビスの目の前でシャッフルのように高速移動。これにより、本物どころかどれが実体なのかすらわからなくなってしまった。


「さあ、どれが本物かな?」


「なめやがって! ぜんぶ、ぶっこわしてやる!」


 霊月型の幻想月影が跳躍する。ある者は生体干渉リーガルハックで跳躍力を強化し、またある者は近くのオブジェクトを踏み台にし、またある者は壁を蹴り、またある者は壁のディスプレイから飛び出し、一斉にカマビスの巨体めがけて真正面から飛び蹴りをかます。相対するカマビスは、威嚇する獣のごとく両腕を振り上げる。


 この時、後方に回り込んだ幻想月影がいた。そいつは背後から、身を捻りながら上段へ後ろ蹴りを叩き込む。天を踏みつけるように放たれた足の行く先は――カマビスの股間。


「!!?」


 まさかの金的に、カマビスの巨体が股間を抑えて跪く。ちなみに、正面から向かっていたのは全て非実体の偽物。両手で股間を抑えたまま天を仰ぐカマビスの頭部はがら空きで、そんな彼の目の前で、壁から飛び出した幻想月影が踵を振り上げる。


 三体の幻想月影による踵落としが、カマビスの顔面にクリーンヒットした。そのまま後頭部を地面に強打し、ドラゴンを模したヘルメットにヒビが入る。この三体は実体による攻撃だったわけだ。


「くそが! ほんものはどれだ! ぶっころしてやる!」


 金的、顔面、後頭部の強打を食らってもなお、カマビスの闘志は収まらぬ。倒れたまま、腕を振り回す。手ごたえはあったようだが、実体の偽物だった。


 やがて起き上がったカマビスは、通りに誰もいなくなっていることに気が付く。


 つまりは、そういうことだ。


 


 分身たちにカマビスの相手を任せて、俺は全く別の場所へ向かっていた。当たり前だ。いつまでもあんな化け物の相手ばかりできるか! そんなことよりも、今の俺には別ですべきことがあるんだ!


 霊月型の力を使い、配電盤から地下の電線を通って移動する俺。いやーこの力は便利だね。SephirOSの根が絡んでいれば、まるでプールの水に飛び込むようにどこにだって入り込むことができる。しかも、瞬間移動のようにめちゃくちゃ速く。


 だから、俺はすぐに追いつくことができた。ちなみに、今の俺は幻月型に戻っている。


「ねえ君、それをどこへ持っていくつもりかな?」


 俺が声を掛けると、彼は足を止めてこっちを振り向いた。低い背丈に、口元を覆うだけのガスマスク。幼いながら端正な顔つき。嗚呼、やっぱり達也だ。けど、今それよりも一番重要なのは、抱えるように手にしているそれだ。


 赤い刺繍のラインが入った真っ黒なバスケットボール大の球体に、変な電子機器みたいなのがぐるぐるに括り付けられたいかにも物騒な何か。幻想月影で判別こそしたけど、ぶっちゃけそんなんしなくたって素人目で分かる。どう見ても爆弾だ。


「幻想月影……やっぱり来たんだ」


 少年は俺をちらっと一瞥するとそのまま走り去ってしまった。


「いや、無視するなよ!」


 突っ込む俺だが、そんな俺の前に立ちふさがる集団が。


「いや、無視してんのはそっちだろうよ」


「なめてんのか、てめえ」


「近づいたことを後悔させてやる!」


 顔を奇怪な仮面やガスマスクとフードで隠した男女の集団が、達也を守るように現れた。黒地にマゼンタの文字という色彩からしてLNMの暴徒達だ。てか、火花を散らす鉄パイプといい、丸鋸がくくりついたハンマーといい、刃が高周波振動するナイフやマチェットといい、おっかない装備持ってんな。


「君達、まさかサワガが万が一のためによこした護衛の人? 悪いね。全然気づかなかったよ」


「気付かなかった? ふざけてんじゃねえぞ、くそが!」


「幻想月影、てめえを殺して、ジェット級に昇格してやる」


「楽に死ねると思うなよ?」


 物騒なこと言いだすなあ、こいつら。


 でも、そんなことよりも問題なのは、達也が手にしている爆弾だ。あれ、合法的干渉リーガルハックが効かない。LNMの幹部連中の持つ変な装備と同じ特性だ。どうなってんだありゃあ。


 こっそり停止させる手段が使えないのなら、堂々と止めるしかない。そのためには、まずは目の前のうるさい奴らをどかさなければ。


 腕に仕込んだ一対の棒を取り出し、エスクリマの棒術の構え。


 先鋒が振り回す鉄パイプの横薙ぎをのけぞって回避し、続いて次鋒が突き出すナイフを持つ方の手首を叩いて刺突の軌道を反らす。三人目が丸鋸付きハンマーを振り下ろしてきた瞬間、脇をすり抜けるように回避しつつすれ違い様に腹部へ棒打。体を『く』の字に折らしめる。


 最後尾に立つ高周波振動マチェット持ちへ肉薄。素人でもチタン合金すら切断せしめる斬撃が俺を迎え撃つ。が、一太刀は身を反らした俺の傍を通り抜け、その持ち主は代わりに俺の乱打をもろに浴びた。腕と脚への打撃を両方に食らい、跪いたそいつの無防備な頭部に双方から挟むように打撃を与えると、そいつはその場に倒れた。


 振り返ると、腹部を叩かれていたハンマー持ちが今まさに振りかぶる真っ最中だった。凶悪な刃を宿した重量級の横薙ぎは、俺――のを通り過ぎた。命中寸前、半ば寝転がるように身をかがめた俺は、回避しながら一対の棒で相手の脚部を殴る。


 攻撃しようとして倒れてしまった自身に困惑する暇は与えない。俺は両方の棒を逆手に持ち替えつつ跳躍。落下と同時に、地面に倒れるそいつに棒を突き立てた。


 帯電鉄パイプ持ちとナイフ持ちが両脇から襲い掛かる。身を回転しながら、鉄パイプの振り抜きもナイフの刺突も、二本の棒を当てて明後日の方向へ受け流す。たたらを踏んでバランスを失った両者に、俺はまとめて棒術の乱打を浴びせかける。


 腕の交差や身の回転を交えた流れるような打撃を全身に食らった二人は、最後に仲良く顔面に棒打を食らって仰向けに地面に倒れた。


 さて、邪魔者はいなくなった。幸いなことに、一番重要な人物は、俺の乱舞に囚われてしまったのか、あまりその場を離れてはいなかった。


「それ、危ないやつだよね。君が持ってるべきもんじゃない。大人しく渡すんだ」


 棒をひっこめた俺は、爆弾を返してもらうよう達也に手を差し伸べる。が、彼は爆弾をぎゅっと抱きしめこちらを睨みつけた。


「いやだ。これを持って行かなきゃ、みんなを助けるなんて出来ない」


 みんなを助ける? ……そうきたか。


「助ける? 聞いてくれ。君がやろうとしていることは、誰も得しない。C2Sが無くなったら、最悪、資源が無くなって今まで同じような良い暮らしが出来なくなる。そうなったら、みんな悲しむし、苦しむ。君も、君の両親も、兄弟も、友達もだ」


「幻想月影も、そう言うんだね」


 達也は一歩も動かなかった。彼の眼を見て、俺は少しゾッとした。俺を険しく睨む彼の眼は、少なくとも俺の知る無邪気な少年のそれじゃなかった。


「サワガさんの言った通りだ。みんな、騙されてる。ホワイトテンプルが都合の良いようにばらまいた情報に踊らされてるだけだったんだ。幻想月影だって、ホワイトテンプルが自分たちが正しいんだってことを示すために作られた『看板』みたいなものなんでしょ? 僕は知ってるんだぞ」


 おいおいマジか。そんな恰好からして生でサワガに接触したんだろうなってのは容易に想像ついたけど、そんな考え方まで吹き込まれてたのか!? ……いや、動画を観てた段階で、すでに染まりきってたのかも。


 こうなったら、俺には説得なんて無理だ。俺に出来ることは――


「何するんだ! 離せ!」


 俺は強引に達也の持つ爆弾を掴んだ。今の俺には、手荒なやり方しか出来ない。達也の考えを改めさせるのは、後で専門家に任せよう。


「俺を守ってくれた人たちにあんなことするお前なんか信じられるか! 幻想月影なんかには絶対に渡さない!」


 って、なんだ達也の腕力!? 爆弾だけ取り上げりゃ済むだろうと思いきや、爆弾にしがみついた達也まで一緒にくっついてきて、達也から爆弾が全然離せない。脚をばたつかせながら抵抗する達也のどこにそんな力があるんだ!? 俺が子供相手に遠慮してるからか? いや、いくら何でも子供相手は……。


「離すべきは君だ! もしこれが爆発したらどうなる? 最悪、君も無事じゃ済まないんだぞ!」


「かまわないよ! 僕の兄弟やパパやママが救われるなら、今ここで幻想月影もろとも爆発して死んだってね!」


 次の瞬間、俺の脳裏を過ったのは、我が子がいないことを電話越しに悲痛に訴えるアドの声だった。今、達也が吐き出しやがったセリフは、アドの想いを盛大に踏み躙るには十分すぎた。俺は、爆弾ごと達也を歩道に投げ飛ばした。


「お前、今なんつったんだ達也ぁ――!」


「え?」


 まさにその時だった。なんかでかいのがこっちに向かってるなって感覚が仄かにしていて、その方向を俺が見た時には、大腕を振り上げるカマビスの巨体が視界いっぱいに広がっていた。


 なんでもう追い付いた!? てか、あの巨体のどこにそんなスピードがあるのか――ダッシュと共にに繰り出された打突を、俺はもろに食らった。


 どかーんと派手な音が響く。カマビスの一撃は俺どころか、俺達に隣接していた施設の塀すら破壊した。さらに、吹っ飛ばされた俺はそのまま塀の向こうにある施設の壁に衝突する。その衝撃のすさまじさたるや、壁にすり鉢状の凹みが穿たれた。


 普通の人間なら即死級の一撃。しかし、邪魔者に不意打ちを食らわせてやったカマビスは唸るのみだった。


「……危なかった。こうしなきゃ死んでたよ」


 そりゃそうだ。間一髪のところで、俺は棒で防御していたからだ。しかも、一対の棒ではない。連結させて一本の長い棒——六尺棍にした上に、瞬達システムの応用で棒の手前に分厚い盾を生成していたのだ。……今、床に落ちた身の丈ほどもある縦幅の緩衝材のことなんだけどね。おかげさまで、致命傷どころか動きに支障が出るほどのダメージなんて実は負っていないわけよ。背中とか痛いけどね。


 カマビスは舌打ちをし、眼下にいる達也へ吐き捨てる。


「おまえはいけ! そしきのしめいをはたすのだ!」


 達也は首肯して走り出す。C2Sの方角へと。


 生かせるもんかとすぐさま身を奮い立たせて走ろうとする俺の前に、カマビスが立ち塞がった。


「やっぱり、そう易々と追わせてはくれないか」


「このしにぞこないが! こざかしいまねをしやがって!」


「そっちこそ、俺が爆弾を止めに行こうとしてるのにすぐ気付くだなんて、単なる脳筋のデカブツじゃないってわけか。分かった。今すぐあんたを止めて、彼も止めに行く」


「なめたこといってんじゃねええええ! こんどこそ、てめえをぶっころしてやるぜ!」


 カマビスが吠える。仮面の後ろから伸びたドレッドヘアが、まるで意思を持つ無数の蛇のごとくうねり始めた。もしかして、あれもあいつの武器のひとつ!?


 まあいいさ、なら俺だって俺の出来る全力で答えてやる。レオーネからもらった力でどれだけやれるか分らんけど、ジェット級という未知数の強敵に全力で挑ませてもらうよ!

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