『L』『N』『M』
瓦礫を受け止めた俺の眼下には、ゲンロクと他の一般参拝者が何名かと警備ロボットが数機。
「みんな、早く逃げるんだ!」
我に返った彼等は、俺の叫び声に鞭を打たれたかのように一斉に走り去っていく。誰もいなくなったことを確認してから、瓦礫を地面に落とす。良かった。走れないほど怪我してたら俺では対処できなかった。
――なんて安堵していたら、俺に向かって喚き散らす者が一人。いや、一機いた。
「この神聖なマッディラ神殿の敷地内で、なんて格好してるんですか! クリアストリームの規則を大幅に違反した服装をしていますよ! その服装を私の前でするとは許せません! 今すぐあなたを追放し、
なんかとんでもないことを言い出した警備ロボットだけど、この時俺が感じたのは、怒りでも戸惑いでもなく、もっと別の感情だった。
「こんな状況でも、仕事熱心だなんて関心するよ。俺には君ほどの情熱も使命感も無かった。その気持ちは大切にすることだね」
「何を言ってるんですかあなたは!」
ああそうだ。君の言う通りだ。何を言ってんだ、俺は。
「私語も口答えも厳禁です! 罰則として、
警備ロボットは沈黙した。いや、沈黙させられた。何者かによる一発の銃撃で、爆散したのだ。
やった奴はすぐに分かった。
神殿に突っ込んだ悪趣味な色彩のオフロードダンプトラック――そいつの荷台がまるでアヒルの尻にみたいに憎たらしく晒されているんだけど、その上に乗っかってる誰かが、こっちに銃口みたいなのを向けていたんだ。
性別は、見た目からして多分、男。ガスマスクにもフルフェイスにも見えるヘルメットで頭部を完全に覆い、悪趣味な角まで生えている。
そいつは俺を見下ろしながら、嘲るような口調で言い放った。
「なんだお前? なんで何も言わねえでこっち見てんだ? うざってえポンコツを一生黙らせてやったんだ。感謝してくれてもいいんじゃねえの? ほら、ありがとうございますってよお!?」
「なんだって?」
警備ロボットを壊して早々、そいつが言ったセリフに俺は耳を疑った。トラックで突っ込んできた時点で既にヤバいけど、なんだこいつ。倫理観まで全て狂ってる。ドリスコル大教会を襲った連中とまんま同じだ!
てか、ここに来た車両はオフロードダンプトラックだけじゃない。ボンネットトレーラー、ピックアップトラック、大型バン、バギー、大小様々な車両が、いつの間にか神殿に集結している。
ここで俺は気付いた。どの車両もクリアストリームの気品溢れる雰囲気とは対極の色彩に塗れているんだが、共通した文章がスプレーで書かれている。
c『L』azy 『N』oizy 『M』achine……?
で、そっから上品な空間に汚いペンキをぶちまけるように湧いてきた奴等の格好も、ドリスコル大教会で見たのと一緒だった。見た目に差異こそあれ、誰もがフルフェイスのマスクで顔を隠し、黒とマゼンタという派手な色彩の衣装を身に纏っている。
「はあ、なんだこいつ? 黙ってるとか、この俺様に対する礼儀がなっちゃいねえな! まあいい。お前みたいなのは放っといて……お前ら聞け!」
角の生えたガスマスク男は、すぐさま俺を無視して、神殿に集結した不届き者達に向かって声を張り上げた。
「このウルサの名の下に、今日のゲームを説明だ! この町の全てをぶっ壊せ! クリアストリームの全域が舞台だ! なんでも壊せ! ただし、人間は可能な限りナシだ。後々面倒だからな。じゃあ、始めろぉ!」
次の瞬間、頭骨をハンマーでぶっ叩かれたような衝撃が俺を襲った。
正体は、エレキギターを鳴らした轟音。どうやらオフロードダンプトラックの荷台に巨大なアンプが積まれていたようで、その音量たるやもはや暴力だった。幻想月影の安全装置が俺の耳を塞いでくれたから何とかなったが、もしあれを一般の人がこの場で聞いてしまったら間違いなく耳が死ぬ。
エレキギターを鳴らしていたのは、ウルサと名乗ったあの角ガスマスクの男だった。どうやら、奴が持っていた銃は、エレキギターと一体化していた武器らしい。
爆音が轟くや否や、車両から湧いた暴徒達が神殿中に一斉に散った。で、クリアストリームの静謐で上品な雰囲気を汚すには十分すぎる爆音が轟いたもんだから、音を聞きつけた警備隊のアンドロイドやら応援の警備ロボットも神殿に集結していた。暴徒と警備隊がぶつかり合い、神殿は瞬く間に阿鼻叫喚の巷と化した。
てことは、ゲンロクも危ないじゃないか!
「ゲンロク、逃げるんだ! クリアストリームから先に脱出していてくれ!」
「……? はい、マスター!」
さっきの爆音のせいで聴音モジュールに異常があったようで、ゲンロクの反応が遅れた。けど、自己修復機能によって回復したようだ。
俺は、警察官の身なりをしたアンドロイドが、他の参拝客と同様にゲンロクを神殿の外へと連れ出そうとしているのを見た。でも、それ以上は確認できなかった。
なぜなら、ウルサが俺に向かって落下してきたからだ。
落下と同時に、ウルサはエレキギターを振り下ろす。気付いた俺は間一髪で回避した。俺がいただろう地面に獲物が直撃し、放射状に亀裂が広がっている。てか、そのエレキギター、地面に接触している部分が尖ってないか? 斧にもなるのかよ。
「俺を無視すんじゃねえよ、ヒーロー気取りの真っ黒野郎。俺、お前のこと知ってるんだぜ? 確か、幻想月影ってんだろ? ドリスコル大教会では、俺達の仲間が世話になったみてえじゃねえか」
「それは嬉しいね。どうやら俺も人気者になれたみたいで。そんな俺がここに来たってことは、分かるよね? お前たちは許されないことをした。この綺麗な町を滅茶苦茶にしたんだ」
俺が答えると、ウルサは「はん!」と吐き捨てながら、斧兼ギター兼銃の大得物を豪快に肩に担ぎ上げる。
そんないかにもな大得物を担ぎ上げられるだけあって、近くで見るウルサはかなりの巨漢だ。重厚な甲冑を身に纏い、露出した腕は隆々たる筋肉に覆われ、俺の胴回りに匹敵するほど太い。あと、わりと恰幅の良い体系をしているようで、防弾着のような装甲は饅頭のような丸みを帯びている。
「綺麗な町? 目障りな町の間違いだろ!? 規則規則の雁字搦めでろくなもんじゃねえ。警備の連中は『俺が正義だ』と言わんばかりに上から目線のクズばかりだ。そんな息苦しい町なんて存在自体が目障りだ。だから、ぶっ壊すのさぁ!」
叫ぶと同時にウルサが砲弾をぶっ放す。スライドして避けた俺の真横を砲弾が掠める。ギターのヘッドに仕込まれた砲口がこっちを見ていたのには気付いていた。あと一歩遅かったら、射線上に停まっていた連中の車両みたいに大破する所だった。
回避と同時に脚部に電脳の力を集約して足の裏へ放出――推力に替えて加速、ウルサとの距離を瞬時に詰め、懐に正拳突きを叩き込む。
くぐもった声が上からした。ウルサの巨躯が退く。
「それが理由? 話にならないね。クリアストリームは規則が厳しい分、行けば
殴ると同時に言い返してやった俺だけど、正直ちょっと動揺してる。手応えだけですぐに分かった。こいつ、単なる大柄な敵とは格が違う。纏っている装甲の硬さもさることながら、腹部を覆っている脂肪と筋肉の厚さも段違いだ。
「うるせえ。俺達はそういうのが一番気に入らねえんだよ!」
手で腹部を押さえていたウルサが、ギターで薙ぎ払ってきた。間髪容れず、ボディに仕込んだ斧の刃で何度も襲い掛かってくる。巨漢に似合わぬ敏捷な連撃。幻想月影となった俺に避けるのは造作もないが、回避するたびに神殿の瓦礫や壁が容赦なく破壊されていく。
神殿の壁を蹴り、その勢いを活かしてウルサの顔面に飛び蹴り。よろめいてたたらを踏む巨体の胴体に拳で連打を叩き込む。が、ウルサが俺に掴みかかってくるのを見た。すぐに後退したが、今度はギターの斧刃が襲い掛かってくる。
ウルサは硬い。ワンパンで勝てる相手じゃない。素手だけじゃだめだ。ちょっと距離を取らないと……。
「逃げんじゃねえぞ、てめえ!」
片手でネックをバトンのようにくるりと回し、ボディを自身の懐へ持ってくる――ギターを持つ構え。そこからボディに仕込んだ引き金を引く。砲撃。俺のすぐ近くにあった芝生が大破し、土砂が盛大に舞い上がる。
これは電脳の力による防御じゃ防ぎきれないと判断した俺は、連中の停めた車の集団に逃げ込む。が、次の瞬間、周囲の車両が爆発炎上した。バギーが爆ぜ、バンが爆発四散した。たまらず、俺はトレーラーの荷台の上に飛び乗る。
「なんだよ、味方もお構いなしかよ!」
「どうしてくれんだてめえ! おかげで俺達の帰る足がなくなっちまったじゃねえか!」
「いや、撃ったのも壊したのも全部そっちだよね!?」
「許さねえ! てめえらやっちまえ!」
俺が突っ込むのもむなしく、屋根の上に援軍がよじ登ってくる。鉄パイプに丸鋸やらなんやらを括り付けた先鋒を殴り飛ばし、ナイフを突き出してきた次鋒も腕に関節技を決めて無力化してから放り投げる。次いで後方から肉薄する三人目を蹴飛ばし、銃を手にした後衛を巻き添えにして荷台に落とす。反対側から単機銃をぶっ放してきた敵には、宙返りを多用しながら接近して蹴り落とす。
ウルサの砲撃。足場のトラックが爆発炎上するも、隣の大型車両に飛び乗った方が早かった。あのトラックの近くには連中の仲間がまだいたはずだが、悲鳴よりも歓声や笑い声の方が多く聞こえるのはどういうことだ?
「ヤカマァ!」
そんなウルサの叫び声の意味が分かったのは、死角から飛来してきた誰かの腕が俺の首を絞めてきた時だった。足は車両から離れ、俺は謎の襲撃者もろとも宙を舞っていた。
「お前が幻想月影だな? 正義の味方気取りの優等生とかやっちゃってるとか良くないね。この国をシメてるホワイトテンプルなんかにいいツラしてるだけのおバカさんは、俺達が目覚めさせてやらねえといけねえな」
ぞっとするような低い声が背後からした。顔を進行方向へ向けると、マッディラ神殿の柱廊にある鋭利な柱頭の装飾が目に入った。
すぐさま抵抗した。ウルサの叫び声から察するに、俺を掴んでる襲撃者の名はヤカマ――そいつの頭部を片腕で掴んで俺の手前にぐっと引き寄せ、反対側の肘でヤカマの脇腹を突く。空中のヤカマの姿勢が崩れ、解放された俺は神殿前の広場に無事に着地した。
俺の目の前にウルサが立ち、その近くにヤカマが降りてきた。
「遅いんだよ、ヤカマ。まさかてめえ、寝坊してたわけじゃねえだろうな?」
「違うよ、ウルサ。そっちがフライングしたんだ。むしろこっちが、勝手に進められて困ってるんですけど」
合流して早々、なんか向こうがわちゃわちゃ言っている。
ヤカマの第一印象はパンクロッカーだ。いや、他の連中もそれっぽい身形こそしているが、彼の外見はそれ以上にパンクっぽい。痩せ型の体型に鋲ジャンのような衣装を身に纏い、髪をモヒカン刈りに剃っている。だけど、丸っこいレンズのゴーグルと棘の生えたマスクで覆われているおかげで、彼の顔は全く分からない。
で、最も目を引くのが、ヤカマの背中から生えた上下非対称の二対の翼だ。メインの一対は蝙蝠の翼のように大きく広がっており、もう一対の翼はどちらかというと小さい。彼の背中の方で空気が揺れているのを見る辺り、ジェット噴射を水力としているのだろう。それと、もうひとつ気になる点として、翼の至る所にスピーカーのような円状の何かがはめ込まれている。
でも待てよ? そんな精密な機械なら、幻想月影の力でこっちが好き放題操れるんじゃないか?
俺はヤカマへと手を翳した。だが……
「あ? てめえ、何やってんだ?」
「何それ? それがあんたのヒーロー的なカッコつけポーズ? 何それ、すげーダセえ。ちょーウケる」
ウルサが威圧的にこちらを睨み、ヤカマが嘲笑した。
手応えが全然ない。おかしい。ウルサのギター武器はさておき、ヤカマの翼は人ひとり飛翔させるほどの高度な機械だぞ? 制御機構とかにSephirOSが組み込まれてたりするんじゃないのか? 操って墜落させたりとか出来るんじゃないのか?
「まあいい。あんな、ホワイトテンプルに従ってるだけの正義の味方ヤローなんざどうでもいい」
「そうだね、ウルサ。あんなヒーロー気取りの真っ黒おバカにも、俺達のとっておきを見せてやろうよ」
ウルサがギターを真横にスイングした。火炎放射。空間を舐めるようにギターから放たれた業火の奔流を、腕で顔を覆いながら後退する。
が、防御の体勢を解いて辺りを見回して気付いた。ウルサとヤカマがいない!? 変わりにいたのは、連中の部下である取り巻き共。車両に書かれていた『L』『N』『M』から、『LNMの雑兵』とでも言えばいいだろうか――そいつらが俺を囲っていたんだ。
不覚だった。ウルサの火炎放射はド派手な目暗ましだった。ウルサとヤカマの二人は、既にマッディラ神殿の構外へ出ようとしていた。
「何をするつもりだ!」
俺は叫んだ。しかし、雑兵達が俺の行く手を阻む。
「邪魔をするな! てか、なんで皆よりによって俺よりもデカいの? そんなに大きいなら、ここでバカみたいな破壊を繰り返すよりも、地元で力仕事のお手伝いをしたほうがずっとその身体を有意義に使えるんじゃないの!?」
「……はあ? なに言ってんだ、こいつ?」
間違えた。彼等は本気で俺の言ってる意味が分かってないかもしれない。だってこの世界じゃ、力仕事は人間のすることじゃないんだろうから。
巨漢がレスリングのタックルを繰り出してきた。倒されんよう踏ん張るのは出来た。だけど、動きを封じられた。邪魔だ離せと俺はそいつの背中にエルボーを振り下ろすが、そんなことをしている間にも目の前でウルサとヤカマの二人が何かをやってる。
ヤカマの翼が変形した。スピーカーの装着された翼が身体の倍に匹敵するほど目一杯に開き、もう一対の翼がまるでシンセサイザーのキーボード宜しくヤカマの腰回りに展開される。翼の向く先は、クリアストリームの閑静な街並み。
ジャーン! と、一発ギターの音を響かせたウルサが、高らかに再び叫ぶ。
「俺達の叫び声が聞こえるか、クリアストリームの市民共! 今からぁ! クソッタレな規則に縛られ、上から目線なホワイトテンプルの奴隷にされてることすら気付かねえてめえらの目ぇ、覚まさせてやるぜえ!」
既に幻想月影のスキャンしたデータは明らかにしていた。ウルサのギターがヤカマの翼にワイヤレスで接続されているのを。そして、ヤカマのスピーカーの正体は、あのオフロードダンプトラックに積まれていたのとは用途から根本的に異なる音響兵器だったってことを。
「耳かっぽじってよぉく聞けえ! 俺とウルサのデストロイライブだあ!」
ヤカマが叫んだ次の瞬間、街が吹っ飛んだ。
ウルサがギターを掻き鳴らした途端、アンプとして接続されていたヤカマのスピーカーから衝撃波が放たれたのだ。
その威力たるや凄まじかった。まるで、超巨大なショベルカーで抉り去られたかのように、クリアストリームの小区画が吹っ飛んだ。数多の瓦礫が吹っ飛び、警備ロボットどころか乗用車まで宙を舞っていた。
俺が唖然としていると、ウルサが恰幅の良い身を仰け反るようにして、顔だけこちらに向けてきた。
「驚いたか、正義の味方ヤロー! けどな、俺達が出来るのはそれだけじゃねえ! 俺のギターは、どんなもんにもアンプみてえにつなげられんだ。例えば、この町中で規則ばっか喋ってるウザってえメガホンとかなあ!」
「そして、俺の翼は、ウルサのギターと繋がってるものなら、どんな機器のボリュームも爆上げさせられる。それがつまりどういうことか、幻想月影のオツムでは分かるかな?」
「まさか……!」
そこまで言われりゃ、連中が何をするつもりか嫌でも分かる。メガホンって、町中にあるアレだろ? それらがヤカマの翼と同様の音波を放つんだろ? もし二人の言ってることが本当なら――クリアストリームが丸々吹っ飛ぶ!
止めなくちゃ。しかし、今の俺はLNMの雑兵である巨漢たちに動きを封じられて、ウルサとヤカマに近付けない。クリアストリームの公安であるアンドロイド達も、他の暴徒達に阻まれてそれどころじゃない。
「さあ、始めるぜ! こいつが、うざってえクリアストリームのレクイエムだ!」
ウルサが叫んだ。弦を盛大に掻き鳴らすべく、腕を大きく振り上げているのが見えた。
雑兵共め。いつまでもタックルの体制のまま俺を封じていられると思うな。周囲の敵に肘鉄を叩き落とし、手前の奴には何度も膝蹴りを腹部へ叩き込み、ようやく力が弱まった所を、腕で首根っこを掴んで身を一回転させる。
「させるかあああっ!」
首回りを固定された巨漢が振り回され、周囲にいた雑兵達を巻き添えにした。俺が解放すると同時にそいつは吹っ飛び、離れた後続を巻き込んで倒れる。そして、そんな俺の目の前で、ウルサはギターの弦を強く掻き鳴らした。
しゃーん!
「……は?」
ウルサは異変にすぐに気が付いた。遅れてヤカマも気付いて足元のウルサを見る。
「おいウルサ、なんでそんな気の抜けたような音出してんだ? 早くデカいのよこしてくれよ」
「分かってるよ、ヤカマ。急かすんじゃねえ! いいか、見てろよ。盛大にかましてやるからよ」
しゃーん。しゃーん。しゃーん。
けれども、ヤカマのギターから流れるのは、金属の弦が震えるだけの気の抜けたような音ばかり。
「おいどうしたヤカマ! 音出ねえぞ! ちゃんと音デカくさせたんだろうな?」
「はあ? そっちこそちゃんと繋げてないんじゃねえの? 俺の努力を無駄にさせるなよ」
「なんだとてめえ!」
なんだか二人の空気が悪そうなので、俺がネタ晴らしをしてやった。
「無駄だよ。クリアストリームに繋がれた音声装置は、俺が全て掌握した。君達がどれだけギターを繋ごうが、スピーカーの出力を上げようとしようが、そっち側からの接続だけ全部切っちゃったから、クリアストリームを吹っ飛ばすなんてことは出来ない」
ヤカマのスピーカーこそ効かなかったが、クリアストリームの治安維持に使われている機器の全てを制御しているのはSephirOSだ。SephirOSの根が絡んでいるなら、俺の
連中こそ操れないものの、この町のインフラへの干渉まで邪魔されたわけじゃない。なら、勝機はある。
一番やりたかったことを邪魔されたからか、ウルサとヤカマは唸るように答えた。
「てめえ、俺達の一番の楽しみをぶち壊しやがって、ただで済むと思ってんのか……!」
「人は出来るだけやめとけって言われてたけど、お前は例外で良いよね? 見た目、アンドロイドっぽいし」
だけど、頭に来てるのはこっちの方だ。せっかくの参拝を邪魔した挙句、沢山の人々の暮らしを脅かす奴らを、許せるわけないだろ。
「覚悟しろ。この国の全てが俺の味方となり、お前の脅威となるんだ」
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