第11話 せいちょう とは




「みーちゃん、元気だった?」






そういって彼女は、私の頭をそっとなでた。





「おじいちゃん、まってよー」そう言って店に入ってきたこの目の前の彼女。

本当にあの「幼い女のニンゲン」とおんなじなのでしょうか。

手や高さこそ少し大きくなってはいるものの、声も匂いもあの「幼い女のニンゲン」と同じなのに…




あれ。おかしいな。





そう何度も思って首をかしげながら彼女の周りをそわそわと歩いては、匂いを嗅いでしまう。




やっぱりあの「幼い女のニンゲン」と同じ匂いなのに…





なんど試しても同じ結果に困惑して、今度はそんな困惑した私の様子を微笑みながら見守る、彼の足元までいって尋ねてみた。





本当に彼女はあのときの「カワイイオキャクサン」なの?

あのときの幼い女のニンゲンなの?





困惑するあまり、いつもよりも大きな声で何度も「みー」と鳴きながら足元をうろうろしていると、彼は笑いながらそっと私を抱き上げた。




「みーちゃんはどうやら、紗奈ちゃんの成長に驚いている見たいですね」




抱き抱えた私の頭をなでながら、彼はそうナカミチサンと彼女に笑いかける。


以前は彼女から逃げるのに必死で、彼女が「サナ チャン」と呼ばれていることにも気がつかなかった。


それなのに今日の彼女は、前回会った「カワイイオキャクサン」のときのような、落ち着きがなく、乱暴で、キャンキャンうるさい様子は見当たらず、どことなく「ナカミチ サン」を思わせる落ち着いていて優しい雰囲気を身に纏っている。


たいていのことは彼に問いかければ答えがわかるのに、今日ばかりは全くわからなかった。


私の疑問は全く解決していないのに、彼とナカミチ サン、そしてサナチャンは楽しそうに会話を進めている。

どうやら「せいちょう」が謎を解く鍵らしいけど、彼の腕の中から、彼らの様子を眺めていると、そんなことはもう、どうでもよくなった。




彼とナカミチ サンとナカミチ サンの連れてきたカワイイオキャクサンが楽しそうにしている。それだけでなんだか居心地がいい。





今日も「カワイイオキャクサン」と初めて会った日と同じように、春を感じるぽかぽかの陽気だったからか、それとも、この楽しい雰囲気がそうさせたのか、いつの間にか彼の腕のなかでそのまま眠りについてしまっていた。


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