虹色の花
花もも
虹色の花
ある時、野山に1輪だけ虹色の花が咲いた。
虹色の花は、周辺の生き物達に愛された。
今日も鹿や狸や猪がやってきて、虹色の花に挨拶した。
「こんにちは。虹色の花さん。」
「今日もとてもきれいね。」
「私達、あなたを見ると、とても元気が出るの。」
「とっても不思議な色や形をしているのね。」
生き物達はこぞって虹色の花を褒めた。
虹色の花はとても嬉しくて、皆に喜んで貰いたくて、それから何十年、何百年と咲いていた。
そんな日が続いていると、一人の人間がやってきた。
どうやら道に迷ったらしい。
がっくりと項垂れていた。
そこで、誰にも見られないように、ひっそりと咲いている虹色の花を見つけたのだ。
「これは、なんと、見たことのない綺麗な花だなぁ。」
その人はたちまち元気が出てきて、街に帰ろうと意欲が出てきた。
虹色の花が咲いている、という話は、街中にたちまち広がった。
沢山の人達がやってきて、たった1輪だけ咲いている虹色の花を見つけた。
「これは、見事な花だ。」
「なんて綺麗な色をしているのだろうね。」
「この世にこんな美しい花があったなんて……」
中には感激して涙ぐむ人もいた。
虹色の花は嬉しくて、もっと咲いていたいと思っていた。
虹色の花の噂は街の外にまで広がった。
すると、テレビ局の人達や、観光客が集まってきた。
街は大変活気づいて賑やかになった。
訪れた人々はこぞって
「綺麗な花」
「美しい花」
「希少な花」だと言って喜んでいた。
花は益々嬉しくなった。
ところが、一人の学者が虹色の花について、研究したいと言い出した。
虹色の花は1輪しか咲いていない。
とても希少な花だった。
しかし、学者はどうしても、どうしてここに虹色の花が咲いたのか、どうして枯れないのか、究明したいと言い出した。
街の人たちは相談した。
しかし、誰もがその探究心に胸を打たれていた。
虹色の花は学者のところに行くことになった。
学者は驚いた。
虹色の花の匂いには、元気になる効果があること、食べることができること、食べると不老不死になることが分かった。
それを知った学者はテレビ局に引っ張りだこになった。
しかし、虹色の花は悲しくなった。
ここには「綺麗だ」と言ってくれる人は誰もいなかった。
あの野山に帰りたかった。
けれども、花は歩けない。
虹色の花に夢中になった学者は、増やそうと努力した。
それから欲しい、という人達もこぞって現れるようになった。
どんな病気も治してしまう効果で、白血病や、心臓病、筋肉の病など、原因不明の病が完治することを知って、虹色の花を誰もが欲しがった。
学者は更に研究をしたが、何故か虹色の花は増えることはなかった。
虹色の花は「綺麗だ」と言ってもらいたかった。
ただ、ただ、喜んでくれればそれで良かった。
そのうち、何百年も咲いていた虹色の花は枯れてしまった。
虹色の花は1輪だけ。
人間達は落胆し、絶望した。
それから二度と虹色の花は咲かなかったという。
虹色の花 花もも @ho_sia023
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