第144話 12月6日。(死について)

こんばんは。


今日は何から話せばいいのか……。


暗い話になってしまうので、

君が読みたくなかったら今日の手紙は読まずに

閉じてください。


今朝、トーク番組で作家の川上未映子さんを観ました。この方の外見、とても好みなんです。

作品はというと、数冊だけ読んだことがあります。


番組冒頭しか見ていないのですが、

子供の頃に「誕生日におめでとうというのはおかしいと思っていた」(歳をとるということは死に向かっているのに)みたいなことを話していました。

(ニュアンスが違ったら、すみません)


あぁ、こういうことを突き詰めて考えられる、考え続けられる強さが作家なんだろうなぁと思いました。


私は幼い頃、空想という名の風船をいつも持っていた気がします。

(現実が寂しかったからですね、きっと)

それは辛いことではなくて、ふわふわとした甘い事ばかりが詰まった風船です。


たまに現実とのギャップで、その風船が割れたりして、傷ついたりしていました。


生や死について考えたりすることもあるにはありました。


けれど、弱い人間の私は何かを突き詰めて考える事の先にあるものが怖くもありました。


もし、本当に知りたくて知りたくて仕方なくなっていたら、答えを求めて何かしらの団体に入ってしまうんじゃないかと思うほど、それは危ういことだと感じていました。


なので、「死」について考える時は自分自身についての時だけ…というか、そこに真理は求めてはいませんでした。


何かの真理より、目の前の現実が私の中の唯一の真実であれば良かったのです。


なんて狭いものの考え方だと笑われてしまうかもしれませんし、ある見方をしたら傲慢とも言えるかもしれません。


君に嫌われてしまうかもしれないけれど、

私は今日そんなことを思い出しました。



実は今日、遠い親戚に不幸がありました。


その事に私は激しく動揺しています。


遠い親戚と言っても、

血縁はなく名前も顔も知らない方です。


でも、私と同じ年齢の女性でした。


心の病を患っていたと聞きました。


葬儀に行くということは多分…無いのですが、

それも分からず、正直どうしていいか分かりませんでした。


亡くなったという事実と、

現実的に考えなければいけない事柄とで、

1日落ち着かない時間を過ごしました。


私は身内に不幸があったことが、

実は子供の時以来なく、

この歳になっても喪服すら持っていません。


でも、不幸も無いのに喪服を準備するのも不吉な様な気がしていて、準備するのを躊躇っていたのも本当なのです。


結局、こういった事柄の時に相談できる相手は

私には母しかおらず、母に電話をして色々と聞きました。


これから何があるか分からないから、

喪服は揃えておくようにと言われつつ、

母の喪服を見せてもらうと

思いの外新しいものだったので

「万一の時は借りよう」と思ったバカ娘です。



気持ちは他にもあれこれ複雑に絡まりあっているのに、現実の常識的な事との落差に悲しくなりました。


私の20代の頃まで思っていた「死」は、

ひっそりとしたもので、私がいなくなっても

誰の毎日も変わらない。そんな風なものでした。

(親不孝な考え方だともその時は気づけませんでした)


でも、今回感じたのはこんなにも遠い存在の私のところにまで「死」の波紋はやってくるということでした。


その波紋によって、私の心はまだ平常心に戻っていない気がします。


ごめんなさい。

君にまで波紋を広げてしまったなら。



明日になれば、いつもの手紙をまた君に書けると思います。


今日はごめんなさい。




でも、君の明日がとにかく優しいものになりますように祈っています。


また明日。


おやすみなさい。






























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