第27話 サイコパスは議論できない




『・。・』とは、結局のところ群れないと何も成せないゴミ屑の集まりだ。

だからこそ、他の何よりも仲間意識を大事にする。

その繋がりを、いつまでも残したいと思う故に。




仲間だから。

一緒にいたいと願うから。

ネットの片隅で生まれた、同じ『・。・』という名の兄弟だから。




愛してる、忘れない、きっとそれはそういうこと―――。




いいや、それはふざけている、見ていられない、最悪の気分だ。




この鬱病患者フリーれいかにとって人生とは?

そんなもの、もはやとうに終わっている。

いくら配信を続けようと、そこに何の意味も価値も見出すことは出来ないだろう。



いつまでもいつまでも、虚無は永劫に続いていく。

その原動力は何なのだろう。

この世は総じて妄想劇。

中身の無い茶番劇。



だから、この空虚で鬱なる『物語しょうせつ』は―――まだ醒めない。



彼は完膚なきまでに負けたのだ。

いっそ誰一人残らず全滅していれば、あるいは何かが変わっていたのか?

おそらく何も変わらない。



―――彼は”躁”霊なのだから。



絶望も希望も等しく躁鬱。

日常演舞とBUNZINを失い、みんと帝国の最下層に叩き落とされても関係ない。

田中みこに一刀両断されても関係ない。

U2部隊に裏切られても関係ない。



物語コミュ』が消えても、だからどうした。


何度だって我は復活する。


さあお前たち見せてくれ。


やがて世界には数万の『物語』と、その百倍を超える観客リスナーたちの夢で溢れる。


あらゆる神話の英雄や怪物や神そのもの、観客が自由フリーに思い描いた”夢”。


そんな登場人物が現実世界を埋め尽くし、悪逆の災禍が訪れる。


我を楽しませるためだけに、世界は混沌に包まれる。


それが見たいだけなのだから。


だからこそ―――この『物語しょうせつ』を虚無に続けよう。







フリー(躁)「違うな―――これがなのだ(^ω)^」







ここは何処で、今に至るまでの経歴を彼は瞬時に理解する。

時間感覚の圧縮現象。

言うなれば蘇生の感覚に近い。



フリー(躁)「地下か、それも相当の最下層だな(^ω)^ あぁ問題ない。みんと帝国の兵士よ。君もそう思わないか(^ω)^?」



フレッシュ「———ふんっ。」



フリー(躁)「っ?! ぐおっ(^ω)^!」





フリー(躁)「な、何をするんだ、まだ私のモノローグの途中、がっ(^ω)^」



そのまま二度、三度、四度と頭突きを繰り出してくる彼女。

なんだこいつ、野人かよ。

人は言葉が話せるだろう、なのに無言で暴力とは頭にきた。



フリー(躁)「ぐあっ、・・・お、おのれ、問答無用というわけか(^ω)^ いいだろう、そっちがその気なら受けて立つ(^ω)^!」



何の異能も使わず、ゼロ距離接近でまさかの頭突きとは。

この展開は何だ?

状況を確認すればするほどに馬鹿げている。



フレッシュ「———!」



躁霊もまた、何の異能も技能も使わず頭突きを繰り出した。

お互いにごちんと、頭がぶつかる。

何の防御もしていないのだから、痛いのがダイレクトに伝わっていく。



フリー(躁)「まさか、と思っただろう(^ω)^? このまま頭突き大会と洒落込もうか(^ω)^」



ムキになった鬱病ほど怖いものはない。

予想を下回る反撃に、彼女はここでようやく口を開く。



フレッシュ「戯言はもう聞き飽きてるの。問答無用、馬鹿は身体で分からせるに限るということよ。」



フリー(躁)「さっぱり意味は分からんが、分かりあえない人種だということは分かった(^ω)^ そして図に乗るな(^ω)^ 言うに事欠いて、言葉は不要だと(^ω)^? そこまで私は弱く見えるのか(^ω)^?」



凄まじいまでの重質量を備えた、紅蓮の戦意に満ちる躁王の声。

ヘビに睨まれたカエルどころではない。

これでもかと叩き付けられる”鬱”にフレッシュは硬直し、動けない。



フレッシュ「・・・とんでもないオーラだね。」



フリー(躁)「———『弾丸論破ダンガンロンパの相』(^ω)^」



躁王の異能が発動し、フレッシュは膝から地面に崩れ落ちる。

巨大すぎる力の差を実感するがもう遅い。



フリー(躁)「嘘偽りなく答えなければ死ぬぞ(^ω)^? ―――反論(^ω)^ お前は誰で、何の目的があってここに来た(^ω)^?」



フレッシュ「やっぱり・・・頭突きもそうだけど、香に影響されていない。」



フリー(躁)「(^ω)^」



鬱病に融通など利かない。

彼は装備している鋭剣を抜き放つ―――するとそれは赤く輝く。

することは明白だった。



フレッシュ「ッ?! いっ―――!!」



反論出来なかったが故に。

もう議論は始まっているッ。



フレッシュ「そうだよね。さっきの戦いで尻尾巻いて逃げ出したあんたは腐っても躁王。この異世界を創った元凶にして黒幕。弱いわけがないッ。」



フリー(躁)「 (^ω)^」



二度、三度とが彼女を貫いていく。

血の輝きが世界を埋め尽くす。

そこには容赦もクソもない。



フレッシュ「がはッ、なんなのそれ、元ネタが全然分かんないっての。他人に理解させるつもりもない。自分のルールだけを押し付けてくる。鬱病はこれだから―――」



フリー(躁)「おいッ(^ω)^!!! さっきから聞いてれば人のことを鬱だの馬鹿だのッ、我は異世界の創造主なのだぞッ(^ω)^!?」



―――そう、鬱病発症者最大の特徴がだ。

何時如何なる時でも起こりうる躁鬱の発症。

最大級の殺意と狂乱を含んでいるのは明らかだった。



フリー(躁)「鬱病患者、喋れない病、どいつもこいつも聞き飽きたッ(^ω)^! 見たことない癖にッ、証拠もない癖にッ、幼稚な反論をするんじゃあないッ(^ω)^!」



怒号の赤き追及―――いや、ただの残酷な滅多刺し。



フリー(躁)「死ねッ、死ねッ、うおおおおおぉおおあああああ(^ω)^! さあ反論して見ろよおおおおぉぉッ、我は鬱病で議論もろくにできない末期患者か(^ω)^!? 証拠もないくせによくも言いやがったなぁぁあああああ(^ω)^?! うおおおおおぉぉぉぉおおおぉッ(^ω)^!!!」



躁王の身体は赤く輝き続ける。

これでは議論の余地もない?

いや―――。



フリー(躁)「むっ(^ω)^?!」 



そこで、躁霊は気付く。



彼女の出血はおろか、傷口が塞がって、



フレッシュ「———お生憎様。私ならこんな傷、2秒もあれば完治リフレッシュする。」



いつの間にか、ではない。

瞬きの間もなく一瞬の出来事。



フリー(躁)「ちっ、回復型の異能か(^ω)^? ——— 使(^ω)^」



―――鬱病は、予想外のアクシデントに対しても、面白がりは決してしない。



フレッシュ「!? へぇ、なにこれ?」



反論とは、余計な邪魔や誤魔化しも必要ないし、それをさせることも許さない。

つまりは『ノックス十ヶ条』。

清く正しい論破でなければ成立しない。



フレッシュ「私たち寄りの―――みんと帝国側のような異能ってこと?」



フリー(躁)「(^ω)^ さあ今度こそ聞くぞッ―――反論(^ω)^ お前は誰で、何の目的があってここに来た(^ω)^!」



そう、これで終わり。

『ノックス十ヶ条』があれば、どんな相手にも”議論”は可能。

否定すれば死。

これこそが『弾丸論破ダンガンロンパの相』の真髄であり真価なのだ。



・・・だが、発動条件が緩いということは、裏を返せば破りやすいということ。



フレッシュ「反論。みんと帝国無所属名前はフレッシュ。女。15歳。そういう『設定ゆめ』を押し付けられた女。異世界の真実もあなたの正体も知ってる。みんとに負けたあんたを、私は好奇心で探して、出会えたのはそれこそ偶然。これでいい?」



フリー(躁)「・・・(^ω)^」



フレッシュ「なに? そっちから散々好き放題しておいて、私にちょいと反撃されたらダンマリなの? ———反論。フリーれいかの躁霊の異能、その発動条件と効果を詳細に教えなさい。って、こんな感じ?」



攻略法はいたってシンプル―――戦闘行為ではなく、ただ議論すればいい。

弾丸論破ダンガンロンパの相』は一見、相手に何もさせない異能に見えるが違うのだ。



―――



フレッシュ「・・・なるほどね。これで私も、議論をする立場になったというわけ? どうやら対処法としては間違ってなかったみたいね?」



弾丸論破ダンガンロンパの相』は、実はとても公平な異能なのだ。

議論を仕掛けた者が赤く輝き、反論する者が青く輝く。

赤と青が出揃った時、どちらかが論破されるまで議論を繰り返すッ。



反論できなかった者は言わずもがなである。

そして今、反論しなければならない義務を背負っているのは躁王なのだ。

さぁ、彼の反論はどうくる―――?



フリー(躁)「・・・萎えたぽよ(*´ω`*)」



―――世界は切り替わる。



フレッシュ「っ? どういうつもり?」



拍子抜けする彼女を完全無視し、躁王は踵を翻す。

先ほどまでとは明らかに人格が違う、顔が違う、何かが圧倒的に変化している。



フレッシュ「空気が違う。ねぇ何をしたの? 私の反論は通ったの?」



彼女は、自らの異能が元の状態、つまり再び使えるようになっていることを肌で感じ取る。

少なくとも、安堵はしただろう。

だがそれ以上に、彼女の冷汗は止まらない。



―――その、”世界が切り替わる感覚”が、躁王の異能なのは間違いない。



―――いや、問題はそこじゃない。



―――



人と人との繋がりはコミュニケーションだ。

相互理解の為に言葉を交わす。

喜怒哀楽の衝突、目線、表情、距離感、空気、観察、価値観。



躁王には、それが欠けていた。

いや、ほぼ感じ取れないほどに壊れている。

それが簡単に分かってしまうからこそ、フレッシュは恐怖していた。



違う、問題はそんなことではない。



そもそも、彼女は殺されかけたのだ。

そこに躁王の殺意があったのは言うまでもない。

だが先程見せた、萎えた表情。

殺意というのはそんな簡単に、ふと気づいたらのような感覚で消えるものではない。



一度抱いた殺意は、相手が死ぬまで消えることはない。


だというのに、殺意は完全に消えていたのだから気味が悪い。



フレッシュ「・・・人格をリセットしてる? もしくはただのサイコパス? 鬱病と精神異常者特有の症状? もうっ、信じられない! マジでどっか行っちゃったじゃん!」



軽い口調になるも、やはり恐怖は止まらない。

あそこまで激烈、明確な死のイメージに直撃されたら、それが『夢』だろうが『現実』だろうが心臓は止まってしまう。



フレッシュ「あいつと香王の戦い。巨大な黄金龍を召喚してたのも見た。津波を引き起こしてたのも見た。・・・こっちだって、殺される覚悟で仕掛けたのに。ふざけんじゃないっての。」



直前まで対峙していた人間に、人間味を感じられない。

あれが人間だとは、とても信じられない。

人と、対面した気がしない。



化け物フリーれいかの思考回路、鬱の凶悪さが人間には分からない。



フレッシュ「でもこれ、追う以外に選択肢ってある?」



彼女はこれで終わる気などなかった。

相手は末期の人外だとしても、言葉は通じるのだ。



それに、も見逃せない。



彼女にとって、理由はそれだけで十分だった。

そこだけで分かり合えた。

壊れていれど、正気を保っているって素晴らしい。



・・・みんとが生み出す薬物の香。

中毒に陥っていないだけ、まだマシなのだから。



フレッシュ「香に侵されたら終わり。彼はまだ侵されていない。なら―――」




―――――――――。

――――――。

―――。




フリー(躁)「私が負けるとか面白くないぽよ(*´ω`*)」



フレッシュの決意とは裏腹に、躁王は悠然と歩を進め、とぼけたような顔をしながら一人愚痴る。



フリー(躁)「こんな時、日常演舞がいたら瞬殺できたのにぽよ(*´ω`*)」



先ほど、『弾丸論破の相』から『虚無の相』へとのだ。

もうそこに、相手を論破しようという心意気も消滅している。



―――使



いつもなら『演舞開園えんぶかいえん』の異能で相手を蹂躙する。

それが躁王の得意とする戦法はいしんなのだが、いかんせん彼は物語の”外”へと隔離されている。



フリー(躁)「BUNZINもいない、あっちゃんもいない、誰か代わりに楽しませてくれる動画なかまはいないぽよ(*´ω`*)? まぁ、いなければ新しく創造するだけぽよ(*´ω`*)」







創造主である躁霊だけの特権。

ただ自分が気持ちよくなりたいだけの『物語』を作る為に。



フリー(躁)「ぽよぉ(*´ω`*) ―――タイトルコールはこんな感じでいこうかぽよねぇ(*´ω`*)」


















―――第27話 サイコパスは議論できない















サイコパスと鬱病は同じ意味?

陳腐な言葉だ。

ありきたりな存在だよ。

そういう時代だから、いて当たり前。















フリー(躁)「———(*´ω`*) (*´ω`*) ———(*´ω`*)」




面白くなさそうに、しかし微かな賞賛を込めて、躁霊は天を仰ぐ。

その瞳は遥か別の時空を映していた―――。












―――みんと帝国 異世界転生サーバールーム




No.4どりゃれいか「———ああ、これは。真っ先に僕の仕業だと看破できるのか。よっぽど警戒されていたんだね。その洞察力と行動力は流石ボスだ。けどもう遅いよ。ここからは僕も”本格的”にやらせてもらうからさ。」



その男―――”災厄”のどりゃれいか。

椅子に座りながら、巨大なモニター群を前に笑みを溢す。

彼の目的は未だ明かされていない。



レトさん(本物)「なるほどな。これが例の”物語を視る力”か。あの少女も使っていた力。レジスタンスの情勢も筒抜けだった理由がこれかよ。」



かつてU2部隊に”収穫”され、捕らわれていた奇術師マジシャン

レトさんもまた、どりゃれいかと共にモニターを見つめている。



レトさん(本物)「理解できねぇか? どうして俺たちが一緒にいるのか分からないだろ? って言っても、みんと帝国をどうにかするまでが俺らの契約だがな。———なんか独り言みたいでダセェぜ俺・・・。」



No.4どりゃれいか「ボスの『物語を視る力』は確かに脅威だ。どこで何をしていても丸見え。嘘もおとぼけも通用しない。ありとあらゆる視点を、世界を盗み見る。まさにネットストーカー、監視厨! けどね、それってU2部隊が揃ってこそ真価を発揮するのさ。ねぇ、分かってる? 今のボスは十全に力を使えないってこと。己で戦わず、全てをU2部隊に任せてきたが故の弱点。今の現状を見てみなよ。ねぇねぇ、U2部隊の”今”をさ!」





―――U2部隊員

No.0■■■■ 裏切り

No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ 裏切り

No,2田中みこ 裏切り

No.3日常演舞 再起不能

No.4どりゃれいか 裏切り

No.5安眠ちゃん 裏切り

No.6 BUNZIN 再起不能

No.7めんちゃん 裏切り

新No.7いちご 安否不明

No.8オタさく 死亡

No.9北上双葉 裏切り

No.10セイキン 死亡

No.11 Kent 死亡

No.12あっちゃん 裏切り







レトさん(本物)「嘘だろ? レジスタンスを蹂躙したあいつらがこんな・・・なんつーか、どういう気持ちでいりゃあいいんだ俺は?」



No.4どりゃれいか「———笑っちゃうよね。ボスにはもう味方がいないじゃん。せっかく集めた手駒達が意味なくなっちゃったねぇ。これで正真正銘の詰み。だって、U2。物語の枷が外れたんだ。ここまで弱くなってくれたら僕も介入しやすくなるッ!」



あの最強の部隊はもういない・・・。

裏切り者の目的、少なくとも躁王の元には二度と戻らず、誰もが独自に動きだしている。

よって、躁王は一種の加護を失ったのだ。

この現実は―――今の情勢を大きく塗り替える。

ある者にとってはチャンス、ある者にとっては絶望、あるいは希望。



No.4どりゃれいか「最高の気分だね。ボスは異世界そのものを、つまりは『物語』を自由自在に操れた。もう意味なくなっちゃたけどね! 後はただ時を待つだけだ。」



手にした”武装”を片手で持ちながら、もう片方の手で画面をタップしていく。

そこには文字が映し出されている。



No.4どりゃれいか「躁王がみんとに負け、再び目覚めるまで既に二日は経っている。この二日はでかいよ。あらゆる勢力が今、このみんと帝国という最終地点に集結しているのさ。」



画面に映し出された文字は以下の通りだった。





『―――第27話 サイコパスは議論しない』





No.4どりゃれいか「。」



彼はご機嫌な様子で、モニターを映し出す。



姿

姿



No.4どりゃれいか「悔しかったら辿りついてみなよボス。”僕たち”の元にね!」








『No.4 これより躁王の監視、並びに転生計画の見届けを開始する。』







―――――――――。

――――――。

―――。









―――みんと帝国 最下層 天窓回路







現実であれ、夢であれ、『物語』であれ。

統合失調症やパーソナリティ障害は―――サイコパスとも呼べるかもしれない。



つまりは鬱病=サイコパス。


サイコパス=殺人鬼。



疑問に思う人もいるだろうが、



人でありながら人にあらず。

この存在は普遍的で、おそらく未来の世界においても永劫的に無くならない。



―――そして、サイコパスと呼ばれる者たちには二種類に分けられる。



人を殺すことも厭わない鬼———サイコパス。

皆と違う行動を取ることを躊躇しないはぐれ者―――サイコパス。




No.7いちご「あぁ~~? なんか地味な場所に来ちまったな。廃墟って感じか?」




ここで、前者を紹介しよう。

すなわち、何の躊躇いもなく動機もなく人を殺せるサイコパス。

哲学の体現か、欠けた何かの代償行為か、怒りや悲しみの爆発か。

もしくは何も考えていないのか、ただの娯楽なのか。

いずれにしろ、人でありながら人ではない。



No.7いちご「って、またあいつらかよ。やっぱ正解に近づいてるってかぁ!?」



みんと帝国にワープしてきて一週間。

純粋な娯楽として、彼はこの状況を心から楽しんでいた。




華麗なるれいか「追いつめましたわよ、侵入者ッ!」



もーちゃん「人の喋りをバカにしよってなの! もう許さないなの! この怒り、あの眼鏡に思い知らせてやるなの!」



マンモスニキ「ぱおーーーーーん!!!」



ゲスト・。・「五分の遅れだ。ちゃっちゃっと仕留めろよお前ら。こっちも予定ってものがあんだから。」



炒飯「まかせてくださいッス。あっちの腐れ縁もこれまでッスよ!」




―――こんなにも、この世界はごちそうで溢れているのだから。




そう、何の因果か。

いちごはKentのワープによって、みんと帝国に降り立っていた!




No.7いちご「理由なんてどうでもいい、礼を言うぜ! 止まらねぇ死闘をありがとよ! おかげでこっちは飽きがこねぇッ! あっはーーッ!! 楽しいなぁ、なんでもありの夢の世界ッ! もうハーレム生活なんていらねぇッ! 最高最高あっひゃぁぁーーッ!!」



一見して、みんと帝国の兵士5名。

性別、背格好、バラエティに富んだ面子と言えるだろう。

しかも、そのうち1名が巨山を思わせるマンモスなのだから―――!



No.7いちご「ヒュウ♪ ふじれいかより数倍でけぇな、ワクワクするぜッ!」



華麗なるれいか「はぁぁぁっ!!」



もっとも速く攻撃に移ったのは華麗なるれいかだった。

立ち尽くすいちごとは雲泥の差。

完璧で完全な初動の差。

すなわち、この場の誰よりも前から戦闘準備を完成していたということになる。



華麗なるれいか「そう、華麗にねッ!!」



一切の容赦もなく、掌に薔薇を添えて振り上げ、打ちかかる。



No.7いちご「デカブツは囮ッ、他の奴等が死角から強襲かぁ?! けど、ちっと数が多くねぇか、5対1のシチュエーションはダルすぎるぜ。せめて2対1くらいなら? さぁ、どう運命が転ぶかねぇ!?」



にも関わらず、目の前の敵に頓着している様子は微塵も見えない。

平然と笑ったまま、しかもまったく後退していなかった。



そう、彼は丸腰なれどこれでいい。



当たり前に、自動的に、いちごの異能は発動する―――。

世界は、彼の都合のいいように動き出す。



マンモスニキ「———!? ぱおおおおぉぉおん!!」



全長7mはあるであろうその巨体が、何の前触れもなく



もーちゃん「えっ!? う、うわああああああああなのおおおぉおおお!!」



No.7いちご「はぁ?」



戦闘開始からほんの数秒。

彼らは成す術もなく崩れ落ちていく。

耳元で落雷でも連続しているかのような爆音。

世界そのものが軋んでいるような錯覚、建物自体が震撼している。



マンモスニキ「ぱおおおおおぉおおおおぉおぉおおお―――」



炒飯「お、落ちるッス!!! こ、コラッ、炒飯をあげるから大人しく、ぎゃあああぁぁあああああ―――」



結果だけを述べるなら、マンモスがバランスを崩して倒れ、その圧倒的な重量によって地面はあっけなく崩落し、そこにいた者を容赦なく落としていった。

大半はマンモスの下敷きとなり即死、そうでなくてもこの高さから落下すれば結末は変わらないだろう。



No.7いちご「———ったくよぉ。いまいちまだ分かってねぇんだよな。確かに俺は、そりゃあさぁ、人数が減ってほしいとちょっとは思ったぜぇ? ”世界が俺の都合通りに進んでいく”という異能。こうなってくると扱いづらいぜ!」



いちごが何をしようが、そしてこれから何が起きるか、それらは決していちごにとって致命的事態に陥らない。



No.7いちご「(まだまだ改良の余地ありだなぁ~。この異能で何が可能なのか、それを見極めて俺は天下を取るッ。と、その前にまずはこの二人か。)」



そして天井を盗み見る。

マンモスの落下に巻き込まれず、それを華麗に回避していた若き忍者。



華麗なるれいか「(場の主導権を握っていたのは間違いなくこっちだった! それをこの男―――!)」



動揺は至極当然だろう。

油断による失態だけではない。

ここまでの甚大な被害———みんと帝国の地下は広大だが、まで、マンモスの落下によって底の見えない大穴が生まれていた。



いや、違う。





華麗なるれいか「ご無事ですか?」



狙い通りの位置に落下、そして華麗に着地する。

その場に最初からいたこの男もまた、少なからずの反応を見せた。



ゲスト・。・「ああ・・・噂に聞いていたNo.7、なるほど概ね理解したよ。」



大穴の両端、両陣営は互いを互いに脅威と認識する。

距離にして数百メートル。



ゲスト・。・「未来を好きなように選択する力か、あるいは幸運の度合いを操作する力か、何にせよ”ゲスト”として紹介するだけの価値は―――」



No.7いちご「だああああッいらねぇってそういうのッ!! 話し合いも議論もノーサンキューだぜ!? さっさと俺に殺されろよッ?! 今から俺が―――」



常日頃からイキっていた彼が―――足を止める。



No.7いちご「・・・へぇ。」



どんな馬鹿にでも伝わってくる”それ”によって、いちごの興奮は離散した。

一転、まるで親しい友人に語り掛けるようにその男へと話しかける。



No.7いちご「お前いったい誰だ?―――。」



本来なら、相手が誰であっても正面から向き合い、欲望を発散するために戦いを挑むいちごだったのだが。



No.7いちご「(分かるぜ。こいつは俺が戦ってきた中で一番強かった日常演舞、それとは明らかに別格ッ! もしくはそれ以上の―――)」



指摘する調子は、ただ面白がっているだけ。

いちごは何者をも恐れず、ひとえにそれは負けというものを知らぬからに他ならない。



だけど今回は違う、相対するこの男は―――どこか歪な雰囲気を漂わせる。



No.7いちご「・・・戦ってみてぇ。」



まだ見ぬ強敵。

みんと帝国という祭りの蟻地獄。

楽しみたい、遊びたい、だがその気持ちをぐっと堪える。



No.7いちご「(。最悪、死ぬかもな。蘇生も再召喚も出来ねぇ今だけは慎重にならざるをえねぇってことか?)」



ゲスト・。・「!? 何を考えている?」



そのままいちごは、大穴へ跳躍したのだ。

飛び込む先は深淵の闇、戻ってこれるかも怪しいというのに。



No.7いちご「はっ! 俺の直感を信じてるだけさ! あとはテメェらで考えな!」



それすら笑って言えるのがこの男だ。

早い話、いちごは分の悪い勝負すら面白がっている。

負け惜しみとは程遠い、要はその場の気分であり、ちょっと先の見えない奈落へ落ちて見るのも一興かと、そんな判断を下しただけ。



No.7いちご「これだけは覚えとけッ。最後に勝つのは俺、いちご様だぁぁ!!」



勝手に一人で盛り上がり、その姿は闇へ溶けていった―――。






―――――――――。

――――――。

―――。





ゲスト・。・「補足も無駄だろう。わざわざ土俵に降り立つ必要もない。ほら帰るぞ華麗。———もーちゃんと炒飯は残念だった。マンモスもあの様子だと永遠に落ち続けるかもな。」



華麗なるれいか「え、ええ。流石にこの深さは戻ってこられないでしょうね。」



やるなら効率的に。

敵が自ら身を投げ打った時点で、もはやここにいる意味もなし。

みんと帝国の本部へと歩を進める二人。



ゲスト・。・「問題は、まだ具体的な点が分からない事だな。他の組から新たな情報が入っていないか確かめるぞ。」



華麗なるれいか「———”三王”に連絡しておきましょうか?」



ゲスト・。・「もうとっくにバレてるだろ。かといって曖昧に誤魔化すのも意味がない。俺らは俺らでじっと待つしかないんだ。来たるべき『物語』にな―――。」






―――――――――。

――――――。

―――。









~躁霊視点~



そして躁王は元の視点へと戻ってきた。



フリー(躁)「———来るぽよねぇ(*´ω`*)」



フレッシュ「何が?」



フリー(躁)「・・・しつこい女ぽよ(*´ω`*) もう君には興味がないぽよ(*´ω`*)」



フレッシュ「一つだけ言っておくわよ。あなたみたいな神様面した馬鹿はね、単に痛い奴って言うのよ。少しは―――なにっ、この音?」



頭上で再度の轟音が爆発する。

連続した衝撃。

小刻みに、かつ怒涛のように足元が揺れ続ける。



マンモスニキ「ぱおーーーーーーーん!!!」



魔獣の咆哮が破壊の爆音とともに落下する。

震動が上から下へと移動していく確かな感覚。



フレッシュ「な、なによこれええぇぇえ!?」



視界を埋め尽くす砂塵の嵐。

何かが目の前で起こっていることは明白だったが時すでに遅し。

すでにそれは”落下”していた。



フレッシュ「空洞!? というか今の猛獣の鳴き声って、確かマンモスニキなのでは!? まさか―――」



まるで宇宙からサテライトキャノンを打ち込まれたかのように大穴が空いていた。

下を覗き込むと、一際巨大なマンモスが未だに掘り落ちていくのが見える。



フレッシュ「(確かあの突進に触れれば大地は消滅する異能。それを真下にッ!? するとマンモスは永遠に堕ち続けるの?! 躁王がこれを!? マンモスはいつやられたのッ!?)」



そう思い、彼女は空を見上げる。

そこには人がいた。



No.7いちご「———誰かいるなあぁ!?」



フレッシュ「(———何者!?)」



―――こうして全ては繋がる。



フリー(躁)「どうやら私を楽しませてくれる相手がきたぽよねぇ(*´ω`*)」



巨山のようなマンモスによる落下の被害は甚大であり、躁王とフレッシュがいる洞窟も崩壊状態にある。

しかし、それすらも舞台装置であるかのように躁王は嗤う。



そして―――躁王は迷うことなく大穴へと飛び降りた。



フレッシュ「ええっ?!」



No.7いちご「あいつは―――まさかッ!? そうかッ、俺が飛び降りた結果がこれか! 俺にとって都合のいい展開ッ!」



余りに凄まじい”鬱”を煮詰めたこの気配。

飛び降りた彼が、フリーれいかの躁霊だと理解するのは容易かった。



No.7いちご「その節では世話になったなぁあぁッ! 礼をしにきたぜええッ!」



自らにU2部隊の称号を与え、異能を覚醒異能クラスへと昇華させてくれた上司。

恩返しの名のもとに。



No.7いちご「俺と出会っちまったのが運の尽きだなぁああ!? 死ねやフリーぃいいいいいいッ!!」



いちごは、その上司に敵意を向ける!

それがただ面白そうだと判断したから!

さあ見せてくれお前の本気を、至高の体験がしたいんだッ!



フリー(躁)「———『弾丸論破ダンガンロンパの相』(^ω)^ さあ始めようかいちごよ(^ω)^ 皆が見ているぞ、我等の議論を始めようじゃあないか(^ω)^!」



最高の舞台と好敵手はここに揃う。


フリーれいかの躁霊 VS No.7いちご


戦う理由は特にない。

強いて言えば憂さ晴らし。



No.7いちご「へっ、いい度胸じゃねぇかよ! お互い落下しながらのバトルってかぁ! あーひゃっひゃっひゃああああぁぁぁッ!!」



心底からの笑い声をいちごは奈落に響き渡らせる。

そんな二人の馬鹿を遠目に、フレッシュはいよいよ困惑する。



フレッシュ「頭おかしいんじゃないの。こんなの飛び降りたら自殺行為じゃん!」



涙目になりながら声を荒げる。

洞窟の崩壊は止まってくれない、即ち飛び降りる他に選択肢は無いのだが。



あんなにもあっさりと飛び降りた躁王のことを、やはりどうしても理解できない。

躁王の後を追うように加速しながら落ちていくいちごも然り。

奴らに人としての感情があるのか―――。



違う。

フリーれいかといちごは共に”サイコパス鬱病”なのだ。



フレッシュ「崩落に巻き込まれて今死ぬか、飛び降りて後に死ぬか。うう・・・。」



どこまで落下していくのか誰にも分からない。

一生をかけて落下していくのかもしれない。

生存本能が、死の危険以上に激烈なおぞましさを感じて逃げろ逃げろと叫んでいた。



・・・逃げろってどこに?

どちらにしても手遅れだ―――。



フレッシュ「きゃあああああぁぁああぁあああああッ!!」



半ばヤケクソ気味に飛び降りるフレッシュ。

落下していくマンモスと、それを追うように墜ちていく三名。



No.7いちご「スカイれいかみたいな空中戦は一度やってみたかったんだよなぁ! 貴重な体験ができたぜッ! さすがは俺の異能! 次々と楽しませてくれるッ!」



ここから先、浮くことはできない。

重力に身を任せて墜落しながら戦うことになる。

手足を振り子のように動かすことで姿勢制御を行いながら、それぞれがこの特異な状況に順応していく。



フリー(躁)「嘘偽りなく答えなければ死ぬぞ(^ω)^? 反論対象いちご(^ω)^! ここからが本当の戦い、いや―――我だけが活躍する最高の舞台をッ(^ω)^!」



正面を走り抜ける悪寒がそのまま、声と衝撃になっていちごに炸裂する。

そうこれが―――フリーれいかの”鬱”ッ!!



No.7いちご「あははははーーーッ! 怖ぇぇなあ! 自信満々じゃねぇか鬱のくせによぉ! それは仲間が助けてくれると思ってるからか? 残念だなぁ、俺でもあいつらの気配ってのは覚えてるぜ? もしかしてよぉ、あいつら誰も残ってねぇんじゃねぇかぁ!? ご愁傷様だなぁ? あはははーーッ!」



フリー(躁)「それが貴様の反論か(^ω)^? ———生憎だが我には手駒などいつでも増やせる。無論、今現在にも我の仲間は健在だ(^ω)^」



さらりと吐かれる台詞に、しかし動じない躁王。

その圧倒的な鬱に呼応するかのように、お互いの身体が赤と青に光り輝く。



No.7いちご「光が―――おい、なんだよいったい! 毒とかじゃねぇなぁ!? こりゃあ明らかにそういう攻撃とは違うと分かるッ! テメェ俺に何をしたぁ~!?」



フレッシュ「(謎の発光現象・・・私の時と同じだ。躁王の異能による影響なのは間違いないッ! 見たところ彼ら同士は知り合い? そして本当にこれから戦うのか? こんなとこでしかも今!? ・・・なんで!? サイコパスの考えが読めないッ。)」



フリーれいかといちご。

初見であったフレッシュが抱いた印象通り―――彼らの関係は良好と言い難い。

二人とも他の者を見下して、それを隠しもしない。

要は己のやりたいようにやっているだけの人種であり、それが法だと信じている。

極めて自己中心的な性根の持ち主と言えるだろう。



フリー(躁)「Turn of the Golden Witch———さあ返して見せろ(^ω)^」



No.7いちご「読めねぇなぁ~! これから俺にぶっ殺される奴の死に顔がよぉ!」



そういう意味で、彼らはここに向かい合いながらも相手をまったく見ていない。

鉄壁のフィルター越しでしか他者と関われない、筋金入りの破綻者である。

そして、だからこそ彼らは強く、始末の悪い者たちだった。

既に彼らは強固な『夢』を持っている。

誰に教わることなく、初めから知っている。

話し合いなど笑止千万。



―――だがここから先、その話し合いが勝敗を分かつ。



フリー(躁)「そんな答えは聞いていない―――赤鍵抜刀(^ω)^!」



死を呼ぶ破滅の剣が、



No.7いちご「づッ、ぐおおおッ?!」



比喩ではない。

本当にアバラが折れた感覚を味わいながら、いちごは躁王を凝視する。

その口から血を吐きつつも、彼の笑みは止まらなかった。



No.7いちご「くははっ。射程距離ガン無視の赤い剣かぁ。なるほどねぇ・・・。」



理解不能な事態が起きたからこそ、いちごは思考するしかない。

生死を賭けた勝負はこれが初めてではないのだから。



No.7いちご「将棋空間と同じ理屈だろ! 要は俺が何かのルールを破ったから攻撃を受けた! その仕組みを看破すりゃあいいだけの話よぉ~!」



フリー(躁)「ノックス第八条、提示されない手がかりでの解決を禁ズ(^ω)^!」



No.7いちご「がはッ、あははハハッ!!」



二撃目。

今、いちごは紛れもない窮地にあった―――のだが。



No.7いちご「俺が知らねぇと思ってたのか? というかテメェ―――? 反論してやるよ、くくっ。」



フレッシュ「(ッ! あの男―――!?)」



いちごの手には―――青い剣が握られていたのだ。



No.7いちご「テメェの仲間は云々に反論しろってんだろ? 仲間ってのはU2部隊のことかぁ? さっきも言ったがそいつらの気配は消えてるぜ? だって俺もU2部隊だからなぁ! U2部隊のカラクリを理解してれば必然だ! 俺には思念みたいなもので伝わるんだよな? だから分かる! もうテメェに仲間はいねぇよ!」



フリー(躁)「U2(^ω)^ ノックス第八条、提示されない手がかりでの解決を禁ズ(^ω)^!」



三度目の軌跡。

放たれる赤き刃は彼の身体を―――通り抜ける。



No.7いちご「だいたいよ、U2部隊ってのは本当に”仲間”のことを指す言葉なのかぁ~? テメェあいつらと本当に信頼関係を築けたと思ってるのかよ? 日常演舞やKentやBUNZIN、あとは誰だったか―――あっちゃんとか、そういやめんちゃんなんて奴もいたっけな! そいつらに面と向かって話せる関係だったのかぁ~?」



そしてそのまま―――いちごの青き剣が放たれる。



No.7いちご「違うよなぁ~! どいつもこいつもテメェがそいつらの動画と生配信を、ただテメェの配信で垂れ流していただけだ! 向こうはテメェのことなんて微塵も知らねぇ。ただ勝手に使われていた!」



フリー(躁)「な、なんだその返しは(^ω)^! 現実のことなど知らぬ知らぬ(^ω)^! それを知り給えぇぇェッ(^ω)^!」



No.7いちご「なぁ―――それ?」



フリー(躁)「(^ω)^!? ぐぉおお―――?!」



躁王の左腕には―――いちごの青き楔が打ち込まれていた。

瞬間、腕があらぬ方向へ反り返り、肩部の筋肉が破裂を起こす。



No.7いちご「テメェに仲間がいるかどうか。俺はその真偽よりも、まず仲間の”定義”について探りを入れただけだったんだがなぁ~! おいおいまさかこんなんで? テメェ俺よりもダメージ受けてないか? ぎゃははッ! 現実見ろって! さあさあ思い出して御覧なさい~本当のあなたはどんな姿をしていたのか~! はい論破ァ!」



論破の結果がこれだ。

実にこのとき、躁王がダメージを受けた理由は明白だろう。



フレッシュ「(真の意味で反論は通ったんだわ! 偽装をかなぐり捨てた正真正銘のダメージ! 躁王の心に論破が響いたんだ! そして確かなことは、この場の主導権は今、彼に移った―――!)」



いちごは見事に『弾丸論破の相』を看破したのだ。

躁王にダメージを与えたのがその証拠ッ!



No.7いちご「つまり、これはお互いが崩れ行くまで終わらねぇ論破合戦ってことだなぁ~! 論破ァなんて言い慣れた台詞だから運がいいぜぇ! おかげでカラクリは全て解けたッ! さぁまだまだいくぜぇ~!」



フリー(躁)「あ、赤き真実で反論する(^ω)^! U2部隊にいるNo.1とNo.2に至っては旧知の仲だ(^ω)^! 特に田中みことのコネクションは深いッ(^ω)^!」



No.7いちご「繰り返すがなぁ、U2部隊とかいう単語は『夢』でやってろよ! 俺は『現実』を視野に入れて論破するぜぇ! じゃねぇと第八条とかなんとかで反論されちまうんだろ! だったらどこまでも『真実』という名の現実を回してやるぜ! No.1のふぁっきゅーれいかの方はそこまで仲間意識は持ってねぇんじゃねぇかぁ? いっつも深海魚面を馬鹿にしてたよなぁ! どうせ田中みこのことも”そう”思ってんだろ?!」



問われたいちごは、これまた一刀両断に切り捨てた。

そしてまだ彼の反論は―――終わらない。



No.7いちご「だいたいテメェは卑屈すぎなんだよなぁ!? 俺は鬱だからとか? 鬱は何やっても上手くいかない虚無人生とか? な~に気持ち悪いキャラ付けしてんだぶちのめすぜ!? 断言してやるぜ。自分を鬱と思い込んでいる奴はなぁ、幻想に夢見がちなただの間抜けだ!」



フリー(躁)「がはっ(^ω)^! ぐおっ(^ω)^!」



No.7いちご「幻想に夢見た結果がこの『物語しょうせつ』だッ! テメェの本性知ってる俺からすれば、今のテメェは哀れすぎて見てられねぇッ! 何のために始めたんだ?!」



まったく間をおかずに繰り出される饒舌の数々。

躁王にとって相性は最悪。

そもそも議論がたいした意味を成しておらず、これではただの一人舞台だ。



No.7いちご「ぬるくて甘い理想的な馴れ合いが、夢中になるほど楽しいのか!? 仲間たちとの日常がいつまでも続くように夢に願ってッ、ずっと思い描いていた通りの『物語』にどっぷり嵌ってッ! 気分が良いだろうなぁ!? 優越感湧くよなぁ!? 何から何まで都合がよくて、実に楽しそうじゃねぇかあ!! だけど気付いてんのか!? 『現実』とやってること全く変わってねぇんだよテメェ!!」



きらきら眩しいごっこ遊び。

夢見た通りの楽しい日常。

バカか?

アホか?

お前いつまで一人でパチスロ簡体弄ってんだ?

こちらから見ればお前、おままごとに勤しむ餓鬼と何も変わらないのだと、いちごは躁王のすべてを嘲笑う。



No.7いちご「テメェは頑なに『れいか配信』を貫いてたよなぁ!? キーボードをカタカタ鳴らしてチャット相手に呼びかける! 内容は虚無丸出しのかまってちゃん配信だったけどなぁ!? 変なコテハンを設けて様々なチャンネルを食い散らかして過去ログもばっちり監視する! サイトの住人達を全員それとなく誘導してッ、一種の『れいか界隈』の先駆けとテメェはなったよなぁ!? 最初はミラー配信とかだっけかぁ? そういう祭りを意図的に演出できる人身操作術だけは褒めてもいいなぁ!? まっ、どいつもこいつも頭のネジが外れた異端児ばっかだけどなぁ!?」



フリー(躁)「そ、その『なぁ!?』を止めろッ―――ぐはぁぁぁァッ(^ω)^!」



No.7いちご「というか、音声通話でもしたほうがよっぽど効率的じゃね? 別にこっちは直接会って話してもいいんだけどな! だけどそれを意地になって絶対にしない! それはもう病的なまでにだッ! 色々とな~んか頭が悪いよなぁ!? 言ったら社畜みてぇな、ちょっと洗脳されてる的な感じか! 面白ぇよなぁ!? そういう勘違いしちゃう人も世の中いるんだなぁ!? !? !? きっさんやどりゃれいかは上手くやったと思うぜぇ? スカイや田中みこも後に続くが、それはだったのさッ!」



―――現実のフリーれいかは、とうとう最後まで声も顔もネット上に披露せず姿を消すことになる。

それを今の現代社会で異常だと、いちごは指摘している。



No.7いちご「声を出すことは『れいか配信』じゃないッ。顔を出すことは『れいか配信』じゃないッ。それは誰かが決めたルールなのか?! 『自由』を冠するテメェがそんなもんに一生縛られてっから間抜けなんだよッ! 今は『顔出し声出し』が主流の世界だッ! 気づいてねぇのは一人だけッ! テメェの言う仲間は全員既に変化しているッ! 『顔出し声出し』してねぇれいかはもうテメェ一人だけなんだッ!」







―――顔出し声出し、顔出し声出し、顔出し声出し・・・。





『世界への無関心』、『男と女』、『寂しがり』に続く、四つ目の因子点。




『顔出し声出し』


このキーワードもまた、






フリー(躁)「ぐぎゃぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁあああああぁァァァぁああああああああぁぅぉぉおおおおオオオぉおおおおおぉぉぉおおぉォォァァアあッ(^ω)^!!」








―――――――――。

――――――。

―――。








―――みんと帝国 異世界転生サーバールーム




レトさん(本物)「・・・フリーれいかの躁霊は二つのミスを犯した。一つは対戦相手にいちごを選んでしまったこと。彼はニコ生時代に論破王と呼ばれた暴君だ。そのいちごに議論勝負をふっかけて勝てるわけがない。」



No.4どりゃれいか「あれだけ啖呵切っておいて、躁王はまたもやU2部隊を物語に介入させた。それ以外の選択肢なんか視野にも入れずにね。躁王のやること全てが空回り、そして自滅へと繋がってしまっている。というかそもそも―――。せっかくの『夢』なんだから他のドラマも試せばいいのに、彼は未だに己のU2部隊で遊んでいる。」



レトさん(本物)「同じU2部隊なら田中みこを登場させればよかったんじゃねぇか? うみねこクリア済みのあいつならきっといい勝負したのかもな。まあプライドがあるのか知らねぇが、一度裏切られた以上は呼びたくなかったのか。それに―――。」



どりゃれいかとレトさんは、目の前のモニターを興奮気味で見つめていた。

たったいま”奇跡”を起こしたその人物を見つめていた。



No.4どりゃれいか「いちご―――彼はやっぱり逸材だよ。」



レトさん(本物)「今なら分かる。俺の時と同じだ。こうして文章に置き換えられてみるとよく分かる。でもこの因子点って結局なんなんだ?」



『世界への無関心』

『男と女』

『寂しがり』

『顔出し声出し』



No.4どりゃれいか「。特に意味は無いだろうと僕も関心を捨てていたけど。四つ目とまでくると流石に無視は出来ないな。やれやれ困ったね。。」



カタカタとキーボードを打ち込む速度が速くなる。

それに比例するかのように目まぐるしくモニターの画面が変わっていく。



レトさん(本物)「こうして過去の物語を遡っていくと分かることもある。。」



No.4どりゃれいか「。いったいこれは何なんだろうね?」



そのモニターには―――







レトさん(本物)「あのときは無我夢中で戦ってたからあんまし記憶がねぇんだよな。で、どうすんだよ?」



No.4どりゃれいか「決まってるだろ? このまま躁王を追いつめる。———彼女を蘇生させてみよう。このままいちごの独壇場じゃ僕がつまらない。少しはこの戦いにスパイスが生まれるかもね。あわよくば再び因子点の発生を狙ってみよう。」



―――どりゃれいかの異能は、

最後の仕上げと言わんばかりに、物語の可能性を打ち込んでいく。

息をするように、災厄を発生させていく。






―――――――――。

――――――。

―――。







~躁霊視点~




フリー(躁)「か、彼らを侮辱するなぁあッ(^ω)^!! 顔出し声出しはやりたい奴だけやればいいッ(^ω)^! これ以上我の仲間を馬鹿にするのは許さんぞッ(^ω)^!」



No.7いちご「いやいやしてねぇだろテメェ頭大丈夫か?! 会話の流れちゃんと理解してんのか?! 馬鹿にしてんのはたった一人! 目の前にいる頭のゆるいお花畑鬱病患者を笑ってんだよ! 本当に気づいてねぇのか? お前が一番、大好きな仲間をオモチャにしているということを! 日常演舞にBUNZIN、安眠にあっちゃん、田中みこにふぁっきゅーれいかッ! あいつらを仲間として、いや違う、自分の都合のいいように仲間面をさせるッ! そんな人間関係、現実的にありえるはずがねぇだろッ! ほんとクソだぜこの『物語しょうせつ』はッ! だからこういう齟齬が生まれるッ、粗が出てくるんだよッ!」



―――マシンガン論破はまだ続いていた。

もはや議題など存在しない、ただ真実を突き付けていく。

いちごの身体から青き楔が噴出していき、躁王めがけて駆け巡る!



フリー(躁)「ノックス第八条  提示されない手がかりでの解決を禁ズ(^ω)^!」



青き楔を、ゴリ押しで防ぐ躁王。



No.7いちご「U2部隊ってのはテメェの言うことに素直に従う奴等だったか? 現実のテメェらは仲が良かったのかどうなんだ? 滑稽だよ全部ッ! なぁおいッ! 何が第八条だよ聞こえてんだろうがッ!!」



フリー(躁)「ノックス第八条  提示されない手がかりでの解決を禁ズ(^ω)^!!」



そう、躁王はこのとき、ほんのわずかに



夢、願い、理想的な人間関係―――ああ確かに、この『物語しょうせつ』は恵まれている。

何もかもが思い描いていた通り。

奇跡的なバランスを日常は優しく保っていたのだ。



それが崩れてしまった―――U2部隊が壊滅した今!

思えば思うほど恐ろしく感じるのはどうしてなのか?

失ってから気づくこともある。

彼らを『物語しょうせつ』上で勝手に使用するとてつもない冒涜。

吐き気のするような痴愚を犯してしまったような感覚に躁王は辿り着きかけたのだ。



自分は本当に正しいことをしてきたのか。

ここでいちごに負けてしまうのか。

少なくとも一瞬だけ、躁王はそう感じてしまったのだ。






だから、






瞬間―――。






もーちゃん「?」





達成された必殺強制。

落下するマンモスに仰向けになりながら、彼女の異能条件が満たされる。

その姿は落下の衝撃で満身創痍だったが、躁王を視認する瞳だけは光が灯っていた。



もーちゃん「こんな『物語』でも、まだそんなノックス第八条だのなんだの言ってるなの? そんな身も蓋もない台詞で、傍目からじゃ喧嘩を売っているとしか思えないなの。そんなんじゃまともな人間関係なんて構築できるはずもない、ただただ悲しくて救われない―――そんな絶望のどん底にいてまだ墜ちるなの?」



このとき、まさに一線を画すもーちゃんの覚醒異能が、空間を塗り替えていた。



もーちゃん「落魂の陣———『墜落の天使アロマゲドン』」



奈落への巨大な穴。

絶望への片道切符。

大地という概念の消失した世界に切り替わっていた今だからこそ。

ここには天使などいない。

愚か者は残らず虚空へ落下して魂ごと砕かれよ。

地核という名のゴミ捨て場へと。

どこまでも墜ちてゆけ。

私はトップアイドルになれたからこそ。

後に残るは堕ちるだけ。

幻想の終着点はすぐそこだ。





フリー(躁)「があああああァァァッ(^ω)^!?」



直後、訪れた結果によって躁王は一転窮地へ突き落された。

全身を襲ったのは魂ごと砕きかねない





No.7いちご「———?! く、くふっ、ははははははッ!」



その様を見て、いちごは腹を抑えて大爆笑する。

無論、なぜそうなったかは理解しようともせず、ただ目の前の出来事がおかしくて堪らない。



フリー(躁)「こ、これは青き楔ではない(^ω)^?! まるで飛び降り自殺のような衝撃(^ω)^! 今のは間違いなくッ、そういう類が嫌でも想像つく衝撃だったッ(^ω)^!」



くらった本人にとっては、大爆笑どころではない。

下手したら手足が千切れかけたのだ。

急いで回復に意識を向けるなか、何故こうなったのかを必死に考察する―――!





―――――――――。

――――――。

―――。






―――みんと帝国 異世界転生サーバールーム




No.4どりゃれいか「・・・いやいや。考察する! って言っておきながらこっちの視点を盗み見るなよ。ふふっ、それにしてもようやく僕好みの戦闘になってきたね。さあ、攻略を始めようか。」



レトさん(本物)「むしろあそこまでやられて無事な躁王が凄いな・・・。つか俺には分からねぇ。どうして躁王は急に物理的攻撃を受けたんだ? あのもーちゃんの仕業ってのは分かるんだが・・・。」



No.4どりゃれいか「この場にひまれいかが居れば、異能の名前からその詳細までドヤ顔で文章を羅列してくれるんだけどね。さて、僕の仮説としてはこうだ。」



サブモニターに次々と文字をタップしていくどりゃれいか。

彼にとっても、この荒事は興味があるのだろうか。



No.4どりゃれいか「レトさん。って何だと思う?」



レトさん(本物)「———そうかあいつもプリパラか。なるほど、そこから異能の考察を始めるんだな。そりゃあ、生まれ持った力量に努力とか、他のアイドルよりステータスが高いとかか?」



No.4どりゃれいか「違うね。本物はそんなありきたりな答えをしない。トップに立つという覚悟。すなわち、覚悟さ。」



極論、





No.4どりゃれいか「人生として一つの到達点だね。その夢を叶える為に必要なものだけを追い求める。不必要なものを全て切り捨てる。それが出来なければ、もしくは信じられなければ、自前の重力ふあんに引っ張られて落ちていくんだ。」




よって、

それは異世界の創造主、フリーれいかの躁霊であっても例外ではない。






―――――――――。

――――――。

―――。








〜躁霊視点〜



フリー(躁)「(———どりゃれいかの考察など盗み見てはいないッ(^ω)^! 誰が奴の助言など利用するかッ(^ω)^! もーちゃんの異能は我自身が考察してやるッ(^ω)^! 誰もが夢に憧れ酔い痴れる、人は誰しも夢を見るッ(^ω)^! 届かぬ理想に陶酔することを望んでいるッ(^ω)^! だがその夢は結局―――)」











フリー(躁)「(あれ―――それって我のことでは(^ω)^?)」



率先して物事に取り組む気はない躁王だが、に対してだけは巡りのいい思考回路が、この状況の絶望的な獰猛さを暴いてしまう。



フリー(躁)「(———許さんぞもーちゃんッ(^ω)^!!!)」



事実、もはや躁王は詰んでいる。

彼女が目覚めてしまった時点で勝ち目は存在しない。



もーちゃん「いい顔なの。で、絶望したけどその次はなの?」



そしてもう一つ、無視できないのが謎の破壊現象だ。

先程の損傷は、おそらく時間にして十秒程度落下した果てに受けたものだが、それでさえ数千メートルの高度から落ちたに等しい衝撃力へと至っていた。



フリー(躁)「(あれでも意識を瀬戸際に繋ぎとめるのが精一杯であったというのに、今は先から何秒経っている(^ω)^? 考察時間を考えれば―――無理だ、次に墜落の衝撃を受けてしまえば即死だ(^ω)^ この相を失うのだけはマズい、いや失いたくないッ(^ω)^!)」



だというのに、未だ破壊が再来していないこと。

いちごと議論していたとき起こした何の行動が判定スイッチとなったのか、これもまた見えてきた。



すなわち、のだ。

加えて言えば、もーちゃんの『墜落の天使アロマゲドン』による破壊力の方式は、抱いた幻想と経過時間の乗算により決定される!



現実逃避な発言が大きければ大きいほど、訪れる衝撃は比例して強大化する。

”幻想”を持つことで”現実”に激突する墜落の異能。

それが、他の全てを蹴落として痴態に塗れながらも、無情な現実を直視しながらトップアイドルへと昇りつめた墜落の天使、もーちゃんの『夢』である。



フリー(躁)「(これでは一言も喋れんではないかッ(^ω)^! 今は議論の最中だというのにッ―――)」



No.7いちご「おいおいおいおいッ! 急に喋んなくなったなぁ~ッ! テメェちゃんと口ついてるよなぁ~? もしかしてもう絶望しちゃったかぁ~!?」



相も変わらず、いちごの青き楔が躁王を滅多刺しにしていた。

―――実はいちごもこのとき『墜落の天使アロマゲドン』の支配下に置かれていた。

墜落の天使アロマゲドン』の射程範囲は落ちる者全員だ。





No.7いちご「毎度のように大切なお仲間でも呼んでみるかぁ!? お願い私ピンチなの、今すぐ助けてU2部隊~~って。それが絆と呼ばれるもので、応えてくれるのが嬉しくて、力になるのが誇らしくてッ、それが全部思うがままに通っちまうッ! 馬鹿がッ! そんな現実はあり得ないッ! 動画垂れ流しにしてごっこ遊びをしてきたテメェに、奴らを扱える資格なんて端からどこにもないんだよォォッ!!」



いちごは『夢』を操りながらも、徹底した”リアリスト”だ。

己に出来ることと出来ないことを誰より正確に弁えており、しかも打算的なわけではまったくない。

都合のいい希望など抱かないのだ。



フレッシュ「(みんと帝国三番隊副隊長の『横飛おうひ』もーちゃんだわッ! 確か、彼女の異能には喋らないことが一番の対策ッ! でもそれじゃあ議論中の二人は―――?)」



彼女も同様に『墜落の天使アロマゲドン』を抜け出している。



もーちゃん「妄想を神格化してこんな『物語しょうせつ』を生み出して騒ぎ立てるその姿―――気色悪いなの、恥ずかしくならないのかなの? この三流作家、少し俯瞰で見てみろなの。恥を知れなの。うすらみっともない二次創作家野郎———。」



先に落下しながら、しかし見下すその視線は天に墜ちる天使。

これがお前の愚かさなのだと教授するように侮辱を吐き捨てている。

その内容は正しく現実を指摘しているから、彼女自身も『墜落の天使アロマゲドン』は効かない。



だから―――墜ちていくのは迷走により翼をもがれた躁王だけとなる。



フリー(躁)「(我は―――何をしているのだ(^ω)^?)」



このまま議論できなければ、己の『弾丸論破ダンガンロンパの相』で殺される。


議論をしようとすれば『墜落の天使アロマゲドン』に殺される。


味方はいない。



フリー(躁)「(我は―――追いつめられているのか(^ω)^?)」



見えた真実に気づく。



フリー(躁)「(どうしてこんな・・・我が勝ちやすい相手と戦えるようにしたというのに、何故こうなった(^ω)^?)」



こいつは、本当に、とんでもなくどうしようもない状況下。



フリー(躁)「(みんとに負け、日の当たらない最下層にまで落ち、そして何処へ繋がっているかもわからない場所へ現在進行形で落下していき、そこでいちごに負けて、もーちゃんにも見下され、それを遥かなる高みからどりゃれいかが達観している(^ω)^? 我は、本当に何をしているのだ(^ω)^?)」






なんだろう、とても不思議な感覚だ。






フリー(躁)「(我は―――今まで自分の意思で動いていなかったのか(^ω)^)」






ようやくこの状況を理解出来たという事実を深く深く噛み締めて―――。






No.7いちご「おらおら死ねやぁぁーーッ!!」



もーちゃん「さあッ、最後の言葉を発してみろなのッ!!」



フレッシュ「躁王の次の発言で全てが決する―――!」



いいだろう。

そうまでして我の心が知りたいか?

現実でいよいよ明らかにしてこなかった我の『真実』が知りたいか?



フリー(躁)「(対魔忍いちごか(^ω)^ 我を徹底的に追い詰めるその姿勢、昔から我らは似た者同士だったな(^ω)^)」



そもそもいちごが何故我に襲い掛かって来るのか。

その理由も朧気だが見えてくる。

いちごの『真実』へと至る。

そうだよな、悔しくて当然だ。

我と比較できる関係だから、なおのこと憎く羨ましかったのか。



フリー(躁)「(議論とは、まず相手を正しく理解することだ(^ω)^ そうやって見えてくるものもある―――。)」



しかもこいつは、私に対して抱いた憤怒と絶望に関してだけは、間違いなく他の誰よりも圧倒的に凌駕している。

いちご―――こいつほど、フリーれいかを憎んだ男は史上にいない。

言わば、いちごの用いる強さは絆の全否定だ。

人の話を聞かない、理解しない、自分の都合のいい結果を真実として行動する。

そしておそらく、だからこそ今。

段違いの凶悪さを発揮しているのだと、想像するに容易かった。



―――では我の戦う目的はなんだ?



―――我は何故戦っている?



―――いちごを倒すために、それを言葉にしないと勝てないのなら。



フリー(躁)「だから我も、我の『真実』をここに告げよう(^ω)^」



、決意も新たに向き直り、反論を開始する。

迷いなど微塵もなし。

これから放つことが、せめてもの贈る答えだ。



No.7いちご「———ッ!! 来いよフリーぃぃいいいッ!!」



もーちゃん「!? 無理なのッ! 鬱病に議論なんて無理なのッ!」



フレッシュ「ファイナル議論が始まったッ! サイコパス同士の言い争いに決着がつこうとしているッ!」



―――サイコパスと呼ばれる者たちは二種類に分けられる。



人を殺すことも厭わない鬼。

皆と違う行動を取ることを躊躇しないはぐれ者。



前者はいちご。




似た者同士のサイコパス。





人を愛していないのが―――いちご。

誰彼構わず己の鬱憤を晴らそうとする。

その気概は負の方向に突き抜けているが、絶対値だけで見るならやはり凄まじい。

確かにその意志力には感服する。

そうまでして負を撒き散らさなければ生きられなかった過酷さ。

健常者にはきっと分からない絶望。



そして―――



『れいか』や一般人に関係なく、人は、結局のところ群れないと何も成せない。

それは歴史が証明している。

進化の過程で共存したほうが有利であると結論した。

だから群体的な性質を持つに至ったのだ。

それはニコ生でも同じ事。



愛とはそこから生まれた概念なのではないか?



互いに慈しみ。

愛し合い、守り合い。

殺される可能性を低くしていくためのシステムとして成立させた。



自分が殺されたくないから殺さない、つまりはそういう極論。

それを効率的に回すのが愛なのではないか?

だから、愛し愛されることはこの上なく気持ちいい。



―――



学術的には、サイコパスと呼ばれる存在。

自己中心。

共感不全。

いちごちゃんがまさにそれ。

だから彼は人を愛さないし、その手のことを気持ち悪がる。






―――では逆に、





フリー(躁)「我が鬱病のような人間だと言ったな(^ω)^? 否定はしない(^ω)^ 我は鬱病だからな(^ω)^」





―――極端に言うと、




フリー(躁)「道理は分かる(^ω)^ 理屈も分かる(^ω)^ 我がいわゆる悪性だというのも理解している(^ω)^ だが、我はやめられない(^ω)^ 他に方法を知らないんだよ(^ω)^ だって我には心など無いのだから(^ω)^」



不器用なフリーれいかは『れいか配信』という行為でしか外の世界と繋がりを持てず、ただ単純に他が出来ない。

もしくは知らないのだ。



赤ん坊が泣くことで全ての感情を表現しているように。

彼は『れいか配信』でしか人と関われないのである。



フリー(躁)「いや、正確には納得が出来ない(^ω)^ 作りの乱れている世界が許せないのだよ(^ω)^ だから平等にしないと気が済まない(^ω)^」



だからこっちを見てくれ、見てくれと言いながら荒らし誘導を行う。



いつか気づいてほしいと願うから、彼は他人の動画を垂れ流す。



タブーを犯しているのが分かっていても、他に手がないからやめられない。



やめて繋がりを断たれてしまうのが耐えられない。



君に触れたくて、触れられたくて、構ってほしくて。

愛しているから、何より共存を望んでいるサイコパス。



人を愛し、愛されたくて、だけど愛の概念を体現することが出来なくて。





―――それを『フリーれいか』は探し求めている。




―――ずっとずっと、果てて消え行くそのときまで・・・。






人との、世界との繋がりを持ちたい彼が、『れいか配信』という群体の禁忌を犯さないとそれを実感できない。




それは矛盾であり―――そして悲しい。




いちご「・・・。」



フリー(躁)「おまえは私のことが嫌いだろう(^ω)^ 危険な奴だと思っているだろう(^ω)^ その直感は間違っていないんだぞと、懇切丁寧に説明している私は自殺志願者だな(^ω)^ だからここでお前に殺されても、そこそこに本望だろうと予想する(^ω)^ しかし、あえて抗いたい(^ω)^ 足掻くよ、我は―――やはりまだ死ねない(^ω)^」



命乞いと言うにはあまりにも決然としてて。

執着と言うには悲しいほどに他人事めいていて。



心が無いと言った彼は、その何たるかをずっとずっと追い求めている。



フリー(躁)「愛とは何なのか(^ω)^? 人が共存していくために生み出した概念なのは分かっているが、それは方程式を解いただけだ(^ω)^ そこに生じるエネルギーなど、私は理解も実感もしていない(^ω)^ だから矛盾した行為に走っている(^ω)^」



もーちゃん「————————。」




―――みんと帝国『横飛おうひ』もーちゃん 出血多量で死亡。




フリー(躁)「どうすれば愛せるのか、愛されるのか、その力を持っていると言えるのか(^ω)^? 知りたいがために、我は戦おう(^ω)^ その果てに得られる、我だけの―――結局は無駄かもしれないが、それでも少しは、作りの良い人間になれるのかもしれないな(^ω)^」



明らかに慣れていない、とても苦労して作り上げようとしているのが分かるぎこちなさで。

彼は静かに、切なくはにかみながら―――世界を変える。




フリー(躁)「———『夢野秘密子ゆめのひみこの相』(*ˎ ო ˏ*)」



No.7いちご「なッ?!?」



フレッシュ「ッ??!」



世界そのものが軋んでいるような錯覚、建物自体が震撼している?

いや、静止している―――?



No.7いちご「―――!?」



フレッシュ「この砂ぼこりを完治リフレッシュするッ!」



とても、正気のまま乗り切れる修羅場ではない。

何が起きたか分からない。

落下していたと思ったら、いつの間にか地面に棒立ちだったのだから。



No.7いちご「(油断したぜッ。あの鬱病野郎の言葉に気を取られすぎたッ。言ってることがよく分からなくてリアクションが取れなかったッ! さっさとトドメの議論をぶちかませば勝てていたッ! そして『弾丸論破ダンガンロンパの相』ではなく『夢野秘密子ゆめのひみこの相』ッ! そりゃあそうだ! あいつは七つの相を使うって俺は知っていたのにッ! 今度はどんな能力なんだッ!?)」



フレッシュ「いたッ! あそこだわッ!」



彼女が指さす先、すぐ近くに躁王は立っていた。

ありったけの”世界”を身に纏いながら降臨していた。



フリー(躁)「んあー(*ˎ ო ˏ*) ウチの起こす事象はマジックであるぞ(*ˎ ო ˏ*)」



大きなとんがり帽子が特徴的な魔法使いは、その指を天に掲げる。

つられて、頭上を見上げる二人は揃って驚愕する。





フリー(躁)「ウチは勝つよ(*ˎ ო ˏ*) たとえウチを巻き添えにしても(*ˎ ო ˏ*)」



―――



フレッシュ「躁王の能力?! マンモスは既に落下を止めていて、それで私たちも落下を止めていて、それでそれで―――全然わかんないッ!!」



No.7いちご「おい女ッ! テメェの完治リフレッシュとやらはマンモスに効くのか?! どうなんだぁ~ッ!?」



フレッシュ「えっ!? い、いや、無理よッ! 私が治せるのは現象だけッ! 物理的な攻撃は返せないッ! というかあなたは誰なのよッ!」



触れれば爆ぜるニトロの竜巻とでも呼ぶべきか。

それほどまでに、落下してくる”死”は破滅の音を招き、混乱は最高潮へと達する。

それだけ、これは不可思議な異常事態。



No.7いちご「(やばいぜぇ~ッ! このままじゃマンモスで圧死だッ! いや、絶対に死なないッ! 俺がこんなところで死ぬわけがないッ! こういう時の為の異能だろうが! 俺の都合のいいように世界が回る異能ッ! はやく何か起これよぉおおぉおおォッ!!)」



フレッシュ「も、もう落ちるッ!! きゃああぁぁぁぁあああああぁッ!!」



落下による圧死まで―――ほんの数秒の猶予。

よって、ここが真なる勝負の際。

原因はなんであれ、その結果で全てが決まる。






が、そのとき―――。






とつれいか「なんの騒ぎだよ~? ———え?」






ひょっこりと、





No.7いちご「———ッ!!」



刹那の一瞬、彼らの思考回路が極限まで研ぎ澄まされる。

気付いてみれば簡単なこと。

踏みしめた床が変わっていたことに今更気付くのだ。



フレッシュ「―――ッ?!」



全ての障害を駆逐するマンモスの墜落。

それが、機械造りの壁に当たって終わっていたのだとしたら?



フレッシュ「(ありうるッ。もーちゃんのせいで固有結界に閉じ込められていた際、既に墜落し終えていたとしたら? そして躁王はもーちゃんが力尽きたタイミングを見計らって―――)」



この間、一秒にも満たず。

殴りかかるような勢いで身体が動き、はその窓へと駆けこむ。



No.7いちご「どけテメェ! 俺が入れねぇだろうが邪魔だ!」



とつれいか「ぎゃっ!」



強烈なボディーブローをお見舞いされ、気絶しながら中へ落下する謎の人物。

湧き上がる疑問は数多あったが、いちごとフレッシュは機械建築物の中へ”侵入”する。



フレッシュ「(内部はさっきまでとは違って明るい! けど、これは―――)」



No.7いちご「(なんだこれ、色もない、音もない、静寂―――)」



この、













フリー(躁)「———『夢野アンデスの相』(´・ω・`)」





No.7いちご「!? しまった―――」



またもや世界は切り替わる。

躁王は頭突きに近い体当たりをいちごに喰らわせる。

直後、マンモスの墜落によって号砲のごとく大音響が発生した。



フレッシュ「くっ―――?!」



暴風と衝撃波が、いかに小窓からとはいえ効力は充分。

常人ならば、直立どころか即座に跳ね飛ばされてしまうだろう。



No.7いちご「やっと頭が回ってきたぜッ! そうだよな、もう落下論破合戦は終わったんだッ! つまり肉弾戦も容易にこなせるッ! つかなんだお前?! 顔デケェな!? なんでそんな奇形になってんだッ!?」



フリー(躁)「ワイなぁ、現役のお笑い芸人なんやで(´・ω・`)?」



お互い、マンモスの墜落から九死に一生を得たことなど、とうに忘れている。

見事な体捌きで回し蹴りを放ち合う。



No.7いちご「ここが何処なのか、それも重要だが俺にとっては今じゃねぇッ! テメェとの決着はまだついてないんだぜぇえええぇッ!!」



フリー(躁)「———『弾丸論破の相』(^ω)^ やはりU2部隊がいなければ、他の相を使える時間が限られている(^ω)^ まあいい、これで結構(^ω)^ 元より茶番な喧嘩だ(^ω)^ 派手な能力を見せびらかせ、格好つけてやるものではない(^ω)^」



No.7いちご「・・・なんだぁ? またコロコロと顔を変えやがる。」



フリー(躁)「我はこの相でお前に勝ちたいのだ(^ω)^ 議論で勝ちたいのだ(^ω)^」



ここに両者は、先ほどまで失せていた闘志の光が戻ってくる。

色々と何か起こっていたようだが、半分近く記憶にない。



フレッシュ「な、なんでまだ戦うの!? この場所は何処なのか、それをまず明らかにすべきでしょ!? 端的に言って異常よッ! 絶対に良くないことが起こってる! それにッ、気絶したこの子! まだ他に人がいるかもしれないッ! それがもしも敵だったら? 私たちは不法侵入しているということに―――」



No.7いちご「うるせぇなぁ黙ってろガキッ! 俺にとって都合の良いことだけが起こる! 俺がここで戦うことが正しいんだッ! そうだろフリーれいかッ!」



にやりと意地悪く笑ういちご。



フリー(躁)「ああ、続きをしよう(^ω)^ フッ、とても清々しい気分だ―――」



それに返すように、躁王もまた笑うのだった―――。









―――――――――。

――――――。

―――。









―――みんと帝国 異世界転生サーバールーム




No.4どりゃれいか「やっぱり実戦に参加してないと勘が鈍るね。もーちゃんの異能は躁王の考察が正しかったわけか。」



レトさん(本物)「こうしてみる限り、。」



No.4どりゃれいか「まさに堕天使。自らの現実を本人が一番理解していなかったってオチか。やれやれ、不完全燃焼だねこれは。」



面白くなさそうに、そして興味が失せたかのように、淡々とデバイスを操作するどりゃれいか。

いや、他のことに興味が移ったと言ったほうが正しいか。



レトさん(本物)「不完全燃焼? なんだよ、あれだけお前『攻略を始めようか』って決め顔かましてたのに。」



No.4どりゃれいか「謎が解けたものほどつまらないんだよ。むしろ解けない方がいい。君だって分かってるだろう? 今の僕はこっち。躁王達が侵入した空間について知りたいのさ―――」






No.2田中みこ「———。」











U2部隊No.2『無極むきょく』紫電忍者―――田中みこ、到来。





レトさん(本物)「は? 田中みこ?! くそっ、もうこの場所がバレたのかッ?!」



No.4どりゃれいか「はぁ~っ。本当にタチの悪い異能だよね。しかもこの『お邪魔します』は異能発動時の常時効果。。存在がジョーカーなんだよね。『物語』ではなく『世界』を廻す。僕とは真逆の異能だ。」



深いため息をつきながら、その来訪者に目も向ける。

相も変わらず、その姿は桜が舞っているかのように華麗で美しい。




レトさん(本物)「なんで落ち着いていられんだ! ”あの”田中みこだぞ!? ロクでもねぇ用があるに決まってるッ!」




No.2田中みこ「みこ、探した。なにやら隠れて面白そうなことをやってるみたいだから。———ふわっと小学校のことは忘れる。今のみこはただのお客さんとしてここに来てる。」



警戒を解くような可愛らしい笑顔ではにかむ田中みこ。

その裏側には濃密な”死神”が潜んでいる。

事実、その手には田中みこの愛刀も握られている。



レトさん(本物)「冗談きついぜ。茶でも用意しろってか? こっちは何も状況が整理できてないってのに―――」






上田「———いや、俺にはカップラーメンを用意してくれよ。」







部屋の扉が開け放たれる。

田中みこの登場より、こっちのほうが正しい入室。

その普通すぎる入室に呆気に取られるのも束の間、入ってきた人物にどりゃれいかは驚嘆する。

思わぬ来訪者に気分転換?

―――もはや、そんな次元の問題じゃない。



No.4どりゃれいか「みんと帝国一番隊隊長。駒名は『毒蛇どくじゃ』。敬称は『上様』。名は上田。殺戮部隊の隊長がサーバールームにどういう用件かな? まさかただお喋りにきたって訳じゃないよね?」



立ち上がり、警戒を露にするどりゃれいか。

レトさんに至ってはさらに当惑し、神妙な顔と声を作ってしまっている。



レトさん(本物)「みんと帝国の参謀か・・・。結局は”お前ら”も躁王の行方が気になるってところか? そんで一人じゃ敵わねぇから田中みことつるんで来たのかッ?」



それら二人とは対極に、豪快に笑いながらその男『上様』は告げる。



上田「まあそういうことだな。このみんと帝国に複数の侵入者。噂に聞こえたどりゃれいかの武装異能。裏でこそこそと監視でもしているのかと勘ぐっていたが、大当たりだった! あっはっはっはっ!」




そのままゆっくりと歩いて―――。




上田「どりゃれいか。? ? 。」




がらりと気配が変わり、超度級の殺意が充満した。




レトさん(本物)「———ッ??!」



それが意味する結果は一つしか無い。



No.2田中みこ「どりゃれいか。そして雑魚一名。血を流す覚悟はできたみこ?」



No.4どりゃれいか「あまり真面目に捉えたくないなぁ。君たちとの会話は疲れるよ。それにさ、僕を殺したら僕の異能も消えてしまう。つまり、二度と躁王の行方を追うことが出来ないんだよ? 君たちだって知りたいでしょ? あの大穴がどこへ繋がってしまったのか。」



上田「ここから先、おかしな動きを少しでもしてみろ命はねぇぞッ! それにな、―――」







―――――――――。

――――――。

―――。








―――みんと帝国 最下層 天窓回路




れイカ「星海『北海』! ———さて、眷属召喚はこのぐらいでイカがかしらぁ?」



かつて、いちごが飛び降りた場所。

それを取り囲むように、海の生物が降下の準備を進めていた。



たこれいか「侵入者死すべし! 真っ黒に塗り潰してしまいますっ!」



貝塚勃起Syamu「こんなんおまえ、誰も降りる訳ないと思うんですけどねー。オフ会ゼロ人だと思うんですけどねー。」



がうる・ぐら「——————『a』。」



ソードフィッシュ「れイカ様の御心のままに。必ずや、侵入者を駆逐してご覧に入れましょう。」



れイカ「あなたほど責任感が強く、そして仕事が早い部下はいない。この小隊で指揮官を取りなさいソードフィッシュ。任せましたわよ。玄武げんぶ』。あなたの腕を期待していますわ。」



激励を放ち、



その瞬間、



ソードフィッシュ「了解。RTAを開始する―――。」



二刀流を抜刀し、三体の軟体動物を引き連れ、その執行者は降下した―――。







―――――――――。

――――――。

―――。






―――世界の裏側 とある部屋にて




ここは非戦闘区域。

ありとあらゆる異能を跳ね返す。

そんな材質の建材で、四方八方が白く囲まれている。




―――そこは静寂に包まれていた。



―――



―――それを見つめる科学者がいた。





たかっち「侵入者の介入、寝る時間もないのにハードだね。」









たかっち「まずい。とつれいかが巻き込まれている。。」






姿





たかっち「それに上田。彼も同じだ。非常にまずい。いや、既にピークが来ているのか。そろそろ方針を決めなければいけない。―――」







―――――――――。

――――――。

―――。








―――世界の裏側 とある通路




~躁霊視点~




No.7いちご「清々しい気分だぁ~? へっ! さっきの訳分かんねぇ自分語りでなんか吹っ切れたのか!?」



フリー(躁)「———我は初めて自分の意見を世に出した(^ω)^ 胸に秘める思いとやらを解放した(^ω)^ これが真の”議論”なのだな(^ω)^? 我はその入り口に今立ったのだ(^ω)^! さて―――」




躁王は、いちごは、等しく思った。




そんな小難しいことではない、本音を言おう。




自分たちは戦いたいのだ。




No.7いちご「———ケリ、つけようぜ。」



俺とお前はどちらが偉い?

そんな感情に支配されていることを否定はしない。




フリー(躁)「そろそろ舞台から退場しろいちご(^ω)^ ふっ、そういえばどこかの傍観者が戯言を吐き捨てていたな。」




―――『フリーれいかといちごの勝負なんて、いったい誰が見たがるのか。』

どりゃれいかの言った言葉。

それに反発するように、いいや、事実反発しているのだろう。

極上の笑顔で終戦の合図を口にする。



フリー(躁)「(^ω)^!」



フレッシュ「(わ、私はどうすればいいのッ!?)」




僅かではあるが、しかし確実に『物語』は瓦解していく。



その流れはもう、誰にも止められない―――!




つづく。






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