EP2 躁霊の夢に捧ぐ
第26話 王の君臨
―――これはもはや、他人事ではない。
フリーれいかの『躁うつ病』は分離し、新たな生命として産まれたこと。
『・。・』を残すための妄想劇が産まれたこと。
―――その全てが必然だった。
『・。・』の喋る内容は主語が曖昧で、この『物語』においてもそれは反映されている。
ネットによくある言葉なのだろうが、寒気がする。
頭がわいているとしか思えない。
もう一度言うが―――これは他人事ではないのだ。
誰も自分が『・。・』だと気づいていないだけなのだ。
『・。・』という奇形児の増長。
奇形児による現代社会の衰退。
夢と現実を、ルールと尊厳を混ぜこぜにした妄想劇。
そんな”彼ら”の物語―――始まりは必然だった。
ならば終わりは何処に?
数々の謎を具体的に解き明かす時間はいつになったら訪れる?
そう。
物語はここで折り返し地点に入る。
無論、まだ何も終わってなどいない。
確かに『彼ら』は勝ち取った。
U2部隊であるKent、みんと帝国のhmm、同じくみんと帝国の烏骨鶏を殺害、終いに北上双葉を返り討ちにした。
並びに敵の本拠地『ふわっと小学校』を制圧、現実世界への帰還方法の確保など。
鬱霊率いる『彼ら』の戦いは一つの結果―――”勝利”へと辿り着いたのである。
しかしまだ本質的には終わっていない。
そう、鬱霊だけで決められるものではないのだ。
フリーれいかの『躁うつ病』・・・。
鬱霊とはまた別にして生まれ落ちた、究極にして最低最悪の闇。
現実世界を、さながら世紀末の如く、戦火飛び舞う世界に変えたいという、自分勝手な妄想を止めてやるためにも。
フリーれいか「俺は・・・俺の”躁霊”も救ってやりたいッ!!」
『彼ら』は抗うことに決めたのだ。
鬱霊と躁霊、すべての『れいか』を救う第三の道を。
フリーれいかの『躁うつ病』、それが物語を解き明かす全ての鍵なのだ―――。
「北上双葉さん、聞かせてくれなのだ・。・ みんと帝国で何があったのだ・。・?」
だからこそ。
鬱霊の戦いに区切りがついた以上、ならばこそもう一つの闇を理解しろ。
フリーれいかの『躁うつ病』を、私たちは何も知らないのだから。
No.9北上双葉「全部話すよ。私たちの惨敗を。」
物語は一旦、過去に向かって逆巻き始める。
舞台は『みんと帝国』最上階にして、異常なる香の祭壇。
二人の王が衝突する。
これは、現実を認められない滅王同士の戦いである―――。
―――みんと帝国 香の祭壇
~躁霊視点~
フリー(躁)「私がこうして出てきた以上、もはや逃がさん、覚悟しろ(^ω)^」
軽やかな足音を響かせるとともに、空気が邪悪に歪んでいく。
異世界の創造主、全ての黒幕、U2部隊の長、鬱の根源。
フリー(躁)「七つの相”追及”―――『
彼は嗤っている。
暴虐武人な力の解放に、そして全力を行使できることに。
フリーれいかの躁霊は―――異世界を終わらせようとしている。
そしてそれは、相対する彼も同じ。
みんと「———『
彼は慈しんでいる。
どうしても理解してくれない目の前の罪人を。
薬物中毒でお前も堕としたい、それで救ってやりたいという曇りなき慈悲の心で。
みんとvsフリーれいかの躁霊。
世界征服を企む者同士、思想がこれほど真逆な対面も珍しい。
フリー(躁)「無防備がすぎる(^ω)^ 俺の”追及”は手に負えないぞ(^ω)^?」
他者との関わりを求めたい。
構ってもらいたい、殴るから殴り返してほしい。
そういう”勇者”を世界中に増やしたい。
―――それがフリーれいかの躁霊。
みんと「それがどうした? 私の香を気楽に吸えよ。恐れるべきではない。」
他者との関わりを断絶したい。
世界とは一人であるべき、薬物による夢で閉じこもっていたい。
そんな”桃源郷”で世界を救ってやりたい。
―――それがみんと。
真逆。
波長など合うわけもない。
二人の衝突は不可避でしかなく、停戦や同盟など決してあり得ないのだ。
No.9北上双葉「ボスの異能、なんて脈動ッ―――!!」
無論、この場にいる猛者達もそれは同じ。
フリーれいかの躁霊率いる軍隊。
U2部隊の称号を与えられた三名。
No.6 BUNZIN「・・・おかしな霧だ。一片の敵意すら感じないとは。」
No.3日常演舞「僕たちも動きましょう。速攻で狩らせていただきましょうか。」
王を護る為、三人のU2部隊は戦闘態勢を取る。
邪悪なオーラに怯むことなく。
焦りや恐怖と言った表情すら見せることすらない。
みんと「・・・あああぁぁ。悲しいよ。”お前”は報われてくれ。」
流石のみんとでも、四対一では分が悪いか。
いくら怪物の帝王だろうと、しょせんはたかが一人の王。
これでは勝ち負けなど見えている。
否、そうではなかった―――。
とまと「お前の歴史を、俺の『
べこれいか「べこってやるよ。私の『
小鳥遊君「我の妄想に震えろッ! 『
パイナップル葉田「いきなりキングは取れねぇだろうよい・・・?」
―――”そいつら”は現れる。
王を護る為に、ならば護衛が現れるのは当然のこと。
そう、彼らは香に溺れた忠実なる下僕。
まさしく、みんと帝国の精鋭達ッ!
No.3日常演舞「・・・気付いていましたよ。あなたたちが潜んでいたことぐらい。まぁ、出てくるタイミングだけは合格ですね。」
これで人数は五対四!
数だけで言えば逆転、いや互角か?
No.9北上双葉「っ!!? そうかっ! 葉田とかなんか聞き覚えのある名前だとは思ったっ! 私はニコニコにも『
No.6 BUNZIN「はっ! 誰がどんな連中だろうがどうでもいい。私にとっては全てが餌。等しく雑魚にしか見えない。」
パイナップル葉田「”あいつ”から聞いてるぜ? お前が獰猛の番犬、発泡スチロールのケルベロス、BUNZINか。本当に俺と同じケルベロスとはなぁ? 俺の力とお前の力、どちらが強いのか楽しみだ。同じ三つ首どうし、仲良くしようぜぇええ?」
観葉植物の化け物は首を鳴らす。
確かに、ここまで豪勢な面子が揃うのも戦場では珍しい。
誰もが、これから起こるバトルに期待し、顔に笑みを作っている。
No.3日常演舞「———くだらない。僕とは立っているステージが違う。」
否。
それこそ否。
笑みなど、No.3だけは笑みなどありえない―――。
とまと「ほざけッ、終わりだああああぁあああぁぁッ!!」
べこれいか「その首ッ、べこらせてもらうううううぅぅぅ!!」
先に仕掛けたのはみんと帝国!
あらんかぎりの嵐と異能と浸食を。
香の海を広げる為、彼らは一斉にU2部隊を攻め立てるッ!
No.3日常演舞「・・・。」
No.9北上双葉「迎撃するよ〜! 『
パイナップル葉田「(馬鹿が、かかったっ!)」
牽制に繰り出された銃撃を見て、観葉植物は勝ちを悟る。
その程度の迎撃など、恐るに足らず。
―――観葉植物はケルベロスなのだから。
パイナップル葉田「俺の『
No.3日常演舞「だから、いい加減にしてください―――。」
その時、確かに聴いた。
明らかに落胆したようなため息を、観葉植物は確かに聴いた。
No.3日常演舞「そういう平凡な技の
彼は静かに両手を広げる。
天高く、どこまでも高く掲げ、それを・・・言葉にして開園する。
No.3日常演舞「
―――それは、これまで聞いたそのどれよりも、やる気の感じられない力の解放。
べこれいか「がっ?! はあぁぎゃっツるぁだァッ?!」
最初にべこりと、膝を折り曲げ、倒れ込む。
とまと「うおっ!? あ、ああッ?!? ああッぁああぁ?!? ああがっがぁっががッ、ぎゃぅぐるグァあッ!!」
次に倒れ込むは、悪コメ四天王という忌み名で呼ばれていた赤き悪魔。
その顔は苦痛に歪み、酸欠らしからぬ真っ赤な顔となり、まるでトマトのよう。
パイナップル葉田「ぐはぁっ!! な、ん、だぁぁ?! ぎィッ! ぐばぁラがぁぶギゃがあぁぁッ!!」
己の異能に自信を持っていた観葉植物も・・・憐れ、同じ末路。
何が起きたのか、そもそもそれは攻撃だったのか。
誰の、何に、どんな攻撃でやられたのか、理解できずに絶叫する。
想像を絶する痛みに、絶叫する。
―――日常演舞の第一開園能力、それは会場の検閲。
第一の開園とはすなわち、初めの開演にして入り口。
演舞とは戦い。
それに参加するための審査、資格があるかの査定。
資格を持たぬものは演舞に参加することもできず苦しんで死ぬ。
小鳥遊君「えっ? えぇっ!? なんですかこれっ! 冗談ですよねっ!?」
ただ一人、小鳥遊君は資格を持っていたが故に無事だった。
突然起きた仲間の負傷を、訳が分からないという様子で立ち尽くす。
No.3日常演舞「ふむ。どうやらあなたは心が綺麗のようだ。さて―――。」
小鳥遊君「・・・何を、うちの仲間に何をしたんだよッ!!」
吹き荒れる異次元の力。
小鳥遊君は怒っていそうな口調なれど、冷静な観察眼にて敵を探る。
正体不明の攻撃の正体を探ろうと、これまで以上に慎重に―――。
No.3日常演舞「
―――二度目の開園である。
これは、隠れ家で見せた戦法と全く同じ。
第一開園を堪えたものには、さらなる演舞の開園を。
No.9北上双葉「・・・何が起こったの。」
味方であるはずの彼女も、呆然とするしかない。
自分はついさっき、銃で迎撃をしていたよね?
・・・でもなんで、どうしてこんな!?
カランカランと、薬莢が跳ねる。
それは北上双葉が撃った銃のもの。
連射が終わった合図。
No.9北上双葉「・・・異能の桁が違いすぎる。」
いや、正確には連射ではない。
ほんの数秒撃っただけだ。
薬莢が落ちるまでの間の、ほんの数秒の出来事。
その数秒で、みんと帝国の護衛四人は音も形もなくその場から消え失せていたのだ。
No.3日常演舞「まったく。せめて第三開園までは耐えてほしいのですが。」
全てはこの男の仕業、演舞開園の第二開園能力。
演舞の参加資格を得たものを、演舞空間という名の謎空間に引きずり込む。
第二とはリハーサル。
演舞ですらない。
No.6 BUNZIN「・・・俺でさえ、委縮する。意味の分からなさで言えば、No.3殿は一段と飛び抜けている。」
獰猛のケルベロスでさえも、この異常な決着に冷汗をかく他ない。
信じられるだろうか。
先ほどの四人はみんと帝国の精鋭。
あのhmmと同程度の強さを兼ね備えていた強者だったのだ。
それが、これ程までにも、あっさりッ。
No.3日常演舞「所詮はれいか。とはいえ、少々ガッカリですよ。」
―――みんと帝国『
―――みんと帝国『
―――みんと帝国『
―――みんと帝国『
No.3日常演舞「さて後は・・・あなただけです。」
その言葉を呟くと同時に、日常演舞は香王の眼前に高速接近していた。
相手の顔面近くまで急接近する戦法は、この男の常套手段の一つ。
虚を衝くには有効的な一手。
No.3日常演舞「!?」
さりとて、彼は確かに見ていた。
しぐさ、初期微動、反撃のタイミング、どれをとっても対処できるつもりでいた。
みんと「あぁ・・・。悲しいよ。俺は、悲しい。」
No.3日常演舞「(この男ッ、僕を見ていないッ。)」
気付くと同時、香王の手が前に出る。
それは、なんの敵意も感じない挙動。
No.3日常演舞「・・・演 舞 開———。」
開園さえすれば勝利できるこの男が―――躊躇する。
No.6 BUNZIN「どうした!? 開園さえすれば、なんだかんだで勝ててしまうのに、どうして止める必要があった!?」
みんと・・・彼は一体何物なのか?
そんな一人の男が、ましてやフリーれいかと同等の位を持つとはどういうことなのか。
分からないことは数多あったが、それでも確実なことは存在する。
No.3日常演舞「(間違いありません。あのままいけば、僕は死んでいた。)」
日常演舞は攻めではなく回避を選んでいた。
長年の経験とカンから、最適解が回避であることを直感したが故に。
No.3日常演舞「しかし僕が回避を? とんだ恥ですね。」
みんと帝国の精鋭四人を退けたこの男が、さらなる力の差を実感する。
ここに、格付けは完了される・・・。
フリー(躁)「やれやれ(^ω)^ 私の出番を邪魔するから、そのような醜態を晒すのだ(^ω)^ ———この男は私にしか殺せない(^ω)^ 下がっていろ(^ω)^!」
No.3日常演舞「・・・出過ぎた真似でした。これが、香王ですか。」
みんと「あはは、あははははははははは――――!!」
膨れ上がる香王の紫霧。
神秘的な光景でありながらも、その実態は薬物の粉にすぎない。
No.6 BUNZIN「あいつ・・・嬉しがっているのか?」
そう。
香王みんとは、最初からフリーの躁霊だけを見据えている。
他の雑魚には目もくれていない、見ていない。
味方のはずの精鋭たちの散り様すら見ていない。
あるのは感覚だけ。
―――香王は、ようやく訪れた一対一に歓喜しているのだ。
これは王と王の戦い。
決して、部下ごときが介入していい戦いではないのだ。
あの日常演舞ですら、邪魔をすれば絶対に死ぬであろうレベルの戦い。
みんと「何かしたか? 来なければこちらから行かせてもらう。」
みんとは最初から、フリーの躁霊に対してのみ、まともな会話をしようと試みているのだ。
そこに他の人物が入る余地もあるわけがない。
フリー(躁)「望むところよ。そういえばタイトルコールがまだだったな(^ω)^ それでは今度こそ始めよう(^ω)^ 王同士の戦いを、異世界の終焉に相応しい戦いを(^ω)^!」
ここに、戦いの幕は切って落とされる―――。
―――第26話 王の君臨
すべては幻、夢から夢へ。
この物語は”無い”ものだ。
まともに見るな、気が狂うぞ?
みんと「———無いモノを形作る。それが俺の目指す桃源郷。」
今、眼前で展開していく香王の異能は、U2部隊から見ても奇怪極まりないとしか表現できないものだった。
仮にU2部隊総員で相手取っても、役者が足りぬということは有り得ない。
フリー(躁)「何にせよ、加減の必要はなさそうだ」
その異形から漲る弩級の神格。
単体としてこれほど強力かつ巨大なものは、この場の誰にも覚えがない。
No.6 BUNZIN「全力で行かなければ、死あるのみか。」
これより、超絶の神話が始まるのは間違いないと言えるだろう。
回れ回れ、酔い痴れろ。
無限の香が沸き返りながら溢れ出す。
―――香の海が、異形のようなものを生成していく。
みんと「幻とはつまり、二次創作。正道を無視した妄想から発生し、にも関わらず支持を受けて存在感を得るに至る。本来そこに”無い”物だ。」
異形は大衆の夢を吸って成長するのだ。
みんと「―――『
瞬間、対峙していた四人は、起きた事態の壮絶さを理解する。
みんと「ああ、そして彼らは救われた。いいぞぉ、輝ける未来。降り注ぐ夢が見たい。まどろみの音色を聞かせてくれ。」
実にこの時、爆発的に広がった『
中国はもちろん、インド、モンゴル、ベトナム、ミャンマー、パキスタンその他もろもろ。
当然、日本も言うまでもない。
そこに住まう人々は、全員が夢見る薬物中毒者に成り果てた。
思考の桃源郷を感じながら、彼らの救世主である香王に向けて感謝の意を歌っている。
―――香王の異能は、異世界と現実の壁を容易く乗り越える。
今このときも増え続ける香王の眷属。
すでにその数は30億を超えんとしている圧倒的と言うにも凄まじすぎる大軍勢。
みんと様最強!wと、30億人が痴れた音色を繰り返す。
みんと「笑ってくれお前たち、楽しい夢を見てくれよ。あははははは―――!!」
そんな現実の支持者達が、異世界に幻として反映され、異形は30億の触手となって顕現する。
神なる幻は、人の願いから生まれ、信仰を集めて顕現できる。
これが香王―――みんとの『
No.6 BUNZIN「全員、散会しろッ!!」
もはや、建物など意味を成さない。
祭壇は溢れんばかりの触手に蝕まれ、崩壊していく。
だが流石というべきか、U2部隊は全員が回避を成功させていた。
No.9北上双葉「・・・どうやら、みんとは具現化系の異能。でも、分かりきってはいたけど、流石に手強い。」
No.3日常演舞「どうしようもない物量差ですね。これをどう覆してやりますか?」
フリー(躁)「簡単な話よ(^ω)^ 奪い返して塗り替えればいい(^ω)^」
しかし、躁王は揺るがない。
いつものように分析しながら、計算の狂っているとしか思えないことをさらりと言う。
みんと「怒るなよ。そんな顔をするな見ていられない。お前は笑ってくれ、楽しい夢を見てくれよ。」
全方位から這い上がり殺到する無数の触手がU2部隊達に襲い掛かる。
フリー(躁)「あの異能は現実に影響している(^ω)^ 薬物によって支持者を造ったというところだ(^ω)^ これ一つでリスナーを何十億と生み出せるのだ(^ω)^ ふふ、いかにも私の『夢』が浮かびそうな異能よ(^ω)^」
要は選挙のようなものだろう。
現状、U2部隊の支持率が足りんというなら、一席ぶたせてもらうまで。
フリー(躁)「まあ、論より証拠だ―――反論(^ω)^」
躁王は空中で静かに―――”鋭剣”を抜き放った。
その刃は、眩い光を照らして面を晒す。
フリー(躁)「反論対象、有象無象、抜刀(^ω)^」
―――フリーれいかの躁霊の七つの相『
壮絶なほど純化された”死”というオーラが剣から流れ始めた。
それは群がる触手を薄れさせ、彼を中心に放射状の空白地帯が現出していく。
No.9北上双葉「剣を構えただけで、触手の動きを止めさせたっ?!」
フリー(躁)「これが―――『
その反論から目を逸らしてはいけない。
フリー(躁)「情けない、情けないぞお前たち(^ω)^ 戦うことから逃げ続け、薬に依存し、いったい何処へ辿り着ける(^ω)^? 気に食わんなぁ、喝を入れてやる(^ω)^ こちらが殴らなければ、お前たちは動けもしない(^ω)^」
―――彼はそのまま、
飛翔する神威の一撃。
そこに破壊という印象はなく、静粛に、剣を中心に無音の世界が溢れ出す。
それに呑まれた触手たちは反撃する暇もなく消え去っていく。
その様子を眺めながら、躁王は苦笑した。
フリー(躁)「なんだおまえたち、そんなに私が怖いのか(^ω)^?」
剣は今このときも群がる触手を討伐し、戦果を拡大し続けている。
だが―――躁王の支持率は依然まったく変わらないどころか、むしろ下がり始めているのだった。
すなわち、恐れさせることは成功しても、畏敬や尊敬を勝ち取れてない。
No.9北上双葉「反論が効いていない!? 剣の勢いも徐々に減っていってる!」
みんとは異能によって30億人の心を掌握している。
言い換えると30億の支持率、いわゆる力の源。
支持率は『
この戦いを見てどちらの王を好むべきか、勝敗は視聴者に委ねられていたということだ。
No.6 BUNZIN「あのハーブ野郎は現実にいる人間たちの欲望を力にしていると、そういう話だったか? つまりは単なる力押しじゃ勝てない。だからボスは、逆にその欲望を奪って己の力にするという戦法を狙った。・・・けどこれほどにッ!? 人間の薬物依存は、我らのボスのカリスマ性すら上回るというのかッ!?」
・・・いや全くその通り、当たり前だ。
ただのパチカス麻雀狂いのネカマに支持率など出るわけもない。
基盤も脆弱、選挙の票数で圧倒的に負けているままだ。
フリー(躁)「困ったな、どこまで私のことを見たのか知らんが、そもそも勘違いをしていないか(^ω)^? いいか、私はパチスロ麻雀だけの人生では決してない(^ω)^」
―――今も、フリーれいかの『
彼の悟りはどういうものか。
求めた未来はどういう形か。
人物像が見えにくいということは、端的に言って損をしていると言えよう。
フリー(躁)「もういい、この”相”では埒が明かん(^ω)^」
そう、嘆息してから―――。
フリー(躁)「―――『
躁王の高笑いと共に、帝国の湾から顕れたのは巨大な黄金の龍だった。
No.6 BUNZIN「い、いきなりかッ?!?」
絶頂、興奮、狂喜乱舞の大喝采で世界が塗り替えられる。
そう、彼は文字通り世界を変えたのだ。
No.3日常演舞「相変わらずの即断即決ッ。あまりにも
まばゆく光り輝く特大規模の神獣。
頭頂部分は、なんと成層圏にまで達している。
これは大震災の化身であり、王を守護する星の意思、地脈が具現化した存在。
No.6 BUNZIN「完全防御『
No.9北上双葉「二次元兵装具現化―――秩序の盾ッ!!」
No.3日常演舞「
主の思惑を理解し、三人はそれぞれが防御と回避を試行する。
同時に、神龍の咆哮。
地脈を走り、音の範囲に入った全ての触手へ超級規模の振動波を叩き付けた。
フリー(躁)「偽善者まじうざいよねアハハハハッ(*'ω'*)! どいつもこいつも本質が見えていないゴミばかり(*'ω'*)! 僕はこどおじじゃないって、一体何度言えば分かるのさ(*'ω'*)!」
―――躁王は龍神の頭頂で仁王立ちしていた。
群がる眼下の触手どもを見下ろし、己の立ち位置に酔い痴れている。
フリー(躁)「僕は皆と違って見下ろす側の人間だから(*'ω'*)! 無職の子供部屋おじさんじゃないから、鬱病じゃないから、お前らニートとは違って色んな事やってるから(*'ω'*)! パチスロ麻雀するだけの人生じゃないから(*'ω'*)! 配信であれだけ自分アピールしてきたのになんで分っかんないかなぁ(*'ω'*)! 昨日は病院の検査に行ってきた(*'ω'*)! 今日の昼飯はペペロンチーノにウィルキンソン(*'ω'*)! 充実した毎日を過ごしてる(*'ω'*)! そうそう、僕は日曜仕事ですうううううう(*'ω'*)!!!」
粉砕、圧壊、少々どころの破壊ではない。
その傲慢なる咆哮は大地の怒りなのだ。
対象物を分解するまで揺り動かしつつ消滅させ、存在すら許さず消し去る一撃。
フリー(躁)「パチで5万勝ったからお寿司買ってきたお(*'ω'*)! 明日仕事;; 明日5時起き;; もう寝ないと;; そろそろ寝なきゃ;; 音いく?Yいく?じゃんたまいく?サミタいく(*'ω'*)? やっぱ寝ようかな;; おすすめのゲームある? 明日仕事だから寝ます;; 映画枠いっちゃいますか? なんかアニメ見る? そろそろ寝ないとヤバい;; このゲーム24時に放送します(*'ω'*)! なにかURLください、じゃんたまやってるわいやああああああああ(*'ω'*)! 音いく? うわ、もうこんな時間じゃん、今日ずっと放送してた;; と、いうわけでね、じゃ、寝ますかね、おたすみぃぃぃィ(*'ω'*)!!!」
自信満々の語りが続く限り、この地震は絶対に終わらない。
『
これこそ、今までとは比較にならない真の悪夢―――。
No.6 BUNZIN「いや、解せない。確かに先ほどまでとは比べ物にならない出力! ただ―――行き当たりばったりにしか見えない! ばらばらで滅茶苦茶! さっきの”反論”とやらは何だったんだ!? あんな
No.9北上双葉「まあ、それがボスですし・・・。」
No.3日常演舞「今のボスは手が付けられないので放っておきましょう。それより、気づきましたか皆さん? ―――これほどの超特大地震だというのに、帝国の建物が無傷です。」
未だ鳴りやまない自分語りの大地震。
全てを粉砕する極大攻撃において、それは奇妙な違和感だった。
No.9北上双葉「あっ皆も気付いてた? やっぱり露骨だよね~。 私たちでさえ完全防御をしないと危ないのに、あそこだけ何の被害も出てないなんて。」
躁王は決して手加減しないし容赦もしない。
ならば―――。
No.6 BUNZIN「ああ、俺の鼻でとっくに気付いていたぜ。あそこだけ妙に力を感じる。」
No.9北上双葉「ボスの暴走が功を成したね。本隊も当然潜んでいたか~。」
―――すなわち、第三者の介入である。
No.6 BUNZIN「ヒャォッッ!!」
違和感の正体を探るために、獰猛の流星が建物目掛けて疾駆する。
彼のスピードと破壊力ならば、壊せぬものなど何もない。
No.6 BUNZIN「そろそろ目障りなんだよ、反逆してぇんなら隠れてねぇでかかってこいッ!」
彼の牙が壁に触れたその瞬間―――色が崩れた。
No.9北上双葉「二次元!? 違う、あれは絵具!」
例えるならそう、インクの海に腕を突っ込んだような感触。
とぷん、とBUNZINの腕が衝撃もなく透過する。
No.6 BUNZIN「関係ない、このままもろとも押し潰すッ!!」
背景ごと切り替わるように、その建物は周囲の霧と交わい溶けていく。
一見すると粉砕できたかに見えたが―――。
否、その牙はある一人の男によって止められていた。
神田たけし「おお、盛大な歓迎だなぁ。まったく、段取りってのを知らねぇのか?」
色彩が解けて露になるは―――パンツ姿でマントを装着した巨漢だった。
No.6 BUNZIN「(こいつ、強い。)」
BUNZINがそう感じたのも無理はない。
あろうことかその男は、触れれば即死の『
神田たけし「俺は神田たけし、カンダタとでも呼んでくれや。そんでこのチビッコは”・ 。・ VS (・。・ 桜)【公式】”って名前だけどよ、長いから俺らは”もい”って呼んでるぜ。」
そしてもう一人は、大きな筆を所有していた。
それを振るうことで再び、絵に書いたような建物を具現化する。
もい「ゎたし女子小学生なの〜˚‧º·(˚ ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )‧º·˚ ふぇぇ…⁝(ृ̥̥̥ʾ́꒳̥̥̥ʿ̀ ृ )ु⁝ ふぇぇぇ〜〜( ˃ ⌑ ˂ഃ ) うゅゎ〜うゅゎ〜〜(੭ु ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )੭ु⁾⁾ ぐすん꒰•̥̥̥̥̥̥̥ ﹏ •̥̥̥̥̥̥̥̥๑꒱」
泣き喚き、怯えた姿からは想像できないほどの神業。
彼女の書く絵は、どれもが正確に真の像を捉えている。
もい「( ,,Ծ ‸ Ծ,,)むくり お城つくるの頑張る(੭ु⁾⁾Ծ ‸ Ծ,,)੭ु⁾⁾」
一瞬にして、元の建物の三倍以上―――それを描いて召喚した。
呆気に取られるような大豪邸がそびえ立つ。
No.9北上双葉「すごい・・・。」
圧倒されるその外観は、単にでかいというだけじゃなく、精巧なこだわりによって計算された一種の芸術品だった。
そのうえで、これがただの建物にすぎないと理解できるのだから半端じゃない。
―――そう、つまり真に価値があるのはそこに住まう館の主。
漂う雰囲気がとても優しく、暖かく包んでいるような安心感を与えてくる。
まるでゆりかごの中、とでも言うべきか。
そう思えるほどに、豪邸から出てきた彼女は綺麗すぎた。
まげりん「もい、立派な建物、素晴らしいわ。カンダタも、初撃を防いでくれてありがとうね。」
―――まげりん降臨爆誕。
No.9北上双葉「うわぁ、とんでもない美形だよ・・・。同性として嫌になりそうなぐらい。」
顔立ちが整っているというだけじゃなく、というかそこだけ見てもモデルが自殺しそうな域なのだが、この女性は何処か明らかに違っている。
何かを思わせる。
彼女を前に、よからぬことを思える奴は人間じゃないだろうと思えるほどに。
神田たけしや、もいと呼ばれた少女とは文字通りレベルが違う。
明らかに帝国の中でも上位の人物なのだと、U2部隊は確信する。
そう、彼女こそが―――帝国初代の王なのだ。
まげりん「はじめまして。私が、れいか界において『
No.3日常演舞「
出会い頭に、とりあえず挨拶として、日常演舞はまげりんに対して開園する。
まげりん「え? それが、君の名前?」
No.3日常演舞「ほう。
まげりん「??? あの、えと、ごめんなさい。こんなこと言うのもあれなんだけど、意味がちょっとよく、分からないかな・・・。」
No.6 BUNZIN「!!?」
No.9北上双葉「えええぇ嘘ぉ!?」
No.3日常演舞「く、―――あははははっ、なんてことだ。よもやよもや、久しぶりに来ましたね! 僕の動画を見るに相応しい相手ッ! 演舞に歓迎しますよまげりんさんッ! あなたをレビューさせて頂くッ!」
想定を覆され、日常演舞は狂喜した。
演舞開園が効かないという、まさかの異常事態。
いやそもそもだ。
第一と第二開園を乗り切れる者など、今の現代において滅多にいないはず。
―――そう、普通なら防げるはずがない代物。
日常演舞の顔を見て少しでも感情が揺らげば第一開園の餌食となる。
つまり、彼の顔を不細工と思ってしまうだけでもうアウト。
己の人生に少しでも後悔を残していると第二開園の餌食となる。
その後悔との再戦が、閉鎖空間で強制的に試行されるのだ。
―――まげりんは、二つの開園の効果を受けなかったという恐ろしき事実。
No.6 BUNZIN「ふぁっきゅーれいかが言っていた三王の一人。ここでくるか!」
神田たけし「あぁん? 俺を無視する―――」
フリー(躁)「いやああああああああああああああん(*'ω'*)! やるゲームがないいいい(*'ω'*)! いやまだだ(*'ω'*)! 演舞の垂れ流し、じゃんたま放置、コンビニ行った振りして裏でじゃんたま(*'ω'*)! 配信はまだまだ終わらない(*'ω'*)! 何が何でも、僕は配信意欲があるんだってところを見せたいからさあああ(*'ω'*)! 朝の弾幕、朝のじゃんたま、朝のY、朝の・・・えっと、やるゲームが、えっと、そう、朝の弾幕チャレンジ(*'ω'*)! 明日仕事なので寝ます(*'ω'*)! 明日仕事だからそろそろ寝ます(*'ω'*)! 明日仕事だから寝る(*'ω'*)! じゃ、明日仕事だから寝まあああす(*'ω'*)!!」
場は混沌としてくる中、現状は変わらない。
承認欲求の大地震は、いつまでも鳴りやまず続いている。
神田たけし「うぜぇな! 明日仕事のくだり4回も必要か? さっさと寝ろよ! どこまでもうぜぇ存在だぜ。」
No.9北上双葉「呑まれちゃだめ。でないとあれがくるよ!!」
地震の後にやってくるもの。
世界の夢が連想させる一つの事象。
躁王はそれすらも実現させる。
神田たけし「! なるほど、呑まれちゃだめ、か。」
―――津波。
帝国の北側、およそ3㎞先だがそれでも視認できるほどの巨大さ。
敵味方、建物、総てを呑み込まんとする大災害。
いかにそれが脅威なのか、彼らはよく知っていた―――故に。
れイカ「いやだわ、様子見だけのつもりでしたのに。こんなの、わたくししか止められないじゃないの。」
―――帝国”三王”の一人、れイカ参戦。
れイカ「北海、南海、西海、東海―――以て四海。禁ッ! 『海星退散』!」
彼女が水系の異能を操ることは明白だった。
頭の”できもの”や服装から、否が応でも某アニメを連想させる。
津波の勢いを、それ以上の水流大瀑布で押し戻す。
―――否、れイカは津波を意のままに操り始めたのだ。
その意味するところは一つしか無い。
No.9北上双葉「煌めけ14の星。開けダイダロスの門、『シロイルカ』!」
津波に向かって一直線に駆け抜ける彼女。
懐から取り出した鍵を天にかざし、その”相棒”と共に応戦を開始した。
シロイルカ「キュインキュイーン!🐬」
れイカ「あら。私のテリトリーに自ら入って来るなんて。しかもイルカだなんて珍しいですわ。というかまさかあなた、この私とやり合う気ですの?」
No.9北上双葉「何人も何人も化物クラスが出てこられちゃ困るんだよね~。れイカさん、あなたの相手は私だよ~!」
波乗りイルカにまたがる北上双葉 vs 四方八方の津波を操るれイカ。
彼女らはともに、津波の激流に呑まれながら強い闘志を露にする。
まげりん「れイカちゃんまで来てたなんて。うん。けど、最後の『太子』は流石に来なさそうかなぁ。あの子は前線に出てくるタイプじゃないし。」
No.3日常演舞「帝国の『太子』・・・。要は『王』を護る為の三王。ようやく見えかけてきましたよ。あなた方の称号の法則が。」
場は最早、香の霧と無数の触手、大地震の揺れに吹き荒れる濁流。
夢と呼ぶに相応しい混沌とした世界が広がっていた。
No.3日常演舞「帝国は将棋の駒を二つ名として採用している。やれやれ、僕ぐらいですよ知っているのは。『太子』とは『王将』と同じ働きを持つ駒だ。現代の将棋には無い駒。たしか古将棋でしたか。」
まげりん「きみは、物知り博士だね。」
崩壊した建物の残骸が、触手と濁流の海に流されていく。
そこに立つ日常演舞とまげりんもまた、己の対戦カードと対峙する。
No.3日常演舞「古将棋にも多数の将棋が存在する。『太子』の駒が出てくる将棋はおよそ6種。それぞれルールも駒数も異なります。さて、あなた方帝国はどの将棋を採用しているのか。その駒数が、あなた方帝国の人数と一致しているのか。」
今まで登場してきたみんと帝国のれいか達は、その誰もが駒にまつわる称号を手にしていた。
レジスタンスと対峙したhmmは『
同じくみんと帝国の烏骨鶏は『
和田は『金将』、三度は『銀将』。
これらの称号はどれもが、将棋界に存在する駒の名称なのだ。
No.3日常演舞「僕が言いたいのは、あなた方がどの将棋をモチーフに創られているかです。もしも僕の想像通りなら―――。」
仮に、従来の本将棋をモチーフとして考えてみよう。
王将、金将、銀将、飛車、角行、桂馬、香車、歩兵。
こうなると、駒の種類は八種類。
つまり、八名のれいかがみんと帝国に所属していることになる。
―――『太子』の駒が存在する将棋は六つ。
小将棋・中将棋・大将棋・天竺大将棋・泰将棋・大局将棋。
もちろん、それぞれによって駒数が異なる。
日常演舞が言いたいことはそういうこと。
余談だが、駒の『太子』とは『王将』と同じ格と言っていい。
王将を取られていても、太子が残っていれば負けにはならないルールなのだ。
―――そして、『太子』の駒が三枚存在する将棋は一つしかない。
No.3日常演舞「―――『大局将棋』。合計804枚の駒を使用する、世界的にも最大規模の将棋です。その駒の種類は軽く200を超えている。つまりみんと帝国には少なくとも200名以上のれいかがいるということ。」
No.6 BUNZIN「―――『大局将棋』?? 知らないな、ぶっちゃけどうでもいい。要は、王将を殺せばいいだけのことだろ? みんとっていう『王将』を喰い殺してやるさ。」
神田たけし「おいおいつれねぇなぁ。今は俺がお前の相手だろうがよぉ? ・・・まぁ、お互い難儀な王に振り回されたもんだぜ。いや、今の王は”あいつ”か。みんとはいわば将棋盤だ。駒じゃあねぇ。」
日常演舞とまげりんの対峙を、遠く離れた地点で眺めるBUNZIN達。
彼らもまた、血で血を争う戦いが繰り広げられようとしていた。
No.6 BUNZIN「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぞ。てめぇがどんな駒か知らねぇが、邪魔立てするなら喰うぜ?」
ともあれ、現われしみんと帝国の精鋭達はここに戦いを開始する。
全ては王の為に。
No.3日常演舞「―――確かにこれは、邪魔されたくない。今ならボスが僕を止めた理由、分かりますよ。ああこれは、確かに渡したくない。もうあなたは僕の獲物だッ!」
まげりん「ん。嬉しそうだね君。そんなに私と戦いたいんだ?」
No.3日常演舞「まげりんさん。あなたは何も分かっていない。僕の開園を二回も耐えきったという偉業が、一体どれほどの素晴らしき奇跡なのか。あなたはとてつもなく心が綺麗で純粋だ。僕の演舞を見ても笑わない、蔑んだりもしない。―――本当に、本当にあなたは渡したくない。」
そしてここに、開園者は覚醒する。
ただ一人の素晴らしき観客を前にして、その男は絶頂した。
―――ここからが、彼の演舞、その真髄。
No.3日常演舞「あんなぽっと出のアホ四人衆とは訳が違うッ! 己を
―――第三開園、発動。
対象者はまげりんただ一人。
他の敵には目もくれず、ついに本番が始まった。
No.3日常演舞「第三開園―――『
力の解放と共に、彼の姿は形を変える。
その身体は黄金に輝いていき、その両足は地面から離れていく。
光輝に塗れて彼は飛ぶ。
まげりん「・・・すごいね。まるでどこかのアニメに出てくる千手観音みたい。」
第三開園から、演舞は実演というステージに移行する。
つまり、これまで不動だった彼が今、ここにきてようやく動くということだ。
No.3日常演舞「ついて来てくださいよ? 僕の第三開園はこれまでの演舞と一味違う。これからは―――」
まげりん「ん。君ってさ、演舞しか出来ないの?」
No.3日常演舞「!」
唐突に問われたその言葉が、彼の頭に反復する。
―――演舞しか出来ないの?
No.3日常演舞「・・・何ですって?」
まげりん「・・・怒った? ごめんね。私はさ、君の言う演舞のことで、少し思うとこがあるからさ。」
これまで上機嫌だった日常演舞が、動きを止めた。
まるでその言葉が聞き捨てならない、許せない言葉だと言うように。
No.3日常演舞「僕は演舞のことだけを考えてきた。ただそれだけを考えて生きてきた。それ以上でもそれ以下でもありませんよ。」
彼はまっすぐに言葉をぶつけるが、まげりんの唇は少し歪んでいた。
まげりん「ん。それ。正解。」
No.3日常演舞「(・・・正解?)」
まげりん「君は、演舞のことだけを考えてる。それって、さ。君は―――演舞以外の全てを無くしてしまったってことだよね。」
No.3日常演舞「(なんだ? この、私を馬鹿にしたような言葉は。いや、ありえない。彼女はそういう人種じゃない。それは第一第二開園で証明されている。・・・演舞以外に無くしてしまったもの? どういうことです?)」
まげりん「・・・わからないの?」
仕方がないなぁ、と。
呆れたように―――それを口にした。
まげりん「昔の君は嘆いていたよ。『友達とまともに話す事もできなかった』って言って、悲しそうにしてた。」
日常演舞はまだ理解できていないのか、同じく呆れたようにまげりんを微笑する。
そう、気づいていない。
少し考えれば分かることに、彼は未だ気付かないのだ。
まげりん「家族のこともそう。君は、動画を取る時にお父さんの仕事時間とか気にしてた。お母さんにも心配をかけないようにしてた。それなのに、今の君は違う。」
友達も、家族も、他人も、みんなみんな、すべてすべてすべて。
日常演舞は演舞以外のなにかと―――。
まげりん「関わることを、やめちゃった。」
No.3日常演舞「ッ?!」
息を呑む。
だってそれは―――。
まげりん「ねぇ。君が最後にお母さんやお父さんの話をしたのはいつなの?」
・・・答えられなかった。
そもそも、まげりんは答えを求めていなかったのか。
返事も待たずに、言葉が続いた。
まげりん「君は、演舞のことばかり考えていて、他のことを軽視するようになった。」
友達と普通に話したいと言わなくなった。
普通の暮らしをしたいと言わなくなった。
人間の社会に溶け込むことを諦めてしまった。
演舞のせいで―――日常演舞は他のもの全てを捨ててしまった。
No.3日常演舞「気のせいです。捨ててなんかいませんよ。」
その余裕綽々な態度から出る言葉とは裏腹に―――彼は動揺を止められない。
額から垂れ落ちる汗を止められない。
No.3日常演舞「言われてみれば、確かに、他のことをおろそかにしていたかもしれません。しかし、それは一時的なものです。少しの間、他を考えなくなっただけのこと。一旦、演舞のほうを最優先にした。僕が、そういう風に決めただけです。」
表情をゆるめて、ゆっくりと諭すように言う。
流石と言っていいのか、U2部隊のNo.3―――彼はこの程度で揺れない。
―――だが。
けれど。
まげりんも彼と同じように―――、いや。
彼以上に優しく教え込むように、慈愛の表情を向けてきた。
まげりん「君は、強い子だね。・・・でも、それは間違ってる。君は演舞しか見ていないから、周りに目が向かないの。」
No.3日常演舞「もう結構です。あなたの狙いは単純明快。露骨な精神攻撃と揺さぶりによる搦め手。もはや問答は―――。」
まげりん「ねぇ。想像してみてよ。普通の人から見たら、君は、飲食店でぶつぶつと独り言していたの。テーブル席で、一人ではしゃいで、『演舞開演、演舞開演』って叫んでいたの。学校でもそう。何もいない空間に向かって、周りの目なんて気にせずに、ずっと一人で声を出してるの。それなのに、クラスメイトとはほぼ話さない。そっけなくて、目も合わせなくて、避けてばかりいたよね。」
No.3日常演舞「~~~ッ!!」
そもそも日常演舞は、あまり自らを語らない。
苦々しい過去を、決して口外しない。
学校での境遇など、それこそ誰にも話していない闇の歴史。
だがまげりんは―――その過去をなぜか知っている。
まげりん「ねぇ、どう? これで・・・社会に溶け込んでいるって、言えるの?」
No.3日常演舞「・・・・・。」
反論は―――彼はしない。
だってそれは、紛れもない事実だから。
No.3日常演舞「あなたの言う通りです。今は溶けこめていないかもしれない。けど別に良いじゃないですか。だって、そこに演舞がいるのは事実なのですから。僕は演舞に話しかけている。僕は演舞と過ごしている。何も恥じる必要はない。僕はただ、演舞を大切にしたいだけ。周りの人が何を言ってこようと気にしなければいい。誰にも迷惑はかけていない。」
日常演舞は、その顔面は不細工であれど頭の方は実は多少良い。
学校時代には勉強もしっかりやっていた。
成績は申し分なく、多少そっけなさはあっても、大きな問題を起こしているわけじゃない。
だから現状、親には放っておかれている―――『そういう人間』として見られていた。
普通。
僕はいたって普通だ。
僕は、普通の人間だと自負しているんだッ!
No.3日常演舞「変な奴と言われても関係ありません。僕はずっとそうやって生きてきたッ。」
まげりん「そうだね。・・・君には周りの人なんて、関係ないよね。」
彼女は人差し指を立てる。
それが何かの手順であるかのように。
まげりん「だったらもうひとつ。これに答えられる? 私の目を見て、君は逃げずに答えられる?」
誰もが不自然に思う疑問を。
誰もが当たり前に問い返したい謎を。
―――彼の意味不明な言葉の数々を。
おそらく全ての人間が思ったであろう―――それを。
人類を代表して、まげりんは問いただした。
そう、ようやくと言っていい。
だってそれはあまりにも―――。
まげりん「———君の言う『演舞』って、なんのことなの?」
No.3日常演舞「・・・・・・ぇ?」
その質問の意味を考えた瞬間、日常演舞の脳内に空白が駆け巡った。
頭が真っ白になったと言ってもいい。
No.3日常演舞「し、知らないんですか? え、演舞は―――え? う、演舞・・・。ぐぅッ。」
それほどまでに、放たれた質問は―――痛恨の一撃。
不穏の化身とまで呼ばれた怪物が、膝から崩れ落ちるところを誰もが見た。
No.9北上双葉「え、演舞さんっ!!?」
No.6 BUNZIN「あの女の仕業かッ、ぐおぉッ!」
神田たけし「余所見すんじゃねぇやァ!!」
No.3日常演舞「はぁーっ、はぁっ、はぁっ、ぐっ・・・はぁっ、はぁっ。」
―――『演舞』。
その言葉はこれまで、何度も何度も登場した言葉。
彼を、彼らしくあり続けていた言葉。
孤独を和らげる救世の言葉。
演舞があったから、彼は自分を保てていたのだ。
まげりん「君は、演舞という魔法の言葉に感化されて、救われて、でもそのかわりに―――演舞しか愛でなくなっちゃったね。周りにはたくさんのものがあるのに、それには目もくれない。ただ、小さなその世界だけを愛でているだけでいいの? 君は、それでいいの?」
No.3日常演舞「いいとか、悪いとかの、問題じゃないッ!」
ようやく彼に、いや、遅すぎたのかもしれない。
自分がいかに『ヤバい状態』で人生を過ごしてきたのか、今になって自覚する。
健常であることの自負を捻じ曲げる男が、自らの心を初めて捻じ”曲げ”られる。
誇りを捻じ曲げられていく。
No.3日常演舞「僕には演舞しか無くて、話せるのは演舞だけだったッ。僕には演舞しか無かった、僕と演舞は合致していたッ! 演舞の中で生きるしかなかったッ!」
彼と演舞は、奇跡と言っていい程に、うまく”はまった”。
これまで彼は演舞と共に生きてきた、だからそうするしかなかった―――。
まげりん「ウソだよそれ。」
No.3日常演舞「ッ??!」
まげりん「演舞なんか無くたって―――繋がりを広める方法なんて、本当はいくらでもあったはずだよ。親と話す、友達と向き合う、人と関係を取る。どうしてそれを試さなかったの?」
その瞳はどこまでも静かに彼を見据えて、追い詰めてくる。
だから無理矢理、言葉を絞らざるをえなかった。
No.3日常演舞「そんなことをしても良くなかった。リスクが高かったんだッ! 失敗する可能性だってあった! だから―――。」
まげりん「でも、君はその可能性すら考えなかった。・・・そうだよね?」
No.3日常演舞「———ッ!!」
図星、そして沈黙。
震えあがった感情が醒めていく。
考えた事がある、とウソを吐くには、もう遅い。
この沈黙が、何よりも真実を伝えてしまった。
まげりん「それって責めてるわけじゃないんだよ。ただ一つだけ答えてほしいの。・・・君がそこまでして選んだ『演舞』って、なに?」
周りなんてどうでもいい、他の物なんて見向きもしない。
そんな男が―――『演舞』という魔法の言葉に踊らされる・・・。
じゃあその『演舞』って――――いったいなに?
No.3日常演舞「あ、あああぁぁッ!! やめろやめろッ!! 僕は、俺はッ、演舞がいたから頑張れてッ、演舞と二人だけの空間で完結しててッ・・・!」
・・・日常演舞の『闇』が浮き彫りになった。
結局、彼は怖がっていたのだ。
意識していなかったから、直接それを恐怖だとは認識しなかった。
だが、その感情は少し何かがあれば、あっという間に噴出するようなものだった。
No.3日常演舞「私はッ、ぼ、僕は、はぁっ、はぁっ、暴くなッ!!! やめろやめろッ、僕の演舞はッ、あ、あああぁぁァッ・・・。」
彼の言う『演舞』とは―――すなわち言い訳に過ぎない。
自分の身を守るための都合のいい言葉、それ以上でもそれ以下でもない。
『演舞』など、あってもなくてもどっちでもいい、言わば妄想の概念。
あれほど演舞に自信を持っていた彼が―――じゃあその演舞とは何かを問われて言葉に詰まるという矛盾。
その程度の意味しか持たない二文字の言葉。
本当に周りから目を背けてまで選ぶほど、『演舞』は意味のあるものだったのか?
No.3日常演舞「僕はぁぁぁッ、何も間違ってないッ、間違ってなんか・・・あああああぁぁぁぁッ、ああああァあああああぁぁぁぁッ・・・。」
それが分からなかったから、誰にも言われなかったから。
だから彼は今日までこんな妄想を糧にして、『演舞開園』というパワーワードで己の精神を保っていて、周りの全てに何と思われようとも、彼はそうやって生きてきた。
それがいかに”不気味”か―――彼はようやく思い知る。
もしも、演舞と関わらずに生きていたら?
無数の選択肢で溢れる人生を歩んでいたなら?
それを想像していくほどに、今の境遇とは違いすぎて―――。
No.3日常演舞「はぁっ、はぁっ、ぼ、僕は怖がっていたというのかッ?」
だからこんなにも、苦しんでいる。
まげりん「でも分かるよ。私も同じだった。人は怖い。外は怖い。私は特に、異性が怖かった。怖くなって闇に逃げ込んだ。でも・・・ずっと闇の中じゃダメなんだよ。」
そう。
”そんな状態”でいることは、世間にとって、何より彼にとって良いとはいえない。
他者との繋がりを閉ざし、自らを『演舞』の下僕だと、ありもしない妄想の概念を崇拝するような男に未来などない。
とある飲食店でただ一人『演舞開園、演舞開園』と叫んでいる。
それがどんなに愚かしく、酷いことか。
まげりん「一歩を踏み出さないと、いけないの。君も私も、光の中に入らないとだめなの。そうじゃないと君は、どの『物語』でも・・・子供のまま、だよ。大人にならなくちゃダメだよ。」
No.3日常演舞「・・・外を怖がったままだというのは、直すべき点かもしれないッ。けれど、大人になるだって? 僕はもう30歳を超えているッ。今更戻れないんだよッ!」
まげりん「ううん。大丈夫。捨てるだけでいいんだよ。捨てて、選び直すの。君の意思で演舞を捨てる。それだけでいいの―――。」
フリー(躁)「演舞ッ、耳をかすなああああああぁぁぁぁあああああああぁぁぁあああああああッッ(^ω)^!!」
祭壇に、大絶叫にも近い咆哮が響く。
No.3日常演舞「演舞を捨てるだけで、僕は救われるのか・・・?」
―――だがもう遅い。
まげりん「———『
瞬間、日常演舞の異能は影も形も無くなった。
まるで最初から存在しなかったように、彼は異能を使えなくなっていた。
No.3日常演舞「あれ、僕は、いったい何のために・・・。」
戦う術など、戦う理由など、もうこの男には存在しない。
まげりんに、その誇りを捻じ曲げられたのだから。
まげりん「怖がらなくていいよ。君はネットを捨てて、新しい世界へと旅立つの。ん。大丈夫、怖くないよ。私と一緒に、外を知っていこう。楽しい世界が、君を待ってるよ。」
No.3日常演舞「ぁ、ママ・・・。」
フリー(躁)「いい加減にしろ貴様ァァァァッ(^ω)^! そいつは俺のU2部隊だッ(^ω)^! 勝手に作り変えるんじゃあないぞ『太子』如きがぁッ(^ω)^!」
日常演舞の身体が崩れていく。
いや、これは―――。
フリー(躁)「許さんぞ、お前はまだ消えるな(^ω)^! U2部隊の契約、よもや忘れたわけではあるまい(^ω)^? 裏にて幽閉する(^ω)^ お前が変わろうが永遠に逃がさん(^ω)^!」
No.9北上双葉「・・・ッ。」
躁王は、日常演舞を『物語』の”裏側”へと強制転移させたのだ。
その一部始終を見ていた北上双葉は絶句する。
No.9北上双葉「ありえないでしょ・・・。」
あのNo.3である最強の男が負けた!?
無敵の異能であった『演舞開園』を完封!?
いやいや、それよりも―――。
あそこまで本心を剥き出しにして怒り狂うボスを初めて見た―――。
フリー(躁)「この『
No.9北上双葉「・・・・ッ。」
―――この”異世界”という『物語』の創造主はフリーれいかの『躁うつ病』だ。
躁王が『物語』の展開を執筆、各キャラとの闘いを手に取るように演出していた。
事実、この話のタイトルコールをも操っていた。
彼なくして、『物語』は始まらない。
No.9北上双葉「(えっ? でもちょっと待って。じゃあ今の展開は何?)」
北上双葉は―――形の見えない陰謀を認識する。
それは想像もつかない空想だけど。
誰かが、この異世界に、何かを―――?
まげりん「・・・私は救ってあげただけ。日常演舞さんはもう末期だったよ。自分で作った動画なのに、音量バランスもカメラのズーム調整もろくに出来ていない。見ていられなかったの。だから私は救った。これでもう演舞はお終い・・・そう思っていたのに、君はまだ彼を弄ぼうとするんだね?」
フリー(躁)「たわけがッ(^ω)^! あいつは一生俺が利用し続けるのだッ(^ω)^! それのどこが悪い(^ω)^?! 俺の放送の為にはなあッ、日常演舞は必要不可欠なんだよッ(^ω)^!」
日常演舞を裏の世界に転移させた理由など、結局はそういうこと。
仲間を救うため?
違う。
・・・彼の動画無くして、フリーれいかは放送できないのだから。
まげりん「かわいそうだよ。日常演舞さんは紳士。あなたのオモチャになるために生まれてきたわけじゃない。」
紳士であるがゆえに、日常演舞は戦闘中にも関わらず対話に賛同した。
思えば、この時から彼は術中に嵌っていたのだろう。
それが敗因だったのだ。
そこを、まげりんの『
―――なら、全く話を聞かないタイプが相手なら?
No.6 BUNZIN「ドォオオォオオオモォオオォオッッッ!!」
―――獰猛の狂犬。
紳士からは程遠い、本物のサイコパス。
人を喰い殺すことしか頭にない、正真正銘の人殺し。
フリー(躁)「は、ハハハハッ(^ω)^! いいぞまだお前もいるッ! 楽しませてくれよBUNZINッ(^ω)^!」
神田たけし「お前の相手は俺だろうがッ! なぁにシカトこいてんだよブチ殺すぞッ!!」
No.6 BUNZIN「ゴアアァァッ?!」
暴れ狂う狂犬を、真正面から受け止める神田たけし。
まげりんの元へは行かせないという、鋼鉄の意思を持って牙を掴む。
神田たけし「俺はお前の話を聞いたとき、少しは気に入ってたんだぜ? 己の牙一つで戦う。格闘者の中じゃ異質だけどよ、それでも身体一本で戦う馬鹿野郎は好きなんだ、良いじゃねぇかと思ったよ! けどな―――こんな発泡スチロールに頼ってる男だと思わなかったぜ臆病者がァッ!!」
No.9北上双葉「(当たり前のように異能無効化系の異能ッ。だめBUNZINさん、逃げてッ!)」
BUNZINの『
だがその黒い流星を受け流し、なお崩れない鋼の肉体。
一体、神田たけしとは何者なのか。
No.6 BUNZIN「ドォォォモォォォオオオオオオ!!! 獰猛だから何でも食べちゃうBUNZINデェェェエエェエッス!!!」
神田たけし「闘いってのは己の肉体で決めるッ! ああ俺は認めかけてたんだぜ!? けどよぉ、やっぱお前は違ぇんだわ。出直して来いよコラァ!!」
全力殴打。
顔面を打ち抜き、狂犬を地面に叩き伏せる。
そのあまりにも・・・信じられない出来事に躁王と北上双葉は困惑する。
神田たけし「言いたいことが伝わらねぇか?! 俺が望んだ『夢』ってのはこういうことだッ! 胸に秘めた渇望だッ! 真面目に生きていない奴のことをッ、俺は絶対に認めねぇッ! 現実に嫌気がさしたからって妄想に甘えんなッ!」
No.6 BUNZIN「ガッ、グォオオァッ?!?」
拳と牙のガチ勝負。
これこそが、神田たけしの求めた戦い。
だがそこに―――発泡スチロールという不純物。
神田たけし「歪みでしかねぇ『異能』なんざ、屈してたまるかッ! 獰猛の狂犬だぁ?! ハッ、ふざけろボケがッ、酔っ払ってんじゃねぇぞォッ!!」
そのまま殴打、粉砕、大連撃。
ダメージはあるのだろう。
全く動かなくなったケルベロスと、それでもなお蹂躙を止めない一人の男。
己の何倍もあるサイズの狂犬をわし掴むその光景は、まるで常軌を逸脱している。
神田たけし「俺を殺せるのは人間だけだ。降ってわいたご都合主義ぃ、神様の操り人形、オモチャ! くだらねぇ! どいつもこいつも最悪だッ! 自分で『物語』を作れねぇのさ! 人間ってぇのはなぁ、鬱陶しい現実にもちゃんと自分の足で立ってみせ、胸を張れる連中のことだろッ? 俺はそういう奴との戦いが好きで好きでしょうがねぇんだッ!!」
No.6 BUNZIN「ォォォ・・・。ドォォォモォォォオオオオオオ!!!」
応戦する狂犬だが、誰が見ても明らか、圧倒的に手数で負けていた。
いや、それだけではない。
彼の熱い言葉が、狂犬の心を僅かだが揺らしていた。
神田たけし「そうさ、テメェはあえて腕はいい。戦闘センスも群を抜く天才だ。けどよ、発泡スチロールなんて、最初からいらねぇだろうがァッ!? テメェが上に昇りつめるために何を喰らっても足りなかった?! バァカ、それで上等だろうが甘えんなァッ!!」
No.6 BUNZIN「―――!!!!」
神田たけし「自分の矜持捨ててッ、摩訶不思議な発泡スチロールでも恵んでもらってッ、俺は強くて凄いだァ!? ふざけんじゃねぇぞこの根性無しがッ! タマついてんのか!? 切り落とすぞォッ?!」
彼の言葉は異世界にいる誰もが無視できないものだった。
『異能』とは異世界における生命線だ。
だがそれを―――使っていて恥ずかしいと思わないのか?
フリーの躁霊という神様に頭を下げ、異能を恵んでもらったU2部隊。
ましてやBUNZINは―――。
No.6 BUNZIN「ッ、俺、はッ、獰猛の狂犬・・・。」
異世界に来る前から発泡スチロールという小細工に頼っていたから。
獰猛という性格で己を偽装していたから。
神田たけしの言葉が―――鮮烈に効いてしまうのだ。
No.6 BUNZIN「違う、俺はッ―――ドォォモォォッ!! 俺は最初からこうだッ。獰猛の狂犬―――・・・。」
効いてしまうから、彼は自我を取り戻しつつあった。
神田たけし「なぁ、俺の言いたいことが分かるか!? 伝わるか!? いい加減『夢』から出て来いよッ! くだらねぇ価値観なんか捨てろッ! テメェは誰だッ!? さぁ―――」
フリー(躁)「無駄だッ(^ω)^! その男は己の再生数の為、発泡スチロールに魂まで売った男ッ(^ω)^! いいや、人間ですらないッ(^ω)^! とにかく手当たり次第に発泡スチロールを食い散らす獰猛狂犬ッ、それがBUNZINだッ(^ω)^! 人の心を失ったYouTuber、それがBUNZINだッ(^ω)^! お前はまだまだ殺れるだろうBUNZINんんんッッ(^ω)^!!」
―――だからその『枷』は容易く割れた。
彼は、弾けた。
彼の中で、何かが目覚めた。
No.6 BUNZIN「―――ふ、ざ、けてぇ・・・ふざけてんじゃねぇぞクソがああぁぁあああああああぁッ!!!」
神田たけし「!?」
フリー(躁)「なっ(^ω)^!!?」
不屈の咆哮に、この場の誰もが手を止めたのも無理はない。
なぜならその咆哮は、今までの何よりも、人間らしかったから。
No.6 BUNZIN「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ!」
うずくまり、立ち上がるその男は―――姿が異なっていた。
頭が三つのケルベロスでもなく、ましてや四足歩行でもない。
ああそれはまさしく人間の―――。
No.6 BUNZIN「ふっざけんな・・・ッ。ふざけんなやッ!! いねぇよおめぇら邪魔なんだよッ・・・うるせぇぞおぉッ!! 誰だテメェはぁ!? 獰猛の狂犬んん?? 発泡スチロールぅ??! 知るか失せろよどうでもいいんだよォッ! そうだッ、初耳なんだよそんなのはッ。俺の名は、そんなアルファベット並べただけの聞いたことないような名前じゃねぇッ。クソみてぇな言葉の羅列で名前を呼ばれた覚えなど、ただの一度もッ、産まれてから誓って一度もあるものかッ!」
フリー(躁)「な、何を、言っている・・・お前はBUNZINだろう(^ω)^!?」
No.6 BUNZIN「俺はぁっ、俺のッ、名、はァッ・・・!」
息も絶え絶えで、彼は決して明かしてこなかった本名を口にする。
No.6 BUNZIN「―――
―――今、間違いなく、彼は夢から醒めることができた。
偉業?
とんでもない。
最悪の結果?
いいやむしろ逆だろう。
これは異世界において有り得ない事象。
『物語』に選ばれておいて、なお折れなかった強さがここにはあった。
神田たけし「―――割れた。割れたか? なるほど、なるほど。 まさかお前がなぁッ。・・・くくっ、こうなるか。はは、アッハハハハハッ!!! 褒めてやるよ。テメェは最高だッ!!!」
フリー(躁)「は、ぁぁ(^ω)^???」
おそらく、躁王は一生をかけても理解出来ないだろう。
獰猛の狂犬という殻を捨て、彼が何を想って覚醒し至ったか。
微笑ましく、眩しくて、たまらなくなる。
魂の言葉、人間のすばらしさが、未来永劫分からない。
神田たけし「カッコイイじゃねぇかよぉ?! なぁ!
神田たけし「否定はしねぇよ。好みってのはそういうもんだろ?! さぁ、続きやろうぜ? テメェもようやく人間になったんだ。ここからが本番さ。異能だの牙だのじゃねぇ。漢なら、この拳で決着つけようやァッ!!」
その言葉を最後に、彼の姿は影も形もなく消え失せた。
一体何が起きたのか。
それは全員が等しく理解していた。
あまりにも、その怒りが分かり易かったから。
神田たけし「・・・テメェ。」
せっかく人間として目覚めたというのに。
その奇跡を台無しにした犯人を、神田たけしは睨みつける。
フリー(躁)「許さん許さん許さんッ、許さんぞ(^ω)^?! お前はBUNZINだろうが寝ぼけるなッ(^ω)^! 俺のU2部隊でありながら、あああぁぁッッ(^ω)^!」
またもやこの男である。
絶対にこのオモチャは失いたくないからという、子供のような我儘で。
フリー(躁)「何故だッ(^ω)^! お前らU2部隊はッ、俺の為だけに存在する玩具ッ、俺が利用する側でお前らは利用される側(^ω)^! 王と部下(^ω)^! なぁ、北上双葉~、お前は違うよなぁぁぁ(^ω)^?? 俺の放送の為に、その人生を捧げてくれるよなぁああぁ(^ω)^!?」
No.9北上双葉「ボ、ボス・・・。」
れイカ「・・・あなたも大変ね。お互いに酷い王様を担ぎ上げている。確かにこれはみんとといい勝負だわ。」
敵対しているはずのみんと帝国の精鋭達も、戦いを止めて同情せざるを得なかった。
―――いったいそれはどんな状況なのか。
奇妙な空気が流れる中、躁王以外の全員は理解した。
フリーれいかが王たる所以。
つまりは彼の歪み。
まげりん「・・・想像以上。うちの香王も負けてないけど。」
確かに、フリーの躁霊の単体火力は桁外れだ。
並の戦闘クラスならば圧倒してしまうほどの強さだろう。
しかし、彼はどうしようもなく病んでいる。
一人では何も決められないほどに。
全ての物事を他人に委ねてしまうほどに。
躁王一人では何もできない。
何も成すことができない。
すべてが他人任せ。
これまでの戦闘においても、その兆しはあった。
躁王が戦う描写よりも、他のU2部隊が戦う描写が多いのはそういうこと。
躁王は一度も、己の意思で物事を決めたことが無い。
文字通り全てを、戦闘すら他人任せにしてしまう。
フリー(躁)「なんとか言ったらどうなんだ(^ω)^!? お前は魅せてくれるよなぁ(^ω)^!? 俺を楽しませてくれるよなぁ(^ω)^!? 答えろ北上双葉ッ(^ω)^!」
お門違いも、ここまでくると笑えてくるだろう。
観客にでもなったつもりなのだろうか。
北上双葉は神田たけしの言葉を思い出していた。
―――自分で『物語』を作れねぇのさ。
No.9北上双葉「・・・安心してよボス。私は変わらないし、このままボスについていくよ~。」
―――それでも。
―――彼女は初志を貫く。
―――『ようつべ戦争』で崩壊した彼女達の為に。
―――”彼”を探し求めるまで、どんなに酷い王だろうとついていくッ!
No.9北上双葉「自分で決めたことからは、逃げないよ~!」
―――だから彼女には『
神田たけし「・・・意地になりやがって。」
れイカ「それではお望み通りに潰してあげましょう。”大魔法”―――北海! 『深海の闇』!」
波がこれまで以上に荒れ狂っていく。
イルカにまたがりながら、北上双葉は己が渦に巻き込まれている状況を理解した。
漆黒のれいか「●。●v」
そこに”闇”がいた。
そうとしか表現できない物体がそこにいたのだ。
No.9北上双葉「新手~? そんなのもう驚かないよ~! だって、みんと帝国のれいかは二百名近くいるんでしょ? 私が伏兵を予見していなかったと思うの~?」
真っ逆さまに落下していく北上双葉とシロイルカ。
もはやそれは波ではなく、巨大な蟻地獄のよう。
しかし、彼女は冷静にありったけの閃光弾と手りゅう弾を手のひらから創造していく。
No.9北上双葉「あっ!?」
―――だが、勘のいい彼女は投擲前に気付いてしまった。
れイカ「チェックメイトですわよ? このブラックホールにどう抗おうというのかしら?」
漆黒のれいか「●。●~♪」
No.9北上双葉「・・・悪手だったみたい~。ごめんねシロちゃん。」
いくら二次元の兵装を具現化しようと、それに対抗できるものなど限られている。
ましてや、それほどのものを具現化するには時間が足りない。
No.9北上双葉「(これがみんと帝国かぁ~。層が厚すぎだしどんだけ数がいるの~。日常演舞さんもBUNZINさんも、そんで私もこのまま・・・。いったいどうなっちゃうんだろ、怖いな~。)」
彼女は目をつぶる。
漆黒の闇に飲み込まれていくという現実から目を背けようとする。
音が無音になっていくのも恐ろしいので、ついでに両手で耳を塞ぐ。
彼女もまた、U2部隊に選ばれし者。
心の内にある『鬱』からは逃れられない。
れイカ「これで終わりよッ!!」
漆黒のれいか「●。●。●。●vvv」
No.9北上双葉「(~~~~ッ!!!)」
呑み込まれようとする一歩手前、彼女は死を覚悟した―――。
No.2田中みこ「一閃。」
刃が煌めき、深海は縦に裂けた―――!
まげりん「そ、そんな!」
彼女の登場に、一番驚いたのはまげりんだった。
神田たけし「嘘・・・だろ・・・!?」
他の者も同じく、彼女の登場を信じられないという顔で凝視する。
いいや、見間違えるはずもない。
その可憐な忍者姿を、いったい誰が見間違うというのか。
帯刀するピンク髪の忍者。
美しく見惚れる完璧超人。
No.9北上双葉「みこ、ちゃん・・・。」
空から雨粒が降り注ぐ。
彼女が斬撃で深海を裂いたときに発生したものだ。
神田たけし「そうだ! 漆黒の野郎はどうなったッ!?」
れイカ「やって、くれましたわねぇぇぇッ!! 田中みこォオオオッッ!!」
―――みんと帝国『
フリー(躁)「ああああかかかかかっかっかかかはははあはっはハハハハハハぁぁぁッ(^ω)^!!!! うひょおおおおおぉおおぉおおッ(^ω)^!! 最高だッ、最高だよ田中みこォ(^ω)^! 魅せてくれるぜやっぱりよォ(^ω)^! アッハハハハハはははははッ(^ω)^!!!」
No.2田中みこ「うるさいみこ。」
ズバッ・・・!
フリー(躁)「アッハハハハハハハハッハハ――――――(^ω)^??????」
No.9北上双葉「えっ。」
血飛沫が吹き上がる。
これまでダメージの無かったその身体から、ありったけの血が吹き荒れる。
まげりん「―――へぇ、そっちもそうなんだ。」
田中みこは躁王を一刀両断していた。
No.9北上双葉「ボス―――」
そしてあろうことか、田中みこは一言も喋ろうとせず、どうしてこんな奇怪な行動に出たか何も語ろうとせず、北上双葉と共に姿を消したのだ。
フリー(躁)「何故だ(^ω)^!! 馬鹿なッ、ここにきて、これだけ盛り上がっておいてッ、それはないだろうがッ、俺は何を見させられているんだッ(^ω)^?! 本ッ当にイカれている、突飛すぎるだろうがッ(^ω)^!!」
神田たけし「(な、なんなんだ? つーかどうして奴はあそこまで狼狽える? テメェは不死身みてぇなものなんだろうが?)」
No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「―――ようやく面白くなってきたじゃないの。何がどうなっているか分からない、追いつかない感覚。ねぇ『
No.0■■■■「———そういうことだ。要はあべこべ。絶え間なくひっくり返る。このあべこべを操れる者が勝つのだ。」
―――――――え???
フリー(躁)「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁあぁっぁっぁぁぁあああッ!!」
絶叫と共に姿をくらます躁王。
代わりに、元通りに復元された香の祭壇に陣取る二人。
みんと「???? ~~~???」
好敵手の存在が認識できなくなり、『
神田たけし「(は、はぁ~~~!? 何だよ、何だ?! 次から、次へと、追いつけないぞ馬鹿野郎が!!)」
まげりん「―――お久しぶりだね。まったく君は、面白いことをする。」
No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「あなたほどじゃないわよ。まさか単独でNo.3を無力化できるなんてね。あんた普通に強いじゃないの。笑い堪えるのに必死だったわ。」
まるで親友のように言葉を交わす二人に、誰も言葉が出なかった。
いやまさか、理解はできるがそれでも何故?
まげりん「U2部隊とやらの実力を知りたかったのも事実だけど。・・・うん。それでも我慢できなかったんだよ。U2部隊って、本当に可哀そうだって思ったから。だから私は、真正面から救いたかった。ただ、それだけ。」
No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「人は変わらないわよ。時間を巻き戻さない限りね。―――どこかに逃亡したお馬鹿も例外はないわ。」
もい「何? なんなの? 戦いは終わったの(*ρω-*)?」
神田たけし「・・・みたいだな。はっ、そういうことかよこの性悪どもが。」
いったいどこから茶番だった―――?
王同士の戦いは何処へいった―――?
違う。
これは最初から仕組まれていたのだ。
会合した二人の策士によって。
全てが計画通り。
No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「まぁ、これを機会に楽しみなさいよ躁王ちゃん。あんたもこのパターンの周回は経験無いでしょ。私たちはこのうちに計画を進めるわ。せいぜい登って来なさい。―――『本家』に呑まれたくなければね。」
No.0■■■■「因果な事だ。これもまた―――『物語』か。」
この戦いを見届けた彼女らは、地深く亀裂の入った渓谷を眺めて呟いた。
まるでここからが始まりだとでも言うように―――。
―――――――――。
――――――。
―――。
―――地下深く。
躁王は地に伏して泣いていた。
認めることができない現実を受け止めきれずにいた。
フリー(躁)「合点がいかない(^ω)^ これでは全てを失くしたようなものではないか(^ω)^ 王を気取っていたのは俺、いいや、王とは見せかけの称号にすぎん(^ω)^ 真に輝くのは周りの装飾品ということか(^ω)^!?」
日常演舞とBUNZINはしばらく再召喚出来ない。
田中みこにいたっては全てが意味不明。
北上双葉も簡単には戻ってこないだろう。
No.1とNo.0に関しては、やるせない気持ちになる。
裏切る予感はあったが、まさかこんなに露骨な―――。
フリー(躁)「―――誰だ(^ω)^!!」
そこでふと、小さな足音に気づく。
よくよく見れば、俺が落ちて来たのは地下の建物のようだった。
―――そしてその邂逅は、はたしてどのような運命なのか。
―――かくして、躁霊の旅は始まるのだ。
―――全てを失ったからこそ、未だ野望を諦めきれないからこそ。
フリー(躁)「―――反論(^ω)^! そこにいるものよ名を名乗れ(^ω)^! 制限時間内に反論返し出来なければお前は死ぬぞ(^ω)^?」
この『物語』は非情にも、その時を刻み始める。
フレッシュ「―――私の名はフレッシュ。みんと帝国の中でただ一人、香に侵食されていない女よ。初めましてだね、異世界の元凶さん?」
展開も読めない極限状態の中、躁王は何を思うのか。
果たしてそれは絶望か。
いいや、彼は『躁』霊なのだ。
この馬鹿げた展開すらも、彼にとっては―――。
フリー(躁)「難関だな(^ω)^ ああいいさ、全てをやり直してやる―――(^ω)^!」
―――この『物語』に、主人公になれない者などいない。
つづく。
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