第21話 桃源郷『みんと帝国』



『ミント』とは、すなわち『ハーブ』である。



であるならば、彼が選ばれたとしても問題はない。

そこから紡ぎ出される異能の概要については想像に難くないだろう。




それは、そんな彼のお話。




彼にとって最古の記憶は、桃色に染まる煙に包まれた光景だった。



―――『香』を吸えば愉快。




この楽園はあらゆる者が酔いに酔い痴れて『夢』の中で踊っている。


他者の混じらぬ心の中で、好きに世界を描いている。




それは市民へ分け隔てなく解放された完全無欠の桃源郷。

無償で、それでいて永遠に。

世界の深奥に根付いた、史上最大規模の脱法ハーブ窟。



そこで彼は日々を堪能していた。

そこは、一言で表現するなら矛盾に満ちた空間だった。



希望に溢れていながら絶望的。

至福の極楽でありながら地獄的。



混沌として混じり合わず、争いもまた起こらない。

誰もが愉快に、だけど救いようがなく破滅している。

はたしてそんな状況が世に存在するのかと、聞けば誰もが疑うだろうし、非現実的とさえ思うはず。



しかし、あるのだ。

世界に無関心な連中にとっても難しいものでは一切ない。

そしてまた、斬新なものでもない。




―――非常に典型的で普遍的、ただ『香』を吸えばいい。


そこはいわゆる、”そういう世界”であった。




いつから自分がそこにいたのか、どうしてそんな場所にいたかは彼自身にも分からない。

捨てられたのか、自ら進んで入ったのか、もしくはここで産まれたのか。

あるいは特に意味などないのか。

正確な部分はもはや誰にも分からないだろうし、何より彼自身がそれをたいした問題だとまったく思っていなかった。



母を名乗る人間が一応いた。

しかし、それが本当に血の繋がった身内であるかさえ、同時にどうでもいいこと。



『香』を吸っていればそれで世界は幸福だから疑問に思うことすらない。



彼自身、そして当の母親も、『夢』にまどろむ重度の



母はとても幸せそうにいつも笑っている人だった。

女手一つで幼児の彼を育てている現実に泣き言も言わず、常に笑顔を崩さない。



脱法ハーブ窟にいる他の者たちも同様で、皆が皆、例外なく至福の『夢』に包まれている。



それもそうだろう。





常に焚かれている『香』の煙は互いの世界を遮断する。

自己の世界に入り込んで完結している。

都合のいい一人芝居がそこかしこで演じられている。



よって母もそうだったし、本当のところ彼を息子と正確に理解していたのかどうか、そんなことさえ分からない。

しかしそれでも構わなかった。



ああだって、



薬物の窟という環境で育った彼にとって、他者とは常にそういう反応を返すことが正常なのだと当たり前に認識する。



意思疎通?

なんだそれは、概念さえも分からない。



普通よりだいぶ遅れて一応言葉も覚えたが、会話の本質は今に至るも掴めていない。

そんな状態で健やかに、正常とは決して言えない歪さを保ちながら成長していく。



『香』に染まった空気を吸う。

『香』が染みた乳を飲む。

『香』に微睡む人の中で文字通り。



―――『夢』に包まれ育っていった。



故に、自然と彼も中毒者となったのだが、他の者らと違う点は、生まれながらにそういう環境だったせいか、ある種の抵抗力を身につけていたということだろう。



そしてそれは通常の耐性なり抗体なりとは、少々異なる特性として現れた。



となっているため、永遠に中毒状態が醒めない反面、薬物の毒で衰弱することも全く無い。



身体機能や他の生命維持を成立させながら、常に彼は酔っている。

異常な環境に対して人体が期せず適応した、そういう結果と言えるだろう。



そういう意味で、彼は最初から『夢』の世界の住人だった。

シラフというものを生涯経験したことがないし、その意味も知らない。



そうだとも。

ここはいつでも、永遠の幸福が約束された桃源郷。



困ることなど何もなく、ならば好きにすればいい。



母はたまに彼を間違え、うち捨てられた死体を優しい笑みで愛している。

いいことだ。


向かいの男はいつも女へ愛を語り、蛆と蛭のたかった腐肉へ猛然と、股ぐらを突っ込みながら絶頂している。

仲がよさそうで素晴らしい。


隣の老婆は毎日欠かさず、神の桃と名付けた自分の糞を飽きもせず独り占めしながら味わっている。

満足するまで食べるがいいさ。


長寿の小便売りは大繁盛で、通りに座る大将軍は蝿を相手に明日の軍議を説いているが、濃硫酸で風呂浴びする女は美容の探求に忙しく子供は姉の内臓調理に炎で父を洗いながら犬の頭蓋を鍋にしつつ演奏するのは屍の群れを前にして老人は両目を蟲毒に捧げ導師は―――



なんて感動的なのだろう。



あなたの、君の、きっとたぶん、活躍と幸運で国は再び守られた。


素晴らしい、今日もみんなは幸せである。




何もおかしなことはない。

ここには笑顔が溢れていた。

優しい親と、幸福そうな周囲の人々。

彼から見て、この世界は紛れもなく完璧だった。



すべてが満たされ、完結している至高の桃源郷である。






だがしかし。


―――そんな日々が、ある日唐突に終わりを告げた。






誰かが火を用いたのか。

それとも外部から持ち込まれた要因なのか。



脱法ハーブ窟全域を巻き込むような大火事が前触れなく発生。



結果として、



皆幸せそうに。

例外なく夢見心地で。

いつもと同じようにパントマイムを続けながら、誰しも笑顔で、動く火柱と化したのだった。




―――――――――。

――――――。

―――。




死ぬことが、異世界に入るための条件ならば。

彼もまた転生の資格を有している。

さらに言うと、彼は重度の薬物中毒者という格別なる存在。



最初から夢の世界の住人であるために『枷』というルールが通用しない。




目を覚ますと、彼は一人、異世界の中にいた。




を、夢見る奇形児と同様に満たしていたのだから。



異世界に選ばれたのは必然であった。



みんと「・・・。」



彼に与えられた役割の名は―――みんと。



自分がまるで違う場所にいることも、容姿が別人に変わっていることも、彼は察知すらできず酔い続けている。



みんと「???」



ふらふらと。

ふらふらと。

あてもなく彷徨い続ける。



いつも側にあった『香』は消えた。

しかしだからといって、彼の中毒状態は直ぐに醒めることもなく。



みんと「・・・。」



その後、とにかく一人転生した彼は、今までとはまったく異なる別種の価値観が横行する世界で生きていくことになる。



たぬき「ちょっと、そこの君! 随分特徴的な服装だけど、もしかして名前持ち?」



最終的に、彼は帝国という名の街に流れ着く。



そこには彼と同じように、現実世界から転生して来た者たちで溢れていた。



まげりん「参りましたね。このお方、ストレスで心身が傷つき喋れないのでは? 自分の意思で動けるは動けるようですけど、対話については・・・。」



和田「・・・まげりん、驚かずに聴いてくれ。俺の心眼で観察した結果、この人の名前はみんとだ!」



まげりん「あら。知ってますその名前! れいか生主の中でも、大御所の中の大御所ですね! でもそうですか。みんとさんも、この異世界に召喚されていたのですね・・・。」



みんと「れいか、生、主???」



しかし前述の通り、彼には異世界の『枷』が通用しない。



、彼は最初から夢にまどろむ薬物中毒者。



いきなりれいか生主と言われてもなんのことだか分からない。

聞いたことすらないだろうし、また聞いてすらいないだろう。



そもそも彼には、意思疎通する気などまるで無い。


しかしそうなると問題なのが―――。



れイカ「働かざる者、食うべからずだから。言葉が喋れないなら身体を動かして貢献してよ。この帝国に住む以上は、お前にも何か役立ってもらわなきゃ筋が通らないよね?」



みんと「・・・。」



死んだ母とは大違い。

そういう認識を彼が正確に持つことは無かったが、この帝国がまったく違う属性を持っているということだけは、感覚的に理解していた。



何故なら、母が自分に与えてくれた環境は素晴らしい桃源郷だが。



帝国が与えた環境は、まさしく地獄であったのだから。



期せず脱法ハーブ窟から出た彼は、ここでとやらを初めて目にする。



みんと「いったいこれは何なのだ?」



永遠に続いていた中毒状態も、『香』がない環境に身を置けば醒めていく。



かれー。「だからぁ、僕は新人Vtuberとして活躍してた実績があるんだって! 企画力なら僕が一番優れてる!」



るしあ「黙れホモ野郎! 話すり替えてんじゃねぇよ! 手前の企画力とやらで用務改善なんか実現出来るわきゃねーだろ!」



和田「ですが帝国には、早急な補給が必要! 私達名前持ちの誰かが、やるしかないのです! このままでは民達が暴動を起こしますよ!」



神田たけし「そ、そうなったのは上層部の自業自得じゃないの・・・?」



るしあ「神田たけしお前いい加減にしろよ!? てめぇマジ神田たけしいい加減にしろよ?! なぁ神田たけしお前マジいい加減にしろよ?!」




皆が皆、常に何事か怒って嘆いて争っている。

なんて不毛な行いだ。




金銭の為、尊厳の為、



みんと「こいつら、馬鹿なのか?」



なぜ他人に認めてもらいたがる?

なぜおまえが、そうと思っているならそれでいいと思わない?



なぜわざわざ他人が何を感じているのかなどと聞き、知って自分をさらけ出し、ムキになって言葉を交わした挙句に傷つき傷つけ合うのだろう。



みんと「ひどい、な。」



彼が生きた世界観、その美しさに比べれば雲泥の差。



『香』にまどろむ人々みたいに、世界を自分の形に閉じてしまえば皆幸せになれるだろうに。

それが証拠に、なんだその議論というのは。

甚だ非効率に見えてしまうぞ。



かれー。「そこの新入りさん? あなたさっきから目線が定かじゃないですけど、僕の話聞いてます?! 今は大事な決議の最中で―――」



結局皆、見たいものしか見ようとしていないのに。

自分の中の真実しか信じていないし、大切などと感じていないはずなのに。



分かりあう?

仁義?

は?

そんなことが必要なのか?



なぜ閉じないのか分からん、本当は皆そうして生きていたいはずだろうが。



かれー。「———っ!? ゴホッゴホッ、あ、ぐぐ―――!」



るしあ「おい! 何をしてるんだお前ッ! その手は何だ!?」



ん?

ああ。

その慌てよう。

さてはお前ら、あの幸福を知らないのか?



・・・なんだよ。

それならそうと早く言ってくれ。



施してやるよ。

桃源郷を。



かれー。「あっぉうあえぁおぃあぇいぅ―――。」



気楽に『香』を吸え。

遠慮するな、人間とは常にそういうものだ。



るしあ「あ、がガがあぁがアォがっは―――。」



たぬき「みんと!? その手から出してるそれは異能か!?」



まげりん「みなさん、あの煙を吸っちゃだめです!」



鳥骨鶏「かれー殿にるしあ殿ッ・・・あの二人はもう手遅れでござる!」



ソードフィッシュ「バイオハザードだッ!」



たぬき「聞いているのみんと! 今すぐそれを止めてッ!」



れイカ「この霧、吹き飛ばせないし消せないッ! 触れたら最後、あの二人と同じように?!」



げすと「ッ! 皆さん、一時避難してください!」



なんと哀れな、救ってやろう。

報われてくれよ。

俺はお前たちの幸せだけを、いつも変わらず願っている。


ああ、だから、いったいどうしたのだよ楽しめよ。

お前の世界はお前のもので、お前の形に閉じているからお前の真実はお前が好きに描けばいいんだよ何を逃げているんだろうなぁ俺はお前らのことがとても好きだしお前らも俺を好きなのだからきっと楽しめるに決まっているそうだ素晴らしいなぁ桃源郷は。


飲めよ吸えよ気楽に酔えよ。

お前らだけの至福が待っているんだ。




とまと「城の中は汚染されて全滅した! あの紫霧を吸うのはマジでヤバい!」



てれいか「異能の正確な詳細は?! 射程距離はどこまでなの?!」



とまと「そんなの俺に言われてもッ! ああああ、駄目だ駄目だ! 紫霧が城下町の方にまで真っ赤に広がっていくッ!」



てんま「・・・まるで致死性ウィルスの感染だ。誰もが正気を失って死んでいく。」



もい「民が・・・私達の帝国が燃えていくよ。絵を描いていた平和な日々は・・・戻ってこないのかなぁ?」



カプれいか「へ。;」



ぺんぎん「ここも霧に囲まれ始めてる! 早く街を出ましょう!」



小鳥遊君「私達も逃げなきゃ・・・! どうにか塀を飛び越えて―――」



hmm「ふーむ。逃げると言われましても詰みのご様子。侵食速度が早すぎですな。時には潔く諦めることも肝心です故。」



たぬき「あなたって人は、どうしてこんな時まで冷静なのですかッ?!」



フレッシュ「れイカさん・・・嫌だ、私怖いよ!」



れイカ「くそっ、こんなのってッ! ふざけるなよみんとおおぉオッ!! 私の帝国を、市民達をッ、おのれえぇええエッ!!」



和田「ッ!! フレッシュ、一か八かッ――!」



春巻きれいか「うおおぉぉおぉおオオオッ!! 帝国ばんざぁあぁぁぁあいッ!!」



酒が欲しいか?

肉はどうだ?

おいおい、だから遠慮なんかするなよ派手にいこう。


夢は幾らでもそろっているし、女が好きなら西王の仙女でも呼んでやろう。

なんでもより取りみどりだ。


一つ晩餐会と洒落込んでみるのも悪くあるまい。

俺は深海の母とも最近懇意になってなぁ、これがどうしてなかなか気前のよろしいことであることよ。

めでたい、めでたい、なあ笑えよ。

世界はこんなにも輝いている。




みんと「あはははは、ははは、ははははははは。」




―――――――――。

――――――。

―――。





やがて・・・。



彼―――みんとは驚異的な才覚を発揮して、いつの間にか帝国を掌握していく。



抱いた想いは純粋そのもの。



結果だけを言うならば、彼は帝国を丸ごと『香』の海に沈めて、数万単位の中毒者を生み出した。



誰一人として正常な者など残らない。

皆が皆、夢にまどろい一人芝居を繰り返す人形。



みんと「ああ、懐かしい・・・。」



それを見て、彼は満足そうに笑う。

これでいい。

ようやくこの常に怯えていた可愛そうな連中を、母のような笑顔に出来た。



こうして帝国は、みんとの手によって過去最大の悪意へと作り変えられる。



時代の闇が生み出した怪物。

帝国に君臨する背徳の帝王。

伝説のギャングスタ―。



みんと帝国―――その誕生である。



だが、それはあくまで他人から見た視点の話。

多くの者は彼をそう呼び恐れたが、当の本人に邪念や欲は一切無い。



誓って、ただ純粋に、救いをその手で施しただけ。

これが人間の、世界のあるべき姿だと思っているから迷わない。

この美しさ、この完成された『夢』を掛け値なしに愛している。



みんと「お前たちは盲目だ。等しく何も見ていない。他者も世界も夢も現実も、いつも真実はお前たちそれぞれの中にしかないんだろ? 見たいものしか見ないだろ? えへ、実に素晴らしい。」



その桃源郷こそ絶対だ。

お前たちが気持ちよく嵌れるのなら俺は何も望まない。

好きに『夢』を描いてくれ。



みんと「ほら、気楽に吸えよ。その先は桃源郷、女も酒も何だってあるさ。」



混沌の王として君臨するその名は―――みんと。


その巨大さ、その歪み、成し遂げてしまった偉業から、まさしく彼も怪物。


でありながら、今は誰にも知られていない。


みんと帝国は今日もまた、異世界の隅に隔離され、痕跡は途切れてしまっている。


桃源郷の名に恥じぬ、極悪な『香』を振り撒きながら。


紛れもない狂人だが聖人で、規格外の化け物がそこにいる―――。






あなたの、君の、きっとたぶん、活躍と幸運で国は再び守られた。


素晴らしい、今日もみんなは幸せである。












―――第21話 桃源郷 みんと帝国










―――隠れ家居住区 寝床内


~少女視点~



本来なら、修行の疲れですぐ眠りこけてしまうのに眠れない。

何故なのかは分かっている。



「私が鬱霊だからなの・。・?」



私の心に巣くっているのはあの男―――みんと。


彼という人物のことが頭から離れない。



彼の『夢』は、怖気を催すものだったから。

身体が疲れ切っていたとしても、忘れ去ることが未だ出来ない。



「はぁ・。・ とんでもない男だったのだ・。・」



くそっ、だが釈然としない。

なんでいきなりこんなものが視えたんだ?


いや。





何かこう、色んな人の物語を数度視てきた気がする。

しかし今回に限っては密度が違いすぎる。

いや、回を重ねるごとに濃厚になっていくような。



何故だ?

そして、それは一体いつからだ?



みんとの物語と同様、はっきりとしたエピソードが導入され始めたのはいつだ?



「―――4410さんのエピソードからだったなの・。・!」



もっと言うと、田中みこに連れてこられた場所で黒い煙を吸収した時だ!

確かその頃から、色々な物語の導入が始まった気がする。



4410さんの時に視えたのはえっと、プラモデルがどうたらこうたらの話だ。

彼が現実に絶望し、異世界に転生する話。



「やっぱりそうだ、思い返してみると―――」



4410



今視えた、みんと帝国の話もそう。

あれは『みんと』という役割を手に入れただけの、れいか生主とは全くもって無関係な人物だ。



だがしかし、共通点は僅かだが存在する。



4410は趣味がプラモデルという共通点。

みんとはアル中という共通点。

その共通点が彼らにあったからこそ、れいか生主という役割を与えられた?

つまり、正しく言い換えるとこうだ。



「彼らは、ということなの・。・?」



妄想体がどのように作られているのか、その答えが出てしまった?

待て待て、結論を急ぐな私。

さっき視えた、みんとの物語と照らし合わせて事実確認をしてみよう。





1.現実世界で死ぬと、この異世界に転生される。



みんとの方は焼死。

4410さんの方は確か『世界に無関心となった』と明記されていたが、おそらくそういうことだと思う。

つまり、彼らは現実世界側で一度死んでいるのだ。





2.異世界に転生できるのは、夢見る奇形児のみ。



本来、この異世界は万人を受け付けるほど敷居の低いものではない。

”夢の門”を叩ける人間は相当に限られている。

それが、夢見る奇形児という枠組なのだ。


夢見る奇形児というのは、躁霊から聞いた言葉だったはず。

奇形児の定義は不明だが、みんとのような歪んだ思想の持ち主ということか?

れいかを知っている者なのか、はたまた何かの資格や特権が必要なのか。

選別基準が今のところ分からない。





3.死んだ奇形児の過去・風景がれいか生主の誰かと酷似していた場合、その誰かとなって異世界に転生する。



みんとの物語に明記されていた情報だ。


転生先は一般市民と名前持ちの二つ。

条件が合う者は『枷』によって、己をれいか生主だと思い込まされて、名前持ちという異能所持者へと転生する。

多分それは死ぬ最後の瞬間まで終わらない、いわば呪いの一種なのだろう。


しかし、みんとは別だ。

彼には枷が通用しないという描写があった。

その理由は、現実世界で最初から夢の世界の住人だったから?



枷というのはおそらく、異世界内におけるルールのようなもの。



容姿の変化、異能の発現、記憶の操作・・・。

様々なルールが複雑に混ざり合っている。

この異世界に入る場合、必ずこのルールが適応されると考えていいだろう。



「地道に解き明かしていくしかないなのね・。・」



そうだ、外から来たキリトさんはどうなのだろう。

何か目的があって異世界に潜入したらしいけど、肝心の目的を忘れてしまっていたみたいだし・・・。

これも枷による影響なのだろうか?

それと、しぇいぱー君から枷の単語を聞いた気がする。

彼らとも、また話をしておかなければ。



「まぁそれでも、一つだけ納得したのだ・。・」



―――妄想体の起源。



如何に私が妄想逞しい鬱霊だったところで、あれほど人間らしい振る舞いが行える生命を作れるはずが無かったということ。

要するに元となる核が絶対条件。



つまり、



現実世界で死亡した人達を再利用している。

記憶を作り変えられてまで、れいか生主という役割を演じさせられている。



・・・フリーの躁霊がどのように、世界そのものを異世界転生させるのか、手段が少し見えてきたかもしれない。



でも、この事実判明は大きい。

妄想体は偽物でも空想でもなく、人間だ。



妄想体が死ぬと、身体が現実世界時の姿に戻る。

その数秒後に黄金の粒子と化して消滅する。

所詮、現実で既に死んでいる身なのだから。



くそっ。

結局、妄想体には救いがない。



「それじゃあ、私が見てきた50人弱のれいか生主達は、皆誰かの魂を利用して生み出されたなの・。・?」



私。

外から来たキリト。

U2部隊。


それ以外の人物とするならば、一体どれほどの?



一度死んだ命を、れいか生主という訳のわからない存在として身体と記憶を作り直され、フリーの躁うつ病の理想のために利用させられている。



異能という危険な力を発現させ、殺しあい、いずれは現実世界までその侵食を進行していく。



ここまでくると申し訳なく思ってくる。

人格矯正なんて許されない非道だ。

そして、それを実行したのは間違いなく私なのだ。

フリーの躁霊が興した計画は、フリーの鬱霊である私が興したに等しいのだから。



これは言わば償いの物語。



私はこの異世界を、物語しょうせつを、躁霊の野望を完膚なきまでに叩き潰してやる。

前回の修行で決意したことだ。



勢いよくベッドから立ち上がる私。

最早二度寝する気は起きなかった。



「はぁ、記憶を失う前の私の悪事はともかくとして、もう一人の悪事の方なの・。・」



徐々に真相へと近づいている反面、気になる事がもう一つ。



なの・。・;」



U2部隊が次に襲撃すると予想されている街。

私達の計画は、みんと帝国が襲われている間にひっそりと行われる。

躁霊を倒すための奇想天外な一手を。



言ってしまえば、みんと帝国を囮にするというもの。



みんと帝国がどこにあるのか、私たちレジスタンスには知る由もない。

捕虜となったU2部隊の三人も詳しい場所は知らされておらず、分かっているのはみんと帝国が襲撃されるという計画の存在だけ。

場所が分からなければ、私たちが助太刀する余地もないのだ。



だから本来、みんと帝国の事は気に留める必要が無いと思っていたのだが・・・。

視えてしまった以上、無視できない。



「みんと―――あの男を放置してはいけない気がするのだ・。・」



まさかあそこまでの男だとは・・・。

あの街にも多くの妄想体が存在している。

そしておそらく、無事とは言えない惨状だろう。



「みんとの異能は、麻薬を霧状にして散布する能力なのだ・。・ それを吸うと脳がやられる初見殺し技なの・。・」



吹き飛ばせないし、消すこともできない紫霧。

射程も対処法も分からない今、どう考えても脅威でしかない。



U2部隊と前線組、そしてレジスタンスに続き、第4の国みんと帝国を怪物。



同じ怪物同士、格もまた同格。

ならばいずれ相対する運命にあるだろう。



「レキモンさんとの訓練で疲れてるけど、こうしてはいられないのだ・。・ 宮殿に情報を伝えに行くなの・。・ 私の視える力のことについても、まずは情報収集なのだ・。・」



時間は午前三時。

早朝マラソンより一時間早く目覚めた少女は、欠伸を噛み締めつつテキパキと着替えを済ませるのであった―――。











同時刻。


―――みんと帝国 創源廊下




それは思わぬ邂逅か、はたまた運命か。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ああ、つまりこういうことね。玉を守るのは金将の仕事だと。―――ふん。ならそれ相応に、堪能させてもらおうかしら?」



―――U2部隊 No.1 ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ 異能名『逆説パラドクス



そして対するは、この男。



和田「わだ [・]。[・]-∩ ビ━━━━━━ム!」



―――みんと帝国所属 和田 異能名『勿体ないポテンシャル天輪ヒット



みんと帝国近辺の館にて、二人の強者が対峙する。

バイクの駆動音が轟き渡る中、両者は自然と戦闘態勢を取る。



和田「こんにちわだ [・]。[・]- 名を名乗れ女。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・・ふぁっきゅーれいかよ。ねぇ和田、なんなのよその口調。随分とまぁ風変わりしたものね。」



―――和田は桃源郷の守護者と化している。



和田「・・・。」



人として然るべき一部を欠落させた者———特有の目。

『陶酔』という熱を帯びている。


主君へ忠を尽くすこと以外、己に価値など認めていないかのような目。



和田「さて、S1000RR———新型バイクのお披露目だ。ふぁっきゅーれいか、一度だけ警告する。我々と同じ帝国民となれ。戦いを止めて俺についてこい。桃源郷の源である『香』が、お前を幸福の世界へと招待しよう。」



バイクのエンジン音を轟かしながら、再び饒舌めいた口調で勧告する和田。

立ち塞がるライダーを前にして、ふぁっきゅーれいかは嗤った。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「怖いねぇ、流石はみんと―――」



自身に向けられる瞳の、和田を酔獄に駆り立てている存在へと、呪うような声で告げる。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「罪な男だよ。手駒を数万増やした癖して、まだ物足りないってわけ? うふ、ふははは、あははははははははは―――!」



爆発する狂笑は、時間逆行の波となって空間を覆い尽くす。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「———逆説パラドクス! 目押し時間ジャッジタイム!」



再々度の塗り替えを起こすべく、穢れの奔流が和田へと襲い掛かる。



―――交渉は決裂。

激戦の火蓋が切られる。



和田「S1000RR———BMWシフトカム!」



穢れの奔流に真正面から、バイクに乗った和田がウィリーで突撃を開始する!



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「馬鹿ねッ!!」



ふぁっきゅーれいかの異能は『戻す力』である。

かつての黒歴史である声出し顔出しを、声出し顔出しをしなかった時間軸へと戻りたい。

その願いと夢による狂気は、半端な異能の力では覆せないほどに強力だ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(何千ccだろうが、異能バイクだろうが、目押し時間ジャッジタイムの前では所詮同じッ!)」



限定空間そのものを狂わす時間逆行。

放たれた時間逆行の波は円形状に広がっていき、触れるもの全ての概念を破壊していく。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ふん・・・ただのバイクだわ。」



結果はふぁっきゅーれいかの想定通り。

彼女に触れることさえ叶わず、そのバイクはバラバラな状態へと分解される。

製造前の状態へと戻されたバイクは、その勢いのまま塵一つ残さずに消滅する。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(・・・和田がいない?)」



いる筈の搭乗者が消えていた。

突撃中のタイミングに乗り捨てたのか、ふぁっきゅーれいかは素早く周囲を見渡す。

遠く離れた場所に、彼は立っていた。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・ウィリー走行することで、乗り捨てた瞬間を上手く隠したのね。中々の体捌きじゃない和田ぁ?」



無条件で発動するふぁっきゅーれいかの異能は、特筆すべき弱点が無い。

もし僅かでもその領域に踏み込めば、即座に身体の自由を奪われてしまうだろう。

触れれば終わりの時間逆行の波は、見る者の常識を崩壊させ得ると言える。



だが、常識を無視しているのは言うまでもなく彼女だけではない。

ここは悪夢。

数多の価値観と不条理が乱れ合う世界。



和田「HORNET250、スタンバイ!」



空間が捻れていき、

同時に降り注ぐ極彩色の粒子は、星屑のイルミネーションに見えぬこともない。

その霧のような粒子が、やがて実体を帯びていくように集合していき・・・。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「はぁんなるほど。それが次のオモチャってわけね。いいわよ和田ぁ待っててあげる。」



折り重なった集合体が一台のバイクと化して実体化し、アームが解放されることでそのまま垂直に降下していく。



和田「HORNET250出力最大! 同時にS207、スタンバイ!」



降下してきたバイクに乗りながら、の具現化を完了させる和田。

先ほどとは明らかにサイズが異なるそれは、誰が見ても一目瞭然、見慣れている形であった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・四輪自動車か。」



史上最高スペックと呼ぶに相応しい車が―――戦場へと君臨した。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「その調子よ和田ぁ。なんなら戦車でも、思い切って電車でも、何だって呼ぶといいわよ。結果はみえてるけどねぇ。」



余裕綽々な態度は崩さず、しかし彼女は考える。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(和田の異能は十中八九具現化系。奴の頭上にあるアームは、クレーンゲームに出てくるあれと同じだわ。要はその力を操ることで、様々な自動車を生み出すことが可能・・・。)」



余計なプロセスや理屈など、彼女は考えない。

単なる現状の確認のみ。



和田「S207、パッド入力完了! HORNET250、発進ッ!」



次なる攻撃に移る二台の車両。

それぞれ異なる軌道を描きながら、ふぁっきゅーれいかに向けて爆走する。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(へぇ。四輪の方は自動操縦か。まぁ、異能ならこれぐらいやってのけるわよ。和田の方はバイクを・・・また乗り捨てる気で攻撃するみたいね。)」



とはいえ、前述の通りふぁっきゅーれいかに真っ当な攻撃は通用しない。

唸りをあげて放たれた突撃は、その防御力の前にひれ伏すのみ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(挟み撃ちも出来る分、強力な異能だとは思うけど、相手が悪いのよ和田。)」



だから案の定、バイクの速度を上げに上げて乗り捨てた和田の攻撃は届かない。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ほらぁどうしたの和田ぁ、2台目のバイクも粉々にしちゃったわよ? 今度はあの四輪の攻撃に賭けてみる? それともまた、新しいオモチャを引っ張り出して挑戦してみるぅ?」



そうした事実を踏まえて見るに、彼女と戦うことそのものが、おそらく無駄と言えるだろう。

ここまでの流れがそれを証明しているし、そもそも彼女の土俵で真っ向勝負という選択自体、賢い者のすることではない。



和田「・・・S207、ゴー!!」



よって、求められるのは別角度からのアプローチである。



ガ、ッッ!!!



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(———え?)」



ふぁっきゅーれいかの口元に、



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(あっ、は、えっ??)」



これまで誰がどのように攻撃しようと、ふぁっきゅーれいかには明確な打撃を与えることが出来なかった。



その彼女が今!

和田が操る車の直撃によって吹っ飛んだ―――!



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(・・・轢かれたッ!??!)」



顔面を砕かれ、手足がへし折れる。

朦朧とした意識の中、ふぁっきゅーれいかは地面を転び回った。

しかしすぐさま体制を立て直し、闘志を露にしながら四輪自動車を捕捉する。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「私が車に轢かれる・・・ふん、笑える。———反省するわ。」



噴き出る血を押さえながら、だが彼女は気丈に言い返した。

受けた傷はもとい、不安や苛立ちといった精神状態も含め時間逆行によって既に完治している。

しかし、冷静な思考を取り戻したのも束の間であった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(・・・いやいや解せないわ。私の目押し時間ジャッジタイムをすり抜けたってわけ? それが絶対に不可能だってことは、私が一番よく分かってるじゃない。なのに和田のやろう、いったいどんなトリックを・・・?)」



和田「S207———出力最大!」



その車は独立した生き物のように、ふぁっきゅーれいかを狙いすましながら駆け巡る。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(懸念されるのは・・・異能の無効化。だけどそれはありえない。基本的に、異能の内容は被らない事がルール。異能の無効化はあじれいかが既に使っている。だから和田に、異能の無効化なんていう力は使えない・・・。いや、そもそも無効化なんてされてないわ。私が受けた傷はこうして戻せた―――)



和田「S1000RR、HORNET250、S207、ゴー!!」



迫ってくる車の突撃を―――ふぁっきゅーれいかは身体を動かして避ける。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ッ、この、また普通に突っ込んできたわねッ!」



謎が解けぬまま、ふぁっきゅーれいかは後手に回るしかない。

和田はいつの間にか、破壊されたはずの車両を再び顕現させており、らせん状の軌道を描きながら猛攻を開始する。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(他に敵の気配は感じられない。でもだからと言って、第三者の異能が介入していないとは言い切れない。北上双葉のように、具現化した兵器を他人に譲渡できる異能もある。ならやっぱり車の方に秘密が? そう思い込ませといて、実は本体の方に仕掛けでも?)」



一度追いやられてしまうとペース奪還は困難だが、彼女は常に、余裕を保った自分へと戻ることが出来るのだ。

危機的状況にも関わらず、車に激突されるのを寸前で躱し続け、彼女は論理的かつ冷静に思考を繰り返す。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(私の目押し時間ジャッジタイムをすり抜ける何かがある以上、このまま後手に回るのは危険。車のほうは何度破壊しようと、元通りに召喚される。ならやっぱり先に本体を・・・えっ?)」



和田「 じぃーっ [・]。[・]- 」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(和田の、眼鏡・・・?)」



特徴的な額縁眼鏡に、不自然なほど見つめられているのをふぁっきゅーれいかは回避の宛ら見逃さなかった。

そして同時に、一つの答えに収束し戦慄する。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(・・・ああ、気づいちゃったわ。納得は出来ないけど。)」



攻撃を繰り出してくる和田に対し、ふぁっきゅーれいかは回避行動をしつつ、その答えを口にする。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「和田。あんた最初から、でしょ?」



和田「・・・!」



車両の動きが鈍る。

ふぁっきゅーれいかは己の論が正解だと断じる。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「みんとの支配をどう解除したのか? そこだけが分からないけど。ともあれ、今の和田には『枷』が消えている。そうよね? 『枷』を解く手段はいくつか存在するわ。和田の場合、それが香だったってだけ。」



和田「———そう、俺は正気だ。香に溺れたのと同時に『枷』は解かれた。おかげで幸か不幸か、。今の俺には、異世界の仕組みがよく見えている。自分がれいか生主の皮を被った妄想体であることも、お前らのやろうとしている計画のこともな。この眼鏡の前では、如何なる誤魔化しも通用しない。常に真実を見つめているぞ [・]。[・]- 」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ずいぶん、お喋りになったじゃない。」



異能は基本的に、一人に一つまでしか発現しない。

それが『枷』による、異世界内の絶対ルール。



しかし稀に、



それが―――『覚醒』というシステム。

普通の異能と比べ、覚醒した異能は一方的極まる力を持つことが多い。

異世界の仕組みを理解した者による特権であるため、必然と馬鹿げた強さに比例した能力と化すのだ。



ふぁっきゅーれいかの目押し時間ジャッジタイムをすり抜けたカラクリはそこにある。

本来ならば、彼女の異能の前ではあらゆる攻撃が通用しない。

しかし覚醒異能ならば、そんな優劣など無に等しいのだ。



そして、和田がそこまで達せた覚醒異能の効果は一つ。



和田「———異能バトルなんてお前らで勝手にやってろよ。俺はいつも、現実を見据えてここに立っている。」





その反則めいた事実が―――答えであった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・どういう悟り開いてんのよ和田。異世界で過ごす以上、己と異能は運命共同体。なのにその範囲を飛び越えて―――」



その境地に達する葛藤や決断。

克服する恐怖のほどは言うまでもなく凄まじい。

万人に理解できるものではないし、万人がやっても同じ効果は得られない。



そう言ってのけるには、計り知れない意味があるのだ。



和田「俺は日本中を愛車と共に旅してきた。複雑な価値観が横行する世界をこの目で見てきた。お前らのように、部屋に引きこもってアニメやゲームなど没頭してる頭では辿りつけない境地だよ。フィクションの世界に入り浸っているお前らと、実際に自らの足で世界を旅してきた俺とは住む世界がまず違う。異能だと? くだらないんだよ中二病共が。現実見ろふぁっきゅー。お前の真実はただの次郎db。俺には全て見えているんだよ。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・さっきまで、ノリノリでバイクを顕現させてた男の台詞とは思えないわね。」



和田「クレーンで愛車を担ぎ、その愛車に乗り込んで特攻。全て現実で可能な範疇だよ。」



つまり和田は、異能を無効化させていたわけではない。





夢の住人でありながら、異能というフィクションを認めていない。



かつてあじれいかは、現実世界での辛い思い出―――他人からのゴミを見るような視線、それを遠ざけたいという夢にて『異能の無効化』という異能を発現させた。



だがしかし、和田の覚醒異能はそれとはまるで意味が違う。

なにせ夢そのものを拒絶しているのだから。



和田「それが俺の覚醒異能―――『虚実葬送ドリームゴースト』だよ。」



眼鏡をクイッと調整する和田。

涼しい表情を浮かべながら、しかし和田の猛攻は止まらない。

際限なく連続する車の顕現、からの突撃。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「恐ろしい力ね。いや、この出鱈目な能力こそが覚醒異能か。ねぇ和田、あなたの答え合わせには若干疑問が残るわ。夢を無力化できるなら、どうして私の回復を見逃したの? あのまま轢き殺していれば、和田の勝ちだったじゃない?」



和田「勝ちとか、勝負とか、だからそういうのはお前らだけで勝手にやってろよ。俺は人を殺したくないだけさ。現実だってそうだろう。誰かを殺せば、それはもう立派な犯罪だ。だからふぁっきゅー、お前は殺さない。何の用で来たかは知らないが、ちゃっちゃと諦めて巣に帰りな。帝国には指一本触れさせない。」



完全に舐められている―――ふぁっきゅーれいかは頭が沸騰しそうなほどに苛立ちを覚えたが、すぐさま異能によって冷静状態へと己を戻す。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(夢に頼っているなんて、自分でも分かっているわよ・・・。それでも私は、現実をやり直したいの・・・。)」



本来、ふぁっきゅーれいかの目的は今回に限って戦闘ではない。

時間逆行が封じられようと、そこは問題ではないのだ。

フリー(躁)から与えられた任務は、宣戦布告をしてこいというその一点のみ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「じゃあお願いなんだけど、和田のご主人様に会わせてくれない? 折り入って会談がしたいのよ。あんた最初、戦いを止めて俺についてこいなんて言ってたじゃない? ああ、警戒なんてしなくていいわ。和田の実力もよく分かったし、馬鹿な真似はしないと誓う。どう、和田?」



その呼びかけに対し、和田は数秒、沈黙を守った後―――。



和田「笑わせる。」



まったく面白くもなさそうにそう言った。



和田「ふぁっきゅーれいか。お前が誓うとは、いったい何にだ。U2部隊のボスにか?」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(・・・。)」



その発言に、違和感を覚えるふぁっきゅーれいか。



和田「こう言った方がいいか。駒風情が戯言を抜かすんじゃない。みんと帝国の王に目通り願うと言うのなら、お前ごときでは役者が足りないよ。」



周りのエンジン音が一斉に静止する。

そして同時に、熱を帯びた声色が和田から発せられた。





和田「ここに今すぐ、。」





No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ふはっ―――」





その名を叩き付けられた瞬間に、彼女の様子が変貌した。

細い筋が痙攣しながら、こめかみに浮かび上がる。

怒っているのか、いいやそれとも・・・。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「駄目だわ、全然笑えない。妄想体ごときが集まって、あの人に何か言えるとでも思ってるの? 枷を解いて、異世界の真実を知ったお前ごときが?」



建築物のひしめく崩音が、徐々に激しさを増していく。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「を連れて来いとは大きく出たわね和田ぁ、くす、うふふっ。駄目駄目―――まったく話にならないわよ。期待はずれねぇその程度? もういいわよ、潰してしまうわ。あなたは何にも分かっちゃいないから。」



和田「俺がそう簡単にやられると思うのか? 手も足も出ない次郎dbがか?」



これまでの数倍はあろう邪気を正面から叩き込まれ、だが和田は微塵たりとも怯んでいない。

むしろ口元に微かな笑みさえ浮かべながら、真っ向迎撃する気概を見せる。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「そういう台詞は、を体験しながら喚きなさい。」



和田「ならばこっちも、とっておきの車両を体感させてやるよ。一度轢き殺しただけでは物足りないみたいだし、しばらくは轢き続けてやる。」



先の攻防で、和田はふぁっきゅーれいかの防御を破った。

夢の無効化を持続させるなら、これから先は間違いなく死線を潜ることになる。



だが、ふぁっきゅーれいかも無論、本領の一端たりとも見せてはいない。

今このときも膨れ上がり続ける邪念の波動が、”時の悪意”に底など無いことを証明している。



すなわち双方、これより本気の第二局面。

もはや遊びは存在しない。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・『時系列頂点崩ジ・エンド・オブ・タ―――」



まげりん「———和田。」



その幕が切って落とされようとした、まさに寸前。

両者の間に、優々とした声が届いた。



まげりん「もうやめなさい。それ以上の戦闘は禁じます。」



その人物の姿は見えない。

館全体が話しているかのようであり、奇妙に現実味を欠いた感の、だが絶対の強制力を持つ声だった。

事実、和田は動きを止め、即座に戦意を解いている。



まげりん「ふぁっきゅーれいか様。あなたもです。矛を治めていただけませんか? ご相談とやら、聞きましょう。和田は彼女をお通しするように。誤解しないで下さい、和田さんを信じていないというわけではありません。ただ、勝敗に関わらず、その彼女を相手にして無事に済むとも思えないだけ。貴重な金将に何かがあれば、誰が王を守るのですか。」



和田「・・・。」



まげりん「事を荒立てる気がないと言うなら、ここは丸く治めるべきです。さぁ、もう一度言いますよ。彼女をお通しするのです。」



和田「御意。まげりん。」



頷いて車両を消失させ、みんと帝国の金将である和田は、その立場に相応しい完璧な礼をもって『客』を迎えた。



和田「ご無礼致しました、お客人。どうぞこちらへ。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・百八十度態度を変えたわね。無理も我慢も一切無しか。」



その心底から歓迎しているように見える和田の姿に対し、ふぁっきゅーれいかは珍しく世辞ではない賞賛を口にした。

精神状態を抑える所業の辛さは、彼女が一番よく理解していたのだから。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「従者の鏡ね。素晴らしいわよ和田。いや、こちらこそ失礼したわ。謹んでお言葉に甘えさせてもらうわよ。」



和田「では―――こちらです。香の届かない詰所へとご案内致します。」



半歩遅れて傍に立ち、道順を示してくれる和田に、ふぁっきゅーれいかは大人しく従った。

まるで敬意を表するように、今度は如何なる時間逆行も振り撒かない。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(みんと帝国・・・層が厚いわね。)」



そうして訪れた廊下の終点。

蒼の扉の前で和田は立ち止まり、小気味よいノックを行う。



まげりん「どうぞ。」



和田「まげりん。命に従い、お連れ致しました。」



扉を開け、部屋へと入った和田は半直角の礼をしてからそう言った。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・ふぁっきゅーれいかよ。不躾な訪問に応じてくれて、まずは恐悦とだけ言っておくわ。」



まげりん「ようこそおいでくださいました。みんと帝国が『桂馬』、まげりんでございます。」



ここに今、本来敵対しているはずの勢力同士が邂逅を果たした。

その意味するところと、結末がどう転ぶのか、場に緊張が走り始めるが―――。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ちょうどいいソファがあるじゃない。座らせてもらうわよ。」



まげりん「ええ、お構いなく。さて、まずは何か差し上げましょうか。紅茶でよろしい? それともお酒?」


No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「あんたと同じ物でいいわよ。」


まげりん「でしたら紅茶ですね。三度、お願い。」



三度「———おう、任せろ。」



三度と呼ばれた男は棚から磁器茶碗を取り出し、湯気の立つ琥珀色の液体が注いでから、二人の前に静かに置いた。

まげりんとふぁっきゅーれいかはそれを手に持ってから共に微笑み、ゆっくりと喉に流した。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ふぅ、久々に旨い。」



まげりん「それは何より。ですが紅茶に関しては三度より慣れた者がおりまして、生憎と今は席を外しているのが残念なのです。もてなしを最高の形でお見せできず、申し訳なく思っております。よろしければまた後日、改めて席を設けたいのですがいかがでしょう?」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・いやいや、もとをただせば、いきなりやって来たこっちが悪いわ。そこまで気を遣われると、逆に居心地が悪くなるわよ。」



そう言いながら、ふぁっきゅーれいかは心の中で笑うしかない。



まげりんという女性は―――何から何までいろいろと高貴すぎた。

上品な言葉遣いをはじめ、純白のドレスを身に纏った令嬢そのもの。

まだ少女と言ってよい若さだが、気品と風格はすでに威厳すら放っていた。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「けどまぁ、これ以上の味と言われれば興味をそそられるのも事実ね。なら機会を見つけて、そのときにということで。」


まげりん「ええ。楽しみにしています。」



三度「次なんかねえんだよふぁっきゅー。飲み干したんなら本題に入ろうぜ。U2部隊のナンバーワン様が、この帝国に何の用で来たんだよ。」



その高貴なる世間話に、無粋な邪魔が入り込む。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「あんたは確か、三度と言ったわね。前に来たときは見なかった顔だわ。」



三度「なら少ない知能を働かせて脳に焼きつけとけ。みんと帝国『銀将』の三度。金将の和田と同じく、王を守る盾だ。覚えとけ外道。」



まったく行儀の良さが感じられないその男は、カップを引き取ると同時に敵意を飛ばしてきており、しかしそれでいて挙動に全くの隙が無く、この男もまた強者であることを示唆している。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(和田に三度が金将に銀将。皮肉なものね。フリーれいかの住所を知っているれいか生主の二人が、U2部隊ではなくみんと帝国の手駒なんだから。)」



上質な詰め物がたっぷりと施されたソファの感触を味わいながら、ふぁっきゅーれいかは気軽い調子で言葉を紡ぐ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「気になっていたんだけど、『飛車角』の方はどうしたの? 敵である私がここまで深く潜りこめた意味、危機感の程を理解してないのかしら。まさか帝国本拠地の方で、王を抑制してる最中なんて言わないわよねぇ?」



まげりん「飛車角のお二方は、こちらも生憎と席を外しておりますよ。それに、みんとさんは『王』ではありません。あのお方は『将棋盤』そのもの。駒である私たちとは別格の存在です。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「じゃあ、今の『王』駒は昔と変わらず存在するのね。ああ、誰が王なのかは教えてくれなくて結構よ。。」



和田「嘘?」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「この部屋、。さっきからちょっかい出してきてる奴、そろそろ目障りなのよね。」



まげりん「あら、それはまあ。」



三度「化物かよ。どういう察知能力だ。」



まげりん「困りましたね。流石はふぁっきゅーれいか様です。ですけど七人? 私の用意した人数とは数が合いませんが・・・。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「出てきなさい―――田中みこ。」



No.2田中みこ「・・・みこぅ。」



その忍者は音もなく現れる。

まるで最初からそこにいたかのように、田中みこは椅子に座っていた。



和田「ッ、気配を―――。」



まげりん「まあ! あなたが噂に聞く常闇の忍者。田中みこ様ですか。」



三度「こいつがU2部隊のナンバー2、田中みこか・・・。」



No.2田中みこ「・・・隠れて見物してただけなのに。」



擬態を見抜かれたことが相当悔しかったのか、田中みこは肩を下げながら目に涙を浮かべ始める。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「そういうのいらないわよ田中みこ。何か私に言伝があって来たんじゃないの? 私が和田と戦っているときも、あなた物影に隠れて見ていたわよね?」



和田「・・・あの場に居合わせていたのか。」



No.2田中みこ「それが大変なんだよふぁっきゅー。No.4が逃げちゃった。みこはそれを伝えに来たの。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「はぁ~~~。。」



ため息をつきながら立ち上がるふぁっきゅーれいか。


No.2田中みこ「(———物語を遡る?)」


まげりん「何かそちらの方でアクシデントでも起こりましたか?」


No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「なんてことないわよ。身内の脱走ってだけ。時間も限られてきたし、宣戦布告だけして帰るわよ。」



まげりん「宣戦布告、ですか。」



いよいよもってここに、両者の間に亀裂が走り始める。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「まさか気づいていないとは言わせないわよ。そこの和田が『枷』を解いているように、帝国民の全員が『枷』を解いているんでしょう? それってつまり、この異世界の真実を知っていることになるわ。あなたたちののよ。明日の正午、U2部隊総出で帝国を侵略するわ。それで転生計画は最終段階に入ることが出来る。」



ふぁっきゅーれいかの放言に、まげりんは上品の驚きを示しただけだが、傍の和田と三度は一瞬殺気に近いものを浮き上がらせた。

当然だろう、皆殺しに近い宣告なのだから。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「せいぜい守備を固めてなさい。今日みたいな裸の館じゃあ、うちらのメンツは退屈しちゃうでしょうから。ああそれでも、あなた達全員が『香』の支配を解除してること。それに異能が覚醒済みってのはいい報告になりそうだわ。」



これで話は終わりだと言わんばかりに、ふぁっきゅーれいかはソファから立ち上がる。



まげりん「そのご要望に応じるとなれば、私共は相当の地獄を見ることになってしまいます。」



No.2田中みこ「これは決定事項。みんと帝国も『収穫』されないといけない。」



まげりん「ええ。ですから―――。」



そんなとぼけた返答に、ふぁっきゅーれいかは足を止める。

宣戦布告に対する言葉としてはやはり、緊張感に欠ける部類であったから尚更だ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「お願いですって?」



まげりん「私たちに―――自由を与えてほしいのです。」



鉄壁の微笑を浮かべながら、まげりんはそう囁いた。



和田「・・・俺たち帝国民は全員、異世界のルールである『枷』を解いている。言い換えれば、この異世界の正体を理解しているということ。それはつまり、U2部隊の目的も十分考察可能ということだ。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「まったく要領を得ないわね。こちらを置き去りにして何を会話しているの? 明確な敵意が無いのは察するけど、それで余計に混乱するこっちの心情も理解してくれないかしら? お願いというのは、結局何なのよ。」



まげりん「簡単です。」



一度大きく頷いて瞑目し、再び瞼を開くと、まげりんはそのお願いを告げた。



まげりん「単にお願いはお願いです。対等の立場から了解を頂きたいだけ。妄想体という存在ではなく、一人の人間として認めてもらいたい。ただそれだけです。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・?」


No.2田中みこ「存在を認めてほしいってこと?」




三度「要するにだ。U2。転生計画に協力者として参加したいのさ。」




ふぁっきゅーれいかと田中みこは、予想外の言葉を前にして呆けてしまっていた。

まさに毒気を抜かれたと言っていい。



和田「そんなに難しくはない。俺たち帝国民も、U2部隊と同じように転生させてくれりゃあいい。別に現実世界を引っ掻き回してやろうなんて思ってはいない。それはU2部隊の役目なんだろう?」



まげりん「―――? 私もその思想には共感できます。妄想体とは言え、せっかくこうして生まれた命。異世界という夢の中で終わらせるにはあんまりというもの。叶うことならば、私共も現実世界に人間として転生し、その身体で自由を得たい。ただそれだけなのです。」



三度「させるたぁ、たいした計画だと思ったね。お前らU2部隊は、望んだ身体と異能を手に入れる。俺たちは現実世界にいるオリジナルのれいか生主に成り代わる。どうせ最後には、人類全員を異能持ちに転生させるんだろ? だったら話は早ぇ。いっそここで、同盟を結ぶってのもアリなんじゃねぇのか? 俺たち帝国は、お前らU2部隊に全面協力してやるよ。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「よく言うわ。現実で死んだあなたたち妄想体が、本物のれいか生主の存在を軸に、その本物へと成り代わる。ええ確かに、それが私たちの転生計画。枷を解いたぐらいで、よくその答えを導き出したじゃない? けどね、あなたたちはただの『夢』よ。厳密にはれいか生主でもないし、その魂でもない。」



まげりん「そう言われましても、私は私、まげりんとしてここに在る。願い、望まれ、夢に描かれ、この異世界で生まれたのが私。それが焦がれているのですよ。———生きたい、と。あなた方と、現実世界で生きたい。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「——————。」



まるで何かを抱きしめているように、まげりんは詠嘆する。


生きたい。


それは間違いなく、胸に燻る本音であった。



No.2田中みこ「・・・どうするの、ふぁっきゅー。こいつら危険だよ。夢見る奇形児たちのニーズに沿った行動をしてない。自らの意思で独立しようとしてる。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「・・・いいわ。その協定、結びましょう。」



No.2田中みこ「みこ!? ど、どうして?」



こちらも予想外といった剣幕で、田中みこは飛び上がる。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「私はこいつらを気に入った。それだけよ。口だけのリスナー共とは違う。確固たる意志がある。こいつらが現実へと転生したら、異能はさらに広がっていき、世界もまた混沌と化すわ。でもそれは、私達U2部隊の理想とピッタリで都合がいい。それに、今の私の姿、田中みこの女忍者もそう。美女へと転生できる私らからしてみれば、計画に手を貸してくれる人材はウェルカムでしょ。」



無論それだけが理由ではないのだが、敢えてふぁっきゅーれいかはそう口にする。



No.2田中みこ「・・・ふぁっきゅーがそういうなら従う。考えてみれば全員、計画の為に『収穫』できるんだね。それならそれで別にいいのかな?」



まげりん「それじゃあ―――!」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ただし、全てはボスの判断次第よ。これから私は、みんと帝国と同盟を結ぶという趣旨を伝えに行く。断られたらそれまでね。」



まげりん「でしたら和田、例の物を。U2部隊に向けての書状ですわ。」



茶封筒を一つ、和田から渡されるふぁっきゅーれいか。

小気味よくそれを受け取ると、代わりに田中みこを差し出した。



No.2田中みこ「え、なんで。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「信用してもらうためよ。この書状は必ずボスに届けるわ。それまでの間、この田中みこをそっちで預かってもらえるかしら。」



No.2田中みこ「・・・みこは物じゃない。それに、あんまりここにはいたくない。例の『香』も近いし。」



三度「(か、かわいい。何だよその、ほっぺを膨らまして怒ってる感じ! ビンビンきちまう!)」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「現実じゃあ、酔いどれアル中だったんでしょ? ならきっと大丈夫だわ。それに、未だ隠れてる三人が襲ってきたとしても、あんたなら余裕で返り討ち出来るわ。あとはNo.4の件だけど、彼とはどうせまたすぐに会える。」



三度「(そ、そうだ。田中みこはありえない。俺の心を奪っていいのは、美少女Vtuber達だけだッ!)」



まげりん「・・・お話はよく分かりました。決して、田中みこ様には手を出しません。こちらも同盟を結ぶ身として、筋を通させて頂きます。」



密かに面白がっているような響きを声に乗せて、まげりんは年相応の少女らしい仕草をする。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「みんと帝国の代表はあなた? それともみんと? 何にせよ、ボスとの対談は避けられないわよ。そこらへんの段取りも準備しておきなさい。」



三度「言われずともだぜ。こっちは命掛けて頭下ろしてんだ。そっちこそ期待していいんだよな? うまくボスとやらを説得してくれよ?」



和田「・・・お客様のお帰り、この和田が廊下まで案内させて頂く。」



No.2田中みこ「(・・・うまくあしらわれちゃった。『本家れいか』発言の件といい、ふぁっきゅーは裏でなんか動いてそうなんだよね。)」



まるで人形のように無抵抗で、田中みこはまげりんへと献上される。

そのあまりにも可笑しい姿にふぁっきゅーれいかは吹き出しながらも、帝国を後にするのだった―――。














同時刻


―――レジスタンス側 妄想世界にて


~少女視点~



リオれいか「しゃーっ、きたコラァ! 行くぜパーシヴァルッ!!」



『グラン、お前は戦いの中で成長していくからな? 楽しみだ。』



リオれいか「我が炎帝の前に跪くといいわぁ!」



どりゃれいか「ほいっと。」



リオれいか「え、あ、ちょっと何それ。なんで避けんの!?」



『そこだッ!』



どりゃれいか「どりゃあああああああああッ!」



『そりゃあ! そりゃあ! そりゃあ!』



リオれいか「うっ、おおおぉぉ! やばいやばいやばいやばい! マジちょっ、やめろよフルボッコじゃんレイプレイプ―――ちょっとこら、私は炎帝なんだぞっ!」



どりゃれいか「そんな腕前でパーシヴァルを騙るなんて、愛が足りないとしか言えないよ!」



『こい、バハムート!!』


リオれいか「あ、ぐわあああああっ!」



―――K.O.



どりゃれいか「ま、実力差とはこういうものだね。」


リオれいか「ざ、ざっけんなァッ!」



もえれいか「お前らがふざけるなァ!!!」



修行そっちのけで格ゲーしている二人を怒鳴りつけ、おもむろにコンセントを抜くもえれいか。



どりゃれいか「うわ。」


リオれいか「ちょ、ちょっと何するの!」



もえれいか「いやいや、あんたらこそ何してんの!? 楽しいの? 楽しいんだね格ゲーが。いいよ、だったら今すぐ表に出ろや! あーしとリアルファイトのお時間だ馬鹿ども!」



「あ、あはは―――どりゃれいかさんもすっかり輪の中に馴染んでるなの・。・」



どりゃれいか―――上位メンバーのお墨付きだという新星。

聞いた話だと、即戦力になれるほどの器らしいが・・・



どりゃれいか「こう見えても、僕は真面目にちゃんとやってたんだよ。交流するにはゲームが一番さ。決してこれは遊びじゃない。それくらいのケジメとメリハリはつけるに決まってるじゃんか。」



リオれいか「そうそう! まさにそれ! 私たちはちゃんと修行してる!」



どりゃれいか「格ゲーっていうのはさ、人の癖や思考が顕著になるんだよね。そういうのを事前に知っておくことで、コンビプレーの強度も抜群に向上すると思うんだよ。互いの不安を補えあえるとでも言うのかな。」



リオれいか「さ、さすが期待の新星どりゃれいか君! 私の言いたいこと全部言ってくれた!」



もえれいか「・・・いや、あんたはただ遊びたいだけでしょうがぁぁぁァッ!!」



間近に控えた計画に先駆けて、今日の修行はいわゆるチームワークの強化だ。

そのため、訓練方法はチームによって異なるのだが、いきなりテレビゲームを生み出した時は、新入りの割に度胸のある人だと素直に感嘆してしまった。



「ふぅ、修行中にゲームなんてやってたら、ふざけていると思われるのは当たり前なのだ・。・;」



反省の色が微塵も見えないあたり、ある種の大物感さえ漂っている。

暴れる三人組を傍目で見ながら、私は弛緩しきった気持ちを切り替えた。



ひげれいか「やれやれまったくでちゅ。あの馬鹿たちは放っといて、私たちはもう少し攻撃の連携を煮詰めるでちゅよ。」



しぇいぱー君「了解したで・_・v」



「じゃあもう一度始めるなの・。・ 今度は乱戦時の再現なのだ・。・」



仲間内の連携を最大限に発揮できるように。

私たちは修行を再開したのだった―――。














―――隠れ家 闘技場内



ヴィオラ「各種身体強化、戦術強化、反応速度強化、不意打ちやだまし討ちへの対処、仲間との呼吸、生死の優先順位、迷いの断ち切り、異能という未知への立ち回り―――ここまでは極めさせた。懸念なのは、死線上において何も考えられなくなった場合への対処法だが・・・。」



姫れいか「は、話には聞いてましたが、結構本格的な修行メニューなんですね・・・。後衛部隊として重要な戦力になってくれそうですっ。」



めんちゃん「・・・・。」



ヴィオラ「全部ひまれいかさんの受け売りだけどね。あの人が死んだ今、その知略と頭脳を、誰かが受け継いでやらないといけないんだ・・・。」



キリト「それで―――彼の様子は?」



ヴィオラ「どりゃれいかの事かい? 彼の能力は平均値を大幅に超えている。天才って奴なのかな。これなら即戦力として作戦に組み込めるだろう。」



姫れいか「最初はみんなと馴染めるかどうかが不安だったんですけど、この様子なら心配ないみたいですねっ。」



ヴィオラ「ああ。クセが強い私達に囲まれながらも、そのトラブルメイカーめいた調子で和んでいる。場を持っていく力があるとでも言うのかな。今やすっかり、レジスタンスの一員だよ。」



キリト「———。」



そこでキリトは言葉を止め、顔をしかめながら座り込む。

まるで、気づいてはいけないことに気づいてしまったという顔で、彼は長考に勤しみ始める。



ヴィオラ「キリトさん? 何か気になる事でも?」



キリト「―――言っておいた方がいいか。お前たち妄想体は、現実世界での失われし記憶を保持していないから伝わりづらいかもしれないが。。いや、何も起きないとは思うんだが、とにかく記憶に留めておけ。彼は、俺たちとは少し違う『れいか生主』なんだ。何かをやらかしかねない。」



姫れいか「な、なんですかそれっ。どりゃれいか君は悪い子じゃないですよ・・・。ちょっと集中力が足りないだけで、愛想とか凄くいいですしっ。」



ヴィオラ「またイレギュラーかい? 朝の会議でもそうだけど、みんと帝国の件といい、この時期での新入り加入といい―――」



キリト達が密談する中、ただ一人。



めんちゃん「・・・・。」



既に、術中に嵌ってしまっていた人物が一人いた。



めんちゃん「(あのどりゃれいかって子の声・・・どこかで聞いたはずなのに思い出せない。どうして? 絶対に聞いたことのある声なのに! 嫌だよこんなの。悪い汗が止まらない。何かとんでもない見落としをしているようで怖いッ!)」



その胸騒ぎは正しい。

レジスタンスが計画している作戦とは全く別の領域で、とてつもなくまずいことが起きてしまっている事実を知る由もないのだ。



めんちゃん「(そう、例えば、計画そのものを根っこから台無しにするような、そんな事件が裏で起きてるような―――)」













―――1日後


―――ふわっと小学校 校長室



No.6BUNZIN「いいのではないか? 結局のところ、この異世界は単なる予行演習にすぎない。真に戦うのは現実世界だ。それまでお楽しみは取っておくのも悪くない。」



No.9北上双葉「私も異議なーし。」



フリー(躁)「話は理解したぽよ(*´ω`*) それじゃあ、例の書状とやらを拝見するぽよ(*´ω`*)」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「あ、ちょっと待って。罠かもしれないし、私が中身を確かめてからでいいかしら?」



No.7いちご「はっ、罠だったら面白いじゃねえか。」



U2


それが今、実現しようとしており―――。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「え、何よこれ。」



茶封筒の中から用紙を取り出したふぁっきゅーれいかは、その顔を青ざめさせる。



No.0■■■■「書いてある内容は?」



その言葉に対し、ふぁっきゅーれいかは仕方なく用紙を裏返す。

見えたその内容に一同は唖然とした。



『 こんにちわだ [・]。[・]- 』



たったこれだけの文字が、でかでかと用紙に書かれていたのだ。

そう、これだけ。

他には何の用紙もなく、たったこれだけで内容終了。



和平の書状としては言うまでもなく、冗談で済ますにも程がある。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(―――! そうよ! 。彼はおそらく、この和平に反対だったのよ! だからこそ、私を止めるためにわざわざ戦った!)」



つまりこれは、和田が仕掛けた最後っ屁。

刹那の閃きで謎を解いた彼女だが、時すでに遅し。



No.11Kent「なぁ、これ、おふざけってことでいいんだよな?」



No.9北上双葉「そ、そうだよね。いくらなんでもこれは無いかな。よく出来た挑発かも。」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(ま、マズいッ、みんと帝国の印象最悪―――! 何てことしでかしてくれたの!)」



誰もが、この協定は破棄されるべきだと感じたのも束の間。



フリー(躁)「こんなとこまで史実通りとは、懐かしいぽよねぇ(*´ω`*)」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(え、笑ってる? なんで? あの意味不明な文章を見てなんで?)」



フリー(躁)「帝国の熱意は伝わったぽよ(*´ω`*) U2部隊総員に告ぐ―――これにて転生計画の第三段階は終了ぽよ(*´ω`*)! これからU2部隊は、みんと帝国へと居城を移すぽよ(*´ω`*) ふわっと小学校は事実上の放置、みんと帝国にて転生計画最終段階を決行するぽよ(*´ω`*)!」



最終段階の発令―――U2部隊の間に緊張が走る。

書状がどれだけふざけていようと、ボスの命令は絶対なのだ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「(ま、まぁ結果オーライか。)」



No.0■■■■「急ぎ、みんと帝国への段取りを始めさせて頂く、我が主。あの『香』が充満する帝国に赴くのならば、それ相応の手段を講じなければ・・・。」



No.6 BUNZIN「異世界との別れも近い。だが、No.4殿は参上してくれるだろうか? 彼がいなくては計画に支障が出る。No.2殿から聞いたのだろうNo.1殿?」



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ええ。でもみんと帝国には、No.4の気配が感じられなかった。可能性があるとするならレジスタンスね。それもそれで厄介なことになりそうだけど。」



フリー(躁)「どこに散らばろうとも、みんと帝国の件が済んでしまえば支障は無いぽよ(*´ω`*) U2部隊は何があろうと、最終的には全員が集う。ぽよ(*´ω`*) さっき物語の透視を行ったけど、近いうちにNo.4は、彼らと共にこの場所を襲撃してくるぽよぉ(*´ω`*) それに先駆けて色々準備しとくぽよ(*´ω`*)!」






―――――――――。

――――――。

―――。






そして・・・。



二日という時が過ぎた。






U2部隊の転生計画は、次なる領域へと段階を進めていく。

みんと帝国も未だ全貌が見えてこない集団である中、徐々に物語へと加わり始めていく。



フリー(躁)、そしてみんと。

二人の怪物は、現実世界への侵攻を今か今かと待ち望んでいるのだ。



全てが敵に回ったという絶望的状況でありながら、レジスタンスも次なる一歩を踏み出そうとしていた。

物語の終焉に向け、フリー(躁)の野望を阻止する為に―――。





ゆうれいか「双方のネザーゲート点火完了だよ~!」


「突入なのだ!・。・!」






レジスタンス―――計画を始動。


U2部隊のベース基地『ふわっと小学校』において、全勢力を以て侵攻を開始した。






ヴィオラ「修行組、絶対に孤立はするな! U2部隊との戦闘は手筈通りだッ!」



???「敵がどれほど怪物だろうとッ、彼らには、黒いモヤから救ってくれた恩があるッ! 協力は惜しまないッ!」



あっちゃん「あんまり無茶するんじゃないわよ。あなたさっき目覚めたばかりなんだから。」



私たちは決戦の場へと、躊躇なく降り立っていく。

まるでこれが最後の戦いであるかのように、絶対に悔いの残さぬように。

誰もが、抵抗という困難な道のりを選んだのだ。



どりゃれいか「派手だね! 学校の壁を爆破して突入だなんて、僕好みでワクワクするよ!」



安眠「あれキリト君は!? 置いてかれた!?」



リオれいか「いいよー! みんな進めー!」



スノーれいか「特殊保護部隊総員、絶対に無茶をしないでくださいね!」



目指す先は完全なる勝利。

この学校にて、真に倒さなければいけない奴らが待っている!



「私が最初に目を覚ました部屋―――随分昔のような気がするのだ・。・」



その部屋を過ぎ去っていくと同時に、私の中で様々な情景が浮かんできた。

あの頃とは、状況が全く違う。

しかし感傷に浸らずにはいられない。



思えば奇妙な道のりだった。

いきなり誰もいない個室で目覚め、一人で無限迷宮を疾走し―――。



彼女、ふぁっきゅーちゃんと出会った。



それがたとえ、私を監視するために仕組まれていた出会いだとしても。

隠れ家の皆と出会い、異世界の真実を知らされようと挫けずに。



私は―――ここまで成長できた。



それは間違いなく、ふぁっきゅーちゃんの協力もあってこそだった。

今こそ借りを返すとき。



「帰ってきたのだ・。・ 始まりの地へと、U2部隊の本拠地に―――!」



お前らU2部隊の野望は、私たちが完膚なきまでに叩き潰してやるッ!!



「隠れ家を滅茶苦茶にしてくれた分、今度はこちらから攻めさせてもらうのだ・。・!」



―――さあ、総力戦を始めよう。



今の私たちは以前とは違う。

二度目の敗北は無いと知れッ!



ゆうれいか「TNT、撃て~っ!」



大砲でも打ち込まれたような爆音が、ふわっと小学校に響き渡る。

かつて、鬱霊である少女が閉じ込められていた部屋から、次々と敵が侵入してくる気配を感じつつ。




―――その男は一人、笑みを浮かべた。




No.11 Kent「来たか。ここで俺の物語も終了だな。決着をつけようお嬢ちゃん。己の闇をどう克服したのか、この目で確かめさせてもらうぜ。」




待ち受けるは



かつて、少女に異能を完全無力化された彼とは、最早何もかもが違う。

その構えには、油断も無ければ驕りも無い。

全身全霊、本気の覚悟。



No.11 Kent「・・・ボス、いや―――フリーさんよ。俺は『れいか生主』でもなけりゃあ『ようつべ戦争』の参加者でもない。だけど同じくらい感謝はしてる。」



溢れ出た言葉は決意の表れか、起こり得る修羅場に対しての挑戦か。

たとえ何が、どのような運命となり訪れようとも。

夢を叶える為に迷わない。




No.11 Kent「だからよ。きっと世界を転生させてくれや。俺も頑張るからさ。」




その信念をもって、彼もまた覚醒する。

ありったけの闇を身に纏い、侵入者を待ち望む『五人』も同様に。










―――第三の分岐点まで、およそ1日と10時間。


ここから先、ノンストップで物語は再び加速する。






No.11 Kent「行くぜお前ら。―――共同戦線のお披露目だ。」




戦乱という戦乱が咲き狂う、その序章が幕を開けるのであった―――。


つづく。



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