第20話 新たな分岐点への幕開け



―――なぜ戦っているのかと言われれば、単に成り行きと答えるしかない。



とあるY字路で、左右どちらかを選ばなければいけなくなったから、向かって右側の道を進む。

特にたいした理由もなく。

洒落た言い方をするのなら、人生の分岐点もそんなものであるように。



そして、結果がこの様だ。



私は―――人間ですらない。

ある男から生まれた、ただの鬱霊というだけの存在だった。

その事実については非常に鬱陶しくて堪らないが、不幸で最悪とまでは思っていない。


人生の分岐点云々という喩え・・・そういうものは二種に分けられると私は思い始める。


まず一つは無意識に選ぶもの。

日々の諸々に埋もれていく些細な選択が、振り返ってみれば重大な意味を持っていたと、後になって気付く種類。

百万円という大金を当選した未来や、交通事故に遭う未来を、事前に予測できる人などいない。

だからそういう不測の事態は、ただの気まぐれ程度で容易く発生し得る。



私が突然、生死を賭けたバトルに巻き込まれたのと同様にだ。



そしてもう一つは、そういった積み重ねで起こった事態に、どう対応するかということだ。

大金を手に入れた場合、事故に遭った場合、進学、就職、結婚、その他なんでもいい。

これが今後の人生に、深い影響を与えるものだと理解している選択だ。



人が生きていくうえにはそうした二種類の分岐路が存在する。

つまり、運命ってやつは慈悲深いということだ。



結果の見えない選択に翻弄される場合は確かにあるし、それは人間の器量で抗えないものだろう。

だけど同時に、そうなったときは注釈つきで道を用意してくれるのだから。


『あなたは今、とても大事な局面に立っています。ここで間違うと大変なので、よく考えて選んでください。』


とまあ、こんな風にだ。


例外的な極論も当然あろうが、それはこの際置いておく。



とにかく重要なのは、大方において最終的には自分の器量が頼りということ。



―――だったらその機会に真摯でありたい。



無意識に選んでしまった道を嘆いて、あの時ああしていればよかったとか、こんなことになるなんて思わなかったとか、どうしようもない泣き言を並べても事態は好転しないんだ。


過去は変えられないのだから、未来のために今を見る。


それが私の信条で、故にここまでの選択を悲観なんかしちゃいない。

まあ、この現状が人生云々を左右するほど重要なものかは知らないが。




少なくとも今、自分の器量で結果を選べる局面なのは確かなのだから。








―――第20話 新たな分岐点への幕開け











隠れ家は完膚なきまでに壊滅した。


繁華街も宮殿も居住区も、全てがU2部隊によって蹂躙された。

奴らが言っていた『収穫』によって———。

私達は、事実上の完全敗北を喫したのだ。


今でも覚えている。

奴らはやるだけやって消えていき、残された私達に襲ってきた圧倒的な虚無感を。

生き残った者達と情報共有していく度に、私の心が冷え切っていく感覚を今でも覚えている。




死亡確定欄


ひまれいか:オタさくと相討ちになり死亡。

ゆのみ:BUNZINに喰われて死亡。

10.0円:BUNZINの攻撃に巻き込まれ死亡。

通・。・販:BUNZINの攻撃に巻き込まれ死亡。

緑一色:何者かに踏み潰されて死亡。

みかんれいか:セイキンに殺されて死亡。

ベリィれいか:セイキンに殺されて死亡。

ふる:セイキンに殺されて死亡。

ひこちゃん:セイキンに殺されて死亡。

しゃんでら:セイキンに殺されて死亡。

おゆれいか:セイキンに殺されて死亡。

どんぺい:セイキンに殺されて死亡。

その他、多数のれいか達が死亡。

市民全員がBUNZINに殺され全滅。




行方不明欄


レトさん(本物):日常演舞戦後から行方不明。

悲哀れいか:日常演舞戦後から行方不明。

いちご:宮殿内での目撃を最後に行方不明。

ふじれいか:スカイれいか戦後から行方不明。




以下、生存確認済み。




重体・意識不明など


レキモン:田中みこに片腕を切断され重体。

キリト:BUNZINの超攻撃により重体。

姫れいか:瓦礫による頭部損傷、意識不明。

スカイれいか:ふじれいか戦により重体。




五体満足・健康体


少女:大した怪我も無く生存。

スノーれいか:軽傷を負うも生存。

真中あぁあ:大した怪我も無く生存。

リオれいか:軽傷を負うも生存。

しぇいぱー君:心的外傷を負うも生存。

べるれいか:大した怪我も無く生存。

ひげれいか:大した怪我も無く生存。

翔・。・太:大した怪我も無く生存。

ゆうれいか:軽傷を負うも生存。

もえれいか:軽傷を負うも生存。

ヴィオラ:軽傷を負うも生存。

4410:新たなモビルスーツへ進化を遂げ生存。




裏切り


ふぁっきゅーれいか:U2部隊のスパイ

田中みこ:U2部隊のスパイ





あじれいか:????による一時??。





以下、敵勢力。


U2部隊ボス:正体はフリーれいかの躁霊、生存。

No.0■■■■:正体不明の覆面男、生存。

No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ:=ふぁっきゅーれいか、生存。

No.2田中みこ:4410とレキモンを蹂躙し生存。

No.3日常演舞:隠れ家を蹂躙し生存。

No.4:確認できず。

No.5安眠:キリトに敗れて捕虜となる。

No.6BUNZIN:隠れ家を蹂躙し生存。

No.7めんちゃん:レトさんに敗れて捕虜となる。

No.8オタさく:ひまれいかと相討ちになり死亡。

No.9北上双葉:後方支援に徹し生存。

No.10セイキン:BUNZINに喰われて死亡。

No.11Kent:後方支援に徹し生存。

No.12あっちゃん:U2部隊を裏切り捕虜となる。




まず最初に戦死者の葬儀が行われた。



公の死因は、ほとんどが不明ということになっている。

何故なら、どの死体も跡形なく消え去っているから。


奴らの言う根拠のない推論を信じるなら、この異世界に存在する人間は『U2部隊』と『外からやってきたキリト』以外、全員が私の妄想によって生まれた存在だ。


正しくは、現実世界にいる奇形児たちが生み出す妄想を、フリーれいかの鬱霊である私の力で具現化した存在。


人間ではないのだから、死んでも死体は残らない。

妄想体は黄金の粒子となって消え失せるのみ。



死因不明―――私達レジスタンスは、最終的にそう結論付けた。



それも仕方のないことだろう。

どれほど検査をしても原因不明としか判断できない。

やがて、色々あったその疑問も、身近な死という悲しみに押し流されてうやむやになる。



葬式が執り行われる頃には、誰もが戦死者の死だけを悼んでいた。

涙を流す仲間たちを何度目にしたことか。

その悲しんでいる様が、私の心をきつく締め付けた。


全てが自分たちの原因ではないと分かってはいるが、それでもこう思わずにはいられない。


あの時、隠れ家に辿りつくのがもう少し早ければ、そもそも外任務に出かけなければ、もっと違う結果になっていたかもしれないと。

自分自身の不甲斐なさに腹が煮えくり返って仕方がない。


悔やんで、考えて・・・そして最後には、立ち止まる姿を望んでいないと分かったから。



―――真っ赤な目をして情けない顔をするのはこれで最後だから。



キリト「分かっているよな、記憶喪失の少女。」



「・・・罪悪感はあるけど、それ以上に決意が漲ってくるのだ・。・」



キリト「ふっ、俺もさ。これだけの傷と痛みを押し付けられたその挙句、わけも分からずただ助かったと安堵して生きていく気は毛頭ないぜ。冗談じゃない。まだ何も分かっちゃいないままだ。」



奴らの最終目的は、現実世界にて同じような殺し合いを世界規模で繰り返すというもの。

だがそれを、どのように行うのかが分からないのだ。

分からないが、とにかく悪質な手段で決行することだけは間違いないだろう。


それだけではない。

この異世界を出現させた仕組み、現実世界との繋がりの有無、フリーれいかの『躁うつ病』が自我を生み出した理由、田中みこの行動、前線組の行方、『収穫』の意味、外から来たキリトさんが所属していた組織の正体、人口異能の出所、妄想体の召喚法、U2部隊の召喚法、フリーれいかの躁霊の能力、鬱霊である私自身の真実、本体であるフリーれいか本人は何処にいるのか、はたまた存在しないのか・・・。


『収穫』された四名の行方。

田中みこ、ふぁっきゅーれいか、二名との確執。

そして元凶たる謎の男、フリーれいかの躁霊。

あいつを放置してはならないと、心の奥底から使命感が湧き上がる。

私もまた、このまま終わらせるつもりなんて全然なかった。



決着をつけなければ、真に一歩を踏み出せない。



「でかい風穴を空けてくれた代償、あの馬鹿野郎どもに払ってもらうのだ・。・」



後悔を噛み締め、胸の奥から熱を燃やす。

いつか夢見た、止まらない歯車へと。

烈風の如き強い意志を巡らせろ。



「葬式が済んだら、さっそく行動を始めるなの・。・」



キリト「頼むぜ。俺はしばらく前線を離れる。今も無理言って葬儀に出てるんだ。身体を動かすだけでも激痛が伴っちまう。」



「それでも、一周まわってキリトさんを待っているのだ・。・ たとえ遠く離れ離れになったとしても、私たちにはキリトさんの力が必要なのだ・。・」



それを見たキリトは、ふっと笑って言葉を紡ぐ。



キリト「あじれいかの言葉を忘れるな。———。」













―――隠れ家 新居住区内


~少女視点~



それからの日々は、およそ争いとは無縁のものへと戻っていた。

起床、修行、街の再建手伝い、就寝。

間に別の行動が混じっていることがあるものの、基本はだいだいこれである。


私が異世界で目覚めて、およそ一週間が過ぎてこれが初めてなのだ。

人並みらしい時間間隔に順応しつつあるのは。



これが本当の意味で、普通というものだった。

戦うこともなく、連続して死闘を繰り広げるわけでもなし、当たり前に明日がやってくる生活。



勿論、あの戦いの結末に納得できるわけがない。

だが、平凡で退屈だと口ずさむ日々は、それだけ余裕に満ちている証拠だ。

なので今はその幸福を噛み締めつつ、次なる一手に向けて準備を進めるのみ。



そう。

あの時、

私たちはとある一点だけを目指している。



―――



ピンポ~ン。



「ん・。・?」


と、思っているところへ来訪者。

ゆうれいかさんが新しく用意してくれたチャイムが鳴っている。



ピンポンピンポンピンポン(ry



「き、近所迷惑なのだ・。・;」


子供の悪戯だろうか、ゲームの連打じゃないんだから。

そんなにチャイム連打する必要は、というかこれで何度目だ。



―――午前4時

超絶早朝である。



めんちゃん「走るよッッ><!」



急ぎ玄関を開くと、私と同年代くらいの女の子が上がりこんできた。

ある意味、非常に子供っぽい人物である。

ぱっと見でテンション高いのは本当こう、というより毎日毎日何なんだこいつ。


めんちゃん「さあ着替えて着替えて! 今日の早朝修行も走り込み><!」


私の内心を知ってか知らずか、まあ知っても気にしないだろうな。


「わかったなのだ・。・; わかったから、朝からはしゃがないでなの・。;」



かつてU2部隊のNo.7だった少女―――めんちゃん。

彼女だけではない。


No.5安眠、No.12あっちゃん。

二人もまた、私達レジスタンスの捕虜として隠れ家に住むことになったのだ。


・・・反対派は多くいた。

だが、彼女たちは誰一人として殺人を犯していないという事実が大きかった。

あっちゃんに限っては、最初からU2部隊を裏切る気でいたらしい。

彼女たちがもたらす『情報』を等価とし、監視付ではあるが街での生活を認められているわけだ。



―――——。

―――。





―――闘技場内部



ヴィオラ「全員来たね。それじゃ、早速今日も・・・と言いたいところだけど。」



めんちゃん「新メンバーが二人いるね><!」



ひげれいか「遅ればせながら、私たちも修行に入らせてもらうでちゅわぁ!」



翔・。・太「まるで幼稚園だな。しかしそれがいいのかもしれない。」



「ど、同感なのだ・。・; だんだんカオスな面々になってきてるなの・。・;」



しぇいぱー君「しぇいぱー君はいつ死ぬと思う?・_・?」



リオれいか「ちょっと! それって私の知能指数が低いってこと!?」



もえれいか「どうどう。誰もそんなことは言ってないから。」



再建された闘技場内。

新たに『ひげれいか』さんと『翔・。・太』さんが参加し、計八人が集う。

最初の頃に比べると、随分と賑わしくなったものである。



ヴィオラ「いつも通り、私とめんちゃんがここに残る。私のにめんちゃんを設定したから、戻りたいときはいつでも声をかけて。」



ヴィオラさん―――。

魔女をモチーフとした本格装備は、ひまれいかさんを思い出させる。


敵であるKentが言っていた『闇属性の異能』という希少な属性。

私の黒焔も闇属性であり、そして同時にヴィオラさんも闇属性の異能所持者だ。

どうやら、使い魔に関する異能ということらしい。

同じ属性である彼女から、戦いを学んでみたいと提案したのが事の始まりであった。


ヴィオラ「開始して。同時にこちらからも制御する。」


めんちゃん「皆さんご招待><! ————『天翔ける柩パンドラ』!」



こうして私たちは、









―――妄想世界 砂浜



しぇいぱー君「早朝と言えばランニングだべ・_・」


リオれいか「今日は負けないからね~!」


今にも走り出しそうなリオれいかを抑え込み、各々ストレッチを開始する。


ひげれいか「すごいでちゅ・・・どこまでも続く沿岸沿いでちゅ・・・。」


翔・。・太「私は要望通り、ここで筆を奔らせてもらうが・・・驚いたよ。ここなら思う存分―――私のインスピを受け止めてくれそうだ。」



めんちゃんの異能『天翔ける柩パンドラ

魔眼の一種。

効果を一言で表すなら、他者の願望を妄想世界で叶えさせる能力である。


これは意識だけを妄想世界に飛ばすわけではない。

肉体ごと飛ばす―――つまり、妄想世界で得られる経験は無駄にならずにフィードバックされるのだ。


これを応用し、様々な環境下で、様々な対戦相手を揃えることだって可能。

発案者はヴィオラさん・・・中々にマッドで大胆な修行法だろう。

なにせ敵として猛威を振るった異能を、自分たちの修行に逆利用しようというのだから。



かつてレトさん(本物)と悲哀れいか、そしてしぇいぱー君が嵌った異能。

自力で抜け出すことは、ほぼ不可能の固有空間。

だが今回に限っては、めんちゃんが全面協力してくれているのもあり、ヴィオラさんの制御とも合わさって、実現可能に踏み込めた離れ業なのだ。



「今日は手堅く往復10kmなの・。・! めんちゃんが生み出した折り返し地点を頼りに、ここまで帰ってくることを目標とするのだ・。・!」


ひげれいか「て、手堅く?」


リオれいか「スタートの掛け声は私ね! はい、よーいドン!」


ひげれいか「い、いきなりっ!?」



合図と同時に走り出す。

そう、早朝の修行は何故だろう―――ランニングなのだ。



「はっ、はっ・。・」


しかし、これが日課ともなれば―――実は結構気に入っている私がいる。



折り返し地点が分かり易く、距離としてもキリがよく、そして何より風景的にも綺麗なのだ。

晴れた朝なら、なおさらに。

単に走ることが好きなのかもしれない。

他の運動全般もそうだけど、これは自分の身体だと実感できる行為は例外なく面白い。


私の得意戦術は速さによる翻弄だ。

だから今、走っている。

鍛えるために。

早く一人前の『人間』になれるよう心身を練磨して、ふぁっきゅーちゃんに追いつくために。

過ぎ去っていった背中を振り向かせるために。



一言で言えば強くなりたい―――それが私の、ずっと持ち続けている願望だ。





健全な精神は健全な肉体に宿ると言うし、間違っても早死になんかしてたまるか。

未来を明るくするための努力ならば惜しまない。



リオれいか「うおおおおおおおおおおおおおッ!」



―――そしてまあ、こっちも予想通りと言うか。



リオれいか「ふっ、ふふ、おっそいなぁ皆ァ! ちんたら走ってんじゃないよ!」


明らかにやせ我慢して前を走っているリオれいかさんの背中を、私たちは呆れ混じりに後追いしていた。


本人的にはこれが自分の実力だ、どうだこのやろー、とこっちを挑発しているつもりなのだろうが、まあそこはあれだ。

突っ込まないのが優しさというか、見ていてどうかと思ってしまうほど息を切らしてぜいぜいしている。

流石に不憫なので、ナイス根性と褒めてあげたいところだが―――



ひげれいか「クソッッッ!! リオれいか如きがイキってんじゃねぇ!! 見せてやるよッ、どちらが軟弱なのかをなッ!!」



さっきまで幼児言葉だったひげれいかさんが、二重人格の如く豹変して疾走する。



リオれいか「ばーかばーか! 悔しかったら追いついてみなさい、よっ!」



そしてまた、無謀にも速度を上げて離しにかかろうとするもう一人のアホ。

自慢気な雰囲気が伝わるものの、間違いなく明日は全身筋肉痛のフルコースだろう。


もえれいか「は、ふっ―――あれじゃすぐに燃料切れに陥るよ・・・。」


しぇいぱー君「しぇいぱー君はいつ死ぬと思う?・_・?」


「というか、これから往復するって分かっているなの・。・;?」


もえれいか「忘れてるよ多分。あーしたちはいつものペース配分でいこう。」


「いや、身体も温まって来たし、ウォーミングアップはここまでなの・。・ 今日は少しペースを上げてみるのだ・。・」


もえれいか「・・・いいね。実はあーしも物足りないと思ってたとこさ!」


しぇいぱー君「え・_・?」



ダッシュ!

三倍増しの速度で駆け抜ける。

あっという間に並び順が変化し、背後からぎゃあぎゃあと女らしくない叫び声がこだまする。

おそらくリオれいかさんのものだろう。


もえれいか「ほらほら、どんどんペースを上げていくよ!」


ひげれいか「ちょ―――速!」


リオれいか「あ、あんたらさっきまで、どんだけ手を抜いて・・・どういう足、して・・・ふぅ、っく。少しは、このっ! こうなったら飛んでやるッッ!!」


ひげれいか「うわ、ずっる!」


「私の本気はこんなものじゃないなの!・。・!」


私にとっては普段通りの、一部にとっては地獄となる全力マラソンが開催されたのだった。



―――はは。


そうか。


これが本当の意味で、普通であり―――日常なのか。



仲間たちと切磋琢磨し、何かを成し遂げていく生活。

時には協力し、馬鹿なノリで楽しむこともあれば逆もしかり。

まるで、友人に恵まれている日常系の四コマ漫画。

本来なら私も、こうした平和な人生を歩んでいたのかもしれない。



だけど。



―――いつまでも、日常パートに浸ってはいられないのだ。




「はぁ、はぁ、よし、二人は先に行っててなの・。・」



折り返し地点の浜辺まで来た私は、そこで再びストレッチをしてからもう一つの日課を始めた。


「ふぅ・。・」


私は深呼吸を一つし、姿

出来るだけ強そうな人を。

私が目指すべき理想の人物を。

ふぁっきゅーちゃんの体術を練り込んだ人形を。



―――死闘の再現。

一度やったアクションを、修行でもやってみるということ。

早い話、強者の参考動画を真似て身体に覚えさせるというもの。


「ふっ―――。」


月面宙返りを鮮やかに決め、砂浜に着地する。

足場が砂だから若干やり難いが、そのぶん失敗したときの危険も少ない。


「せいやなの・。・!」


そこから慣れない武道の型を、敵の猛攻を避けながらお見舞いしていく。

付け焼刃だが、格闘の動きを身体に覚えさせるのだ。

いざという時、無駄なくイメージできるように。


所詮妄想だからと、何の糧にもしないんじゃ意味がないし勿体ない。

こうやって実現できる幅を広げていけば、さらにイメージは増強されて適用される。


「もっと無駄な動きを無くして・・・遠心力に頼りすぎないように―――」



そう思ってそれからしばらく、私は訓練に没頭するのだった。









―――闘技場内部


「ただいまなのだ・。・」


めんちゃん「おかえりっ! 今日も修行お疲れ様><!」


ひげれいか「か、かなりきついけど、得られる経験値は多かったでちゅ。」


翔・。・太「私も成果を感じ取れたよ。おかけで正確なを絞りだせた。」


しぇいぱー君「?・_・? リオれいかはどこ・_・?」


もえれいか「そこで気絶してるよ。ドラゴン娘って意外とへなちょこだったり?」


ヴィオラ「さあ、修行が終わったのだったら行った行った! まだ街の再建には程遠いことを忘れない!」


ひげれいか「げげっ。そんなのありかでちゅ!」



ヴィオラ「―――アリなんだよ。」



し~ん。



もえれいか「・・・記憶喪失っ娘は、またこれから個人修行を続けるんだよね。」


翔・。・太「その話は少し聞いている。あまり上手く慰めることはできない。だけど、あまり気に病むんじゃないよ? 。」


「心配ありがとうなのだ・。・」



しぇいぱー君「ねぇ・_・」



「・。・?」


いきなり肩を叩かれてびっくりした。

正直、この人だけは言動が読めないところがあったから尚更だ。



しぇいぱー君「・_・ 妄想世界に入った時、何か『枷』が外れた感触はあった・_・?」



・・・?

何を言っているのかがよく分からない。

少なくとも、異変は何も感じなかった。


「心当たりは無いなの・。・」



しぇいぱー君「・・・嘘はついていないということは、でもどういうことだ・_・ すまん忘れてくれ・_・」



もえれいか「・・・? ほんじゃ、また明日~。」


倒れ伏すリオれいかさんの尻尾を掴み、ズサズサと引っ張っていくもえれいかさん。

続いてぞろぞろと、その後に続く人達。

こうして、闘技場内部には私とヴィオラさんとめんちゃんだけになる。



―――さぁ、ここからだ。


ここからが本当の意味での、私の修行。



最後の最後、その瞬間になるまで煮詰めておきたい。



言わば、やり残したこと。

めんちゃんの異能の真価を、これでもかと発揮する機会。



「ヴィオラさん、めんちゃん、今日は少し、毛色の変わった願望世界を創ってもらいたいなの・。・」



ヴィオラ「いいよ。今日も特別な修行開始ってわけだ。今度は何をやらかしてくれるのかな。」



もしかしたら、今日ここで、一つの謎が解けるかもしれない。



「記憶を失う前の私―――してみるのだ・。・」



めんちゃん「おっけー><! それじゃあ意識をそれに集中させてねー!」



どんな願望でも叶えてくれるめんちゃんの異能なら―――それも可能となる。











―――妄想世界



鬱霊と躁霊は何なのか?

そもそも、どうしてそんなものが生まれ、この異世界を創り上げてしまったのか。


私の記憶はふぁっきゅーちゃんに消されてしまった。

だけどこうして、当時の記憶と対峙できるなら?


言うまでもなく、それは危険な行為。

模擬戦大会の時に、私はその闇に一度飲み込まれているのだから。

また自我が乗っ取られる可能性も否定できない。


しかしどうして、鬱霊だった私は・・・どうして異世界を創ったんだ。


その動機をどうしても知りたかった。

だって、自分自身のことだから。



そして出来れば、叱ってやりたかった。



どう考えても、これは悪いことだって信じているから。



【嘘ばっかり。本当はこのまま夢を見ていたいくせに。ねぇ、どうして素直にならないの? 恥ずかしがって、意地を張って、我慢した先に何があるの? あなたのほうこそ、現実を見ていない。】



それは右から左から、前から後ろから上から下から、反響するように位置の掴めないものでありながら、すぐ耳元で囁いているようにも感じる。



「声だけ、いや、もっといろんな―――」



呼吸や体温、これの持つ情念の濃さまでもが伝わってくる。



【フリーの躁霊をやっつける? それで一瞬、少しいい気持ちになったからといって、そこからいったいどうするの? いったい何が得られるというのよ。何もない。誰もいない。また暗黒の中に帰るだけ・・・。私は全てを失ってしまう。この異世界で得たもの、大事な人、全部。そんなのは嫌、嫌なの。】



「———————。」



私は理解した。




「随分はっきり言ってくれるのだ・。・ 本当に、バッサリと―――。」



よくも言葉に出してくれたなこのやろう。



―――ずっと考えていたことがある。

だけどそれは、考えないようにして心の奥底にしまっていたもの。





「なるほど、これが私なのね・。・ 言葉の内容を吟味するまでもないなの・。・」



私は弱くて、愚かで、みっともなくて・・・勇気や覚悟、使命と責任感で脆い自分を偽装しているだけなのだ。

迷いの全てを捨てきったわけじゃないし、未練は必ず胸のどこかに存在している。


勇ましくあろうとしている私は、裏を返せば我慢しているということだから。

またあの平和な日常に帰りたいと、そんな誘惑に今でも内心で葛藤しているのは否定できない。



「だったら―――これを超えなきゃいけないなの・。・」


そう言った瞬間、その通りの現象が目の前に展開した。



【みぃ~。】



偽りの至福が充満する異世界で、酔い痴れたように恍惚としているもう一人の私。

前に鏡で見た自分の姿と全く同じ、かわいらしい外見そのもの。



【ふぁっきゅーちゃん! キリトさん! ひまれいかさん! にぱ~。】



憧れの英雄たちを思い描き、その分身に囲まれて、夢見た理想の世界を渾身込めて抱きしめながら自家中毒に嵌っている。



【ふぁっきゅーちゃん! もう動けるなの? 私がこの、得体のしれない攻撃を吸収するのだ!】



君らが好きだ、愛している、お前は仲間だ、一緒に行こう。

少女が描いたご都合主義は今も一切曇りなく、素晴らしき日々として完成している。


なんという幸せ、なんという奇跡、なんという快感だろう。

この祝福を知ったうえで、なぜ今さら夢のない現実などに戻れるというのか。



「・・・そう、なのだ・。・」



―――もう、認めなければならない。




フリーの躁霊が企てた計画は、フリーの鬱霊である私が企てたにも等しい。


躁霊だとか、鬱霊だとか、もう分けて考えるのはやめよう。


私とあいつは同じなのだから。


ふぁっきゅーちゃんのせいで記憶喪失になった私だけど、おそらく、記憶を失う前の私は―――。


躁霊と同じく、世界を滅ぼしたいと願っていたのだろう。


躁霊と同じく、この異世界を面白おかしく創り上げて楽しんでいたのだろう。


躁霊と同じく、れいか生主を妄想で生み出して―――。



つまり私もまた、彼らと共になりたいと願っていた。

人類の妄想を鬱霊の力で具現化したとあいつは言っていたが、それだけじゃない。



、妄想体を創っていたことは否定できない。

多分それが、鬱霊としての原点。



【君たちとの日常が、今後も変わらず続きますように。】



目の前のこれが、これこそが己の真。



【荒唐無稽だと分かってる。でもだからこそ夢を見るんだ。今まで画面の向こう側にしかいなかった英雄たちと、こうして切磋琢磨できる日々を。この異世界には全てがある。せっかく、ここに奇跡のバランスがあるんだから。憧れのみんなと一緒、もうそれ以外はいらない。現実には戻らない♪】



「ふっ―――」


目の前にいるもう一人の自分が喋る言葉を聞いて、私は微かに失笑した。



「・・・おいおい、おまえは私なの・。・ そっちこそ誤魔化すんじゃないのだ・。・」



気が付けば、強気な口調で戦闘態勢を取っている私がいた。



「奇跡のバランスを崩さないまま、私にとって特別なこの『夢』が続けばいい―――なんて甘えた、皆を馬鹿にした妄想なのだ・。・!」



絶対不可能とは言い切れないのかもしれないが、実現するための努力をまるでしていない。



「私の『夢』は彼らの真を汚しているなの・。・ だから認めない、許さないのだ・。・ れいか生主を都合よく塗り替えて、思うのは自由だなんて、もう言わせないなの・。・!」



れいか生主が好きだ―――だから仲良く、楽しく幸せに妄想の中へ浸ろう。

それが鬱霊の本音で、それが理想。


だがそんなものは最悪だ。

勝手に酔い痴れて、あげく自らが生み出した妄想体を危険な目に合わせて。

現実の全てを放り捨てて、都合のいい自己完結に嵌っている。


ああ確かに、私が生み出した妄想体は人間とそう変わらない。

自我があり、個性があり、意思があり、感情があり、自由がある。

だけど結局のところ、本物であって本物じゃない。



―――そんな世界で自分に優しくしてくれる彼らが、本当の彼らだとでも?


―――そんな彼らを、無二の真実だと思い込めばいいだって?



とんだ大馬鹿野郎だ。

記憶を失ったことがこれほど僥倖だと思ったことは無い。


こんな馬鹿なもう一人の私を、今この場で断固完全に叩き潰してやる。



【そうだ。お前は凄く邪魔だ。私の夢を、私の奇跡を否定する。何もない現実に、私を消失させようとしている。させない・・・許さない絶対に。邪魔なんだよ潰してやるッ!!】



二人の私は同じ結論に達していた。


さながら鏡合わせのように、戦意と拳を抜き放つ。



【説得は無意味だな。自分を殺せばどうなるのか分からないけど、まあ構わない。やってみよう。それで何が欠けようと、また夢を見て埋めればいい。だから安心していいよ私。お前が抜けた穴は、もっと私らしいお前で補うから。】



「・・・そう、お前は優しいのだ・。・ だけど私はもっと厳しいのだ・。・」



否、まったく同じというわけでもなかった。

殺意を燃やすあちらに対し、こちらはどこか自嘲的で―――。



「叩き潰すけど、消しはしないなの・。・ 正しくは叩き直すなのだ・。・」


いくぞ。

容赦はしない。

お前は私なのだから。


「多少居心地が悪かろうと戻って来るなの・。・! それが現実と言うものなのだ・。・!」


【ふ、はは、はははは・・・。】


自ら己に向けた宣言は、しかし霧の中を乱反射するかの如く。



【悲しいなぁ、やっぱり世界は閉じている。自分自身とさえこんなにズレるよ。鬱になるなぁ悲しいなぁ、ははは、はははははは!!】



痴れた笑いを放ちながら、それは猛然と攻めてきたのだった。










―――闘技場内部


めんちゃん「ああ・・・。」



瞳の中で繰り広げられる少女たちの戦いに、めんちゃんは心からの悲しみに満ちた慨嘆を漏らしていた。



めんちゃん「まったくなんてことだ。自己と言う単位すら統一が出来ずに、争い始めてしまうなんて。」



ヴィオラ「めんちゃん。女子中学生に似つかわしくない口調だね。」


めんちゃん「え?」


ヴィオラ「え?」


めんちゃん「・・・でも、これってやっぱり違うと思うよ。」


ヴィオラ「・・・そうだね。自分自身と向き合い、悩み苦しんで葛藤する。時には必要だ。でも、今展開しているこれは―――」


めんちゃんが創り出した妄想世界は、術者本人であるめんちゃんは勿論のこと、その瞳を覗くことによって視聴が可能となる。

故にここまでの展開を見ていためんちゃんとヴィオラは、揃って見届けるしかないのだが・・・。



めんちゃん「願望を叶えてあげられる私の世界で、自分と戦いたいって人は多く見てきたよ。」



自傷を愛好する者や、戦闘に恍惚とする者を、めんちゃんは数えきれないほど見てきたから分かるのだ。

だから、そういう理想であったら、一人と言わず千でも万でも別の自分を作り出して永劫戦い続ければいい。



めんちゃん「私は争いが嫌い。だってそこには嘆きがあるから。嫌な気分になるくらいなら、私の創った世界で幸せにしてあげたい。心に平穏を届けてあげたい。」



よって、自己を追い込むことが好きであるなら大いに結構。

傍から見れば痛々しいものであろうと、彼らの中ではその状態にこそ安らぎがある。

ならば望むがままに踊ればいい。

めんちゃんの異能『天翔ける柩パンドラ』はそのためにあるのだから。



めんちゃん「でもなんでこの少女は・・・こんな風に胸を痛めながら自分自身と争っているの。つらいでしょ。己の真実を知って、悲しくて恥ずかしくてもうやめたいと思っているのに、我慢する意味が分からない。U2部隊を倒して平和を取り戻したい? じゃあやればいいよ。私が叶えてあげる。妄想の中で敵を消し去って、妄想の中で世界を救った英雄として誇られて。そう願うだけで、一瞬のうちにそれは叶えてあげられるのに。どうしてみんな分からないんだろうなぁ。」



ヴィオラ「(・・・なるほどね。特殊保護部隊ではなく、私に監視命令が回ってきたのはそういうことか。この子の異能は、U2部隊ボスの理想とそっくりなんだ。)」



どのようにすればこの少女を救えるのか。

嘆きに満ちたその心を、癒してあげることが出来るのか。

めんちゃんは捕虜となった瞬間から、ずっとそればかりを考えているのだ。










―――妄想世界


~少女視点~



だから、その思念は少女のもとにも流れていた。

自我と比較するのが馬鹿らしくなるほどの、超巨大な弩級の意思。

仮想世界の創造主でもあるのだからそれも当然だろう。

この念に触れただけで、砂の一粒が大海に落とされるような感覚を味わっていた。


しかし、私はだからこそ折れない。

確かにそうだよ。

だけどな。


もう一人の自分が繰り出した拳を弾き返して、私は決然と吼えていた。



「うっとおしいなの・。・ それに余計なお世話なのだッ・。・! 妄想ってのは重さがないなの・。・! しょせんは霧か煙の類いで、夢にすぎないのだ・。・! 私を救ってくれるのなら、めんちゃん、君自身が出張ってこいなの・。・!」



怒声は四方に反響し、手応えなくどこかへ消えていくばかり。



無意識なのか意図的なのか―――使



故に、この戦いは極限難度の綱渡りめいた精神戦となっていた。



前提として勝利を目指さなくてはならないのに、勝ちを欲しすぎると妄想に嵌められる。



勝ちたい、勝った、やったぞと―――希望に墜落したその瞬間、ありもしない夢を見ながら一人芝居を演じる運命。

そんな自分が、一秒後にも生まれてしまうかもしれない。



だから現実は甘くないと、そんなに上手くいくはずがないと等しく思い続けなければならなかった。

これもある意味、勝負事の基本であろうが、今は状況が特殊すぎる。



―――何せ、戦っている相手は自分自身なのだから。



【ああほら、やっぱり、お前は私になりたがっている。現実はとても辛いと、誰よりも分かっているんじゃないかァァッ!!】



「ぐッ、あああァァ―――!」


首ごと刈り取るような回し蹴りは、防御してもまったく威力を削げなかった。

腕が粉砕される音を聞き、私は目の前の自分が先ほどより強くなっているのを感じている。



【勝ちたくないんだろう? 負けたいんだろう? 私には絶対勝てないと、思っているんだよなそうだよなあ!】



「飛躍しすぎなの・。・ 鬱らしく、なんでも都合よく解釈するのは止めるのだ・。・!」



つまり、私が現実の厳しさを自戒すればするほどに、障害であるこの相手は強くなる。

簡単に勝てるわけがないと思うから、そのイメージに相応しい難敵へと変わっていくのだ。



綱渡りと表現したのはそういうこと。



希望と現実、どちらも切り離せない二本柱で、どちらに寄っても待っているのは敗北だ。

もはやバランス感覚という表現くらいで要約できる状況ではない。

一ミリの狂いもなく、ど真ん中を突っ切らなければ真っ逆さまに落とされる。



拳法、素早さ、練度、特性、得手不得手、癖や思考―――手の内すべてを知られている相手に対し、奇策の類は意味を成さない。

あらゆる防御も攻撃も即応され続けるこの状況は、本来なら完全な線対称になるはずだが、現状は私が押されている。



速さが違う、黒焔の鋭さ、正確さが違う。

徐々に格差が生まれ初め、威力を捌けなくなりつつある。


―――片腕を折られたのはきつい。


両手で行う攻防の回転率こそ私の本領なのに、これでは文字通りの片手落ちだ。


「うっ、この・。・!」


血飛沫が舞う。

骨が軋む。

もはやダメージの大半は己のみに集中し、今にも押し切られんとしているのが自覚できるが、しかし。



「―――上等ッ!・。・!」



私はいつでもこうだった、これでこそ、これでいい。

なまじ優勢になるよりは、確実に現実を踏みしめていると実感できる劣勢のほうがましだろう。


少なくとも、歪んではいないはずだから。

苦しくて、恐ろしくて、痛くて嫌になるこの気持ちこそが、真を掴んでいるという証。


だから、どれほど辛くてもこの痛みは手放さない。

これは絶対、手放してはならないものだ。



―――夢のない現実には何もないとこいつは言った。



ああ、確かにそうかもしれない。


一時の格好付けで気持ちよくなった先に、待っているのは得たもの全ての喪失だと、頭から否定できるだけの強さはない。

それは紛れもなく、胸にくすぶる本音の一つなのだから。





戦の熱狂が去った後、

その未来は事実として、抉られるほど分かっている。




「それでも、私は――――」



だからこそ、ここで自分自身に問い質したい。



「本当に何もないなの・。・!? お前はそう思っているのかなの・。・?!」



違うはずだ。

そうではないと、何より私は信じている。



「私は彼らに―――なの・。・!」



フリーれいかの鬱霊として『見ていた』景色。

まるで物語のヒーローを敬するように、胸を躍らせて英雄譚に没頭した。



「そして、自分も共にと強く願ったなの・。・!」



何故なら、パソコンのモニターを閉じ現実に帰ったその瞬間が、あまりに寂しすぎたから。

どうして自分はここにいる。

どうして彼らの所に行けないのだと、己が境遇に絶望さえした。



れいか生主―――彼らはフィクションの存在じゃあないというのに。



正者と死者、たったそれだけの違いで、現実に存在していた相手。

立ち位置の相関として、架空を掴もうとするほど隔絶しているわけじゃない。



「私が鬱霊・・・フリーれいかの『躁うつ病』として生まれてこなければ―――」



こんな異世界を生み出す事も無かったかもしれないのに。

都合のいい妄想体という命を。

悪戯に生み出してしまう罪を犯さなかったかもしれないのに。



を軸に、故に躁霊を打倒すれば夢は消えると、さっきから何度も何度も何度も何度もッ!

そう考えなければならないほど、今このときも自分は『夢』に縋りつきたい。

その証明として目の前の私がいる。



めんちゃん「・・・分かるよ。本を閉じた後に、どれほどの寂しさが襲ってくるかなんて、私には嫌と言うほど分かるから。」



ふわふわと、めんちゃんの意思が流れ込んでくる。

けど、残るのは寂しさだけじゃないだろ?



【そうだ。私と彼らは生きる場所が違うのだから、彼らをこちらに呼び寄せるんだ。そうすれば願った通り、私は彼らの仲間になれる。この異世界で主人公になれる。そして奇跡のバランスに生きていくんだ。ずっと、ずっと、永遠にッ! 私と彼らの理想郷を奪う者は、たとえ私であっても許さないッ!】



「違うなの・。・! なのだ・。・!」



拳を拳で弾き返し、額同士を叩きつけて至近距離から己を見る。

心酔した瞳に、蕩けそうな歪んだ笑み。

これも間違いなく自分だと、強く強く己の魂に言い聞かせて―――



なの・。・! 私が継いで、報いる気概を誇りとすれば、れいか生主たちはいつも私の傍にいるのだ・。・!」



詭弁じゃない。

気休めでも、誤魔化してもいない。


まして、夢でもない真実。



「だから私たちは、みんなを妄想体として具現できたのだ・。・!」



聞いてるかめんちゃん。

君の言葉を借りるなら、つまりこういうことだ。



「本を閉じた後は寂しいのだ・。・ 物語に思いを馳せて、ふと我に返れば広がっているのは荒野かもしれないなの・。・ だけど、胸に灯る熱く切なく愛しい何かを―――」



きっとそれこそが、たとえどれだけ離れていようと、れいか生主と私たちを繋ぐ絆の輝き。

ヒーローに憧れて、悪党に憤慨しながらも楽しんで、思いもしない展開に驚いたり突っ込んだり、泣いたり笑ったりしながら物語に入り込むこと。



「彼らと駆けた記憶は遥か、手の届かない遠いものだったとしても―――胸に残った熱は真実なの・。・! それを感じている限り、私も彼らの仲間なの・。・!」



ここに至るまで、幾つもの戦いを経験し、または対峙してきた。



それは度し難い二次創作で、『躁うつ病』である私たちが無自覚と無責任で紡いできたのを覚えている。



散々に扱き下ろし、ときには呆れ、ときには哀れむ。

人類が生み出した妄想劇とは、なんと醜悪な欲望を垂れ流すのだと思ってきた私が、その根幹は鬱霊の私なのだという皮肉すぎるブーメラン。


だけど今、彼ら夢見る者たちを頭から否定するつもりはない。

自分も同じ穴の狢だからと、自己弁護をしたいわけではなく、分かるのだ。



「私たちは、ただ熱を感じ続けていたかっただけなの・。・」



大好きだから、大ファンだから。

彼らとの繋がりを守りたいと思っただけだ。

遠い存在だからと放り捨てず、確かに生じた胸の真を誇ることは、断固絶対に間違っていない。



「どうでもいいから、関係ないから、好き勝手に面白おかしく弄くり回して妄想の物語しょうせつとして消費する―――なんてわけあるかなの・。・! そんな暇人がいて堪るかなのだッ・。・! しょせん嘘っぱちだと思っているものなんかに、人はそこまでエネルギーをつぎ込まないなの・。・!」



すべて、それは彼らが育み抱きしめた、真実の熱だったからこそ。

適当に紡がれた『夢』なんか一つもなく、そんなことは当たり前で。



「みんな、みんな―――れいか生主たちが大好きなのだ!・。・!」



異世界の正体は、フリーれいかの『躁うつ病』が生み出した妄想劇。

それと同時に、現実世界の夢見る奇形児たちの力も合わせた結果、こうした二次創作まみれの物語が出来上がった。



けどそこには、一貫して一つの想いがあった。



「みんな、彼らの仲間になりたいと願い、彼らと繋がった絆を愛しただけなの・。・! 間違っていない、それだけは絶対に・・・場所を超えても仲間になれたという真実だけは、なりたいと願った心だけはッ、そのとき私の魂は、彼らと確かに触れ合ったなの!・。・!」



【だったら私を否定するなァァッ!!】



激昂と共に増す圧力。

向こうの私にしてみれば、こっちの私が言っていることは支離滅裂で矛盾している。

自分たちの所業に理解を示しているくせに、なぜ異世界を崩そうとするのだと。

この物語を、桃源郷を。

抱きしめた熱とやらを、最高の形で感じ続けることが出来るのに。



【鬱霊である私が、人としてッ、絆を確固として思い描くことの何が悪いッ! そのとき私は、紛れもなく彼らの仲間になれるんだッ!】



「ああ―――」


閃いた拳が拳を絡め、弾き飛ばして虚空に舞わせる。



「あくまで、、なの・。・ 忘れないでほしいのだ・。・ なの・。・」



衝撃に呆ける自分へ、私は何よりも、己自信が辛い現実を口にした。



「憧れて、夢に見て、胸に生まれた想いは真実―――その熱さえ信じられたら、もうそれで充分じゃないかなの・。・? こんな異世界を創ってまで、こんな物語を創っておいて・・・妄想に逃げて、どこに絆があるなの・。・?」



異世界なんていらなかった。

現実世界にも、真は確かにあったんだ。

彼らと繋がって仲間になれたし、本を閉じたからといって色褪せるようなものじゃない。



「せっかく築いた宝物を、自ら捨てようとしているのはお前の方なのだ・。・ 異世界にこもって、私たちが生み出した妄想劇に浸り込む・・・それで最後に行き着く先は、何も無い、無いんだよ―――」



血を吐くような、自分で臓物を締め上げているような声だった。

この痛みは、きっと生涯なくなることがないだろう。



「だからさ、一緒に来いなの・。・ これから先も一緒に行こうなの・。・ 居心地が悪いのはお互い様なのだ・。・ こうして私たちが喧嘩をするのも、それだけ彼らのことが好きなんだという証明なの・。・ 絆は、そういう中にこそあるものなのだ・。・ 一緒に、物語しょうせつの後始末を頑張ろうなの・。・v」



【―――ぁ。】



苦笑し、手を差し出す私に対し、もう一人の私もおずおずと手を伸ばして。



しかし。

その時だった。



めんちゃん「悲しすぎるよ。私はそんなの認めない。」





それが願望なら叶えてやろうと、上手く『天翔ける柩パンドラ』を回すことが出来なかった。

そんな己の異変に気付かず、めんちゃんはただ真摯に切実に。



めんちゃん「救われてほしいよ。あなたがやろうとしていることは修羅の道。あなたは本気で、この異世界に、物語に、夢に終止符を打とうとしている。―――あなた自身が消えてしまう事も、妄想体も異世界も消えてっ、そんなの悲しすぎるっ! ねぇもういいじゃない! 収穫を生き残れたのだからいいじゃない! 立ち向かいさえしなければ残れるんだから! 異世界だけで幸せになるべきだよッ!」



【がッ―――】



まるで脳と心臓を鷲掴みされたように、もう一人の私は嬌声をあげて倒れ込む。

おぞましい快楽中枢の暴走は、対面の私にも伝播して、私達を夢幻の彼方へ呑み込もうとする。

くそっ、余計な事をッ、ヴィオラさんも何故止めないッ?!



「もう一人の私、しっかりするのだ・。・!」


【私は―――私はッ!!】



背を押され、ぶつかってきたもう一人の自分に腹を深く抉られながらも、私は笑みを浮かべて頭上を睨みつける。



【―――何をしているの! 私なんか置いて進んでよ! 私は所詮、お前の記憶の副産物なの! 恥ずべき過去そのものッ! それに分かっているの!? 私と一緒になるということは、記憶を完全に取り戻すということ! もう決して後には引けないッ、辛い現実を抱えて生きていかなくてはならないんだよ!?】



「だから、そんなの今更なのだ・。・v 元に戻るだけなの・。・ 元に戻って、それで一緒に、鬱霊として、夢に幕を与えてやろうなのだ・。・」



【・・・馬鹿。鬱霊のくせに、こんなに強くなってっ・・・。】



言葉はもう不要だった。

今こそ、この一手を持ち、私たちは立ち上がる。



「さあ、前に進むなの・。・ 烈風の如く、止まらない歯車へ―――」



【・・・うん。ごめん、ごめんね。・・・ありがとう。】



私は自分を抱きしめ、自分と同化しながら、二人同時に拳を振りかぶった。

狙いは上空。



二人分の渾身の黒焔が、仮想世界にヒビを入れ始める―――。











―――闘技場内部



めんちゃん「あ痛ぁーーっ!><! お、おかえり。」


ヴィオラ「・・・成ったね。」



戻ってきてもなお、私の中に燻る何かを感じ取れる。

結果はこの通り、成功だ。

ヴィオラさんの異能のおかげで、折られた腕だけが妄想世界に入る前に戻っている。



ヴィオラ「どうやら、上手く戻れたみたいだね。どう? 己がどうするべきか、その心境に変化は無い? どうだった? 自分との対話は。有意義な体験はできたかい?」


「なの・。・v フリーの躁霊を倒すという決意は、さらに深く燃え広がったのだ・。・」



ヴィオラ「その道の終着点が―――?」



「もちろんなのだ・。・v 私は決めたなの・。・ 始めてしまった者の責任として、、私はその道を選ぶのだ・。・」



ヴィオラ「・・・私も相当ドライな方だけど、君みたいにはっきりと言えるのは初めてだね。でもだからこそ、か。・・・さぁ~てと、とりあえず終わったことだし、次の修行レッスンの―――」



めんちゃん「おかしいよ。」



言葉を遮ってくる女子中学生。



めんちゃん「鬱霊の少女もそうだけど、何よりヴィオラ達よ! がどうしてそんなに呑気でいられるの? 真実を知って、心がおかしくならないの? 帰りたかった現実は存在しないのに? 今はっきりと分かった。あのランニングは一種の現実逃避だと勘違いしていた。―――あなた達は本気で、現実世界の平和のために戦おうとしている。あなた達とは何の関係もない現実世界を! もしも上手くいったとして、そしたら消えてしまうのにっ? なんでそんなに平気でいられるの?」




ヴィオラ「その恐れを胸に刻んでいこう。それを克服し、乗り越えることが人生なんだ。」



「・。・」



ヴィオラさんはなんかこう、時々真面目なのかネタなのか分からなくなる。

これが俗に言う天然、いや天才なのか?



ヴィオラ「もちろん、己が妄想体であったという事実にへこんでる奴は一定数いる。けどね、そういう逆境こそ燃えてくるんだよ。仇を取るためでもあるけど、残った仲間たちと難問に挑むのは悪くない気分なんだ。やられたらやり返すって感じにね。だから悲観しないでほしいな。元々は敵対勢力の踏破も目的ではあったから。そこが変わらない以上、それからのことは、その時考えるでいいんだ。」



めんちゃん「・・・っ。」



「まあとにかく見てるといいのだ・。・ 今は納得がいかなくても、この物語が進むにつれて、私たちの決意もなんとなく見えてくると思うのだ・。・ めんちゃんはU2部隊、私たちと違って本物の人間、死ぬことさえなければ消えることは無いから、物語を最後まで見届けられると思うのだ・。・」



めんちゃん「・・・分かった。それじゃあせいぜい、私の心を揺れ動かすような生き様を見せてもらおうじゃない! それでいつかは、私があなた達の物語を小説として書いてあげるわよ! 中途半端な結末は許さないから、感謝しなさい><!」



ヴィオラ「いいね~。いや、小説のことじゃないよ。やっぱり、オッサンの言葉使いよりは女子中学生の言葉使いがしっくりくるね。」



めんちゃん「え?」


ヴィオラ「え?」


めんちゃん「くっ、この、オウム返しやめろ><!」




レキモン「———やってるみたいだね。」




その声に、一気に私の心と身体が強張った。

いや、そういうことか。

意外というわけではなく、むしろこれは願ったり叶ったり。




ヴィオラ「私が呼んだの。までの時間も残されていないし、ここからは実戦形式でさらに研磨させていく。」



やっぱり、そうか。

それしか、片腕を失ったレキモンさんがここに来る理由がない。



レモキン「突然だけど、レジスタンスには『ベリィ組』という最強部隊がいたんだ。けど、そいつらは全滅した。何故だと思う?」



「ベリィ組、確かセイキンに―――」



『ベリィ組』の件は聞いていた。

だから何を言いたのか、なんとなく分かってくる。

要はそのためのレキモンというわけだ。



ヴィオラ「。想定されていた機械兵との戦いはこなせても、化物相手では簡単に覆される。どんな屈強な兵士でも、未知の恐怖には勝てない。私がBUNZINと対峙した時も、一瞬頭が真っ白になった。。」



ああ、本当に―――ヴィオラさんを師匠にしてよかったと心から思う。



レキモン「。妄想世界なら俺の腕も直る。もう前線には出れない俺だけど、こんな形でも少しは役に立たせてくれ。全力で行くから。訓練であろうと人は死ぬからね。」



ヴィオラ「レキモンはレジスタンスの中でも、の伝説クラスの使い手だ。彼の戦法はとにかくえげつない。理不尽な強さというものを、これからのために長く体験しておくんだ。」



レキモンさん―――あの会議以来か。

面白い、うずうずが止まらない。

期せずして、あの時の借りを返せるのだから!



「さっそく始めるのだ・。・! 私はいつでもいいなの・。・!」


レキモン「ああ、早く始めよう。めんちゃん、お願いする。」



めんちゃん「・・・うん! 頑張って! 二人ともっ><!」











―――隠れ家 再建された宮殿内



キリト「やっぱり、日常演舞の第二開園―――これの突破方が鍵だぜ。」



姿

そこに集うは―――生き残りし勇姿の面々である。



スノーれいか「正直、毎度をやられてしまうと、『物語』に対して初見の技を行使する以外どうしようもありません。演舞開園の第一段階だけでも突破は厳しいのに、第二開園は文字通りアンコール、再演の能力です。それも相手が無敵になって強化も付与されるおまけつき。あの狂犬、BUNZINのように。」



あの第二開園には、どこからやってきたのか分からない『観客』が存在する。

彼らは夢見て願うのだ。

一度見た異能はもう飽きたから、何か別の戦法を見せてくれと。


無敵を思い描かれたから無敵になる。

そこに弱点も何もあったもんじゃなく、理屈を度外視した代物。

かつては通じた必勝法が、バグのように取り外されるのだ。



故に、レジスタンス側は根本的な方針を見直すしかないのだが・・・。



スノーれいか「それは一見、手の施しようがないように思えます。―――ですが、弱点を無くした代わりに、。」



真中あぁあ「だから第二開園は、神アイドルこと私に任せてよ。今度こそ歌いきって見せるから。」



スノーれいか「BUNZINは私にやらせてもらいます。彼を裁く権利は譲りません。」


うら若き乙女たちは、自信満々に看破する。



スノーれいか「それにおそらく―――第三開園も存在するでしょう。」



あっちゃん「あるわね、確実に。No.3の称号は伊達じゃないわ。彼の異能は度が過ぎている。No.2とNo.1、それにNo.0も同様にね。」



べるれいか「りんごーん。確かNo.2は裏切り忍者田中みこ。異能は『無極』だっけ?」



4410「無極とは即ち、果てがないこと、限りのないこと、という意味です。戦ってみた私の推測ですがおそらく、―――いや、あの『お邪魔します』というワードからして、のかもしれない。」



キリト「田中みこか。実は俺、あいつは敵っぽくないなと思ってたんだ。だけど今回の戦いで決心したよ。あいつはレキモンの腕を斬り、ひまれいかを間接的に死に追いやった。報いは受けてもらう。」



4410「私も同意見です。どんな事情があろうと、私も次こそは―――この完全究極形態、パーフェクトモビルスーツ『4410』の力を見せてあげます。」



決意の焔を胸に滾らせるキリトと4410であった。



スノーれいか「・・・そして、No.1。こちらも同じく裏切り者。ふぁっきゅーれいかさんですか。」



べるれいか「私は今でも信じられないよ・・・ふぁっきゅーさんがU2部隊だったなんて。」



真中あぁあ「えーと、時間を巻き戻す異能だっけ?」



あっちゃん「No.1については私も分からないわね・・・。それでもNo.0に並ぶ実力者と言っていいわ。余談だけど、あのNo.0と呼ばれている覆面男はNo.11―――セイキンを弟と呼んでいたわ。現実世界での失われし記憶を持つキリトなら、この意味分かるんじゃなくて?」



キリト「・・・ちっ、そりゃあ完全にトップの人間だな。」


スノーれいか「誰であれ、その二人においては出たとこ勝負というわけですか。」



場に重い空気がのしかかる。

敵は未だ遥かに―――上の存在。



キリト「嘆いていても始まらない。U2部隊、13人から3人が味方となり、2名が死亡した。俺も、あと少しで回復する。これからの計画で『収穫』されたあいつらを連れ戻すことが出来れば、同じく収穫されたであろう前線組、みんと帝国との協力も合わさればきっと―――」



あっちゃん「前線組は。誰一人収穫出来ずにね。」



4410「!!?」


その言葉に、レジスタンス一同が驚愕する。



あっちゃん「私がU2部隊を裏切ろうと決心したのはその時。あれはもう、私たちとは格が違う。あれを倒すには少女―――同じ格である鬱霊の力が不可欠よ。」



キリト「例の、フリーれいかの『躁うつ病』、U2部隊のボスか。お前らが裏切っても特に関与してこなかったところを見るに、なるほど自由フリーな組織だぜ。」



あっちゃん「彼の野望を阻止するためにも、私達捕虜は協力を惜しまないわ。利用して頂戴。めんちゃんと安眠ちゃんも、もちろん私も。戦闘の際は好きに采配して。」



安眠「だ~め! だ~~め! 私はキリト君と一緒にいるの! むぎゅ~。」



・・・・・・。



真中あぁあ「キリト君、一体何をしたらそんなに!」


キリト「俺に聞くなよ!」


安眠「キリト君は私の命を預かってくれたんだよ? だから今度は私が恩を返すの! むぎゅぎゅ~。」


スノーれいか「収穫された四人は無事でしょうか・・・。悲哀さんほどの実力者が、いったいどうして・・・。」


べるれいか「無理矢理話を進めたね・・・。」


4410「私も、個人的にレトさんが気になっています。彼は何というか、ライバルですから。まぁというわけで、U2部隊については概ねそれくらいですかね―――」



安眠「―――だめだねぇ。これでU2部隊対策会議は中断んん? 分かってねーよあんたら。全然見えてないねぇええ! 笑ってあげようか? ふふふっふふっふふふふっふっふふ!!」



キリト「安眠、その気持ち悪い声どうにかなんねぇのか? 頭おかしいんじゃねぇか?」



あっちゃん「・・・そうね。上位ナンバーに捕らわれすぎて、大事なキャラクターを忘れていたわ。」



真中あぁあ「ほえ? 一体誰のこと?」



安眠「―――。私は正直、彼女が敵に回ると想像しただけで死にそうだよ。。彼女の能力を今一度よく思い返してみて。Kentの方は―――ただの裸人間だしどうでもいいや。ふふふっ!」



スカイれいか「それでもやるしかないでしょ。」



会議室に入ってきた一人の女性、スカイれいか。


彼女が戻ってきたということはの準備が終わったということ。



キリト「スカイれいか、の方は大丈夫か?」



スカイれいか「彼はもういけるよ。それと、ゆうれいかのネザーゲートも設置は完璧。後は少女ちゃんが閉じ込められていたあの場所を目指すだけ。」



4410「既にその場所は特定済みです。私のパーフェクトサーチモードの結果、一つの校舎を検知しました。そこがU2部隊のアジトです。」



キリト「その途中で、との合流も計画の内に入っている。田中みこが少女を連れて行こうとした、黒いモヤを出し続けているあの男。。そいつの協力も必要不可欠だ―――。」














―――ふわっと小学校 四階廊下



この物語に出てくる人物は―――ほぼ『夢』である。

『躁うつ病』の理想によって形を成しているだけにすぎない。


それは二人にとって純粋に、この上なく名誉であり幸せなことだろう。

何故なら、をやり直すことが出来るのだから。



奇跡とも呼べる運命によって、二人。



レトさん(本物)「なんとか上の階層まで来れたな、悲哀さん。中々探索しがいのある学校だ。」


悲哀れいか「あまり先行しすぎるのはよろしくないよ。まあそれくらいは分かってるんだろうけど。男の子は冒険大好きだもんね。敵のアジトだよここ。」



二人にとって、今度こそ自分の力で何かを成し遂げるチャンスが与えられている。

収穫され、軟禁されていた筈の二人はどういうわけか、脱出に成功していたのだ。



レトさん(本物)「悲哀さん、結構毒舌だね。っと、この部屋は?」



今まで見てきた教室とは、

情報収集のために扉を開けた結果、彼らは驚くものを目にすることになった。




―――イレギュラーは、こんなにも簡単に起こりうる。




No.4「初めて聞く声だ。誰でもいい。もう檻の中は懲り懲りなんだ。僕も、みんなの物語に加わりたい。たとえそれが、全てを終わらせることになるとしても。」



悲哀れいか「これは牢獄? まだ若そうな子供なのに、なんて酷い・・・。」



それは、全身を塞がれていた人間だった。

辛うじて口だけは動かせる程度で、それ以外は動かすこともままならない様子。

背格好は子供そのもので、声色から男の子だと分かる。



No.4「少しだけ頼みを聞いてほしいんだ。―――。お返しに君たちを、この異世界から出してあげるから。」












―――みんと帝国 詰所



げすと「調査兵団からの報告をまとめよう。前線組に続き、レジスタンスがU2部隊に侵略されたと。おそらく次の標的はここ、みんと帝国を狙ってくるだろう。」



hmm「ふーむ。にわかには信じられませんが。確かなのですか、和田さん?」



和田「当たり前田のクラッカーなのだ。 わだ [・]。[・]-∩ ビ━━━━━━ム! 」



れイカ「・・・もう、誰か翻訳して。それか縛って黙らせて。和田には触れたくないから、代わりに誰かやっちゃって。」



春巻きれいか「いやぁ、うちもちょっときついっすね^^;」



まげりん「けど、僕らの王様を超える『悪』っているのか? U2部隊がどれだけ強くて諸悪の根源だろうとさぁ。・・・みんとを超えられる気がしないんだよ。」



たぬき「それは同意。。だからこそ私たちがいる―――みんと帝国は負けない。」












―――ふわっと小学校 会議室及び校長室



フリー(躁)「そういうわけで転生計画第三段階、みんと帝国への侵攻はNo.1の宣戦布告を待つ形となったぽよ(*´ω`*)」



No.3日常演舞「今すぐ侵攻したいところですが、まあ確かにそのほうが合理的ですね。を繰り返さないためにも。」



フリー(躁)「あの時はちょっと興が乗ってしまったぽよ(*´ω`*) 反省してるぽよぉv(*´ω`;*)v」



No.11Kent「前線組をボス一人で殲滅しちゃった時は驚いたぜ。二ヵ国目で俺たちが独断先行したのが功を奏したってわけだ。やっぱり大事なんだよな。どんな戦争であっても、。」



No.9北上双葉「だからNo.1のふぁっきゅーさんが、みんと帝国に単独で向かってるんだよね? 宣戦布告をするために。」



No.6 BUNZIN「いきなり奇襲を仕掛けても、相手の方が対処できないというわけか。俺は構わない。相手が万全の状態で迎え撃ってくれるなら。一方的な虐殺よりはその分こちらも楽しめる。」



No.7いちご「なんでもいいけどよォ~~~~。」



U2部隊の新入り、いちご。

フリー(躁)からNo.7―――幸運の称号を貰い受けた男。



No.7いちご「顔合わせは終わったんだろ? もういい加減休みてぇんだよ。」


No.11Kent「ずいぶん勝手だなNo.7。・・・まったく、U2部隊も花が減っちまったなぁ。残る女性は双葉っちだけって。こりゃあ深刻だぜ?」


No.9北上双葉「ふぁっきゅーさんも女性の姿だよ?」


No.7いちご「いや、お前ら本気か? 俺はレジスタンス時代からずっと言い続けてるぞ。本当の女性はいないのかって。あいつらは全部嘘っぱちだ! どいつもこいつも性別の偽った姿しやがって! あの姫れいかだって女じゃねぇ! お前らU2部隊はどうなんだよ?! 聞いた話じゃ、13人もいたのに半数近くまで減ったらしいな? お前ら頭が無惨かよ? もう上弦の鬼しか残ってねぇじゃねぇかよ、この無能集団が!」



No.6 BUNZIN「・・・なるほど。現実世界での失われし記憶を保持しているということは、U2部隊の一員になる資格もあるということか。これも計算の内ですかな、わが主よ?」



フリー(躁)「13人はXIII機関をイメージしたんだけどなぁ( ˊ࿁ˋ ) やっぱりキンハはマイナーなのかなぁ―――(ヽ'。`)みぃ・・・」



No.0■■■■「ボス、へこまないで、お気を確かに! キンハは決してマイナーではございませんッ! ようつべのデータを見る限りは全然そんな―――ん?」



と、その時だった。

扉が激しい音を立てて、一人の忍者が険しい顔をして入ってきたのだ。

その普通ではない慌てように、何事かと言葉を待つ一同。



そしてそれは告げられる。



No.2田中みこ「大変だよボス。No.4が逃げ出した。」



フリー(躁)「―――なんだとッ(^ω)^(^ω)^(^ω)^!?!?!?」



ドドドドドドドドドド。



No.7いちご「こ、コロコロと表情が変わって、忙しい奴だぜ。・・・おい、どうしたんだお前ら。そんなに顔を引きつって。そのNo.4って奴が何だってんだ?」



流石のいちごも剣幕を抑える他なかった。

フリー(躁)の変化だけではない。

顔面蒼白になっている他のメンバーに対して、いちごはただただ不気味な感覚を味わっていた。



No.6 BUNZIN「まずいな。この大事な時に、まさかそんなことが・・・。」


No.9北上双葉「あの子、そんな・・・。」


No.11Kent「マジでやべぇだろ。滅茶苦茶になるぜ!?」



その事態は、けっして起きてはいけなかった出来事。

彼らにとって、最も恐れていた『起きる筈が無いイレギュラー』であった。



No.3日常演舞「ここまでイレギュラーを起こされると、裏で暗躍する何者かの意思を感じますね。さて、どうしますボス?」



フリー(躁)「決まっている(^ω)^ 早急に連れ戻すのだ(^ω)^ (^ω)^」



No.2田中みこ「了解ボス―――みこにまかせて。」












―――とある世界


~少女視点~



??「やぁ。まずはおめでとう、かな。」



目が醒める。

いいや、これもまた『夢』なのか?

自分の身体が思うように動かせない。



??「君は見事、。あの絶望的な状況を切り抜け、残酷な真実を突きつけられてもなお、君の歯車は止まらなかった。さらに加えると、君は自分自身をも乗り越えて見せたわけだ。素晴らしいね。」



「・。・;」


私は思わず苦笑する。

ああ、またこれか。

何というかこの、一方的に話しかけてくる感じ。



「思い出したのだ・。・ 闇に飲み込まれた時以来なの・。・」



謎の青年と謎の暗室。


だ。


今ならハッキリと思い出せる。

どうして忘れていたんだ、ってそうか。

ここでの出来事は忘れてしまうのだと、以前こいつは言っていた。



「残酷な事実、私の正体のことなの・。・? 私が全れいかのオリジナルで、異世界にいるれいか達は、私が作った妄想のことを言っているなの・。・?」



上手く言えないが、ここは私の精神空間みたいなものなのか?

相変わらず、色んな闇が辺りを蠢いている。

あっ、あれって確か、初めてこの空間に来た時に見た記憶だ。

私の中に眠る闇の一つ。

とある生主がおかしくなっていった話。


「あの記憶・・・見覚えのある顔文字を使ってたのだ・。・」


『 (*´ω`*) 』


確かこれだ。

・・・見覚えがあるというより、ついこないだまで対峙してたよな?


「ぽよぽよと煩わしかったのだ・。・;」


U2部隊のボス、フリーれいかに巣食う『躁うつ病』の中の躁霊だ。

私が倒さなければならない相手。


「あの記憶は、フリーれいかの記憶だったなのね・。・ でもそれが、私の闇の中にあるということは」


やっぱり私は―――。


私は本当に、フリーれいかの鬱霊なんだなぁ。



??「さて、そろそろ時間制限だ。は君の感覚で言うと四日後か。。」



は?



「時間制限・。・?! 聞いてないっ、ていうかそもそもこれは何なのだ・。・! お前は誰で、ここは何処なのだ・。・?!」



これじゃあ、最初の時と同じだ!

せっかくまたこの空間に来られたのだ。

訳も分からずに、はいさよならと終わらせられてたまるか!



??「。」




―――え?


おい。


ちょっとまて。



「な、お、お前、本当に誰———」



恐怖が私の身体を包む。

ふざけるなよ、なんなんだお前!?





失念していた。

フリーれいかの躁うつ病に囚われすぎた。



―――今、私の目の前にいるこいつは誰なんだ?


―――こいつも何か重要なキャラクターだったのか?



??「ここで起きた記憶は消えてしまうからね。そんなに不安がることはない。さて、最後にいつもの質問を―――」



事ここに至って、私は完全に異常を確信する。



何らかの心的要因による変調か、あるいは何物かに精神を支配ないし操作されつつあるのか?



いずれにしろ、この青年―――



喩えとして、ここが私の精神世界だとする。

と、するならばだ。



「あなたは、フリーれいか本人なの・。・?」




??「違う。。」




その時初めて、私にはっきりと言い聞かせるような口調が帰ってきた。

これまで目も合わさずに喋り貫いていた彼が、変貌したのだ。

まるでそれだけは否定しなければいけないのだと、必死さすら伝わってきた。



「フリーれいかじゃないなの・。・;? お前はどこまで知っているのだ・。・? そういえば前回の時も、第二分岐点がどうたらこうたら、君にとって辛い事件となるとかなんとか言ってたのだ・。・ もしかして、これから起きる事を全部知っているなの・。・?」



??「それを聞いてどうするんだい? どうせ君は、ここでの出来事を『次』までに忘れてしまうのにね。さぁお決まりの質問だ。『君の未練はなんだい?』。」



―――その問いは前回にもあったものだ。



「未練は、この異世界を生み出してしまった事なのだ・。・」



??「うん。。戻るといいよ。君はレキモンとの戦いで気絶したんだろう? また『物語』に戻してあげる。第三の分岐点をクリアした後、また君と会えること、楽しみにしているよ――――」



「ちょ―――」



願い虚しく、私はそこでの『夢』から途切れていくのだった―――。











第三の分岐点―――。



その兆候は徐々に、異世界と現実世界を終焉で染め上げていく。

決定づけられている宿命なのだ。


全てはあの子の誓いを果たすために。


それぞれが次なる戦場に向けて歩みだす。

終わりの始まりが―――頭角を現していく。











―――隠れ家 入り口付近



隠れ家の外、見張り台という持ち場の中、姫れいかは人影を捕捉する。



姫れいか「っ!? ―――『姫様命令』! その場を動かないで、真実だけを語りなさいっ! あなたは私たちと同じ、れいか生主の人なのっ?」



少年「ああやっと、人に会えた気がする。そうなんだよお姉さん。なんか急に飛ばされたみたいでさ。迷路ばっかりで嫌になってたんだ。お姉さんたちはここがどういう場所か知ってるの? そこは街かなんかの拠点なのかな?」



姫れいか「(・・・嘘はついていない。この子もまた、私たちと同じ・・・?)」



そこに少年がいた。



少なくとも、姫れいかにはそう見えた。

時期が時期だけに、未だ警戒を緩めない姫れいかに対し、その少年は名乗りを上げる。



少年「僕の名前はどりゃれいか。助けてほしいな、お姉さん。」








分岐点―――それぞれの選択における物語を体験し、そこでの選択に勝ち残る。


平たく言えば全てが修羅場。


死ねば文字通りのゲームオーバー。

なので死なぬように切り抜けなければならない。

そしてなんとか生き残っても、どんな選択の末にそうなったかで後の展開がガラリと変わる。


どんな分岐点が発生するかはその時にならなければ詳細不明ということだ。


確定なのは必ず修羅場になるということ。

ならばこそ、その機会に真摯でありたいと、修行で己を鍛えている少女たちは正しい。



だが―――今回に限っては危険すぎた。



少女達の知らない水面下で、様々な思惑が動く中。






No.4だけは・・・絶対に解放してはいけなかったのだ。












―――みんと帝国入り口 創源廊下



磨き上げられた白からなる大理石の床。


中央に敷かれた緋色の絨毯が、視覚効果によってこの空間の広大さを強調している。


吹き抜けの天井から降り注ぐ照明は満天の星空のようで。


壁に施された銀装飾も、神聖さを華麗に煌かせている。



貴族―――それも並ではない居城だった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「~♪」


その聖性―――何物にも絶対不可侵であるべき芸術を、


穢すことがすべてだと誇るように、彼女が触れた場所から片っ端に破滅していく。


絨毯が腐って戻っていく。

銀装飾が溶け崩れて戻っていく。

彼女がただ歩くだけで、床と壁面を建設前の状態に戻していく。


No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「~~~~♪ ~~♪」


修正不可能な域にまで塗り替えていく。

神聖な空間を汚らしいものへと、なんの意味もなく鼻歌交じりに冒涜していく。



その侵攻は、貴婦人をエスコートするような静けさで、しかしどんな悪をも上回る無恥と暴食の権化だった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「はぁ。最初だけね。もう、城をぐちゃぐちゃにするのも飽きたわ。それより、ここまで進んで誰も来ないなんておかしいじゃない。」



エッサイを歌い終わった彼女は溜息をつく。

事実として、彼女がこの居城を訪れてから、この時まで迎撃の類は皆無だった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「こんだけ広いんだから、一個師団ぐらいは覚悟していたのに拍子抜けね。」


それぐらいの戦力が楽に収容できるはずなのに、衛兵どころか使用人の一人すら見当たらないのだ。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「みんと帝国・・・。防御の面で見れば明らかに論外だわ。」



罠も設置されていたかと言えばそれもなく、門扉は施錠すらされていなかった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「恐れをなして、総出で逃げ出したのか。いや、違う。敵の本拠において雑兵が現れないということは―――」




即ち、そこに立ち塞がる半端ではない者。



居城を守るに相応しい、という展開である。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ん?」



それを証明するかのように、ふぁっきゅーれいかの足が歩みを止める。

いや正確に言うと、先だって止められたものがあるから彼女の侵攻は止まったのだ。



停止させられたのは他でもない、この居城を蹂躙していた穢れそのもの。



壁も床も装飾も、腐り果てていくのが止められたのみならず―――




一瞬にして、再度、



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「へぇ・・・。」



無論、ただそれだけで彼女の力が敗退したというわけではない。

鼻歌交じりに、適当に力を垂れ流していた程度の物にすぎず、言わば無意識の現象なのだから込められた強さもそこまでではない。



だがそれだけに、裏を返せば呼吸を止められたに等しい圧迫をふぁっきゅーれいかに与えたのは間違いなかった。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「驚いたわ。誰だか分かり易いわねそれ。まさかあんたが出てくるとは思わなかった。」



今、再び神聖を取り戻した廊下の中央―――



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「みんと帝国自慢の飛車角はどうしたの? てっきり私は、迎撃がくるならそっちだと思っていたんだけど。」



誰がこんな対決を夢見ているのよ、と彼女は小さく付け加えて。



No.1ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ「ああ、つまりこういうことね。玉を守るのはの仕事だと。―――ふん。ならそれ相応に、堪能させてもらおうかしら?」



和田「わだ [・]。[・]-∩ ビ━━━━━━ム!」



バイクのエンジン音を轟かせ、そこに存在するは特徴的な眼鏡をかけた男。





U2部隊 No.1 ᶠᶸᶜᵏᵧₒᵤ  vs  みんと帝国所属 和田



―――奇怪な死闘の幕が上がろうとしていた。




つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る