第12話 騒乱の結末
至高の領域に君臨せし人物。
生半可な紛い物ではなく―――純然たる本物。
溢れんばかりの富を有し、名声を極め、さらに気品と美貌を備えている本物。
最高峰の武術、それを可能にする鍛え抜かれた肉体と精神。
褒めたたえられ、愛され、生来のカリスマを持つ人物。
いかなる男も女も、その人物を見れば心を奪われ、嫉妬すら浮かばない。
あまりに隔絶した存在を前にしたとき、人は思わず崇拝を選ぶ。
あらゆる者が膝を折って、賛辞する。
―――このNo.3と呼ばれた男からは、それと似た空気を感じる。
曰く、演舞開演の使い手。
人は彼を、日常演舞と呼ぶ。
~キリト視点~
まず、最初に自覚したのは弛緩している肉体だった。
四肢が不自然に伸びきって、意思と動きが分断されたように錯覚する。
何か・・・嫌な感じだぜ。
まだ何もされていないというのに、無性に心を乱される。
破壊衝動と自殺衝動が、一変に襲いかかってくるような。
・・・まずいな、まさに術中だ。
おそらく、既に何かされたな。
安眠「・・・んふふっ!本当に笑えないわよ・・・No.3!!」
―――隠れ家宮殿内一階
ふぁ「っ!みんな、引き締めて!来るわッ!」
―――第12話 騒乱の結末
Kent「お・・・終わりだっ!!演舞が・・・始まるぞッ!!!」
・・・・・・演舞ッ!!!?
キリトは速さの次元を超越する直前、確かにその単語を聞いた。
謎の男は、片手をゆらりと振り上げている途中。
瞬間、キリトは特攻する。
目視不可能な不可避の速攻は、順当に謎の男に命中した。
〜ひまれいか視点〜
凄まじい衝撃とともに、大地が揺れる。
この砂埃・・・またキリトか。
勘弁してもらいたい。
フリー「キリトが仕掛けたか・・・!」
ゆうれいか「相変わらずキリトさんは規格外だね~。動きが見えなかったよ~。」
フリー「白兵戦ならあいつの十八番だ。少なくともこいつらみたいな色物集団には負けねぇよ。」
安眠「私たちのことそれ?・・・ふふっ。あなたたち、どうやら私たちを解放する気が無いように見えるけど・・・?」
スカイれいか「いきなり信用するわけないでしょ!てか、あの男は誰なのさ?」
土煙のおかげで何も見えない。
キリトは無事だろうか。
フリー「そうだ。本当に共闘する気があるのなら、知ってることを洗いざらい吐くことだな。というより、キリトが負けるなどありえん。」
安眠「私に何度も負けてるのに?」
その言葉に、フリーれいかは眉をひそめる。
フリー「・・・。」
未だ土煙は晴れない。
安眠「一つ教えといてあげるわ・・・。私たちU2部隊は、世界の創造主たるボスの親衛隊。発現する異能も別次元・・・ふふふっ。」
フリー「だが俺がいれば止められる。今のお前らのように、同じ事さ。」
安眠「私はまだ・・・負けていないわよ?」
フリー「ほざけ。無能力者が何言ったって怖かねぇよ。」
北上双葉「ねぇ・・・。」
捕らわれてからずっと口を閉ざしていた北上双葉が、おもむろに口を開く。
北上双葉「あなたは・・・フリーれいかさん・・・?」
フリー「・・・・・ああ、俺がフリーれいかだ。」
北上双葉「・・・・・・・・。」
すぐに会話が途切れる。
フリー「・・・悪いが、俺は女だからといって容赦はしない。」
北上双葉「・・・そういう意味じゃないよー。」
4410「モエー」
北上双葉は俯いて沈黙する。
時間にしてはおよそ10秒。
北上双葉の謎の質問に、フリーれいかが答える。
いうなれば僥倖、悪く言えば不慮の事故。
そう、ただ一人。
その発言の意図を汲み取れた例外がいた。
ひまれいか(・・・・・!?・・・・・・!!?・・・何故・・・・!?)
北上双葉の思考透視をしていたひまれいか。
彼はこの瞬間、この世界の全てを理解した。
見えてしまったのだ。
北上双葉の脳内に映された断片情報を、瞬時に繋ぎ合わせて推理して・・・紐解かれるように。
ひまれいか(敵幹部だというから、それなりの情報を期待していたが・・・。馬鹿な・・・言えるわけがないッ!!・・・理解の範疇を超えている。くそっ、こんな時に下痢が催してきたッ!!)
安眠「双葉ちゃん。言いたいことは分かるけど、それだけはやめようね。」
フリー「おいおい、お前ら立場分かってんのか?こうなった以上、お前らに隠し事はさせねぇ。さっき、世界の創造主がどうたら言ってたよな?この世界について詳しそうだ。この戦いが片付いたら覚悟しとけよ?」
安眠「そっちこそ・・・。」
気が付けば、土煙は消えていた。
安眠「助けてくださいって、懇願しといた方がいいんじゃない?・・・ふふふっ!」
フリー「・・・キリトッ!?」
土煙が消えたことで、キリトと日常演舞の姿が確認できた。
そして信じられないことに、キリトの二刀を指だけで止めている男の姿が確認できた。
4410「あれを止めますか!」
スカイれいか「まだだよ!」
その両隣から、二人の拳。
少女とふぁっきゅーれいか、神速の打撃コンビ。
だがしかし。
〜キリト視点〜
日常演舞「・・・大したものですね。僕が倒れていないことを確認して、すぐさまフォローに入ったこの二人の連携。そして言わずもがな、伝説の存在キリト。」
「び、びくともしないのだ・。・;」
ふぁ「嘘でしょ!?」
三人の攻撃を、両手と片足で起用に受け止めている日常演舞。
キリトと日常演舞、互いの火花が至近距離でぶつかり合う。
キリト「そいつはどうも。ところでお前、演舞だろ?・・・YouTuberの。」
日常演舞の身体がわずかに反応する。
その隙を突き、キリトとふぁっきゅーれいか、少女もその場から避難する。
フリー「演舞って何だ?知ってるのかキリト?」
キリト「こいつの正体だよ。というかフ―――」
言いかけたキリトの身体に、不自然なエフェクトが顕現する。
奇しくもそれは、安眠ちゃんについたものと同じ。
キリト「———っ、う、ぁああぁあああああぁああああぁああああっ!!」
ふぁ「キリト!・・・っ!」
ふぁっきゅーれいかにも、同じような変化が訪れていた。
身体にべたりと張り付いているような、何かの模様のようなエフェクト。
ふぁ「が、がぁああああぁあああぁああっ!!!!」
キリトと同じく叫びだす。
「ど、どうなってるのだ・。・!?」
少女だけ発症していないことが気にかかるが、今はそれどころじゃない。
圧倒的嫌悪感。
何故か死にたくなってくる。
・・・思考を、より鈍化させて、いき―――——くそっ!飲まれかけたッ!
悪寒を振り払おうと、瀬戸際で意識を高めるキリト。
這い上がってくる。
正気を保て。
発狂するな。
舌を噛み切ってでも意識を留めろ。
自分自身に喝を入れろ。
流れ込んでくる、いや同調しようとする別の意思を何としても拒絶してやる。
これと繋がれば最後、二度と俺は浮上できない。
何一つわからないが、それだ、けは理解・・・で、きるん―――
~フリーれいか視点~
フリー「キリト!!ふぁっきゅーれいか!!」
4410「あの二人が一瞬で・・・?!」
スカイれいか「誰か!あの少女のフォローに回って!!」
ゆうれいか「僕が行くよ〜。」
キリトとふぁっきゅーれいかは、その場から全く動かなくなってしまっていた。
まるで魂が抜け落ちたかのように、ぼーっと立ち尽くしている。
フリー「何かされたのか!?おいキリト!!動けないのか!?」
ひまれいか「・・・一種の催眠か?それとも毒?」
「ふぁっきゅーちゃん!・。;!目を覚ましてなのだ・。;!」
どうやら、ふぁっきゅーれいかの方も深刻な事態のようだ。
嘆くフリーれいか達の前に、日常演舞が再び歩き出す。
日常演舞「あなた方は良いレビュー対象になりそうです。誰一人逃がさないつもりですので。そこのところ、よろしくお願いします。」
このNo.3と呼ばれた男の異能は、俺が赫の瞳で封じてるんだぞ。
確かに封じてる筈なんだ!
だが・・・現にこうして、不可思議な現象が起こってしまっている!
何よりも、この隠れ家における最高戦力が、ほぼ壊滅状態なのがヤバい!
それに俺とスカイれいかは、安眠たちを封じるのに手一杯だ!
安眠「フリーれいか!今すぐ私たちの封を解いて!じゃなきゃ殺られるわッ!」
フリー「・・・その前にあいつの異能は何だ?早く話せ!赫の瞳が効かないのは何故だ!?」
その質問に答えたのは、Kentだった。
Kent「最初の掛け声があったろ。『演舞開園』って。もうその時点で俺らぁ詰んでんだよ・・・。」
安眠「あれを止めてッ!!!」
日常演舞の片手が、またもやゆらりと振り上げられていた。
それに続くように、もう片手も。
日常演舞は万歳ポーズをとっていた。
ゆうれいか「降参のポーズかな~?」
日常演舞「いいえ。さらなるダメ押しです―――——
常軌を逸脱した力の解放。
ゆうれいかの洒落も、記憶から咄嗟に抜け落ちた。
安眠「あああっ、だ・・・駄目だッ!開園に開園を重ねられたッ!!これじゃ私は間に合わないッ!!!」
フリー「おい!自分にだけ分かる言葉でベラベラ吐いてんじゃねぇ!奴に先手を打たれたってことでいいんだよな!?対抗策は!?・・・共闘する気があるのなら、出し惜しみなく情報を開示しろ!!」
もう疑いようはない。
このNo.3と呼ばれた男・・・恐るべき脅威だッ!
どうにかしなければッ!
安眠「・・・あいつに対して、不気味とか気持ち悪いとか、怖いとかの感情を出さないで!少しでもそう思った瞬間、演舞の型にハマってしま――」
日常演舞「喋りすぎですよNo.5——————あなたは零点だ。」
日常演舞の片手が、空を切る。
たったそれだけの動作で・・・。
安眠「!・・・ふふ・・っ。」
ゆっくりと。
安眠ちゃんは眠るように倒れ込んだ。
フリー「あ・・・?」
北上双葉「・・・安眠ちゃん。」
スカイれいか「え・・・?」
「!・。;?」
おい。
マジかよ。
・・・俺の絶対反射を・・・ここまでコケにしやがって・・・!
なんであいつは異能が使えるんだよッ!!
スカイれいかは竜巻の放出を止め、安眠ちゃんに近づいていく。
北上双葉とKentは、安眠ちゃんを見つめながら逃げようとすらしない。
他のれいか達にも緊張が走る。
4410「生体反応・・・消失しています。」
動かなくなったという意味では、キリト、ふぁっきゅーれいかと同様だ。
だけどこれは・・・完全に異様だ。
安眠ちゃんの身体全体が、変色しているのだ。
スカイれいか「すごい熱だよ・・・!・・・皮膚が紫色になってて・・・痣?」
倒れた安眠ちゃんの身体を弄りながら、情報収集に励むスカイれいか。
4410「しかしどうやって・・・!?あの男はただ片手を振り上げただけです!」
ひまれいか(演舞開演・・・それがキーワードだな。おそらく私と同じような発動条件とみた。)
フリーれいかは今一度、Kentと北上双葉の方に向き直る。
フリー「・・・教えてくれ。俺らが生き残れる確率はいくつだ?」
北上双葉「・・・0%かな。多分私とKentさんでも無理だと思う。」
Kent「この隠れ家には、あのキリトと同じ、『次元超越型』の異能持ちはいないのか?いたら話は変わってくるが・・・。見た感じ残っているのは異形型と、あとは普通の通常型しかいねぇ。」
フリーれいか「・・・異能に型の名前があるのか?初めて聞いたぞ!具体的にどういう―――」
日常演舞「む?・・・おい、なんだこれは少し待て。」
その言葉に、フリーれいかは言葉を止める。
日常演舞の表情に、些細だが変化があった。
・・・歩みを止めていたのだ。
しかも、事態はそれだけに収まらない。
日常演舞から、まったく敵意を感じなくなったのだ。
気を急ぎ、駆り立てる気分にさせてくる負の佇まいは健在だが、それはこの男の常態だ。
もっとこう、慌てて敵意を抑え込んだような・・・。
「ふぁっきゅーちゃん・。・!もう動けるなの・。・?」
ふぁ「え、ええ。動けるわ。あなたが助けてくれたのね、ありがとう。」
!?
ふぁっきゅーれいかが、目を覚ましている?!
少女は、ふぁっきゅーれいかの無事を確認すると、すぐさまキリトの元へと走り出す。
その少女の様子を、日常演舞は見ていた。
フリー「チビ・・・どうやってふぁっきゅーれいかを。」
スライディングしながら、キリトの元に辿りつく少女。
「私が・・・この得体のしれない攻撃を吸収するのだ・。・!」
キリトの身体に纏わりついていた、不気味なエフェクトが消えていく。
その代償と言わんばかりに、少女の拳に黒焔が顕現していく。
Kent「・・・お嬢ちゃん!?あんたそれ、いけるのか!?な、なら安眠の方も頼むッ!かなりの瀬戸際だがよ・・・!」
「任せるのだ!・。・!」
少女の両拳に、黒焔の総量が膨れ上がる。
ドス黒く、禍々しく。
スカイれいか「・・・あ!あの男は!?」
4410「ずっとあそこで立ち止まっています。どうやら予想外の状況に混乱しているのでしょう。心拍センサーが揺れています。」
4410の言うとおり、日常演舞は何もしていない。
ただただじっと、事の成り行きを見送っているのだ。
これもこれで不気味だ。
何故止めようとしない?
これはあいつにとって、困る事態のはず。
安眠「————ぷはっ!!」
キリト「うああっ!!」
ほぼ同時に目を覚ます二人。
身体の模様はきれいに消えていた。
ふぁ「やったわ!」
北上双葉「安眠ちゃん!」
安眠「・・・あ、あいつは!?・・・どういうつもり・・・!?」
慌てふためく安眠ちゃん。
敵意を消して立ち止まっている日常演舞を、信じられない様子で凝視している。
キリト「この黒焔・・・それが俺を蝕んでいた攻撃のエネルギーってわけか?」
ひまれいか「つまり、あの男の正体不明の毒を、こうして吸収できる。そういうことだな?」
「なのだ・。・!またあの放出攻撃が出来そうだけど、どうするなの・。・?」
ふぁ「もちろん撃つべきよ。だけどタイミングが難しいわね。あの威力、何としても当てたい所だけど・・・。」
4410「そのエネルギーを放射できるのですね?・・・簡単にはいかなそうです。」
キリト「この少女を、全力で守りながら攻めていくしかないな。あの男の異能に対抗できるのは、どうやらこの少女だけだ。」
フリーれいか「待ってくれ。今考えるべきなのは、どうしてあの男が動きを止めたのかだ。」
フリーが会話の流れを塞きとめる。
ゆうれいか「あの人、敵意がないね〜。」
スカイれいか「動かないのが余計に不気味だよ!」
フリー「脅威自ら足を止めた理由、おそらくは―――」
日常演舞「ええ。僕にはもう、戦う理由がありません。もう貴方達には何もしませんよ。・・・迷惑をかけてしまったようですね。」
一瞬、空気が止まる。
キリト「・・・はああぁあああぁ??!?」
Kent「おいおいおいおい!!!?」
まさかの宣言。
流石にこれには、誰もが絶句する。
殺される覚悟を決めた者もいただろう。
拍子抜けを通り越して、呆れかえるレベルだ。
スカイれいか「え、えええっ!?」
フリー「・・・。」
ひまれいか「・・・なぜ手を止めた?お前ほどの暴君、我々を皆殺しにすることも容易いはずだが、どうしてだ?」
ひまれいかが、日常演舞に向かって指をさしている。
日常演舞「無駄ですよ。僕に戦う気はありませんが、開園空間はまだ残っています。あなたの企みが何であろうと、僕には意味がありませんよ。」
ひまれいかは、つまらなそうに手を下ろす。
気になるやり取りだが、もうどうでもいい。
安眠「・・・No.3、私の蘇生も見過ごしてくれるなんて。私ですら理解に苦しむかも。ふふっ。どういう心変わりなのかしら・・・?」
そこなんだよ問題は。
俺はてっきり、醜態を晒した部下を口封じ、基地に住む俺たちもついでに殲滅・・・そう思っていた。
途中までの殺気も、本気だった!
日常演舞「いやNo.5、僕も驚いています。本当によかった。第二開園で止まれたのは幸運でした。おかしいとは思ったのです。第一開園の影響を受けていなかったものですからね。泣きじゃくり、戦意喪失していたので、一旦捨て置いたわけですが・・・正解でした。」
完全に敵意が消えていることを、全員が感じ取る。
フリー「あー、これだけは言わせろ。この膠着状態、どう収拾つけるんだ?」
日常演舞「では、まずこれですね。」
軽く指パッチンする日常演舞。
その足元に、複数の物体が出現していた。
日常演舞「これは回収しておきます。我々U2部隊の粗相、まことに申し訳ない。」
Kent「・・・あっ!それ俺らが仕掛けたやつ!」
北上双葉「数は合ってるね。・・・一つ残らず回収されちゃったよ安眠ちゃん。」
何だ?
四角いブラックボックス?
安眠「ちぇ!見逃してはくれなかったか〜!」
日常演舞「全ての寝室に仕掛けられたC4爆弾、野放しには出来ません。」
隠れ家メンバー達は驚愕する。
あまりにも突拍子が無く、理解が追いつかない。
キリト「・・・成る程な。こいつらの異能なら可能ってわけか。」
キリトは、Kentと北上双葉を注視する。
爆弾の具現化、寝室へのワープ。
「そういえばミッションがどうとか言ってたのだ・。・!」
4410「破壊工作が裏で行われていた?」
ふぁ「そういえば、彼らと戦ったのも寝室だったわね・・・。」
信じられない。
この女、共闘がどうたら言ってた癖に。
だがそれよりも。
フリー「いやいや、仮にそれが本当だとして、どうしてそれが今ここにあるんだ。回収したと言うなら、寝室に侵入したんだろ?それは何時だ?どうやって?」
日常演舞「僕の開演空間なら可能です。それでは駄目でしょうか?」
くっ・・・こいつ・・・。
日常演舞「ああそうそう、外にいた人たちも無事ですよ。確かめに行かれたらどうです?」
4410がサーチを行う。
腕に取り付けられたウェアラブルデバイスを、慣れた手つきで動かしている。
4410「ば、ばかな・・・。生命反応が戻っている?!・・・市民全員の生存を確認!機械兵の姿が確認出来ません!・・・この入り口付近に倒れ込んでいるのは・・・おそらく田中みこさんと、リオれいかさんですね・・・!」
日常演舞「寝ているだけです。じきに目を覚ますでしょう。」
おいおい。
こいつらは、侵略者じゃなかったのか?
俺は夢を見ているのか?
フリー「キリト、外の様子を確認しろ。2秒で帰ってこい。」
キリト「了解だ。」
二つ返事で了承するキリト。
場はすっかり、落ち着きを取り戻していた。
帰ってきて早々に、キリトは口を開く。
キリト「田中みことリオれいか、あとふじれいかも生きてたぜ。死亡者は無しだ。・・・それよりも、争った痕跡が何処にもない。王の間も倒壊していなかったんだ。それどころか、市民達の様子が普段通りだったぜ。まるで、襲撃されたこと自体を認識していないようだった。ここにU2部隊がいることを知ってるのは、多分ここにいる俺たちだけかもしれねぇ。」
フリー「・・・は?」
爆発も起きたんだぞ?
王の間が崩れ落ちたんだぞ?
それが無かったことにされて、いつも通りに生活してるだと?
日常演舞「ここに僕たちは来なかった。いいですね?隠れ家のリーダーさん?」
全員が言葉を失う。
得体が知れないという恐怖。
逆らいたくても、抗えない。
このまま順当に何事もなく終わってくれれば・・・。
場は、そんな空気に包まれていた。
フリーれいかの赫の瞳が効かない以上、もうどうしようもないのだから。
このまま敵の提案を呑めれば、どれほど楽だろうか。
そんな中、口を開いたのはひまれいかだった。
ひまれいか「つまりその開演空間とやらは、この隠れ家全体に効果を及ぼしているわけか。」
・・・この男の異能、その所為なのは分かる。
だけど、肝心の詳細が何一つ分からない!
フリー「ここで起こったことを帳消しする。だから目を瞑れって言いたいのか?」
スカイれいか「そ、そんな・・・!」
キリト「こいつらはどうするんだ?」
安眠ちゃんとKent、そして北上双葉の存在。
未だフリーれいかによって、異能を封じられている。
フリー「俺らとしては、このまま丸く収めるのは賛成だ。しかし、俺たちの隠れ家が襲われた以上、こちらにもそれ相応の対価が支払われるべきだ。・・・情報という名の対価をな。」
この隠れ家のリーダーとして、けじめはつけさせてもらう。
日常演舞「情報ですか。」
フリー「つまりだ。このまま帰れると思うな?お前たちU2部隊とは何だ?何が目的だ?俺らが納得するまで、こいつらを解放する気はない。」
ふぁ「・・・リーダー。強気に出たい気持ちは分かるわ。だけど・・・。」
分かっているさ。
こいつらが本気になれば、あの演舞開園とやらで俺たちは全滅する。
だけどここだけは譲れない。
・・・何より、俺の為にも。
日常演舞「ふむ。困りましたね。僕としても彼らは必要だ。私一人で帰るとなると、それこそボスにどやされてしまう。」
「いい加減にするのだ!・。・!」
~少女視点~
少女の一喝する通り、それは本当にいい加減で、どうでもいいこと。
少女は、我慢の限界をとうに超えていた。
二対一の死闘を潜り抜け、気持ちが昂っていたのもある。
だからこそ、この意味不明の流れに納得がいかない。
そして何よりも。
「なんで私を見て攻撃を止めたのだ・。・!」
私が、ふぁっきゅーちゃんを助けた時。
正体不明の攻撃を、私の黒焔に還元した時。
明らかにそれを見て、この男は心変わりをしたのだ。
殺そうとした相手を助けてまで。
戦況がひっくり返っただけで、そこまでするか?
この男ははっきりと、『よかった』と言っている。
殺す前に気付いてよかったと。
・・・胸騒ぎが止まらない。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
日常演舞「・・・・・・。」
キリト「おい、そうなのか?」
4410「確かに・・・攻撃を止めたのはそのタイミングですね。」
ひまれいか「・・・そういうことか?」
それぞれが思考する中、少女は日常演舞に向かって一歩進む。
勇気を振り絞り、それを口にした。
「あなたは、私を知ってるなの・。・?」
場が静まり返る。
そんな中、口を開いたのはKentだった。
Kent「お嬢ちゃん。流石にそれはどうかと思うぜ?自意識過剰なんじゃないのか?前世は皇女か?こんなとこに、演舞のオッサンの知り合いが居るわけ・・・・あ、あれ?」
Kentが言葉を止める。
日常演舞が何も言わないのだ。
Kent「ま・・・まじ?」
日常演舞「・・・このままいけば旗色が悪くなりそうです。U2部隊総員、撤収しますよ。」
北上双葉「・・・ラジャ〜。」
Kent「ったく。とりあえず死なずにすんだってことか?・・・誰かさんには感謝しないとなぁ!」
安眠「ということみたい。・・・失礼するね!」
フリー「いやいや、だからお前らは逃さないって・・・」
その言葉と同時に、フリーれいかの側にいた安眠ちゃん、Kent、北上双葉が消える。
スカイれいか「なっ!?」
一瞬だった。
誰もが油断していた。
キリト「あそこだ!!」
日常演舞の側に、その三人は移動していた。
その背後には、例の黒穴・・・Kentの異能、黒腔が出現していた。
Kent「ふぅ!やっぱり気軽に発動できるのはいいもんだぜ。」
北上双葉「一種の解放感だね~。あっ、私のも戻ってる。」
北上双葉の手には、いつの間にか小型銃が握られていた。
封印が解けた以上、この世界に元通り顕現するのは自明の理である。
フリー「!?・・・どうしてお前らまで異能が・・・?」
安眠「言ったでしょ?私はまだ負けてないって。あなたの魔眼、使いこなすまで時間はかかったけどね!」
ドヤ顔の安眠ちゃん。
キリト「・・・それが安眠、お前の異能ってわけか。」
ひまれいか「おそらく自力で封印を突破したのだろう。・・・突破出来る筈が無い封印をだ。」
フリー「・・・や、やろうと思えばいつでも出れたってのか。」
フリーれいかは項垂れてしまう。
仔細は全くわからない。
赫の瞳が無力化されたという事実を、彼はただ受け止めるしかなかった。
しかも二度もだ。
日常演舞「まあ、そういうことです。あなたの魔眼は素晴らしい。ですが我々U2部隊はその上をいく。それだけのことです。・・・これで僕は、あなた方に情報を提供する必要が無くなった。」
「逃げる気なの・。・?私の質問に答えるのだ・。・!どうして私を見て攻撃を止めたのだ!・。・!」
質問を無視された少女が、さらに険しく問い詰める。
少女が必死になるのも無理はない。
ここまで無視されるということは、逆に怪しく見えてくるものだ。
「答えるのだ!・。・!U2部隊No.3・。・!!」
日常演舞「・・・・・・・。」
少女の想いを乗せた怒号。
場に緊張が走る。
日常演舞「・・・いいでしょう。あなたに免じて、少しだけ。ボスから許されている範囲で、ですけどね。」
「・・・えっ・。・?」
フリー「まじか?」
4410「驚きですね・・・。」
まさか本当に情報提供してくれるとは。
隠れ家メンバー達は、揃いも揃って困惑している。
ひまれいか(・・・やはりな。そこまでさせるこの少女・・・。)
日常演舞は、勿体ぶるような仕草をとる。
やがて彼は、落ち着いた声で語り出した。
日常演舞「僕は貴方が誰なのか知っています。ですが僕たちの仲間ではありません。貴方はこの世界において、運命に弄ばれた残酷無比な存在。抜け落ちた存在と言ってもいいでしょう。」
「抜け落ちた・・・存在・。・?」
日常演舞「ボスが今は捨て置けと仰るわけだ。確かにこれは潰せない。・・・貴方の存在が、この隠れ家の存命に導いたのです。貴方がここにいなければ、僕はあのまま皆殺しを決行していました。」
少女は目が点になる。
とんでもない暴露情報だからだ。
Kent「ボスがこのお嬢ちゃんを・・・知ってたっていうのか?!」
このKentの発言が決め手となる。
記憶喪失だった私。
自分が誰なのか。
その手掛かりが、今ここに居る!!
北上双葉「命の恩人になるのかな。というか、やっぱり早とちりだったね安眠ちゃん。」
Kent「だから言ったじゃんよ!俺はあの時反対して・・・してなかったなそういや。」
安眠「・・・知らなかったで済ませられたら、どれほど楽かしらね・・・ふふっ!」
先ほどまでの元気はどこへやら。
ボス絡みの一件だと察し、震えだす安眠ちゃん。
フリー「・・・こいつらは、それを知らなかったが故に、ここを襲撃した。上の命令を無視してだ。」
ひまれいか「内部分裂というわけか?愚かだな。」
日常演舞「否定はしませんよ。しかしそうですね。敢えて言い訳をするなら、このNo.5。安眠を狂気に駆り立てたのは、他ならぬ貴方の力なのですよ。」
少女の目をはっきりと見つめ、日常演舞はそう答えた。
「私の異能が・・・どういうことなのだ・。・」
少女の中で、期待と恐怖がごちゃ混ぜになる。
真剣な眼差しは、嘘をついているようには見えない。
スカイれいか「それって・・・。」
隠れ家メンバーの誰もが、少女を訝しげに見つめる。
この隠れ家が襲われた原因。
いや、元凶?
何人かが、その発想に至る。
ふぁ「大丈夫よ。私がついてるわ。」
ふぁっきゅーれいかが、少女の側に寄り添う。
安眠「な、何を・・・?私が狂気・・・?・・・ふふふっ。」
身に覚えが無い様子の安眠ちゃん。
北上双葉が、その身体を支えるように並ぶ。
フリー「大盤振る舞いだな。だがそれで?結局のところU2部隊とは何だ?一番大事な部分を聞いてねぇ。」
「そ、そうなのだ・。・!お前たちは誰なのだ・。・!」
不安を断ち切るように、声を張る少女。
日常演舞「このNo.5、安眠が少々、口を滑らしていたようですが。」
安眠ちゃんを覗き見る日常演舞。
そして、彼は言い放った。
日常演舞「U2部隊、それは世界を再誕させることを目的とした秘密結社です。・・・いずれまた、会うことになるでしょう。」
そのまま、黒腔に入ろうとする日常演舞。
これで話は終わりだと、そう背中が語っていた。
キリト「待てッ!!・・・お前たちU2部隊が、隠れ家を二度と襲わないという保証は?俺の考えが正しければ、お前たちはまたここにやってくる。その時は、今みたいなお遊びじゃない。本気でだ。違うか?」
日常演舞は動きを止める。
僅かな殺気を滲ませながら、ただ一言。
日常演舞「そうですよ。」
振り向いてはっきりと、そう口にした。
場が戦慄する。
あれだけ友好的な雰囲気を漂わせておいて?
ゆうれいか「キリト君、どういうことなの〜?」
キリト「この男の話が本当ならな。どうやらU2部隊っていう集団の上に、ボスという人物がいるらしい。そいつはこの隠れ家のことを、今は捨て置けと言った。そういうことさ。」
フリー「・・・今は、か。」
Kent「つまり俺らが今日、この基地を襲撃しなかったとしても、結局は俺らU2部隊に潰される運命だったのさ!・・・言っていんだよなこれ?」
ふぁ「・・・・。」
北上双葉「悪趣味だと思うけどね~。」
日常演舞「言わば今回はリハーサルです。・・・次に会う時は、次元の違う戦いを披露出来ればと思っていますので。」
「・・・上等なのだ・。・」
U2部隊・・・。
いずれまた戦うというのなら。
力を磨いて待ち構えてやる。
仲間とともに立ち向かう。
それでいつか・・・私が誰なのか。
そのボスって奴から、直接聞き出してやるッ!
フリー「はっ。もうこれ以上言葉は不要だな。」
宣戦布告した相手と、いつまでも語り合うこともない。
語り合うとしたら、次なる戦いで十分だ。
北上双葉「じゃあまたね。フリーれいかさんも・・・またね。」
フリー「・・・ああ、またな。」
Kent「お嬢ちゃん!あんたの顔、覚えとくぜ!・・・そんじゃあな!」
うっ・・・。
もうあの真っ黒全裸とは会いたくない・・・。
キリト「勝負はまたお預けだな安眠。」
安眠「・・・ふふっ。私が殺すまで死んじゃ駄目だよキリト君!」
各自、思い思いの言葉を口にする。
次の再会に恋焦がれながら。
日常演舞「では、今宵はここまで。次の邂逅を楽しみにしていますよ。」
日常演舞は片手を振り上げる。
そして・・・。
日常演舞「
その言葉と同時に、身体から何かが抜ける感触。
あの男のテリトリーが、消え去ったということか?
ふぁ「・・・行ってしまったわね。」
いつしか、U2部隊の姿は消えていた。
まるで夢でも見ていたかのように。
フリー「・・・忙しくなるぞ。」
こうして、U2部隊との初戦争は幕を閉じた。
未だ多くの謎を残したまま・・・。
〜北上双葉視点〜
黒腔を通って、結社に帰ってきた私たち。
ここの空気は相変わらず落ち着く。
Kent「あー。しんどかったぜ。」
北上双葉「Kentさんが完封されたの初めて見たよ~。」
安眠「あの『リーダー』ってのも予想外だったね!あいつがいなければ、キリト君は今頃・・・ふふっふっふふふふっふふっっふっ!!」
安眠ちゃん、死にかけたのに元気だなー。
まあずっと暗いままでも困るけど。
Kent「演舞のオッサンよ。あのお嬢ちゃんは一体何なんだ?」
日常演舞「それはボスから聞いた方が早いでしょう。それよりも・・・。」
安眠「え?」
日常演舞「
わっ。
何度も経験してるとはいえ、心臓に悪いなぁ。
安眠「・・・ぅ・・・・ぐぅ。」
この人の異能は、防ごうと思っても防げない。
最初の開園で繋がってしまうのだから。
でも・・・あれ?
北上双葉「演舞さん。私たちには適応させなくていいんですか?」
Kent「・・・そうだぜ。一応俺らも加担した罪人だ。何もしないのか?演舞のオッサンよ?」
日常演舞「はい。実のところ、僕は最初から疑問に思っていたことがありました。貴方たちも、何か違和感を感じ取っていたはずです。」
・・・あの隠れ家で少し言ってたことだね。
北上双葉「安眠ちゃんの様子が、昨日から変だったこと?」
Kent「・・・れいか達が憎いって・・・今まで散々聞いてきたから、あんまし気にしてなかったけどよ。・・・やっぱ何かあったのか?」
そう。
安眠ちゃんは、実はあそこまで武闘派じゃない。
どちらかというと、裏方に徹する諜報員だった。
こんな無謀な戦争を仕掛けるタイプでは無かったよ。
日常演舞「No.5が様変わりした原因・・・早急な処置が必要です。」
北上双葉「安眠ちゃんは・・・どこかおかしいの?」
Kent「処置の為に眠らせたって訳か。そういや、さっき原因はあのお嬢ちゃんにあるって・・・オッサン言ってたよな?」
日常演舞「まあ、その辺りもボスから聞いた方が早いでしょう。行きますよ。」
・・・なんかうまくはぐらかされた気がする。
まぁ私も、ボスに聞きたいことがあるからいいかな。
回答次第では・・・私の生き方も変わってくるかもしれない。
日常演舞「ボス。U2部隊No.3の日常演舞、並びにNo.9北上双葉、No.11Kent、ただいま戻りました。」
ボスのいる校長室。
安眠ちゃんはさっき医務室に預けてきたから、ここにはいない。
Kent「失礼するぜ、ボス。」
北上双葉「失礼します~。」
ボス「よく帰ってきたぽよ(*´ω`*)事の顛末は全て、この田中みこから聞いてるぽよ(*´ω`*)」
あっ。
あの忍者もいる。
ここに顔を出すなんて、よっぽどの非常事態てことだね。
田中みこ「・・・。」
ボス「此度はご苦労だったぽよ(*´ω`*)さっそくで悪いんだけど、No.3の報告を聞こうかなぽよ(*´ω`*)」
演舞さんとボスの会話が始まる。
相変わらずボスの姿は・・・ガリ細おじさんって感じ。
あの彼とは、似ても似つかない。
日常演舞「ボスの仰る通りでした。まさか彼女があの基地にいたとはつゆ知らず。これは一体どういうことなのでしょう。」
ボス「・・・ぽよ(*´ω`*)・・・No.3はどう思うぽよ(*´ω`*)?」
日常演舞「あの部屋から出たことだけは事実でしょう。それ自体は我々の計画通りです。ですが、何らかの形で自律行動している。・・・闇に飲まれることもなく、あろうことかその闇を駆使してしまっている。」
Kent「えっ?あの闇属性って・・・だからか。合点がいったぜ。」
北上双葉「あの闇が・・・安眠ちゃんをおかしくした?」
日常演舞「非常に考えにくいのですが、何らかの偶然とイレギュラーが重なり合っているのかと。もしくは・・・我々U2部隊に裏切り者がいるかのどちらかです。」
ボス「裏切り者ぽよか・・・(*´ω`*)」
あのちっこい子・・・。
そういうことだったんだね。
うわっ、危ない!
そうと気付かないまま、殺しちゃうとこだったよ~!
ボス「誰の仕業かは知らないが、面倒なことをしてくれたぽよ(*´ω`*)」
日常演舞「ええ。このままでは、我々の計画が総崩れです。」
ボス「仕方ないぽよ(*´ω`*)・・・U2部隊のボスとして命じるぽよ(*´ω`*)転生計画の第一段階、これより本格的に始動するぽよ(*´ω`*)!」
日常演舞「おお・・・!」
Kent「・・・ついにか。ああ、待ち侘びたぜこの時を!!」
・・・いよいよ始まるんだ。
私たちU2部隊が、この異世界に召喚された最大の理由。
ボスによって召喚された、私たちの存在理由。
北上双葉「頑張っちゃいますよ~。」
日常演舞「僕たちがボスに召喚されて数か月・・・感極まる所存です。すぐに全U2部隊に召集をかけましょう!・・・No.0とNo.1はまだお戻りになられないのですか?」
ボス「No.0は既に任務を終えて戻ってきているぽよ(*´ω`*)・・・No.1の方は極秘任務の関係上、しばらくは戻ってこれないぽよ(*´ω`*)」
Kent「あ、あのNo.0までもか?!や、やべぇ、鳥肌が立ってくらぁ・・・!」
おー。
なんだか総力戦って感じだね。
しばらくは私も遠出かな。
ボス「あの隠れ家はとりあえず、田中みこに任せるぽよ(*´ω`*)何かあれば、いつも通り報告するぽよ(*´ω`*)」
田中みこ「・・・。(コクッ)」
あの忍者、凄い美人さんなのに勿体無いよ。
だって一言も喋らないんだもの。
まさにクールビューティーて感じ。
日常演舞「ああそれと、隠れ家といえば一つ気掛かりな事が。リーダーと呼ばれていた男の件です。」
ああ、やっぱりそこは指摘するよね。
演舞さんが進言しなければ、私がしようと思ってたよ。
日常演舞「彼は何者です?ボス・・・貴方と同じ名前を騙る男。しかも希少な魔眼の持ち主だ。」
Kent「金髪で、腰にサーベル帯刀してた貴族風の格好だったな。」
北上双葉「うん。あの人は自分のことをフリーれいかだって、はっきり言ったよ。あの基地にいた他のれいかも、彼をフリーれいかと呼んでた。」
ボス「私と同じ名前ぽよか・・・(*´ω`*)・・・興味はあるけれど、今のところは泳がせておくぽよ(*´ω`*)」
日常演舞「よ、よろしいのですか?」
ボス「別に支障は出ないだろうし、放っておいても大丈夫ぽよ(*´ω`*)v」
いいのそれで!?
私としてはツッコミたいとこなのに!
日常演舞「ではさっそく、準備に取り掛かります。・・・ご苦労でしたね二人とも。話は終わりです。次の任務に向けて休むといいでしょう。」
ボス「とりあえず、君たちの違反行為は不問とするぽよ(*´ω`*)これからの活躍、期待しているぽよ(*´ω`*)!」
北上双葉「りょーかいでーす。」
私たちには何の処罰もなしかぁ。
まあ計画も始動しちゃったし、なるようになれだね。
Kent「お疲れ様です!・・・今回の一件、ほんとすみませんでした!」
北上双葉「すみませんでしたー。」
ボス「ぽよ(*´ω`*)No.5にもよろしくぽよ(*´ω`*)v」
Kent「はあぁぁぁ。なんつーか、さっさと寝たい気分だわ。双葉もお疲れ。」
毎回思うけど、Kentさんも不遇だよね。
全身に黒いペイント塗っただけの、全裸姿なんだもん。
アレとか普通に見えちゃってるし・・・。
可哀想だから誰も指摘しないけど。
いったい、現実世界で何してきた人なんだろう?
北上双葉「うん。Kentさんもお疲れ〜。これからどうしよっか?」
Kent「俺は自分の部屋に戻るぜ。暗闇の中で瞑想でもしようかなって。」
裸で暗闇かー。
風邪ひかなきゃいいけど。
服とか具現化してあげようかなぁ。
北上双葉「私は例の監視かな。ちょうど順番が回ってくるしね。」
Kent「ああ・・・よく覚えてたなそれ。俺だったら間違いなくサボってるぜ。」
北上双葉「むっ。だめだよそんなの。前の人が交代できずに困っちゃうよ。」
Kent「はいはい。・・・そんじゃあな。」
北上双葉「またね〜。」
・・・。
さてと、もうひと頑張りといこうかな。
それが終わったら、安眠ちゃんの様子を見に行こうっと。
北上双葉「お待たせ~。No.8。」
No.8「おせぇよ。何してたんだNo.9。」
監禁室に到着した私。
一応、時間には間に合ったけど・・・。
No.8「頼むぜ。俺にとっちゃ、一秒一秒が大切なんだ。ほんの一秒が、世界を狂わすこともある。」
北上双葉「相変わらずの完璧主義者だね。」
No.8「おい・・・何だそれ・・・?・・・あんまし舐めてんじゃねぇぞ?俺をキレさせたら、誰だろうが容赦しねぇ。」
意味のない虚勢を張っちゃって。
こういうところは可愛いんだけどね。
北上双葉「そんなこと言って、ゲーム機の具現化、解いちゃってもいいんだよ〜?えーと、最近はバイオのRTAばっかりしてたっけ?」
No.8「あああ!!!よせよせよせッ!!!!」
懇願するかのように跪いてる。
こうなると、馴れ馴れしい態度に一変するんだよね。
No.8「俺にとって、あれが唯一の娯楽なんだッ!勘弁してくれ双葉っちぃぃぃいいいいっ!!!」
北上双葉「冗談だよ〜。そんなことしないから大丈夫だって。」
No.8「ぐすっ。すまねぇ・・・さっきは言い過ぎた。」
うんうん。
やっぱり素直が一番だよね。
北上双葉「それじゃあ見張り変わるね。あ、そうだ。頼まれてたビデオの具現化が終わったよ。部屋前のポストに入れといた〜。」
No.8「ああ、有難い!本当に恩にきるッ!大切に使わせてもらうぜッ!!」
北上双葉「・・・私自らが、手伝ってあげてもいいんだけど?」
No.8「よせよ。双葉っちは二次元だけど、実質三次元だろ?・・・現実の女性じゃ立たねぇんだよ俺は。」
うんう・・・ん?
からかっただけなのに、こっちにもダメージが。
・・・まあ素直だしいいかな。
No.8「それじゃ、見張りは任せたぜッ!」
あー。
凄い速さで出ていったね。
私のASMR、楽しんでくれたらいいけど。
北上双葉「さてと、うるさくてごめんねNo.4。」
No.4「・・・君たちはいつも、騒がしくて退屈しない。」
牢屋の中にいる男の子。
ボスからNo.4の称号を与えられた人。
だけど、今はこうして鎖に繋がれて、自由を奪われている。
私たちU2部隊が、U2部隊である彼を監視している。
北上双葉「No.8みたいなタイプは、中々いないよ〜。」
No.4「・・・『
北上双葉「あははっ。まあ悪い人じゃないよね。」
No.4「だけど私も・・・その輪に交わりたいと、時々感じてしまう。・・・一緒に他愛ない話をして、外の世界を歩きたいと望んでしまう。」
No.4の両目は塞がれていて、その表情はわからないけど。
北上双葉「無理だよ。あなたを解放したら、それこそ全てが終わっちゃう。・・・その代わりしばらくは、私が話し相手になるからさ。」
やっぱり、監禁されてると寂しいんだよね。
No.4「・・・ありがとう。私とまともに会話してくれるのは、君とNo.5、それとNo.7ぐらいだ。特に君との会話はやっぱりいい。このアニメ声がまた癖になる。」
んー。
声を褒められて、悪い気はしないね。
北上双葉「今日の任務はね~、それはもう奇想天外な出来事ばかりだったよ。監視がてらに、たっぷり聞かせてあげるね。」
No.4「それは楽しみです。・・・あれ?No.9さん、憑かれてない?」
北上双葉「え?」
憑かれてる?
北上双葉「私はなんともないよ?ボスだって、何も言ってこなかったし・・・。」
No.4「いや、間違いないよ。・・・憑依型の異能だね。動かないで。今それ、取ってあげる。」
すごい・・・全然気づかなかった。
けど、動かないでって・・・どうするんだろ。
身動きが取れないのに、私に触れることも出来ない。
一体どうするん―――――――
――――――――――――――――――――――――・・・・・。
~ひまれいか視点~
ひまれいか「・・・途切れた!?」
あのNo.4と呼ばれた男・・・!
私の思考透視を解除しやがった・・・!
ひまれいか「・・・駄目だ。視ることができん。完全に無力化されたようだッ。」
・・・いいだろう。
こちらも有益な情報を獲得できた。
解除されたというなら仕方なし。
次の一手をどうするか。
ひまれいか「いや、やることは決まっているな。」
転生計画、U2部隊、監禁室、少女の自律行動。
ここらへんは・・・まあ、後でもいい。
まず初めに、フリーれいかと名乗るボスの正体だ。
・・・私が視れるのは対象の思考のみ。
対象の視界から景色を視ることは出来ない。
人は会話するとき、相手の発する言葉を脳に浮かび上がらせる。
即ち、思考を盗撮するということは、相手との会話内容も傍受できるということ。
ボスと呼ばれているフリーれいかと、リーダーのフリーれいかはおそらく別人。
喋り方が何かこう・・・違う。
リーダーは『ぽよ』なんて言わない。
ひまれいか「・・・北上双葉は、ボスのことをガリ細おじさんだと比喩していたな。・・・これだけでは何とも・・・。」
つまり、ボスと呼ばれたフリーれいかの外見が知りたければ、北上双葉の主観を通して推理するしかないのだ。
ひまれいか「保留だな。リーダーとは同一人物ではないとしておこう。今は捨て置いても問題ない。気になるのは二つ目の問題点だ。」
何故あそこに田中みこがいたのか。
北上双葉は忍者としか明言していない。
しかしそれは、紛れもなく田中みこだった。
いや・・・本当にそいつが田中みこなのか、問題はそこじゃない。
田中みこはU2部隊の組員で、この隠れ家にスパイとして潜り込んでいる。
そう考えてみると、点と点が繋がるからだ。
田中みこは・・・隠れ家が襲撃された時、どこに向かっていた?
リーダーに言われた通り、入り口に向かったとしたら?
・・・入り口。
あのNo.3と呼ばれていた男・・・北上双葉は演舞さんと呼んでいたな。
その演舞さんが俺たちの前に現れた時だ。
はっきりと、入り口から歩いてきたと言ったんだ。
入り口には、前述の通り田中みこが向かっていた。
これは、どう見る・・・?
田中みこがスパイならば、演舞さんは楽々と隠れ家に侵入できる。
というか、会話の流れからして・・・黒とみるべきか?
ひまれいか「・・・ひひ。」
この仮説が正解ならば、かなりの危機的状況だ。
何しろ、全てが敵に筒抜けなのだから。
田中みこは、隠れ家におけるレジスタンスの初期メンバー。
その頃から、U2部隊に属していた・・・?
それとも途中から?
・・・いかんな。
常に最悪のパターンを想定していかなければ。
得た情報を・・・何処で誰と共有するか。
田中みこの他にも、敵のスパイがいるかもしれない。
ひまれいか「む。もうこんな時間なのか。」
・・・午前三時。
驚いた。
北上双葉の思考透視を、二時間以上も行っていたというのか。
どうりで眠気が・・・。
ひまれいか「ふあぁ・・・色々ありすぎた。」
あの少女の模擬戦を観劇して、柄にもなく機械兵と戦って・・・。
それ以上に・・・異能の使いすぎで消耗している。
ひまれいか「・・・とりあえず、本人に問い詰め・・・会いに・・・行・・・。」
・・・。
やがて部屋には静寂が訪れる。
聞こえてくるのは、ひまれいかの静かな寝息だけであった。
~少女視点~
私は宮殿二階のバルコニーにいた。
「こんな場所もあったなのね・。・」
ふらふらと宮殿を冒険していたら、偶然たどり着いた。
小さいバルコニーだが、街並みを一望できるという点は悪くない。
いい眺めだ。
「まるで、夢みたいなのだ・。・」
数時間前までは、ここで戦争が行われていた。
だというのに、その面影が全く無い。
出来の悪い『
キリト「眠れないのか。」
少女の背後にある壁・・・そこに寄りかかるように、キリトが立っていた。
相変わらず、気配を隠すのが上手い。
「ふぁっきゅーちゃんには、眠るようにって言われてたのだ・。・だけど、中々寝付けないなの・。・」
少女にはまだ残っていた。
僅かな闘志、冷めきらぬ興奮。
「あ、そういえば助けてもらった礼を言い損ねていたのだ・。・!私が安眠さんに突進したあの時のことなの・。・!どうもありがとうなのだ・。・」
キリト「殊勝なことだな。・・・何を考えてた?」
「・・・他愛ないことなのだ・。・」
そこで会話は途切れてしまう。
しばらくの間、お互い無言が続く。
キリト「・・・もう夜も深い。見張りは俺に任せろ。子供は寝る時間だ。」
ぶっきらぼうに言い放ちながら、バルコニーを出ていくキリト。
「わかったなの・。・キリトさんもおやすみなのだ・。・v」
キリト「ふっ。おやすみ。」
瞬間、キリトはその場から姿を消す。
それを見届けた少女は、再度景色を堪能する。
不思議な高揚感だ。
子供扱いされたのに、心は落ち着いている。
・・・U2部隊か。
私が誰なのか、それを知っている秘密結社。
やがて少女は、誰に聞こえることなく呟いた。
「私、決めたなの・。・」
眼下の街並みを見下ろしながら、少女は静かに決意するのだった・・・。
つづく。
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