4話 大賢者である私は乱入者と対峙する?
ギルドのロビー内は私を勧誘したい冒険者で溢れかえっている。
流石にこれ以上は増えないみたいだ。
さて、どう切り抜けたものか?
どれかのパーティーに入らないと此処から出してもらえない感じだ。
全員蹴散らしてもいいけど出禁になるのは避けたいし、ここの冒険者を全て敵に回すのもメンドイ。
あとセバっちゃんの言うとおり、どれかのパーティーに入れば他のパーティーからの妨害がありそうな気もするね。
正直に言えば、暫くはソロでいたい。
パーティーを組めば、当然ヒーラーとして振る舞わなければならない。
行動がそれはもう、いろいろと制限されてしまうだろう。
攻撃魔法なんてもっての外だよね。
やっぱし。
ヒドイ言い方をするなら、足手まとい達とパーティーを組むのは気が進まないのだ。
ただ、ヒーラーの(ということになっている)私がずっとソロでいるのも不自然な気もする。
ソロで活動しすぎると悪目立ちするだろう。
となれば仕方がない、ここは一つ適当に選ぶかなっと。
適当とはいえ、私のお気楽ライフがかかっているので条件はある。
① 好みのイケメンがいること
いないとやる気が全く出ない。
極めて重要だよねー。
② ダメージディーラーがアホじゃないこと
私が補助にしか回れない以上、敵の殲滅能力はダメージディーラー達にかかっている。
大威力魔法や大技にこだわるようなのはご遠慮願いたい。
③ バランスが取れていること
冒険者たるもの色々な依頼をこなせなければならないわよね。
まだまだ挙げればきりはないけどとりあえずこの3点に絞っていこうかなーなどと考えていると、新たな冒険者が入ってきたのが見えた。
「うわー!いっぱい居るね!」
女性の冒険者達だ。
「これ皆ヒーラーさん狙い?」
「そうみたいね」
女冒険者パーティーとは珍しい。
如何にもリーダーぽい騎士風なのが1人。
あと魔道士っぽいのが一人、最後にレンジャー又はスカウトっぽいのが一人。
このパーティーもヒーラーが居ないね。
この3人は目を引いた。
纏っているオーラが違うというか、装備も一級品というか、存在感が全く違うのだ。
冒険者(男)どもが乱入者の登場にざわついている。
というか彼女たちのオーラに飲まれてしまっている。
きっと彼女らは有名な実力者なのだろう。
ランクAかSなんだろうな、きっと。
私にとって、それはつまり関わってはいけない、という事。
<なんなの?トラブルばっかりじゃん!>
本当なら今頃は意気揚々と薬草取りに向かっている筈なのに!
リーダーだろう女騎士を先頭に3人がカウンターに近づいてくる。
「セバっちゃん。お久しぶり」
「これは、お珍しい。ご無沙汰しております」
二人が会話している隙に、この場からそーっと出口にむかって………
「お待ちなさいな。ヒーラーさん」
<チッ!バレたか!>
なにげに私はこっそり自分に魔法をかけていた。
中位認識阻害魔法『モヤっとさん2号』(前世の私が命名)
見えているのに意識できなくなる魔法だ。
中位で十分かと思ったけどレジストされたようだ。
彼女たちのような目立つ存在がいる場では効果が高い魔法なのだけどね。
なかなかやりおる。
仕方なく私は女騎士風冒険者と対峙する。
「私に何か御用ですか?」
「ヒーラーさんにしては面白い魔法を使うね」
まぁ、レジストされたんならバレるよね。
「はて、何のことでしょう?」
とぼけて見せる。
「まあ、いいけど。実は貴女に頼みがあってね」
厄介事の雰囲気がプンプン漂っている。
「Fランクの私にですか?」
「Fランクでもヒーラーでしょ?」
「私達の仲間を助けて欲しいのよ」
横から魔道士の女(年齢は私と変わらないだろうが、背か高くスラッとしている)が話に加わってくる。
<くっ! お前は好かん!>
「話だけでも聞いてくれないか?」
スカウトかレンジャーの女(胸が大きくグラマラス)も加わる。
後3年あれば私もそちら側だ。
<今に見ていろよ!>
騎士風の女は鎧でわからないけどスタイルがいいっぽい。
顔も極めて整っている。
総合判断〝敵である〟と私の中で結論が出た。
「話を聞いた後、断っていいのですか?」
と敢えて聞いてみる。
「うーん。それは困るね。というかヒーラーである貴女に断られるとは考えてもなかったし」
まあ、そうだろうね。普通は。
基本ヒーラー=聖職者だから。
でも残念、今の私は魔導系回復者なんだよね。
自分の得にならないことはしませんですことよ。
オホホホホ。
瞬間、何かの魔法が私に掛けられた。
んーこれは『鑑定』だな。
すかかず私も魔法を発動。
偽報魔法:『坊やだから騙されるのさ』
偽情報でカウンター。(この間 0.01秒)
私のステータスを盗み見しようとは100年早いわ!
その上で、魔法を掛けられたことに気づかないふりをする。
完璧な処理、流石は私だ。
女魔道士が女騎士に耳打ちする。
「聖職者で間違いないよ」
小声で話しているつもりだろうけど、私の地獄耳を舐めるなよ?
「聞こえていますよ。いつの間にか私を鑑定したんですか?なかなかに失礼な方たちね。であれば私もそろそろ失礼してもいいかしら?」
許可無く鑑定するというのは明確にマナー違反であり、こちらをFをランクだからと舐めている証拠である。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃ!」
顔が青くなる魔道士。
ん?そこまでのこと?
「ごめん!仲間が無礼を。許してくれない?」
「まぁ、いいでしょう」
周囲がざわついている。何なの?
聞き耳を立ててみれば、
「すげーな。あのちびっ子!」
「あのお方達と対等にやりあってるぞ」
とかなんとか聞こえてくる。
Fランクとはいえ、この稼業は舐められたら負けじゃないの?
とはいえ、引っかかるワードがあった。
あのお方達?
ランクの差ともなにか違うニュアンスを感じ取った。
「すこし、セバさんとお話してもいいですか?」
「ええ、わかったわ」
3人は数歩引いた。
私はセバっちゃんに向き直る。
セバっちゃんは相変わらず、無表情でピシッと立っていた。
「えー、セバっちゃん。あの3人は何者?」
「おや、ご存知ありませんでしたか?Aランク冒険者『青薔薇の戦乙女』の方々です」
そう呼ばれているんじゃなくて、自分たちでつけたんだよね?それ。
微妙な表情を浮かべているだろう私を見ても無表情を崩さないセバっちゃんが続ける。
「特にリーダーの聖騎士リリエナスタ様はここアラバスタル王国の第一王女様です。私はこれまのでやり取りをヒヤヒヤしながら見ておりました。失礼の無い様にお願いしますよ」
「は?」
<そういうことはそれとなく知らせろよ!セバ!>
相変わらず無表情でサラッと爆弾発言をかましてくる。
あと、いつもの無表情じゃないか!
「必死にテレパシーを送っていたのですが届かなかったようですな」
無表情に曰うセバっちゃん。
<こちらの思考は読めるのか!>
恐るべしセバ!
「セバっちゃん、ありがと。まあなるようになるでしょ」
「ご武運を」
判ってて言ってるのそれ?
はぁ、目立たず、ひっそり、がっぽりをモットーに生きていこうと思ったんだけどな。
トラブルの方からやってくるなら、ねじ伏せてやるしかないのかしらん?
私は面倒臭さげに改めて3人に向き直るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます