27話 私の妹がスゴイ
夏季休暇、学園の1ヶ月半にも及ぶ長期休暇まであと1ヶ月となった頃。
私の早朝授業は一段落し、無事最後の授業を終わった。
ここまで理解できれば中等位の授業についてこられないなんてことも無いと思う。
とはいえ、質問はこれからも受けるんでしょうけど。
アイリ達のアイドル活動は……
実は難航中。
楽器の演奏技術は日々上達している。
しかし肝心のアイドルソングが完成しないのだ。
私は余り口出ししないようにしている。
私の記憶に残ったかつての世界の楽曲をパクってしまうのは簡単だけど、ここは敢えて、この世界ならではのアイドルソングを生み出して欲しい。
なんといってもこの世界の人々の心を掴むのだからね。
アイリは学園生活に馴染み、今日もシャルや仲間達と練習に励んでいる。
だからなのか最近では、アイリの中でお友達の比重が上がってきている。
お姉ちゃんにも秘密の話もしているようだ。
判っている、判ってはいるのよ。
アイリの精神も成長し、独立心が芽生えていることも。
そうなるように心がけてきたのだから。
最近では私が起こさなくても自分で起きるようになったし、身支度も自分でやるようになった。
従ってお姉ちゃんの楽しみは少なくなってしまった。
姉妹の心温まる会話もぐっと減った気がする。
今日だって、週末に私が兄様に呼ばれている事を伝えると
「私は大丈夫だから。お兄様によろしくね」
と言ってケロッとしている。
アイリ冷たいわ。
お姉ちゃん悲しい。
でもカワイイから許す!
アイリの成長は嬉しいけど、お姉ちゃん寂しいわ。
寂しさのあまりコッソリ アイリの鑑定を久しぶりにやってみた。
ー慈愛の魂ー
万人を慈しむ慈愛の持ち主。
慈愛の精神で万人の心を掴むカリスマを待つ。
聖人
スキル〝心の癒やし〟〝昂揚の励まし〟〝恋心のときめき〟〝幸福の実感〟〝心躍る童心〟〝悲哀の涙〟〝震える感動〟を持つ。
おお!
慈愛の魂に関連したスキルが6つも増えている!
ースキル・心の癒し LV2ー
視線、仕草、声で効果範囲内にいる者の心を癒やす。
極まれば効果範囲と、効果が高くなる。
<あ、LVが2になったのね。このLVはMAXになってほしいな>
−昂揚の励まし LV3ー
応援することで対象者の心を高揚させ、やる気を出させる。
歌に乗せることで対象を複数にすることも可能。
極まれば効果範囲と、効果が高くなる。
<なるほど、最近アイリが皆のモチベーションを上げていると思ったけどこのスキルの効果ね。しかも LV3!! アイリのモチベーションはお姉ちゃんが上げてあげるね>
−恋心のときめき−
恋歌で聴衆の恋心と、ときめきを増幅させる。
ただし、スキルは自身の恋心で成長する。
つまり自身の恋心が少ないと効果は薄い。
<むむ? アイリは恋愛小説好きだから発生したスキルかしら?
まだ男の子との接点は無いはず。ひょっとして好きな人がいる?
それとも恋に恋してるだけ?今はLV1の様だけど注意が必要だわ!>
ー幸福の実感ー
声を通じて対象者に幸福感を与える事が出来る。
歌に乗せることで対象を複数にすることも可能。
極まれば効果範囲と、効果が高くなる。
ただし、スキル使用者が幸福感を感じていないと効果を発揮しない。
<歌のバリエーションを広げられるわね。アイリが常に幸福感を感じていられるようにお姉ちゃんが頑張らないと>
ー心躍る童心ー
動作、声で効果範囲内にいる者の心をウキウキさせる。
極まれば効果範囲と、効果が高くなる。
<アイドルソング向きスキルだわ。楽しい楽曲の時は効果を発揮してくれそう>
ー悲哀の涙ー
声を通じて対象者に悲しみを与える事が出来る。
歌に乗せることで対象を複数にすることも可能。
極まれば効果範囲と、効果が高くなる。
ただし、スキル使用者が悲哀を知っていないと効果を発揮しない。
<うーん、これは死にスキルね。だって、条件であるアイリが悲しむ事なんて、お姉ちゃんの目が黒いうちは許すことないもの。あ、ひょっとしたら悲しい物語の小説とかでも経験入るのかしら?>
ー震える感動ー
会話や行動でそれを聞く者、見る者に感動を与える事が出来る。
極まると感動が大きくなる。
ただし、このスキルのみ他の5つのスキルのLVに応じて上がる。
<他のスキルLVが上がらないとこのスキルのLVは上がらないのね。ということは悲哀の涙も上がらないとダメなのかしら?うーん定期的に鑑定して様子を見てみようかしら>
アイリはやっぱスゴイわ!!
短期間にこれだけスキルを開花させているなんて。
お姉ちゃんにだってとても無理。
コレだけのスキルを駆使すれば、アイドルとして皆の心を鷲掴みよ!
あとは、王家に危険視されないように注意しないと。
シャルが後ろ盾になってくれればいいけど。
長いものには巻かれろじゃないけど、この国は別に悪政で民を苦しめている訳じゃないし。
貧富の差はあるけど、それは最初の人生で過ごした日本でもあった。
だから、国家側に属せばアイリに危険は無いはず。
でも、アイリに身に危険が迫っった時には絶対に助けるわ。
例えこの身が犠牲になるとしても。
まあ仮定の話は置いといて、ともかくアイリはスゴイ!
そしてその可愛さにも磨きがかかってきた。
ベッタリ甘えたり、大人びてみたり、もうギャップを駆使した可愛さにお姉ちゃんハラハラメロメロよ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
週末になった。
今日は兄様に呼ばれているので王都のユニスリー邸に行かなければならない。
兄様は妹分の補充目的だけで呼ぶことはない。
ということは、何が用事があるということね。
服装の注意を受けてないからお客様はいないのかな。
メイド服でいいかしら?
「お姉ちゃんは行くけど、アイリは行かなくてもいいのね」
「うん。寮なら食事に困らないし。今日は喉を休めたくて。今日は読書して過ごすね」
そうである、私特製ののど飴があるが、それはあくまでも補助。
力を使ったりするのも避けたい。
時間を使って休ませることはとても重要なのだ。
「この前借りた小説は返しておくわね」
「お姉様ありがとう。あとお兄様にはお借りした本がまだいっぱい有るから今日は大丈夫と伝えてほしいな」
「伝えておくね。じゃ、なるべく早めに戻るわ」
「行ってらっしゃい。でも急がなくてもいいよ。たまにはお姉ちゃんにも自分の時間を過ごして欲しい」
アイリ、なんて可愛くていい子なの?
思わず抱きしめる。
「いつもながら、お姉様苦しいよ」
「ごめんなさい。名残惜しいけど行くね」
「お兄様にもよろしくね」
アイリとの心温まるコミュニケーションで妹分を補充した私は、王都のユニスリー邸に向かうのだった。
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