9話 私は聖女について考える。
現在アイリは私の部屋でお昼寝中である。
私はアイリの可愛い寝顔を見ながら
これからの事を思案する。
私の可愛い妹アイリが、
前世の私のような聖女になりたいと言った。
<お姉ちゃん、アイリの大志を絶対に叶えるわ!>
さて、そうと決まれば色々と準備があるけど
まずは、聖女についておさらいだ。
聖女とは神の寵愛を受けた女性のことだ。
しかし、これがすごく曖昧な定義なのである。
全ての人間はいろいろな才能を持っている。
それらの才能は全て神が授けたものとされている。
つまり広義では全ての女性に当てはまるのだ。
その為、特に秀でた才能を持つ女性を聖女候補とし、
その中でも国が認定した女性と聖女とする
いうことになっている。
(それでもその判断基準は曖昧である)
だから聖女は特定の能力を持つ者というような定義はないし、
人数にも制限が無い。
前世での私が聖女になった時も、
先輩の聖女が何人か居たし、それぞれの能力もバラバラだった。
ちなみに私の教育担当になった先輩は、
それこそ教育の才能がずば抜けて高い方で
魔法的才能というよりは、教育に関するスキルが高い方だった。
そして人格者として聖女達を束ねる大聖女でもあった。
<なつかしいわぁ、いろいろ困らせて迷惑もかけたっけ。ふふふ。>
はっ! おっといけない!
今は懐かしんでいる場合ではない。
重要なアイリ聖女育成計画の一人会議中である。
この会議でその後の運命が変わるといっても過言ではないだろう。
ということで、聖女のおさらいに戻る。
聖女の数は以外に多く、
各国で聖女をそれぞれ認定している。
私も他国の聖女と面会することもあったし、
認定を受けた後、国には仕えず野に下る聖女もいた。
私は、願いを叶える聖女として人々の願いを叶えた。
ただし、私が叶えたいと思ったものに限るけどね。
そもそも聖女の存在意義は
人々に幸福をもたらす存在としてだし
国が私達聖女に求めたのも国と民の安寧であった。
他社を貶めるとか、依頼者に不幸が降りかかるような
行為は出来ない。
ただ、前にも言ったけど私の能力も万能ではない。
お金や恋愛に関することは力が発揮できない。
しかし、王宮仕えになってから
そういった理由で私に面会する人は流石にいない。
王宮に来てまで個人的な願いを言う人はおらず、
それなりに立場のあるものが、代表者として面会を申し込む。
だから叶え欲しい願いの多くが作物に関することだ。
豊穣とかは即効性がないのでわかりにくいが
雨乞いに関しては、早ければ数時間、遅くとも数日で効果を発揮する。
わかりやすい効果なので
私は、雨降らしの聖女様と呼ばれていて、
それこそ国内各地を飛び回ったものだ。
ちなみに王宮に仕える聖女の待遇は良い。
貴族並みの生活が約束されるのだ。
それが国や民衆に奉仕する対価だった。
民衆の不満を解決する道具なのかもしれないが
人々の笑顔の為に私は頑張れた。
堕落しなかったのは、
私の教育係の大聖女様が人格者であらしたからだ。
私が彼女の後を継ぎ大聖女になってからも
彼女の教えは守ったし、後輩聖女達を
その様に導びけたと思っている。
さて、前世の私は晩年に実にいい仕事をした。
聖女を効率よく確保、育成するために
国の許可を得て、聖女養成学校、
通称、聖女学園を作ったのだ。
<偉いぞ私。前世でもこんな事あろうかと聖女学園を作っていたのだ。流石私である。>
国も乗り気ですぐに実行してくれた。
私は初代校長ということになるが
できて1年足らずで他界したので、
残念ながら学校卒の聖女第1号の誕生に立ち会うことは出来なかった。
聖女学園に入学したとしても
実際に聖女になれるのはごく一握りではある。
でも卒業したというだけで
一般の学校以上の評価を受けれるお嬢様学校という
側面がある
その聖女学園の入学に身分は必要ない。
求められるのは秀でた才能を示すことである。
今花開かなくても将来大成しそうなものでも良い。
アイリは雨降らしの聖女のような立派な聖女になりたいと言った。
照れるわお姉ちゃん。
アイリはどういう才能で聖女になれるだろうか?
これは重要な問題だ。
正直、才能の有無は貴族の娘であるアイリには
入学に影響しないだろう。
崇高な理想を掲げて設立された聖女学園ではあるが
貴族の箔付けの為に入るケースが実に多い。
実際の運営に関し、貴族の財力は必要だろうし
そのへんの堕落はまあ、あるだろう。
その堕落を私達も利用させて貰うかも知れない。
父様も母様もアイリが聖女学園に行きたいといえば
あらゆる手をつかって入学させるだろう。
しかし、入学後に聖女に認定されるためには秀でた才能が必要だ。
それにはアイリの得意分野を最大限に引き伸ばすのが一番早い。
ちなみに 聖女学園も騎士養成学校と同じく
中高一貫だけど、やはり倍率が高い。
だから全ての貴族家が入れる訳ではなく、
入学できなかった貴族家の子女は一般の中等位の学園に入る。
聖女学園に入れなかった貴族の子女は
落ちこぼれと見られる風潮もあるようだ。
(財力の無さと思うけど)
前世の私にそういった意図はなかったけど
いつの世も差別は無くならない。悲しいね。
気を取り直し、
私は力を使いアイリを視ることにする。
いままで人を鑑定するのは敢えてしないできた。
しかしアイリに秀でた才能があるなら
これからの方針が決めやすい。
<お姉ちゃんアイリのためならどんなことでもしてあげるわ。ふふふ。>
もし、透視の力をつかったらアイリの全てが見れるのかしら?
まあ毎日お風呂で見てるからそんな下衆なことは
しませんよ?今はね。
鑑定眼を得た私はアイリを見る。
アイリの情報がアイリの頭上に浮かんでいる。
私はアイリのステータスを確認していく。
およ? アイリの特性に欄に
〝無垢な魂〟と書いてある。
なんだろうと思い、詳しく見ようとしたら、
文字が光輝き、変化した。
無垢な魂だった項目が〝慈愛の魂〟に変わっている。
おお!?これは!!
この聖女にふさわしいっぽい項目を詳しく確認。
ー慈愛の魂ー
万人を慈しむ慈愛の魂の持ち主。
慈愛の精神で万人の心を掴むカリスマを持つ。
聖人、歌姫(アイドル)、詩人、等の
聖職者、芸術家、文化人に向く。
所持スキル〝心の癒やし〟を持つ。
おお! イイじゃない!
次にスキルについて確認。
ースキル・心の癒やしー
視線、仕草、声で効果範囲内にいる者の心を癒やす。
極まれば効果範囲と、効果が高くなる。
これだ! アイリをまず学園のアイドルに!
そして国民のアイドルにするのだ!
アイドルとして聖女を目指せばよいのだ。
ただし、悪用されないよう気をつける必要はある。
王家にとってマイナスと判断されると
粛清の対象になってしまう。
手っ取り早いのは、王家の一員になる事。
たしか同じ年の王子がいるはず。
王子は騎士養成学校に行くだろう。
これはチャンスか!
何故ならば、この2つの学園は同じ敷地の隣同士にある。
用地の問題や貴族家の権力絡みでそうなったからだ。
学園設立当時はその事に眼をつぶり
学園設立を優先したという思いがあるのだが
今生では却ってそれが好都合だ。
<ナイスよ! 過去の貴族達>
なんだろう全てがお膳立てされている気がする。
まあ青写真は出来た。
後はアイリがどこまで本気でいるかだよね。
私は無理強いする気はない。
アイリが生きたいように生きれる為の
サポートを500%の力でするだけだ。
1000%としないところが私の謙虚な所。
そろそろアイリが起きる頃、
私はアイリが起きた時、喉が乾いていてもいいように
冷たいソフトドリンクを用意しに厨房へ向かう。
今日はアイリの為にジュースに最適な果物をいろいろ用意てもらっている。
それらを使って果汁100%のミックスジュースを作ろう。
足早に厨房に向かいつつ
私は自身の将来についても計画を修正する必要があることに、楽しさを覚えるのであった。
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