3話 私とアイリの朝
私の可愛い妹のアイリスこと、
アイリは今日もとても可愛い。
アイリも3歳になり、私と会話もできるようになった。
それがまた可愛い。
私は起床するとすぐに着替えて、身だしなみを整える。
メイド達に手伝って貰うことはない。
理由は簡単。
手伝って貰うと時間がかかるから。
アイリに会いに行くのが遅くなってしまう。
アイリが起きた時、私が側にいないと、アイリは泣いてしまう。
私の可愛いアイリにそんな思いをさせるなんて、
神が許しても私が許さない。
私にとっても朝食前のアイリとのひと時は
至福の時間でもあるのだ。
アイリの部屋の入り口にはメイドのヘレンが
既に待機している。
「ヘレンお早よう。」
私も既に7歳。
舌足らずなんてことは既に無い。
私は小声でヘレン挨拶をした。
挨拶は人間関係を良好にする基本。
小声で挨拶したのは、
アイリを起こしてしまったら可哀想だから。
アイリには充分な睡眠が取れるよう
自然に目覚めて欲しい。
「お早う御座います。リリー様。」
やはり小声で返すヘレン。
「今日もありがとうね。アイリをお願いね。」
私はヘレンを労う。
「リリー様!」
声のトーンが上がるヘレンに
シーのジェスチャーをして、小声にさせる。
ヘレンは口を手で塞ぎ、小声でに戻した。
「勿体ないお言葉です。誠心誠意努めさせて頂きます。」
ヘレンはアイリ付きメイドになった。
だから私はヘレンを大事にする。
残念ながら、私は一日中ずっとアイリと一緒にいることが出来ない。
アイリが日々、最高の生活を送る為には
彼女の協力が必要不可欠なのだ。
ちなみに今は私付きのメイドはいない。
5歳の時、私が強く断ったからである。
私にもある思惑があるのだけど
それは後日語ることとする。
「アイリが起きたら呼ぶわ。」
とヘレンに伝え部屋に入る。
アイリはまだ眠っている様だ。
アイリのベッドの横の椅子を動かし。
腰を掛ける。
アイリの寝顔は今日も可愛い。
抱きしめたくなるのを我慢。
しばらくアイリの寝顔を楽しんでいたが
そろそろヤツが来る頃だな、と思い出す。
案の定、音も無く扉が開き、
兄様が入ってきた。
兄様もわかっていて、
私と目で挨拶を交わす。無言だ。
ベッドの元までくると
寝顔をうっとりと優しい目で眺め出した。キモい。
やがて満足した兄様は部屋を出て行く。
私は兄様を見送るために後に続く、
部屋で出て、扉が閉まるなり、
兄様は私を抱きしめた。
「見送りありがとう。嬉しいな。」
小声で囁かれたが、正直げんなりだ。
私は好きでこんなことを許している訳ではない。
全ては、アイリにこのシスコンの害が及ばない様にする為。
私はアイリが生まれたあの日、守ると誓った。
だから私が防波堤になるのだ。
「リリーは今日も可愛いな。ずっとこうしていたいよ。」
私を抱きしめている兄様は私の表情は見えていないだろう。ヘレンにも見えていないと思う。
「兄様。苦しいわ」
「済まない。でも来年から騎士養成学校に強制入校させられてしまうからね。今のうちに妹分を一杯補給しておきたいんだ。」
そう言って惜しむ様に私を解放する。
妹分・・・・いつもの事だが
このシスコンからアイリの妹分は吸収させまいと
改めて誓うのだった。
アイリの妹分は私のものだから。
私は兄様が騎士学校に早く行ってくれないかと思っている。
そうしたら我が家にも平和がくるだろう。
「兄様なら立派な騎士になれます。」
適当な返事をし、兄を送り出す。
「ふう、冷たい瞳のリリーもイイ!」
と小声で呟いて兄様は歩きだす。マゾか!
背後ではヘレンが感動している様だ。
「美しい兄妹愛です。」
この子もなんかズレているなと思う。
実は、私は力を使って兄様のシスコンが無くならないか試したことがある。
結果は先ほどの通り、全く効果を発揮していない。
私は力を使って神に問うた。
夢の中で神は答えてくれた。
神の答えはこうだ。
「リリエナスタよ、汝の問いに答えよう。
ダンベルパワーっぷ!、いや ダンベルハワーのシスコンを消すことはできない。
彼のシスコンを消すことは、
彼の魂を否定することである。
故にその行為に力を貸すことは出来ない。
リリエナスタよ受け入れなさい。
汝への試練でもある。」
あのシスコンは魂レベルか!
兄様=シスコン、シスコン=兄様だったのだ。
兄様はシスコンを体現するために生をうけたのだ。
全くもって迷惑この上ない。
つまり、兄様は私の邪魔をする存在。
ライバルなのだ。
アイリの部屋に戻るとアイリは頻繁に寝返りしたり
手足を動かしているもののまだ眠っている。
じきに起きるだろう。
間に合って良かった。
私は急ぎ靴を脱いでベッドに上がり、
アイリの側に座る。
しばし眺める。幸せだ。
やがて、アイリは目を覚ました。
半身を起こし、背伸びをしながら欠伸をする。
目を擦りながら周囲を確認。
私と目が合う。
「おねーちゃま!」
おねーちゃま。おねーちゃま。おねーちゃま。
頭の中でリフレインする。
舌足らずのアイリが可愛すぎて思わず抱きしめてしまう。
人生最高の瞬間だ。(本日の中で)
私も妹分を補充しよう。
抱きしめながら、挨拶をする。
「お早う、アイリ。いい夢は見れた?」
「おはよ。うん。
あのね、おにーちゃまとおねーちゃまといっしょだった。」
「よかったわね。」
私は満面の笑みを浮かべてアイリの頭を撫でながらも、
<ちっ!
と心の中で毒づく。
私は惜しみながらアイリを離すとアイリを褒める。
「アイリは今日も可愛いわ。」
「おねーちゃまもかわいーよ。」
と褒め合う。なんて素晴らしい妹なの?
全世界の妹を集めて、妹コンテストを開いたら
きっとアイリはクイーンになれるだろう。
だろうでは無い。なるという確信がある。
いや、アイリをクイーンに私がしてみせる。
アイリ=世界一の妹、だ。(うっとり)
また欠伸をするアイリ。
「まだ眠いのね。まだ寝ていてもいいのよ?」
「んーん。おきる。おきがえ てちゅだって。」
「ええ、もちろんよ。お姉ちゃんアイリのお着替え
手伝うの大好きよ。一緒に可愛いお洋服選びましょう?」
「うん!」
私たちは手を繋いで、隣の部屋に向かう。
寝室から直接出入りできる隣の部屋は、
1部屋まるまるウォークインクローゼット。
私も、アイリも両親から沢山の衣服やアクセサリを
贈られている。
私たち姉妹は今日も仲良くアイリの衣装選びをするのだった。
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