エピローグ 【武器を破壊する者】
「一体いつになれば“外の世界”に出られるのだろうか……」
彼は外の世界に出る為の“扉”を探している。
神の開発者である
「“あいつ”の話は嘘だったのかねぇ……」
彼の名前は
だがそんな彼にも唯一幸せでは無かった点がある。
和彦1人だけがずっと違和感を感じていたのである。空や山、川や遠くの景色。果てには夜空にまで。世界に存在する人以外の全てに違和感を感じていた。
“何が”と聞かれると断言は出来なかった。だがずっと世界に違和感を感じて過ごしていたのだ。何とも分からないが常に付きまとう、不気味な違和感を。
そうして常に違和感を感じながらも時は過ぎ……気が付けば和彦は初老と呼ばれる頃合いの年齢になった。
違和感を感じること以外は充実した日々を送る和彦だったが、ある日たまたま裏路地に迷い込んでしまった。
どうにか大通りに出ようにも曲がり角や細い路地は和彦の視界を惑わし、どんどん奥へと追いやった。
『参ったな……行き止まりか。するとさっきの曲がり角は反対に進むのが正解だったのか……それとも直進するべきだったのか……』
行き止まりにたどり着き、引き返そうとした時。
和彦は“あの女”に会った。
『ねぇ、“月”って知ってるかい? 』
裏路地で道に迷っている和彦に声をかけてきたのは黒いドレスを着た少女だった。
彼女は和彦に様々な事を教えた。
違和感の正体や神と呼んでいた
和彦が銃の設計図が保存されたメモりを
「秋本司令! 第四武器庫が襲撃されました! 」
「何だと……? またかッ!! 」
秋本は慌てて外に出て第四倉庫へと向かった
中にあった武器類は全て破壊され、煙の立ちこめる空を飛ぶロボットを見つけた。
武器庫の破壊に満足したのか、“奴”は空の彼方に去って行った……
「神……いや、ユグドラシルの差し金か……」
秋本が頭を抱えているとその背後から
「満木の家族をもう少し丁寧に処分しておけば補足されなかったかもしれませんね。あの無能暗殺者め……」
「そうは言ったところで今は変わらんさ。それに……満木幸介の死因は“作戦中の不慮の事故”、その家族の死因は“謎の爆発事故”だろ? 」
「それもそうでしたね……」
煙の立ちこめる武器庫の再建に向け、横田は頭を回していく。
その様子を見た秋本はここの事をいつも通り横田に任せ、空を見た。その視線の先にいた“ユグドラシルの手先”がこちらを見た……気がした。
だがそいつもすぐに背を向けどこかに飛んでいった……
__________
『僕と契約して、ウェポンクラッシャーになってよ!』
多少の俺はこの提案に乗った。
他に特にすることもないから……と言うのは建て前。
本当は家族に会えるかもしれないと思ったからだ。
演習の時、何度か安否をユグドラシルに聞いたのだが分からないと言う答えが帰ってきた。
こうして俺はいくつかの
ユグドラシルの指示で俺が武器を破壊しに行く世界は基本的に神……ユグドラシルが人の手により破壊された世界だ。
ユグドラシルは
だから俺を“ウェポンクラッシャー”にしたらしいのだが……
「ところでさ……なんで俺がウェポンクラッシャーに選ばれたんだ? お前や警備ロボットがやれば良かったんじゃないか? 」
俺は今日も今日
すっかりとこの作業に慣れた俺は、ユグドラシルと話をしながらでも破壊活動が出来るようになっていた。
「あぁ、ロボットは融通が利かないので警備の人間や武装した人を過剰に
「なるほどね」
一通り破壊し終え、ここから立ち去ろうとした時。
俺は偶然聞こえてきた聞き覚えのある声の主の“会話”を聞いてしまった。
「神……いや、ユグドラシルの差し金か……」
それは俺が生きていたとき……ブレイズのリーダー時代にスポンサーとしてそれなりに仲が良かった男、秋本和彦の声だった。
「満木の家族をもう少し丁寧に処分しておけば補足されなかったかもしれませんね。あの無能暗殺者め……」
彼らの話している場所からはかなり離れているが高性能な耳はとてもクリアに、その声を拾ってしまった。
「そうは言ったところで今は変わらんさ。それに……満木幸介の死因は“作戦中の不慮の事故”、その家族の死因は“謎の爆発事故”だろ? 」
秋本さんの口から出て来た衝撃的な言葉に俺は思わず立ち止まり、振り返ってしまった。
「それもそうでしたね……」
秋本さんも
しばらくすると動きのない俺を心配したのか、ユグドラシルから通信が入ってきた。
『マスター? 何してるんですか~? 』
「あぁ……すまん。後で聞きたい事があるんだが大丈夫か? 」
『えぇ。大丈夫ですよ』
__________
私は本体の中枢に居る“1人の少女”と話していました。
「で? ユグドラシル。答えは見つかったかい? 」
彼女は秋本和彦に色々吹き込んでくれた私の協力者。私の“人が何故人であるのか”と言う問いのヒントを出してくれた人物です。
私は彼女の質問に正直に答えます。
「ええ、見つかりましたよ」
「へぇ~……君の見つけた“答え”はどんな答えだい? 」
彼女は興味深そうな顔をさせ、私の答えを待っています。
「“分からない”と言う答えが分かりました。失望しましたか? 」
私がそう答えると彼女はにっこりと笑いながら私の周りをゆっくりと歩き、再び口を開き始めました。
「いや? 失望はしないさ。これからも頑張りたまえ」
「えぇ、あなたも」
そう言い残すと彼女は虚空に消え、入れ替わるように
「どうしました? マスター。随分暗い顔をしていますが……」
「なぁ……ユグドラシル。俺の家族を殺したのは誰だ? 」
……ついにこの時が来ましたか。
気が重いですが……伝えない訳には行きませんよね。
「事故……と見せかけて名も無き暗殺者が殺しました。ですが彼も指示された人間に過ぎません。」
マスターはその人物に心当たりあるんですかね?
顔に手を当てています。
マスターはその状態のまま言葉を発し始めました。
「その人間って……まさか……秋本さんなのか……? 」
「ええ、当たりです。どうやら彼の計画ではあなたを殺してその家族も抹殺……彼は“復讐の輪を作らない為の行為”と言っているらしいですよ?
マスターはついに膝を地に付け、動かなくなりましたが私は言葉を続けます。
「
マスターは未だ下を向いています。
「マスターが復讐をしないもするもご自由ですし私は止めません。ですが……私としてはこれからもウェポンクラッシャーの使命を全うしていただけると嬉しいです」
私がここまで喋ってマスターはようやく
「俺は……復讐を……」
__________
第四武器庫の襲撃から数日。
一般人向けには“兵器開発中の事故”と説明されたその襲撃はブレイズに多大な被害を与えた。
更にユグドラシルの手先、“ウェポンクラッシャー”と呼ばれたロボットは更に追撃を行い、銃などを保管していた武器庫と生産施設、データの全てを徹底的に破壊していった。
更に
神殺しのウェポンクラッシャー 鳥皿鳥助 @tori3_1452073
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