第3話 【反逆のCompensation】
「皆のおかげで神に打ち勝つことが出来た! ありがとう。だが……その代償に我々のリーダーが……幸介君が……」
コップを持つ手を震わせ、幸介の死を悲しんでいる人物は
神へのレジスタンス組織、ブレイズをリーダーの
秋本は目を閉じ、唇を噛みしめている。
そんな彼にブレイズのサブリーダー、
「秋本さん、リーダーもきっと作戦の成功を祝ってくれています。なので今日は……今だけは悲しむより笑いましょう? 」
「そうか……そうだな。皆、すまなかった。今日は楽しもう!! 」
秋本の声に続きブレイズの隊員が口々に声を上げ、酒を飲んだり食べ物を食べ始めた。
幸介の死を思いだし、泣かない様に。
音頭を取っていた時は泣きそうになっていた秋本。
彼はケロッとした顔で会場の端の方へスタスタと歩いていく。
やがて彼は一人の男……
「よくやった、
「はっ! 俺は破壊出来ればそれで良いさ。例え……相手が誰であろうとなぁ……ギャハハ! 」
一之は狂犬の様な笑みを浮かべて言う。
“例え相手が誰であろうと”……つまり彼は“秋本やブレイズも破壊するかもしれない”と言っているのだ。
しばらくすると一之の顔から狂犬の様な笑みは消え、好青年的な笑みになった。
「まぁ、今日は楽しもうや。おーい、お前等ぁ! 俺も混ぜろぉ!! 」
「ゲッ!? 隊長が来たぞ! 逃げろ! 」
「マジかよ! 酒をねじ込まれたくなかったら逃げろ!! 」
「“ゲッ!?”とは何だぁ? 俺と飲むのがそんなに楽しくないのかぁ? ギャハハハハ! 楽しくなるまで飲ましてやらぁ!! 」
「「「ギャァァア!! 逃げろぉ!!!」」」
秋本は一之と部下達がわちゃわちゃしているのを遠目から眺めている。
そんな彼にまた別の人物、利秋が飲み物を持って現れた。
「あの無礼者を消す許可を頂けませんか? 」
「いや、あれにはあれで利用価値があるから止めておけ」
「はっ! 」
一之よりも利秋の方が狂犬に近く、扱いにくい。
狙撃の腕は超一流で
その上ブレイズのサブリーダーに選ばれるほど人望があり、“秋本の計画”を知っている数少ない人物だった。
「さて……どこで処分するとしようかね……」
そんな呟きは周りのどんちゃん騒ぎによってかき消されるのだった……
__________
…………………………気が付くと俺は金属質な部屋に横たわっていた。
部屋はほとんどが白や銀色で、所々に幾何学的な青い線の入った場所もある。
「んっ……? この部屋はいったい……それにここはどこなんだ……? 俺は……確か……」
状況を知る為に周りを見ようとするも体は鉛の様に重く、一切動かない。
何とか体を動かそうとしても動かない。
体を動かす事を諦めた俺は、自分の目で最後に見た光景を思い出す事にした。
イフリート……いや、
その後は光に飲まれ、気が付いたらここでこうしている。
「けど……一体何がどうなったんだ……? 誰か説明してくれよぉ……」
結局状況を把握することが出来ず、頭を抱える……事も出来ずに横たわっていると突然壁に青い光が広がり……
「呼ばれてなくても飛び出してじゃじゃじゃじゃーん! 私が説明しましょう!! 」
「うぉっ!? 誰……? 」
穴の開いた壁から小綺麗な顔をした女が大声を出しながら現れた。
「まずですね~、ここは月ですよー! ……と言っても存在を隠していましたから知りませんよね。そしてあなた方が“神”と呼んでいた者。それは私、世界最適管理Ai“ユグドラシル”のことなのです! 」
自らを“神”と名乗りここを“月”だと言う、生きた人間にしか見えない不審な女は大げさに体を動かしながら喋り続ける。
やがてこちらの不審者を見る目に気付いたのか、頬を膨らめながら目の前近付いてきた。
「むぅ……信用してませんね? こうすれば信用して貰えますか?」
不審者を見る様な視線に腹を立てたのか、彼女は腕を外した。
「なっ!? 」
「フッフッフッ……私はアンドロイドなのですよ。本体は動けないのでね」
思わず息を飲んだ俺の顔を見て彼女は満足した顔をし、腕を取り付け再び口を開く。
「さて、良い知らせと悪い知らせ、どちらから聞きたいですか? 」
「えっ……じゃあ良い知らせからで……」
「分かりました! コホン。あなた方、ブレイズは私の本体……? を見事討伐。反逆を成功させました! パチパチパチ~♪ 」
ユグドラシルは手をパチパチと鳴らし、成功を祝ってくれた。
「そして悪い知らせ。この反乱を成功させたところであなた方に自由は訪れない……いえ、正確には自由になった所で死んでしまうだけでしょう」
「それは……どう言うことだ……? 」
ユグドラシルは深刻そうな顔つきでこちらを見つめている。
体すら動かない俺はただでさえ理解出来ていない状況が更に分からなくなった。
「行くべき場所である“外の世界”がこの
ギギギ……
金属の擦れる耳障りな音と共に体が起こされ、視線は壁に向く。
壁の一部はモニターになっていた様で、そこにある“映像”が表示される。
「なっ……!? 」
俺が見た外の世界。
それは……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます