第43話 親睦会開始
「ごめ〜ん!ちょっと遅れたか?」
「いや、ちゃんと集合時間ピッタリだよ。」
今来た男子生徒で黒羽さん以外のクラスメイト全員揃った。
みんな、集合時間に間に合ってくれた。
「一応ちゃんと全員いるか最終確認するから待っててくれ。」
俺は、みんなにそう伝えて名簿に全員いるかゆっちゃんと一緒にチェックする。
「男子は全員いたよ。女子の方は?」
「こっちも全員いたよ。」
「よし。天海先生、全員揃いました。」
「はい、分かりました。お二人とも、ご苦労様です。」
天海先生から労いの言葉を受けたあと、俺たちは店内に入った。みんなも続いて入ってくる。
「最初は席を指定しているから自分の名前が書いてあるところに座ってくれ。」
俺がそう伝えるとみんな、指示通り自分の席に座ってくれた。
(良かった。こういうところで自分勝手なことされると本当にめんどくさいから助かる。)
俺は、全員が座ったことを確認すると東條さんに出てきてもらった。
「このお店の店長、東條美織さんです。お店側として守ってほしいことがあるそうだから聞いてくれ。」
俺は、そう言うと1歩下がり、東條さんに前に出てもらった。
すると、東條さんはなんの緊張もなく注意事項をみんなに伝えた。
「今日は皆さんの親睦会と聞いているので今言った注意事項を守って楽しくそして今よりもさらに親睦を深められるとようになって欲しいと思っています。こちらも精一杯尽力致しますのでどうぞよろしくお願いします。」
東條さんの言葉にみんな拍手を送る。
そして、チラッと東條さんが俺の方を向くと東條さんは1歩下がり俺が前に出た。
「それじゃ、最後に一つだけ。今日は親睦会だからみんなが仲良くなれるような催し物を考えてるから楽しみにしててくれ。時間になったらその時にまた言うからそれまでは楽しく話しながら食事を楽しもう。みんな、自分の前に置かれてあるグラスを持ってくれ。」
俺がそう言うとみんな、グラスを持つ。
ゆっちゃんが俺の飲み物が入ったグラスを持ってきてくれた。そして、ゆっちゃんもグラスを持つのを確認したあと俺は、グラスを上に持ち上げる。
「乾杯っ!」
『カンパーイ!!』
それを合図にみんな、食事を楽しみはじめた。
俺は、みんなが楽しそうにしているのを見てから隅に置いてある椅子に腰かけた。
「ふぅ、何とかスタートは上手くいったかな。」
まだ始まったばかりだが上手く始めることが出来て少し緊張の糸がほぐれた。
すると、俺の所に天海先生がやってきた。
「ふふっ、宮村くん、お疲れ様です。」
「天海先生……天海先生もこの機会にぜひクラスメイトと仲良くなってくださいね。」
俺は、先生から声を掛けられたので席を立ち上がりそう言った。
「ええ、そうさせてもらうつもりです。……でも、宮村くんもちゃんと仲良くなるんですよ?」
「はい、分かってます。今は、緊張が少しほぐれたので休憩しているんです。」
「ふふっ、そうですか。まぁ、確かにイベントが上手くスタートした時は運営側からすると安心しますよね。でも、油断は禁物ですよ。まだ始まったばかりで催しごともたくさんあるんですよね?」
「はい。」
「なら、安心するのはこのくらいにしてこの場の空気に馴染んだ方がいいですよ。先生からのアドバイスです。宮村くん自信が楽しまないとこのあとの司会進行も大変ですよ?」
「そういうものなんですか?」
「はい、司会進行役の人は落ち着くことも大切ですがその場の空気にあった進行をしていかないとこの楽しい空気を壊しかねないですからね。」
(俺よりも人生経験豊富な先生が言うんだ。きっとそうなんだろうな。)
「分かりました。俺もいっぱい楽しんできます。クラスメイト全員と仲良くなるということを目標にします。」
「目標を持つことはとてもいいことです。先生は頑張る子の味方です。宮村くん、頑張ってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
天海先生は、お礼の言葉を聞いた後、他の生徒たちのところへと行った。
(さて、天海先生にあんなことを言ってしまった手前、ここにずっといることは出来ないな。)
俺は、とりあえず周りをキョロキョロと見てみる。
今はほとんどこの1ヶ月で仲良くなったグループで固まっている。さすがにこの輪に急に入るには勇気がいるな。
ゆっちゃんは、不知火さんや星村さんたちと楽しく話している。
あそこに入るのが1番簡単だろうがあの輪は女子しかいないのでちょっと気が引ける。
(さて、どうしたものか………って、あれ?)
俺は、誰のところへ行こうか悩んでいたところ1人だけ喫茶店の隅でご飯を食べている男子生徒がいた。
(………よし。)
「ここ、いいかな?」
「え?あっ、は、はい、どうぞ。」
俺が声を掛けると男子生徒は、慌てた様子で席から立ち上がる。
「ああ、違う違う。隣に座っていいかな?って聞いたんだ。」
「え!?そ、そうだったんですか!?す、すいません!」
男子生徒は、またも慌てて席に座り直した。
俺は、少し苦笑しながら男子生徒の隣に座る。
「俺は、宮村賢治。えっと、君は篠崎くん……であってるよね?」
俺が話しかけた男子生徒は
そんな篠崎くんは、目をキラキラとさせて俺を見ている。
「ぼ、僕のこと知ってくれてたんですか!?」
「クラスメイトだろ。一応全員の名前と顔は覚えてるよ。まぁ、一応学級委員長だしね。」
「す、すごい……まだ僕は宮村くんくらいしか名前を覚えてなくて……」
「俺のことは覚えててくれてたの?」
「え?と、当然だよ。入学式からすっごい目立ってたからね。」
「あ、あはは、悪目立ちしたからね〜。」
「わ、悪目立ちじゃなかったよ。僕は素直にすごいなって思ったよ。僕、ああいう風に前に出て喋るのはすごく苦手だから……」
「ああ、そういえば自己紹介の時も何回も噛んでたね。」
「そ、それも覚えててくれたんだ……お恥ずかしいところをお見せしました……」
篠崎くんは、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めてえへへ、と笑っていた。
「……ねぇ、一つだけ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
俺は、照れ笑いを浮かべている篠崎くんに向けてそう尋ねた。
「な、なに?」
「篠崎くんは、友達を作るためにもここに来たんじゃないの?」
「それは……えっと〜………」
俺の言葉に篠崎くんは、あたふたし始めた。
「まぁ、天海先生に言われるまで一人でいた俺が言うことじゃないんだろうけど、この会を参加したからには一人くらいは友達を作ろう。一応この会の代表だから、精一杯その手伝いをする……と言うよりも俺もその仲間に入れて欲しいって感じかな。俺もまだ友達が全然いないから。」
「えっ!?宮村くんも友達いないの!?」
「べ、別にいないんじゃなくて少ないだけだぞ!?」
「へぇ、意外……宮村くんも僕と一緒なんだ!何だか嬉しいな〜。」
「まっ、そういう事だから早速友達を作りに行こう!」
「えっ?まっ!?」
俺は、篠崎くんの手を引いて席を立ち上がり結構人が集まっているところに向かった。
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