第38話 2人きりで

 クラスの親睦会、当日。

 俺は、朝早く起きて適当に朝食を食べて学校へ行った。

 なぜ学校へ来たかというと今日の予定を白神さんと天海先生で再確認するためだ。

 今はその際確認が終わったところ。



「それでは今日は頑張っていきましょうね。」

「はい、みんなが楽しいと思えるものにできるように頑張ります!」

「私もみんなのために頑張ります!」

「宮村くんと白神さんもちゃんと楽しむんですよ?」

「「…………はいっ!先生も楽しんでくださいね。」」

「はい、期待させてもらいます。」



 3人でそんなことを話した後、天海先生と別れて学校を出た。

 そして、俺と白神さんは次に『喫茶ブラン』に行き今日最初に出すメニューの再確認と催し物の説明。それと景品と催し物に必要なものをもう置かせてもらおうと頼んだ。

 俺たちの相手をしてくれたのはこの喫茶店の店長、東條さんだ。



「はい、分かりました。一応私たちの方でもこの計画書を目を通します。もし、トラブルが発生した場合はこちらでも柔軟に対応させていただきます。」

「ありがとうございます。そう言って貰えると心強いです。」

「いいのよ。せっかくの親睦会でしょ?楽しんでもらってこの喫茶店のこともよく思ってまた来てくれるようなら万々歳だしね。」

「あはは、抜かりないですね。では、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

「はい、任せてください。」



 俺と白神さんは、東條さんに一礼して景品や催し物に必要なものを目立たない場所に置かせてもらって店を出る。

 これでもうやることはやった。あとは本番を待つだけ。



「…………」

「…………」



(こういう時って解散して帰るべき?それとも本番まで2人で時間を潰すべきなのか?)

 みんなには喫茶店に18時50分に集合をして欲しいと言ってある。だけど、学級委員長である俺と白神さんはみんなよりも早く行き17時くらいに喫茶店に行き、お店の手伝いや催し物の最終確認をする必要がある。

 今の時間は11時。

 早く行く必要があると言ってもまだ時間までには6時間ほど余裕がある。

 俺と白神さんは、このあとどうするべきか悩み無言になる。

(こういう時は男の俺から言うべきだ。)



「………白神さん、このあとなにかある?」

「っ!う、ううんっ!な、何も無いよ。」

「な、なら……解散してまた集まるのもちょっと面倒だし……2人で適当に時間潰す?」

「っ!………う、うんっ!」



(よしっ!)

 俺は、白神さんにバレないように拳をギュッと握った。

 白神さんはいつも不知火さんと一緒にいるので2人きりになる場面があまりない。

(2人きりの時も学級委員長としての仕事だからな。2人きりで遊ぶなんて………うん、嬉しいな。)



「それじゃ、ちょっと時間的に早いかもだけど昼食にする?」

「そ、そうだね。どこ行く?」

「俺、あんまりここら辺の事詳しくないから白神さんに任せてもいいかな?」

「ええ!?ま、任せるなんて言われても……」



 白神さんは、どこの店に行こうか色々と悩んでいる。



「白神さんの食べたいものでいいから。それに夕食にいっぱい食べたいから昼食は軽めでいいよ。」

「わ、分かった……軽めなもの………あっ。」

「何かいいの思いついた?」

「え、えっと……お蕎麦なんてどうかな?」

「蕎麦か!いいね!最近食べてなかったから食べたいな。」

「よ、良かった。近くに美味しいお蕎麦屋さんがあるから行こ。」



 俺たちは、喫茶店から徒歩5分程にある蕎麦屋に向かいそこで昼食を済ませた。



「ありがとう、白神さん。すっごい美味しかったよ。」

「えへへ、どういたしまして。私もここすっごい気に入ってるんだ。」

「あんなに美味しいのに値段もめちゃくちゃ安い。お金が無い学生にとっては最高だな。」



(もし、星村さんのところで夕食を食べられなくなった時はここに来ようかな。)



「さて、昼食も済ませたし次はどこ行こうか?」

「あっ、宮村くん、まだこの街に来たばっかりだからまだよく分からない場所があるんだよね?」

「ああ、うん、そうだね。まだ全然見てまわれてないんだよな。」

「それなら……私が案内しようか?」

「………ありがとう。」



 俺は、白神さんの言葉に嬉しくなり言葉に詰まってしまったが何とかお礼を言えた。

 表面上では平常心でいられたが内心すごいドキドキしてる。



「…………それじゃ……宮村くん、私のお気に入りの場所とか案内するね。」

「ああ、頼む。」



 俺は、知らなかった。この時、白神さんがどんなことを考えていたのかを。正直この時、俺の頭の中は白神さんと一緒にいられる嬉しい気持ちで頭がいっぱいだったのだ。

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