第34話 囲む昼食

 12時前になると俺たちは、1度選んだ物を確かめてみんなの意見を聞いて、いるものだけ買う。この午前中である程度の景品は揃った。

 あとは午後にしようと言って昼食をとることになった。



「どこで食べる?」



 不知火さんが昼食に何を食べるか聞いてくる。

 このショッピングモールには数多くの飲食店がある。ファストフードはもちろん、和洋中のお店があるのだ。



「俺はここに来たの初めてで何があるか分からないからみんなに任せる。」

「え〜、宮村くんの意見も欲しいのに。」

「そうよ、分からないのなら一緒に見て回ればいいでしょ。」



 不知火さんは、そう言うと星村さんと歩き始めてしまった。



「俺はみんなが選んだものでいいのに。」

「ふふっ、茜ちゃんはそういう1人だけ除け者にはしないんだよ。」

「優しいんだな。」

「うんっ、茜ちゃんは本当にすっごく優しいの。」

「お〜いっ!2人とも〜!早く〜!」



 俺と白神さんが2人で不知火さんのことを褒めていると星村さんが大声で俺たちを呼んだ。



「おっと、話しすぎたな。」

「うん、早く行こっか。」



 俺たちは、少し笑いながら2人を追いかけた。

 その後、俺たちは昼食をとるために色々とショッピングモールの中を見て回る。

 10分ほど見て回った後、みんなの意見で洋食専門店に入ることにした。



「うわぁ〜、美味しそうなものばかりね。」

「うんっ!どれも美味しそう!」



 不知火さんと星村さんは、メニュー表を見ながら目を輝かせていた。

 そこで星村さんが一つ提案した。



「ねぇねぇ、せっかくだし色々と頼んでみんなでそれを食べればいいんじゃないかな?」

「あっ、それはいいわね。それなら色々と食べれそうだし。」



(そ、それって、俺もってことだよな?男の俺が一緒に食べるっていいのか?)



「あ〜、でも、宮村くんは男子だし少し抵抗ある?」



 そんな俺の気持ちを悟ったのか不知火さんがそう尋ねてきた。



「ま、まぁ、少しね。」

「えぇ〜、でも、私の家じゃよく一緒に大皿のもの食べてるでしょ?」

「っ!?」



 星村さんのその言葉になぜか白神さんが目を見開いた。



「ま、まぁ、そうだけど………」

「なら、大丈夫だよ!」

「いや、みんなの方が男子の俺なんかと一緒に食べるのは嫌だろ?」

「わ、私は別に大丈夫だよ!」



 白神さんが俺の質問に食い気味にそう答えた。



「あ、う、うん。」



 俺は、少し戸惑ってしまったがとりあえず頷いた。

 すると隣の不知火さんがニヤニヤとした表情で白神さんを見た。



「おやおや〜、由美〜、ものすごい慌てようだったわね〜。」

「っ!……え、えっと……い、いや、えっと………その………」

「じー」



 不知火さんからじっと見つめられると白神さんは、顔がみるみると赤くなっていった。



「と、とりあえず、私は宮村くんが一緒に食べても大丈夫ってこと!」



 白神さんは、恥ずかしさに耐え、そう言いきった。



「まぁ、それでいいことにしましょうか。私も別に宮村くんなら大丈夫よ。」

「私はもちろん平気だよ。毎日そうしてるもんね。」

「………ずるい……」



 星村さんの言葉に対して白神さんがボソッと何か言ったようだが、内容までは聞き取れなかった。



「ほら、みんな大丈夫だって!だから、みんなで食べようよ。」

「そうね、それじゃ何を頼もっかなぁ。」



 みんな既に俺と一緒に食べることを決めたらしくメニュー表を見て何がいいか選んでいる。

 みんなでメニューを決めたあと、店員さんに頼んでその15分後には頼んだものが全て揃っていた。

 その料理の前に不知火さんと星村さんはさっきよりも増して目を輝かせている。



「早く食べよ〜。私、もうお腹空いちゃった。」

「そうね、冷めちゃわないうちに食べよっか。」



 その言葉に俺の近くにあった皿と箸を配ろうとした瞬間、俺の手と重なるように白神さんの手が当たった。



「「っ!」」



 お互い当たったことを意識してか、顔を赤くさせてすぐに手を戻した。



「ご、ごめん。」

「う、ううん、わ、私の方こそ、ごめんね。」



(な、なに、手が当たっただけで恥ずかしがってるんだ。さすがに今のは不自然すぎるだろ。)

 俺は、今の行為に反省し、再び皿と橋を配ろうとする。



「わ、私も手伝うよ。」



 白神さんがまだ頬を赤くしたままだが、そう言って皿などを配るのを手伝ってくれた。



「…………宮村くんと白神さんって仲良いの?」

「お、俺は、友達って思ってるけど……なんで?」

「……友達……かぁ……」



 俺の答えに白神さんがどことなく落ち込んだように見えた。

 でも、それに気づいていない星村さんは話を続けた。



「なんか、私から見たらすごい仲良いなって思ってね。本当にただの友達じゃないみたいに。」

「っ……そ、そうかな?」



 俺は、星村さんの言葉に少し焦ったがなるべく平静を装うようにしてそう言った。

 俺自身は過去のことを覚えているからいいものの、白神さんは俺の事を覚えていないようなのでそんなことを言われても白神さんが困ってしまうだろう。



「私よりも宮村くんと仲良さそうだから何かあるのかなって思ったけど……違うんだ。」

「あ、ああ、そうだよ。」

「………えへへ……」



 今度の白神さんは、星村さんの言葉に嬉しそうだった。

 不知火さんだけなぜかずっと白神さんの方を見てニヤニヤとしていた。

 食事の前に色々とあったもののさすがにこれ以上待つと冷めてしまうので俺たちは料理を口にした。色々と頼んだけどどれも美味しかったが、それでも頼みすぎたのか俺以外のみんなは料理の量が半分ほどなったところで完全に手を止めた。



「わ、私はもうギブ。」

「ご、ごめんね、私もさすがに……」

「うぅ、もう食べられない……」



 3人ともそんなことを言って箸を置いた。



「え?ちょ、ちょっと待って?これ全部俺が食べるの?」



 俺は、まだ余裕があるものの目の前の料理を見ると食べられる気がしない。

 みんなで半分なのに、残りの半分を俺一人とか無謀すぎる。

 かといって残すのは作ってくれた人たちに申し訳ないし、じいちゃんに「出されたものは残さず食え」と教え込まれたので残そうとも思わなかった。

 俺は、覚悟を決めて箸を動かす。

 結果、何とか食べ終えたものの少しの間、苦しくて動けなかった。

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