第30話 催し物

 弁当を食べ終わった後、黒羽さんと不知火さんが手伝ってくれたおかげで昼休み中に残っていた資料を全てまとめ終わり、先生に提出することが出来た。

 そして、午後の授業が全て終わり、掃除も終わったあと、俺は荷物をまとめてみんなが教室から出るのを待った。

 約10分後、俺と白神さんと不知火さん以外の生徒は教室から出て行った。

 それを確認すると俺は、白神さんたちの所へ近寄った。



「やっぱり、不知火さんも残ったんだね。」

「何よ〜、私が残ったら悪いの?」



 俺がからかうように不知火さんにそう言うと不知火さんは、少し頬を膨らませて冗談っぽく怒ってきた。



「アイデアが豊富そうな不知火さんがいると心強いよ。」

「むっ、それって私じゃあまり頼りにならないって言うの?」



 と、今度は白神さんも冗談っぽく不機嫌そうに尋ねてきた。



「アイデアが増えることは助かるってことだよ。白神さんにも期待してるから。」

「うっ、そこまで期待されると少し不安してきた……」

「まっ、気楽に考えてくれたらいいから。」



 俺が昼休みに白神さんに残って欲しいと頼んだのはクラスの親睦会で少し催し物をしたいと思ったからだ。

 ただみんなとご飯を食べたり話したりするだけじゃ少し寂しいと思ったので提案してみた。

 白神さんは、俺の提案に快く乗ってきてくれた。

 ちなみに黒羽さんは、今日は家の用事があるとの事で帰ったのだった。

(まぁ、黒羽さんには明日の昼休みに聞いてみよう。)

 俺は、カバンの中からノートとペンを取りだす。そして、まずは俺が考えてきたものを2人に話してみる。



「俺が考えてきたものはビンゴゲームなんだ。これなら手軽にできるかなと思ったんだけど……どうかな?」

「それってなにか景品はあるの?」

「それは明後日の午前中に買いに行こうかなって。近くに大きなショッピングモールがあったからそこでなにか買おうって思ったんだ。」

「ああ、あそこね。ビンゴゲームの道具は?」

「それも明後日買おうと。」

「それって宮村くんのお金で買うの?」

「いや、先生から多少お金を預かってるからそれで買おうと思ってるんだ。」

「あっ、そうなのね。」



 2人は、俺が実費で買わないと聞いて安心してくれたようだ。

(まぁ、足りなくなったら実費になるかもなんだけどね。)



「それならビンゴゲームは、ありと思うわよ。でも、そういう運試し的なものは最後らへんに持ってきた方がいいわね。最初はやっぱりみんなで楽しめるものがいいと思うわ。」

「う〜ん……なぞなぞとか?」

「ふふっ」

「小学生じゃないんだから……」



 俺が出した提案に白神さんはクスクス笑い、不知火さんは呆れるようにそう言った。

(なぞなぞはダメかぁ。楽しそうだと思ったんだけどなぁ。)



「……やっぱり変わってないね、けーちゃん……」

「ん?由美、何か言った?」

「っ!な、なんでもないよ!?」

「ならなんでそんなに慌ててるのよ?」

「あぅ、え、えっと……」



 不知火さんが、白神さんを疑いの眼差しで見詰める。

 白神さんは、俺をチラチラと見て助けて欲しいと嘆いているようだった。

 俺は、本当に仲がいいんだなぁと思いつつもさすがに白神さんが可哀想と思ったので助けてあげることにした。



「まぁまぁ、不知火さん。白神さん怖がってるよ。」

「ふ〜ん、宮村くんは、由美の味方なんだ。」

「い、いや、味方っていうか……」

「うぅ〜……」



 白神さんは、見捨てないでと嘆くように見詰めてくる。

 俺は、そんな白神さんのことを可愛いなと思い少しドキドキしてしまったが何とか落ち着いてその場を収めることが出来た。



「それで話を戻すけどみんなで楽しめるものって何かある?」

「………あっ、連想ゲーム……なんてどうかな?」

「ああ、いいわね、それ。」

「……連想ゲーム?」



 白神さんが提案した連想ゲームのことを俺はよく知らなかったので説明してもらうことにした。

 連想ゲームの説明をまとめるとお題から連想されるものを考えて、学級委員長である俺と同じことを連想出来たら正解というゲームらしい。



「まぁ、そこは俺じゃなくてもいいな。連想ゲームの説明をした後に誰かその役をやりたい人がいたらその人にして、もし居なかったら俺がしようかな。天海先生でもいいな。うん、結構いい案だね。これなら、相手のことを知ろうとするし楽しめると思うよ。ありがとう、白神さん。」

「う、ううん、私も仮だけど学級委員長だからね。少しはいい案出さないと。……まだ私、学級委員長になってからそんなに大したこと出来てないし。」



 白神さんは、少し落ち込むように下を向いてそう言った。

 不知火さんは、そんな白神さんに声を掛けようとしたがどんな言葉で慰めるべきか分からなくなってしまったのか、口をパクパクとさせていた。

 だけど、学級委員長である俺なら伝えられることがある。



「俺ってさ、よく不器用だって言われるんだ。何事に対しても。前にいた街は、そのせいでこんな学級委員長どころか委員会活動すら絶対にさせて貰えなかった。でも、その時は武道を習っていたから時間が空いてくれて嬉しいと思ったんだ。時間が空いた分、集中して武道に取り組めるって思えたから。でも、その空いた時間を作ってくれてるのは裏で忙しく働いている人たちのおかげなんだなって今、学級委員長をやってからそう思うようになった。俺がこうして催し物を考えてる時間も絶対に無駄なんかじゃないって思うよ。だからさ、白神さんもそんなことを言わないで欲しいな。白神さんが頑張ってやっていることは誰かの役に立つんだから。その努力はちゃんと俺が見てるからね。」

「………けー……宮村くん……ありがとう、宮村くんにそう言って貰えると嬉しいよ。」

「そ、そうよ、由美。私は、そういうことはよく分からないけど由美が頑張ってるところはこの目でちゃんと見てるから。応援してるわよ、由美。」

「う、うんっ!ありがとう、茜ちゃん!」



 白神さんは、元気を取り戻したのか、顔を上げて催し物について考え出す。

 その後、いくつかいい催し物を考え付き、解散することになった。

 翌朝、その案を天海先生に伝えると快くOKしてくれた。

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