第27話 友達登録

『喫茶ブラン』で夕食を食べた俺たちは、会計を済ませているところだ。

(ここは俺が払うよ、とか言った方がいいんだろうけどまだそんなに親しくないのに奢ってもらうのは嫌だろう。)

 俺はそう思い、自分の分は自分で払うことにした。



「宮村くん、分かってるわね〜。」

「ん?なにが?」



 俺が会計を済ませていると不知火さんがそんなことを言ってきた。



「ここで奢られても困るってことよ。頼んでもないのに急に奢られたらなんか借りを作ったみたいで嫌だもん。」

「ああ、そういう事ね。まぁ、2人の性格ならきっとそうだろうなって思ってたんだよ。」

「だいぶ私たちのことを分かってくてたみたいね。」

「まぁ、結構話したからね。」



 そんなことを話しながらお会計を済ませていく。

 そして、お会計を全員済ませた後、今、レジを売ってくれた店員の佐藤先輩にお礼を告げる。



「今日は、わざわざお忙しい中、時間を作っていただきありがとうございました。それとま今週の日曜日はお世話になります。」

「うん、まぁ、その日は私はいないんだけど楽しんでくれたら嬉しいよ。」



 白神さんと不知火さんも佐藤先輩にお礼を言ってお店を出ようとした時だった。

 佐藤先輩から声が掛けられた。



「あっ、宮村くんっ!」

「はい?」

「バイトの件なんだけど今週の土曜日、面接に来てもらってもいいかな?なるべく早く人員が欲しいから。」

「あっ、はい、分かり……あっ、ひとついいですか?」

「ん?何かな?」

「もう1人、バイトしたいって言う人がいるからその人も連れてきたいんですがいいですか?」

「うんっ!もちろんっ、大丈夫だよ。それじゃ、土曜日にね。」

「はい、ありがとうございました。」



 今度こそ俺たちは、店から出た。

 すると当然、不知火さんから質問が来た。



「宮村くん、ここで働くの?」

「うん、まぁ、面接に受かればの話だけど。」

「み、宮村くんなら大丈夫だよ。」

「そ、そう?あはは、何だかそう言われると大丈夫って気になるな。」



(白神さんからのフォローとかやる気出ないわけが無い。)



「それで、あともう1人いるって言ってたけど誰?星村さん?」

「ううん、黒羽さん。」

「「えっ!?黒羽さん!?」」



 2人は、驚いたように声を上げた。



「え?ま、待って!?黒羽さん!?」

「うん、そうだよ。先週は黒羽さんが仮の学級委員長としてやってくれてその時に黒羽さんも一緒にバイトがしたいって言ってくれたんだ。」

「………く、黒羽さんってバイトとかしなさそうなイメージなのに。」

「う、うん……それにみ、宮村くんと仲がいいっていうのも少し驚いたな。」

「黒羽さんって結構怖がられてるみたいだけどすごい優しい人だよ。まぁ、時々辛辣だなって思える言葉もあるけど。」



 2人は、まだ信じられないといったような表情をしている。

 俺は、証拠にスマホを取りだし連絡先から黒羽さんのところが映るようにして2人に見せた。



「ほら、連絡先もバッチリ貰ってるしね。」

「ほ、ホントだ。」

「………………」

「ん?どうしたの、由美?宮村くんのスマホをじっーと見つめて。」

「い、いや……そ、その、宮村くんの連絡先、私はまだ知らないなって思って。」

「あっ!確かにそういえば!」



 確かに2人と連絡先はまだ交換していない。

 したいとは思ったもののそんなことを言って気持ち悪がられたりしないかが気になり、ずっと言えなかったのだ。



「宮村くん、連絡先交換してもいい?」

「うん、大丈夫。」

「ありがとう、それじゃまずは、ラインから。」



 俺は、自分のラインのアプリを開いて友達登録画面に移動する。



「ほいっ、登録完了っと。」

「おぉ、増えた〜。」

「ふふっ……」

「な、なんで笑った!?」

「だって、ただラインの友達登録しただけなのにおもちゃみたいな顔して……可愛いなぁって思って。」

「可愛いって………男に対しての褒め方では無いな。」

「ごめんごめん。それで?由美は、なんでスマホを両手で握りしめて固まってるの?」



 不知火さんの目線の先には不知火さんが言った通り、白神さんがスマホを両手で持って固まっていた。



「わ、わたっ!………私も………友達登録……」

「…………なるほど。宮村くん、由美も友達登録していい?」

「え?う、うん、もちろん大丈夫だよ。と言うよりもお願いしたいくらいだよ。」



 俺がそう言うと白神さんは、パァーっと顔を明るくさせてスマホを操作していた。

 俺もさっき、不知火さんと友達登録した時と同じようにスマホを操作する。

 するとスマホの画面に白神さんの名前と可愛らしい犬の画像が出てきた。



「うん、友達登録出来たみたい。」

「よ、良かった……み、宮村くん、ありがとう。」

「ううん、こちらこそありがとう。それよりもこの犬………」

「な、なに!?」

「…………可愛いね。」

「…………う、うん、とっても可愛いよ。」



 俺は、白神さんのトップ画像になっているこの犬のことを知っている。

 この犬は、俺と白神さんで見つけたんだから。



「あっ、サクラのことね!確かにサクラは、すっごい可愛かったなぁ。」

「また家に来る?そしたらまた会えるよ?」

「うんっ!絶対に行く!」

「………そ、その時はみ、宮村くんも一緒でいい………よ?」

「………うん、その時が来たら誘ってね。楽しみにしてるから。」

「っ!う、うんっ!絶対に誘うね!」

「…………なんか私を誘う時よりも嬉しそうな顔してるわね?」

「ち、ちがっ………〜っ!」



 白神さんは、言い訳を言おうとしても上手い言葉が思いつかなかったのか顔を真っ赤にさせた。



「………な〜んか怪しい。」

「あ、怪しくなんかないよ……」

「…………まっ、いいけど。それじゃ、そろそろ解散にしましょうか。」

「あっ、もうだいぶ暗いし送って行くよ。」



 今の時刻は7時過ぎ。だんだん暖かくなってきていて明るい時間が増えてきたといってもこの時間になると少し薄暗くなる。

 さすがにこんな時間に女子高生が誰も付かずに歩くのは危険だろう。



「いや、でも家遠いわよ?」

「わ、私も少し歩くから大丈夫だよ。」

「別に構わないよ。この頃鍛錬も休みがちになってきたからね。多少歩いた方が俺のためにもいいし。」

「………まっ、そう言うならお言葉に甘えようかな。」



 ということで俺たちは、みんなで一緒に帰ることになった。

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