第24話 友達確認
時は過ぎていき水曜日の放課後。
帰りのホームルームが終わると俺は、鞄を持って白神さんの方へ向かった。
白神さんのすぐ側に不知火さんもいる。
「準備は出来た?」
俺は、2人にそう言うと2人とも鞄を持って立ち上がった。
「うん、出来たよ。」
「私もバッチリ!早速行きましょ。」
「あっ、そういえば橋村くんはいいのかな?」
白神さんが言っていた星宮とは恐らくこの前の男子生徒だろう。
「ああ、橋村だったら今日も部活の見学に行くんだって。」
「へぇ、すごいな。私もなにか部活した方がいいかな?」
「自分がこれをやりたいって思えるやつがあったんならやってみたら?私はしないけど。」
「う〜ん、したいこと………み、宮村くんは何かしたいことあるの?」
白神さんが少し恥ずかしそうに俺にそう尋ねてきた。
「部活か………俺は武道をやってるから部活には入らなくていいかな。」
「そ、そうなんだ。」
「そういえば宮村くんって武道をやってるって言ってたわね。どんなことをやってるの?」
「一応全般出来るようにしてる。空手とか剣道とか色々。」
「へぇ、それなら部活でも入ればいいのに。」
「いや、俺はまだまだ半人前だからな。じいちゃんに教わってるんだけどまだ1度も勝てたことなんてないし。」
「なら、体験入部でもいいんじゃない?自分の実力がどれくらいあるのか分かるかもしれないわよ?」
「なるほど……確かに自分の今の実力を理解するにはいいかもしれないな。今度行ってみようかな。」
「あっ、それなら私も誘って!宮村くんの部活やってる姿見てみたい!」
「あ……わ、私も……いい?」
「構わないけど……恥ずかしいところ見せるかもしれないよ?」
「大丈夫、大丈夫。それならそれで面白いし!」
「笑いものにされるのかぁ〜。」
「わ、私は笑わないよ。」
「あ、ありがとう。……って、もうこんな時間か。話はこれくらいにしないと。お店側に放課後、すぐに向かうって言ってるから早く行こ。」
俺たちは、すぐに教室から出て行き靴を履き替えてから店へと向かう。
「そういえば今日行く店って宮村くんは行ったことあるよの?」
お店へ向かう際、不知火さんが俺にそう尋ねてきた。
「うん、この街に引っ越してきた時に夜ご飯として食べてそれから週に一回程度の割合で通ってるよ。」
「結構美味しいの?」
「俺は、美味しいって思った。」
「そっか。それじゃ、私は今日の夜ご飯はここで済ませよっかな。」
「え?急にご飯はいらないとか言って大丈夫なの?」
「うん、大丈夫よ。一昨日からお父さんとお母さんは、妹を連れて海外に旅行に行ってるのよ。だから、正直作るのはめんどくさいから外食にしようって思ったの。だから私は宮村くんたちの用事が終わっても残ろうって思ってるんだけど……由美はどうする?」
「え?私?あ、えっと………宮村くんはどうするの?」
白神さんは、自分の答えを出す前に俺に尋ねてきた。
「あ〜……ちょっと、待ってて。」
俺は、2人にそう言ってからスマホを取りだしラインの連絡先から星村さんを探し出しメッセージを送る。
『もうご飯って作られてるかな?』
するとすぐに既読がつき、星村さんの方からメッセージが帰ってきた。
『ううん、まだ作ってないよ。どうかしたの?』
俺は今日、食事はいらない旨を伝える。
『分かった。じゃあ、お母さんに言っておくね。あっ、ちゃんと栄養のあるものを食べなくちゃダメだよ?』
『分かってるよ。』
俺は、星村さんのラインでのやり取りを終えると2人の方を向いた。
「俺も食べていこうと思う。」
「そっか。それで由美はどうする?」
「じゃ、じゃあ、私も………ところで宮村くん、今の連絡の相手は……お母さん?」
「ううん、俺、一人暮らしだからよく隣の星村さんの家にお邪魔して食べさせてもらってるんだ。」
「っ!ほ、星村さんってうちのクラスの?」
「そうそう。」
「そ、そうなんだ………そうなんだ………」
白神さんは、なんだか、ものすごく悲しそうな表情になってしまった。今にも泣きそうなくらいだ。
(えっと……俺、なにかしたっけ?)
俺がそんなことを考えている一方で星村さんの隣にいる不知火さんがニヤニヤとした表情で俺に尋ねてきた。
「星村さんって宮村くんの彼女?」
「は?い、いやっ!違うよ!」
「え?そうなの?」
「うん、家が隣だから俺がお世話になってるだけだよ。」
「っ!…………そっか。」
一瞬、白神さんがなにか反応したかと思ったがそれを気にする前に不知火さんが話し始めた。
「へぇ〜、そうだったんだ。絶対彼女って思った。教室の中でよく2人で楽しそうに話してるのを見るし。」
「あれは俺が友達が少ないから構ってもらってるだけだよ。」
「え?宮村くんって友達少ないの?」
「学級委員長の仕事をやっている間にみんなと話す機会が無くなっちゃったからね。」
「あ〜、そっか。確かに何回も宮村くんが先生に呼ばれてるの見たな〜。まっ、でも、今は星村さんも含めて3人、友達がいるでしょ?」
「3人?」
(星村さんと黒羽さんだけだから2人じゃ………)
「そっ。私と由美、そして星村さんの3人。ね、由美。」
「うんっ!」
「え?……あ、ああ、そっか。」
(普通に友達って言えるんだ。今どきの女子高生はすごいな。)
「なによ、その反応〜。まさか友達じゃないとでも思ってたの〜?」
「あ、いや、なんというか友達と思っていいのかなって。」
「………宮村くんって結構卑屈な性格してるわね。」
「よく言われます。」
「ふふっ………一緒だ………」
俺と不知火さんの会話に面白いことでもあったのか、白神さんがクスクスと笑っている。その後、何か言っていたようだけどちょうどよく大型トラックが通り過ぎて全く聞こえなかった。
「それじゃ、確認するけど私たちは友達ってことでいいの?」
「う、うんっ!これからもよろしく!」
「ええ、よろしくね。」
「私も!……ぁ……その……友達?」
不知火さんについで白神さんも確認するように俺に尋ねてきた。
「あっ、う、うん。白神さんもよろしくね。」
「う、うん。よろしく。」
「……………」
俺たちのやり取りを驚いた様子で不知火さんが見ていた。
「どうしたんだ、不知火さん?」
「いや、ちょっと、珍しいものを見ちゃって。」
「珍しいもの?」
俺は、今のやり取りに特にこれといっておかしな点がなかったと思い何が珍しいのか分からず首を傾げる。
「うん。だって、由美からこんなこと聞くのなんて初めて見たから。」
「あっ、いや、それはその……み、宮村くんにはもしかしたらこれからも学級委員長としてお世話になると思ったから!だからちゃんと確認したいと思っただけだよ!変な意味とかないから!」
白神さんは、途中から焦ったのか顔を真っ赤にして早口でそう言った。
「変な意味って何?」
「あっ………あばばばば」
「白神さん!?」
白神さんは、不知火さんの問いかけにフリーズした後、壊れたラジオみたいになった。
「ふふっ、由美ったら慌てたらすぐにそんな風になるんだから。」
「白神さん、一旦落ち着いて!もうすぐお店だから!」
「……う、うん………」
何とか白神さんを正常の状態に戻すことが出来た。
そして、それから数分歩いてかれ目的地の『喫茶ブラン』に着いたのだった。
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