第22話 白神さんの友達

 昼の授業もあっという間に終わり、掃除をしたあとに帰りのホームルームがあり、みんな、帰宅する人は友達と帰宅していき、部活を見学する人はそれぞれの部活の所まで行った。

 10分もすれば教室には人の影はほとんどない。夕日でオレンジ色に染められた教室には俺と女子生徒2人。



「えっと……なんで不知火さんも残ってるの?」



 俺の目の前には白神さんと俺をじっと見つめてくる白神さんの友達がいる。

 名前は不知火茜しらぬいあかねだ。

(よく白神さんと一緒にいるからよく覚えてる。)



「ちょっと気になってね。宮村くんってどんな人なんだろうって。」

「どんな人って………ごく一般の男子高校生だけど?」

「いや、それは分かってるわよ。私が気になったのはなんで友達でもない宮村くんが由美を学級委員長なんかに誘ったのか気になってね。」

「あ……ああ、そのこと。」



(そういえば確かにそうだよな。友達でもないのに誘ったとなればそりゃ疑うわ。)

 黒羽さんの時は、黒羽さんが1人だったからそれを気にする人がいなかったから何も言われなかったのだろう。



「それに由美だって、何だかあなたを少し意識してるようだし。」

「え!?」

「あ、茜ちゃん!?」



 俺と白神さんは、不知火さんの発言に驚く。

(白神さんが俺を意識してる?……もしかして俺のこと………いや、まさかな。)

 白神さんが俺のことを覚えていてくれたのだとしたら声を掛けてくれるはずだ。それをしないということは覚えていないということなのだろうと思い、俺は、淡い希望を消した。



「まぁ、そんなことはどうでもいいのよ。それで、なんで宮村くんは、由美を誘ったの?」

「あ〜……それは……今までの動きを見ていたらなんとなくな。白神さんってなんでも丁寧にするタイプなんじゃないかな?授業のプリントとか別に必要じゃないプリントまでしっかりと丁寧にファイルに入れているのを見てそう思ったんだけど………違うかな?」

「う〜ん……確かに由美は、そういうことは丁寧にするわね。授業ノートもすっごい綺麗だし部屋の中も綺麗に整理整頓されてたわね。」

「そういう所を選んだんだ。学級委員長って結構プリント整理とか多いから。」

「あ〜、そういうことね。ちゃんと意図があってって事ね。」

「そりゃね。」

「ほら、由美って可愛いでしょ?だから、由美に近づこうって男がいっぱいいるのよ。それで私が最初にその男に会って釘を打たなくちゃいけないのよ。由美に何かしたら許さないって。」

「へ、へぇ、そうなんだ。」



(俺が少なからず白神さんに好意を寄せて呼んだってことはとりあえず隠しておこう。)



「まぁ、宮村くんなら大丈夫かな。」

「おお〜、あの茜ちゃんが認めた〜。いつも睨み付けてすぐに諦めさせちゃうのに。」

「そういうやつはだいたい由美狙いだからね。あ、それで宮村くん、今日はどれくらい時間掛かるの?一緒に帰りたいから待ってようと思ってるんだけどいい?」

「あ、うん、今日はすぐに終わるから。」

「そっか。じゃあ、待ってるわね。むしろなにか手伝うことある?」

「ううん、大丈夫。今日はただ白神さんにクラスの親睦会の予算とかその他を教えてあげるだけだから。………そういえば2人はいつも一緒に帰ってるの?」

「そうね。用事がなかったりしなかったら一緒に帰ってるわ。あ、でも、本当ならもう1人、中学からの男友達もいるわね。今日は、サッカー部の見学に行っちゃったみたい。」

「そ、そうなんだ。」



 不知火さんが言っているのは恐らくこの前、入試の時に一緒に帰っていた男子生徒だろう。

(その男子生徒と白神さんがどんな関係なのか気になるけどここで聞くとまた怪しまれそうだからやめとくか。)



「そっか。あっ、それじゃ、今週の水曜日の件も悪いことしちゃったかな?」

「ん?なに、水曜日の件って?」

「っ!な、なんでも………」

「クラスの親睦会で使うお店にお礼と最初に出してもらうメニューを決めなくちゃいけないから水曜日の放課後に行こうって誘ってたんだ。でも、いつも一緒に帰るんなら少し悪いことしちゃったかな?」



 白神さんがなにか言おうとしていたがちょうど俺と重なったみたいだった。



「ええ〜、私、何も聞いてないんだけど?」



 不知火さんは、ジト目で白神さんを見た。

 その瞬間、白神さんはビクッと体を震わせて目を右から左と泳がせていた。



「そ、それは……その……」

「私に隠し事してたの〜?」

「う、うぅ……い、いいでしょ、隠し事の一つや二つくらい………」

「確かに全部話せとは言わないけど知らない男の人が関わることはなんでも言ってよね。」

「けん………宮村くんは、知らない人じゃないよ?」

「訂正するわ。友達でもない人が関わることはなんでも言って。」

「うっ………わ、分かった。次からそうする。」

「よろしい。」



(不知火さん、完全に白神さんの保護者になってるな。それもすごい過保護の。)



「まっ、でも、今さっきも言ったけど宮村くんなら大丈夫。それじゃ、水曜日は一人で帰るわね。」

「あっ、それじゃ、よかったら一緒に行く?」

「えっ!?」

「え、いいの?私、学級委員長じゃないんだけど。」

「いいよ。意見はいっぱいあった方がいいからね。」

「そっか!それじゃ、私も一緒に行こっと。そのお店がどんな風なお店なのかも気になるし!ちょっと楽しみ!」

「……………せっかく…………」

「ん?由美、どうしたの?」

「なんでも………」

「な、なんで怒ってるの?」

「怒ってないもん。」



 そんなことを言っている白神さんは、少しムスッとしていて俺でも怒っているということは感じ取れる。

(まぁ、でも本人が怒ってないって言っているから深くは関わらないでおこう。)



「それじゃ、不知火さんにも予算とかを教えるね。」



 俺は、それから必要なことを教えて今日は解散となった。

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