第16話 女子の学級委員長
高校を入学して約1週間が経ち週明けの月曜日。
クラスではちらほらと友人関係を築いている人がいる。その中でまだ隅っこで本を読んでいるような人もいる。
俺は、学級委員長ということもあり、天海先生から色々と雑用を押し付けられる。いまだに女子の学級委員長が決まっていないから俺一人でやらないといけなくて大変だ。
「宮村くん、少し手伝ってくださ〜い!」
「は〜い。」
そして、今日も雑用を任されていた。
「今日はこの資料を私と一緒に職員室へ運んでください。」
「はい、分かりました。」
「毎日すいませんね。」
「いえいえ、これも学級委員長の仕事ですから。」
「そう言っていただけると嬉しいです。ですが、今後は1人だと難しい仕事もあるので早いところ女子の学級委員長も決めたいですね。」
「はい、そうですね。」
「宮村くんから見て、うちのクラスの女子で学級委員長に相応しいと思える人っていますか?」
「そうですね…………」
学級委員長に相応しい女子生徒か。
あんまりそういう目線で見たことがなかったけど………
「明るくみんなをまとめるリーダー的存在なら星村さんですね。俺自身も星村さんとはよく話すので人柄はよく知っています。なので、頼りになると思いますよ。」
「ふむふむ、なるほど。星村さんですか。確かにあの子は明るくていい子ですね。他にはいますか?」
「ん〜………まだ話したことは無いのですが冷静で周りを見れそうな人は黒羽さんですかね。」
「黒羽さんですか。なるほど。明るくみんなのリーダー的な存在の星村さんと冷静で周りを見れる黒羽さん。宮村くん的にはどちらがいいと思いますか?」
「あ、いえ、まだもう一人いるんです。」
「まだいるんですか?誰ですか?」
「ゆっちゃ………白神さんがいいと思います。」
「白神さんですか?」
「はい。1週間ほど、彼女を見てきましたが白神さんは、物事を丁寧に進める人です。慎重さもあるので、白神さんもいいです。」
「ふむ、確かに学級委員長は雑用も多いので丁寧な人もいいですね。」
ゆっちゃんに関しては俺の欲なんだろう。1からまた友だちになるって決めたのに。まだ、1回も話しかけられてない。
「3人ともいいですね。では、その3人、全員にやってもらいましょう!」
「え?女子の学級委員長が3人も!?」
「いえ、そういうことではありません。今度、その3人に声をかけてみて頼んでみるんです。1週間だけ、仮で学級委員長をやってもらえませんかって。」
「あ〜、なるほど。それはいいですね。」
「そして、ちょうど3週間後にはクラスの親睦会があります。その時に誰が良かったのか宮村くんに決めてもらいます。それでその人から了承を得られたらその人がこの1年間の女子の学級委員長です。」
「決定権の一部は俺にもあるってことですか。」
「はい、だから、ちゃんと選んでくださいね。」
「分かりました。」
そこまで話していると職員室に着き、頼まれた資料を先生の指示通りの場所に置いて俺は、職員室を後にした。
「…………つい、ゆっちゃんの名前を出しちゃったな。この1年間、やるかどうか分からないけど1週間はゆっちゃんが了承したら一緒に学級委員長の仕事をするのか。」
そう考えた瞬間、顔が綻んでしまった。
(おっと、いけない。これじゃ、廊下で一人でニヤニヤしてるヤバいやつだ。まだ、学校が始まって一週間しか経っていないから絶対に変な印象を持たれる。気を引き締めよう。)
俺は、そう思い一旦立ち止まり頬を両手で軽く叩いた。
そして、俺はもうニヤニヤしていないのが分かってから歩き始めた。
そして、翌日の放課後。
早速先生から呼び出されたと思えばそこに一緒にいたのは星村さんだった。
「それでは早速星村さんに1週間の仮の学級委員長をやってもらいます。」
「分かりました。星村さん、よろしく。」
「はい、よろしくお願いします。」
星村さんは、にぱぁーと可愛らしい笑顔を浮かべて返事をした。
「それと他の2人からも了承を貰ったので今週は星村さん、次の週は黒羽さん、そして、最後の週は白神さんでやってもらいます。」
「分かりました。」
(ゆっちゃん、了承してくれたんだ。)
「それでは星村さん、よろしくお願いしますね。」
「はい、任せてください。」
星村さんが笑顔でそう応えると先生は、持っていた30枚程の紙を机の上に置いた。
「では、早速作業をしてもらいますね。今日はこの前、皆さんに書いてもらったクラスの親睦会の要望のアンケートをまとめてもらいます。まずは来れる人と来れない人を分けてください。そして、その後に皆さんのお店の要望をまとめてください。」
「分かりました。」
「はい、了解です。」
「それじゃ、この名簿に来れる人はマルをしてください。来れない人はバツで。皆さんの要望はこの紙に書いておいてください。あ、あと、絶対に無理そうなものにはバツをお願いします。」
先生は、俺たちにそう説明すると自分も仕事があると言って教室を出て行った。
「それじゃ、早速やるか。」
「うん、頑張ろうね!」
俺たちは、席を2つ向かい合わせにくっ付けて紙を半分に分け、まずは行ける人と行けない人を分けることにした。
作業はおよそ5分ほどで終わった。
ほぼ全員行くのだが、1人だけ行かないと書かれた人がいた。
俺が昨日名前を出した黒羽さんだ。
「黒羽さんだけ来ないんですかぁ。残念ですぅ。」
「まぁ、黒羽さんにも事情があるんだから仕方ないよ。そういえば星村さんは、黒羽さんが誰かと話してるところ見たことある?」
「え〜っと………そう言えば見たことないかもしれないです。」
「やっぱりか。もしかしたらまだあんまりクラスと馴染めてないから行きたくても行けないのかもな。」
「えぇー、クラスに馴染むための親睦会なのにそれに来ないとかあるんですか?」
「考え方も人それぞれだよ。まぁ、来週はその黒羽さんが学級委員長をやってくれるからちょっと話をしてみるよ。」
「よろしくお願いしますね。出来ればみんな、一緒がいいので。」
「そうだな。」
俺は、一応黒羽さんのところにバツを書いてあとは全てマルを書いた。
「あとは要望だけど……なんかみんな、安いところとか、美味しいところとか書いてるな。」
「まぁ、それが一番だよねぇ。」
「でも、そうなるとファミレスとかになるよなぁ。」
「あ、でも、その次に多いのは珍しいところってあるよ。」
「また難題だなぁ。それじゃ、明日からこの要望を書いた人にどれくらいの範囲なら許せるか聞いてみるか。」
「うん、そうだね。」
そういうことで今日の仕事は終わり、天海先生に名簿と要望をまとめた紙を渡して帰った。
「それでどうだった、学級委員長の仕事は?」
「どうって言われてもまだ全然やってないから分かりませんけど……今日は宮村くんといつもよりお話が出来て楽しかったです!」
「そ、そうか?」
俺は、そんなことを言われ少し顔が熱くなったしまった。
「それなら……まぁ、良かった。」
だから、その顔の熱を隠すように少しそっぽを向きそう言った。
「ふふっ、はい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます