第13話 自己紹介
約1時間ほどの入学式が終わると俺たちは、今さっき来た教室へまたやって来た。
「それでは改めまして、この担任の天海恵理です。よろしくお願いします。」
それから諸連絡や色々と話したあと、教室を見渡し俺と目が合うとにぱぁーと笑った。
嫌な予感。
「それではもうこのクラスの学級委員長は決まっているので早速自己紹介してもらいましょうか。」
先生は、笑顔のまま、そんなことを言い出した。
そして、そのまま教団の前から少し移動するとまた俺の方を見た。
「それでは宮村賢治くん、よろしくお願いします。」
「…………マジですか。」
普通、そういうのって入学してから次の日じゃん。
それを入学式当日にやらせられるとか。
(うちの家族、全員見に来てるんだけど?っていうか俺の名前が呼ばれたことでなんか目をきらきらさせてるんだけど?主に琴音が。)
俺は、仕方ないと思い重いため息を吐きながら席を立ち上がり今さっき先生が立っていた教壇の前に行った。
「え〜……ごほん。この1年間、このクラスの学級委員長になることになりました、宮村賢治です。よろしくお願いします。もし、学級委員長がやりたいとかいう人が俺に言ってください。変わりますので。」
「むぅ〜、ダメですよ、宮村くん。学級委員長は宮村くんって決めたんですから。」
「いや、俺は強制的ですけど自主的にやりたい人とかもしかしたらいるかもしれませんからね。」
「確かにそれはそうですけど……あっ、でも、学級委員長は男女1人ずつなので女子でもう1人必要です。誰かやりたい人はいませんか〜?」
先生は、そう言って周りを見渡すが誰も手を挙げない。
「まぁ、入学初日からすぐには決まりませんよね。仕方ありません。この件は後ほど。」
「なら、俺も後ほどで。」
「残念でした〜。」
「ですよね〜。」
「ん〜……少し話がそれちゃいましたので宮村くん、改めて自己紹介をお願いします。」
「ええっ!?今さっき言いましたよね!?」
「さっきは名前を言っただけじゃないですか。せめて、趣味や何かやっていたことを教えてください。」
「え〜。」
「ほらほら早く言ってください。先生に宮村くんのことをいっぱい教えてくださいね。」
俺は、ため息を吐きつつ再びみんなの方を向いた。
「では、改めまして。このクラスの学級委員長の宮村賢治です。趣味といえるものはありませんがやっていたことと言えば少し武道を嗜んでいます。まだまだ半人前なんですがね。」
「へ〜、宮村くんって武道をやっていたんですね。」
「はい。もちろん、喧嘩などはしませんから安心してください。」
「そこは心配してませんよ。これでも私、人を見る目はあるんですから。」
(それなら俺よりももっと適した人を見つけてその人にお願いすればいいのに。)
「なんですか?」
「なんでもありません。」
「それでは続けてください。」
「ん〜、そう言われても他に言うことは…………あ〜、じゃあ一つだけ。」
俺は、少しだけ間を置いた。
「………俺は、2週間前、ここにやって来ました。でも、7年前まではここで暮らしていたんです。ですが、ちょっと家庭ていざこざがあり、離れることになったんです………というまぁ、俺の他愛もない話です。………みんな、何か困ったことがあったら俺に言ってください。学級委員長として、みんなのクラスメイトの一員としてなるべく助けたいと思っています。あんまり頼りにならない学級委員長と思いますがこれからよろしくお願いします。」
俺は、そう言ってぺこりと頭を下げた。
すると、先生、クラスメイト、保護者全員から拍手を貰った。
俺は、最後にもう一度一礼してから席へと戻っていった。
「宮村くん、ありがとうございました。これから1年間、とても頼りにしてますね。みんなも宮村くんと一緒に頑張っていきましょうね。それでは今日はここまでですね。宮村くん、号令を掛けてくれますか?」
「え?号令って?」
「基本的な挨拶でいいので。」
「わ、分かりました。………起立。」
俺の号令にみんなが一斉に席を立つ。
「気をつけ、礼。」
「「「「ありがとうございました。」」」」
「はい、ありがとうございました。みんな、明日からも元気に登校してくださいね。」
先生がそう言い終わるとみんな、カバンを持って自分の親のところや友人のところへ向かっていた。
俺のところにも星村さんがやって来た。
「宮村くんはこれから帰るんですか?」
「ああ、そうだね。一回帰ってから星村さんのところに行こうと思ってるんだけどダメかな?」
「ん〜、どうでしょう。あっ、それよりも宮村くんの家族に早く会いたいです!」
「ああ、そうだな。今から呼んでくるから星村さんも二人を呼んできてくれ。」
「うん!」
俺は、星村さんと一旦別れてみんなの元へ向かった。
「お兄ちゃん!もう学級委員長に選ばれたの!?すごい!」
「あはは、まぁ、なんか成り行きでね。」
「お兄ちゃんなら最高の学級委員長になれるよ!」
「最高になれるかどうか分からないけどなったからにはちゃんとやるよ。」
「うむ、武道家たるもの、頼まれたものは絶対にやりきること。頼まれるということは信頼されてる証だからな。その信頼を裏切ってはダメだぞ。」
「はい、分かってます。」
じいちゃんからのありがたい武道家の心得を受けたところで星村家、全員がやって来た。
「宮村くん!待ちきれなくてきちゃいました。」
「いや、大丈夫だよ。ほし……じゃなくて蛍さんたちに紹介するね。これが俺の家族。」
俺は、そう言うと少し横にずれて家族全員が見えるようにする。
その後、俺は一人一人自分の家族を紹介していく。
「で、最後にこれが俺の妹の琴音だ。」
「………よろしくお願いします。」
琴音は、細い目で星村さんを見つめてぺこりと頭を下げた。
「うん、よろしくね。これが噂の妹ちゃんか〜。宮村くんからよく話を聞いてましたよ。とっても可愛くていい子だって。」
「ホント!?」
琴音は、星村さんの言葉を聞くと同時に目をキラキラに光らせて俺を見た。
「まぁ、本当のことだからな。」
「えへへ〜。」
「それでみんな、こちらは俺がここで暮らすようになってからよくしてもらっている星村家のみなさんだよ。」
「「「よろしくお願いします。」」」
俺が紹介すると星宮さんたちは、同時に頭を下げた。
俺たちは、その後少し話してここじゃ人に迷惑になるかもしれないのでどこかの店で一緒にお昼を食べようということになり学校を出るため移動した。
その際、ゆっちゃんの方を最後に確認してみたが俺には全く気づくことがなかった。
だが………
「あれ?賢治くん?」
俺は、そう声を掛けられ振り返るとそこには……………
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