第11話 クラス分け
星村さんと2人で学校へ登校する。
(この道は学校への道を覚えるために何度も歩いたが2人で歩いたのは初めてだな。)
「やっぱり誰かと登校するのは楽しいですね。」
俺の隣にいる星村さんが唐突にそんなことを言ってきた。
「確かにそうだけど……星村さんは、誰かと登校したことなかったの?」
「前に話したと思いますけど私、結構転校とか多かったので友だちが余りできなかったんです。それで学校に行くのはいつでも一人でした。」
「ああ、そういうことだったか。なんか、嫌な思い出を引き出させたのならごめんね。」
「ううん、全然へっちゃらです。今は、私、1人ではありませんからね。」
「………確かにそうだな。」
星村さんにそう言われた瞬間、俺は、どこか心がホッと温かくなった。
「あっ!学校が見えてきました。」
「おっ、本当だ。」
俺は、星村さんが指さしたほうを見ると確かに俺たちのこれから通う高校があった。
星村さんは、俺に学校があると教えたあと、歩くスピードが上がった。恐らくだが無意識に早足になっているのだろう。
俺もそのスピードに合わせて星村さんについて行った。
そして、校門をくぐると校舎の入り口の前に人集りが出来ていた。
「クラス分けです!見に行きましょう!」
星村さんが楽しそうな表情で駆けて行った。俺もその後を追い掛ける。
(ゆっちゃんと同じクラスではありませんように。)
そんなことを少し願いながら。
「………あっ!見てください、宮村くん!私たちの名前、同じ欄にあります!ってことは一緒のクラスってことですね!」
星村さんが言う通り、確かに俺と星村さんの名前が同じ欄にあった。クラスは、1年4組だ。
「ああ、そうだな。まずはこの1年、一緒のクラスで頑張ろうな。」
「はいっ!」
俺は、星村さんの返事を聞いたあと、もう一度クラス分けが書かれている表を見た。
そこで俺は、白神由美の名を探す。
「……………ぁ」
「ん?どうしたんですか、宮村くん?」
「い、いや、なんでも………」
同じ欄に白神由美の名を見つけた。ということは、俺と同じクラスということだ。
(正直、まだ心の整理がついてないから顔を見ずらいのだが……)
「あっ!由美、見て!私たち、みんな、一緒のクラス!」
「ホントだ。また、みんなで一緒になれたね。」
「っ!」
俺は、その声を聞いた瞬間、背筋が凍るようなそんな感覚に襲われた。
「ん?本当にどうしたのですか、宮村くん?」
「ぁ、いや……大丈夫だ。」
「そ、そうですか?なんだか汗をかいてますけど……」
俺は、そう言われ額を擦る。
「あはは、ちょっと人混みで暑くなっちゃったみたい。さっ、そろそろ教室に上がろうぜ。」
「………無理しちゃダメですからね。」
「分かってるよ。」
俺は、そう言って星村さんと一緒に校舎へと向かう。
結局あの時は、ゆっちゃんの顔を見ることが出来なかった。
俺は、そのことにホッとしているのか、落胆しているのか分からず変な気持ちを抱いたまま校舎に着く。
「あっ、宮村くん!」
「ん?」
急に名前を呼ばれ前を向く。
そこにはこの頃、あまり会っていなかった佐藤先輩がいた。
「佐藤先輩、お久しぶりです。」
「うん、久しぶり。制服、ちゃんと似合ってるね。カッコイイよ。」
「ありがとうございます。先輩の学生服姿を見たのは初めてなので新鮮です。ちゃんと着こなせていて先輩って感じがします。」
「そりゃ、先輩だからね。っと、その隣の子は?」
佐藤先輩は、俺の隣にいた星村さんに目を向けた。
星村さんは、自分のことを尋ねられたと気づき少し姿勢を正して挨拶をした。
「はじめまして。私は、今年からこの学校に入学することになりました星村蛍と申します。宮村くんとは家が隣同士で仲良くなったんです。これからよろしくお願いします。」
「よろしくね。私は、佐藤綺音って言うの。別に私そんな偉くないから敬語なんか使わなくていいいからね。」
佐藤先輩は、挨拶をし終えると一旦ごほん、と咳をして自分の仕事を全うするために少し姿勢を正した。
「それじゃ、教室に案内するね。2人とも、同じ教室?」
「はい、そうです。」
「そっか。それじゃ、私についてきて………って、その前にこれを言わなくちゃね。」
「ん?まだ何かあるんですか?」
「宮村くん、星村さん、入学おめでとう。ようこそ、城ヶ崎高校へ!」
佐藤先輩にそう言われ俺は、本当にこの高校へ入学したんだなという実感が湧いてきた。昔から、ずっと入学したいと思っていた高校に………何か、大切なものを失って、この高校に入学したんだ。
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