学園編
第9話 入学式当日の朝
この街に来て2週間ほど過ぎた。
俺は、この期間ずっとどこか心にぽっかりと穴ができたような感覚があり何をしようとも無気力だった。
だけど、嬉しいと感じることはあった。それは、俺が一人暮らしと知ってお隣さんの星村さんがよく料理を教えてくれたり作ってくれたりすることだ。そのおかげで星村さんとはだいぶ仲良くなれた気がする。それと時々あの喫茶店に行って佐藤先輩と話すことだ。佐藤先輩は、いつも俺が来たら話をしてくれる。そういうサービスがあるのかは謎だが俺はそれで結構助かっていることがある。
この街に来てからその2人には結構助けられたのだ。今度、お礼もしておかないといけないな。
「さて、これで明日の準備は出来たかな。」
俺は、結構大きめな新品のバックの中身を確認してそう言った。
明日は、高校の入学式だ。新品な制服に新品なバック、それを今日中に準備しておいたのだ。
(明日は、初めての登校だから少し早めの7時45分くらいに出ようと思っているのでそろそろ寝ようかな。)
俺は、そう思い寝室のベットに横になる。
「明日から学校か……」
期待や不安が織り交ざりその日は、なかなか眠れなかった。
「………ゆっちゃん……」
翌日、俺はなかなか眠れなかったのに朝早く起きてしまった。
まぁ、別に早起きすることはいい事なのでそのまま体を起こし朝の準備をする。
そして、7時ころ、家のインターフォンが鳴った。
(もう来たのか)
俺は、そんなことを思い玄関へと向かう。
そして、ドアを開けると
「おっはようございま〜す!」
「ははっ、朝から元気だね。おはよう。」
「それは当然ですよ!今日から高校生なんですから!」
「確かにそうだな。」
俺の家へとやって来たのは隣に住んでいる星村さんだ。星村さんは、なんと俺と同い年で同じ高校に行くということをこの前知った。
(正直、琴音と同い年、いや、それよりももっと下と思っていた。)
なんてことは本人の前では言えない。きっと、怒るから。星村さん、結構身長とかそういうこと気にしてるようだし。
「朝食、今から食べようと思ってたんだけど……」
「多分そうかなって思ってちゃんと作ってきましたよ。」
星村さんは、そう言って持っていたバスケットを開けた。
バスケットの中には綺麗に並べられたサンドイッチが入っていた。
「おお、美味しそう。」
「ふふ、そうでしょ?朝早く起きて頑張って作りましたから。」
「なんか、いつも作ってもらってるようで悪いな。」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。さっ、早く食べましょう。」
星村さんは、そう言って俺の家に入った。
そのままリビングへと来てテーブルの上にバスケットを置いた。
俺は、冷蔵庫からお茶を取りだしコップに注ぐ。
「それじゃ、食べようか。」
「はい、そうですね。それでは……」
俺たちは、一緒に合掌をした。
そして、そのままサンドイッチを食べていく。
「あれ?そういえば星村さんの親は?今日は、高校の入学式だからってわざわざ休みをもらったんだろ?」
「はい、そうですね。でも、昨日夜遅く帰ってきたからまだ寝てるんですよ。」
「そういう事か。ってことは、また帰るんだよな?制服も来てないし。」
「はい。あ、お父さんとお母さんが宮村くんの制服姿も写真撮りたいって言ってましたよ。」
「え?俺のも?」
「はい、お父さんとお母さん、宮村くんのこと、すごい気に入ってるようですから。」
「い、いやぁ〜、そう言われるとなんだか照れるな。」
俺は、恥ずかしさから頬をポリポリとかく。
「そういえば宮村くんの所の家族も来るんですよね?」
「ああ、そうだな。多分そろそろ着く頃だと思うよ。」
「それでは、今日、私の家族と宮村くんの家族で夕食一緒に食べませんか?ご馳走、いっぱい作りますので!」
「おっ、それいいな。でも、星村さんにだけ、料理させるのは悪いから俺も手伝うよ。俺の上達した料理の腕前も見てもらいたいし。」
「そうですね。その方が宮村くんの家族も喜ぶでしょう。」
「ははっ、そうだと嬉しいな。」
そう話しているところで俺のスマホの着信が鳴った。
スマホの画面には琴音と書かれている。
俺は、星村さんに電話に出ることを言ってリビングから出ていき通話ボタンを押した。
『お兄ちゃん、出るのが遅いです。』
「悪い、悪い。朝食を今、食べてたところだったんだよ。それで、もう着いたのか?」
『ううん、まだ着いてないよ。後、20分後に着くかな。』
「20分後か。分かった、それくらいに駅に迎えに行くよ。」
『うん、お願いね。』
「ああ、分かった。それじゃ、もう切るな。」
『もう切っちゃうの!?』
「こっちにも準備があるんだよ。また、すぐに会えるよ。」
『うぅ〜……分かった。それじゃ、またね。』
琴音は、最後にそう言って通話を切った。
俺は、それを確認するとスマホをポケットにしまいリビングに戻った。
「悪いな、待たせちゃって。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。電話の相手は宮村くんの家族ですか?」
「ああ、妹からだった。後、20分後に着くって。」
「そうなんですか。それじゃ、そろそろ私は家に帰りますね。お父さんとお母さんも起こさないといけないので。」
「ああ、分かった。それじゃ、また学校でな。」
「はい、また学校で。」
星村さんは、笑顔でそう言ってバスケットを持って帰っていった。
「さて、そろそろ着替えて俺も家を出るかな。」
俺は、自室に吊るしておいた制服に着替えて家を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます