第7話 君と出会って
「それじゃ、そろそろ出ます。」
俺は、俺のすぐ側で自分が作ったサンドイッチ感想を聞いていた佐藤先輩にそう言って席を立った。
「そっか。それじゃ、会計に行こっか。」
佐藤先輩もそう言って席を立つ。
そして、2人でレジまで行き会計を済ませる。
それを終えて店を出ようとする俺に佐藤先輩が声を掛けてきた。
「宮村くん、感想聞かせてくれてありがとね。またいつでも来て感想聞かせてね。」
「はい、俺の感想なんかでよければまた来ます。」
「うん!約束だよ。」
俺は、「はい」と返事をしてから店を出た。
「それじゃ、街の散策でもしようかな。」
俺は、今日の予定を街の散策と引越ししてからまだ隣への挨拶に行けてないので行く時用の菓子折りでも買おうと決めた。
まずは、過去の記憶と今の街を照らし合わせてどこがどう変わったのかを確認する。この街は、俺の思い出の街だ。昔、この街に何があったのかくらいはよく覚えている。
それでも街は変わってしまっているのでまた1からこの街を知る必要がある。
「まぁ、まずは家に帰って、それから学校へのルートを辿るとするか。」
(その時に何かいい店があったらそこでお菓子を買えばいいか。)
俺は、まず家まで向かう。記憶力はいい方なので2回目の帰宅となれば何も見ずに家に帰れる。
家と喫茶店までは約10分くらいで着くのでこの街がどう変わっているのだろうかと想像しているとあっという間に着いてしまった。
俺は、そのまま家に入らず城ヶ崎高校の道を覚えるためスマホのマップを頼りに歩いて行く。
スマホの学校に到着する時間は約15分後になっている。
街をゆっくり見たいと思っている俺は、恐らくその予想時間を大幅に超えるだろう。
「まっ、時間はいっぱいあるしたまにはこういう散歩もしたいよな。」
俺は、そんなことを呟きながら街の中を歩く。
そこから色々な店を見て回る。
「やっぱり色々と店を新しくなってるな〜。」
昔あった店がなくなり新しい店がそこにはある。
俺は、今まで山奥に住んでいたので珍しいものもたくさんある。なので、俺は色々な店に入ってしまった。
(無駄遣いは出来ないから菓子折り以外は買う気ないけど。)
店を回っていくと菓子折にちょうどいい和菓子屋が見つかった。
「菓子折はここで買っていくか。」
俺は、菓子折を買うところを決めて学校への通学路を再び歩き出した。今、ここで菓子折を買ってしまうと無駄な手荷物になるので帰りでいいと思った。
家を出てから約1時間、ようやく学校に着いた。
「今のでだいたい通学路は覚えたかな。」
学校の中は春休みなので部活動の声が聞こえるだけだ。
「そういえば部活はどうしよっかな。」
俺は、中学の時はじいちゃんに稽古をつけてもらうため部活には入らなかった。でも、部活に励んでいる生徒を見ると楽しそうだなっていう憧れも少なからずあった。
(まっ、でも、俺は部活よりもバイトだな。せっかく佐藤先輩が誘ってくれたんだから。)
俺は、そう思い部活動に励んでいる生徒の声を後ろで聞きながら来た道を戻っていく。
「……………っ!」
学校からの帰り道、思いもよらない遭遇をしてしまう。
「…………………ゆっちゃん………」
ゆっちゃんがこの前の2人と一緒に学校の方へと向かっている。
(これは、声をかけるチャンスだ。)
俺は、そう思いゆっちゃんに向けて足を動かそうとした。
「……………あれ?」
だが、足が全く動いてくれなかった。
「な、なんで………」
(せっかくのチャンスを無駄にしてしまう。)
そう思ってるのに足が縛りつけられたように動かない。
(で、でも、この距離だ。ゆっちゃんが気づいて声を掛けてくれるはずだ。)
ゆっちゃんたちは、そのままどんどん近づいてきて………あと数メートルというところでゆっちゃんと目が合った。
「っ!」
俺は、その瞬間、声を掛けようと口を開いたものの声が全く出ない。
俺は、口をパクパクさせながらゆっちゃんを見る。
ゆっちゃんは、そんな俺を見て足を止め…………なかった。
そのままゆっちゃんは、俺の横を通り過ぎていった。
「……………………ぇ……………」
俺は、目を見開き今起こったことがありえないとばかりにゆっちゃんの方を振り返った。
ゆっちゃんは、少し遠くで友だちと楽しそうに話していた。
「……………ゆっちゃん………もしかして、俺のことを………忘れちゃった………のか………」
俺は、震えた声でそうぽつりと呟きその場に少しの間、動けずにずっと立ち尽くしていた。
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