第2話 入学試験
高校入試の当日。
俺は、泊まっていた旅館から中学の制服を着て必要な道具を持ち受験する高校に向かった。ちなみにこの旅館は父さんの知り合いが経営しているので中学生の俺でも一人で泊まることが出来るのだ。
高校の校門を通りまずは辺りをキョロキョロと見回す。俺は、人が一番多く来そうな時間帯に合わせて来たのでもしかしたら会えるかもしれないと思った。だが、さすがに受験生の数が多すぎるので一見しただけでは特定の人物を見つけることが出来ない。それにあの女の子が行っている中学が分からないのでどんな制服かも分からない。
俺は、ここで見つけるのは諦め受付をしていた高校の先生と思われる人に受験票を渡し受験会場となる教室へと案内してもらう。
そして、教室に案内されてからまた、教室内を見回す。
(あの子は……いないか。)
俺は、心の中でそう呟いて落胆する。
そして、入試の時間になるまで一応中学の勉強の復習をする。
そして、入試の時間になると高校の先生が教室の中に入ってきて入試に対する注意事項を言ってテストを配り始めた。
試験時間は、50分。だと言うのに俺は、全ての問題を30分も経たずに全て解き終わり見直しも済ませた。20分もの暇な時間をボッーとしながら過ごす。そんなことを午前の三教科、国語、数学、英語を全て同じようにして過ごした。
そして、午前の教科が終わると昼休みだ。周りのみんなが勉強しながら昼食を取っている中、俺だけコンビニで買ってきたおにぎり二つを食べる。
そして、食べ終わるとトイレに行こうと思い教室を出る。その際、他の教室もパッと見たのだがあの女の子の姿はなかった。
(ほかの受験教室なのかな?……もしくは……)
俺は、頭をブンブンと振り嫌な予感を頭の中から消し去りトイレに向かった。
そして、午後の入試も難なく時終わり入試を終えた。面接とかはないので後は家に合格通知か不合格通知が来るのを待つだけだ。
(結局ゆっちゃんに会えなかったな。)
俺は、落胆しながら校門を出た。
すると見覚えのあるような、ないような女の子の後ろ姿が見えた。
その女の子の左に同じ制服の女の子1人、右に学ランの男の子1人がいた。
俺は、その女の子をずっと目で追っていった。
「………ゆっちゃん………」
俺は、無意識にそう呟いていた。
だが、俺のその声はその女の子には届かなかった。
そして、その女の子が曲がり角を曲がった時、チラッと顔が見えた。そして、俺は確信した。あの子は、正しく俺の知っている幼なじみの
「………俺のこと……覚えてくれてるかな………」
久しぶりに会えたことの感動と俺のことを覚えてくれているかの不安が頭を過った。
だが、今日は会えたことを喜び旅館へと帰っていった。
そして、旅館の部屋の中に帰ると学校用バックの中に入れておいたスマホを取り出した。
そして、その中から
『もしもし!お兄ちゃん!』
スマホから聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえる。この声は紛うことなき俺の義妹、琴音の声だ。
「うん、お兄ちゃんだよ。」
『入試どうだった?』
「多分できたと思うよ。」
「えへへ、別に不安はなかったけどそれを聞いて安心したよ。明日の昼くらいに帰ってこれるんだったよね?」
「ああ、明日の朝には出発するからちょうど昼くらいに着くと思う。」
『なら、昼ごはん用意しておくね!勝手に食べちゃダメだよ?』
「分かってるよ。久しぶりの琴音の手料理、楽しみにしてる。」
『うんっ!あ、お母さんが呼んでるから切るね。ちゃんと怪我しないで帰ってきてね。』
「ははっ、電車とか使って帰るんだから怪我なんかしないよ。」
『油断は要注意って何度もおじいちゃんに怒られてるでしょ!本当に気をつけてね!』
「分かったよ、注意する。」
『約束だからね。怪我してたら怒るからね。』
「はいはい、それよりも母さんが呼んでるんだろ?早く行ってあげろよ。」
『あ、そうだった。じゃあね、お兄ちゃん。』
「ああ、また明日。」
俺は、別れの言葉を告げて電話を切った。
琴音ったら俺がこの旅館に泊まってる間は必ず最低1回でも電話をして来てとお願いしてきた。心配性だなって思いつつ俺はそれを許諾する。
(さて、帰りの準備をするか。)
俺は、今から必要ではないものをバックの中に入れて帰りの支度をする。
そして、帰りの支度が済んだところで風呂へと向かう。今日の一日の疲れを落とす。
(今日はゆっちゃんに会えただけで良かったな。………でも、あの隣にいた男の人、もしかして彼氏だったりするのかな。結構仲が良さそうだったけど。)
俺は少しモヤモヤとしながら風呂から上がる。
(今度、入学する時にもし、また会えたら聞いてみようかな。今日は話すことも出来なかったし。)
俺は、ゆっちゃんが合格したことを願いつつ食堂へ行き昼食をとるのだった。
そして、翌日、琴音に言われた通り怪我に注意して帰宅する。琴音は、俺が無事に帰ってきたことに安心していた。それと約束通り昼食を作ってくれていた。
「お兄ちゃん、合格通知が来るのっていつだっけ?」
「確か、入試から一週間後だから2月24日だな。」
「そうなんだ。早く結果を知りたいね。」
「ん?ああ、まぁな。」
正直あのテストで落ちる気はしなかった。
そして、一週間後、無事合格通知が俺の元へとやってきた。
あとは、ゆっちゃんが合格していると信じて入学式に行くだけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます