第171話【風邪2】

「ん?」


俺はおでこに広がるヒンヤリとした冷たさで目が覚めた。


「あ、起こしちゃった?

ごめんね」


「ああ、沙耶か。

来てくれたのか。

わざわざ悪いな」


俺はおでこの冷たさが冷えピタである事を右手で確認しながら、寝ている俺を覗き込むような体制でいる沙耶の方を見る。


「うん、カエデちゃんから連絡もらってね。

カエデ凄く慌ててたよ」


「はははっ。

あいつは心配しすぎなんだよ。

ただの風邪だよ風邪」


「いい妹だよね、カエデちゃん」


「まーな」


「そう言えば快人くん、お腹すいてない?

お粥でも作るよ」


「じゃあ、お願いしようかな」


沙耶の言葉でお腹が空いていることに気づき、ちょうど昼時ということもあったので素直にお願いすることにした。


「はい、任されました。

快人くんは大人しく寝ててね」


沙耶はそう言い残してお粥を作りに部屋から出ていった。


「お兄ちゃん?

体調はどう?」


沙耶が出ていったと思ったら次はカエデが部屋に入ってくる。


「カエデか。

朝よりはだいぶマシになったよ。

今から熱を測るけど多分下がってると思う」


「そう、よかった」


俺の言葉にカエデは心底安心したような表情をする。


「沙耶に連絡したってことは母さん達にも連絡したのか?」


「ううん、してないよ。

お兄ちゃんのせっかくの夫婦水入らずを邪魔したくないって気持ちはわかるし、とりあえずお兄ちゃんが起きてからの体調次第で決めようと思って」


「じゃあ、必要ないよ。

カエデと沙耶のおかげで大分楽になったから」


「ん、お兄ちゃんの言葉は信じられません。

ちゃんと体温計で熱を測ってから決めます」


そう言ってカエデはグイグイっと体温計を押し付けてくる。


「はいはい、わかったよ」


俺は素直に体温計を受け取り脇に挟む。


「カエデと沙耶はもう昼飯食べたのか?」


「ううん。

沙耶さんがお兄ちゃんのお昼ご飯を持ってきたら私が作るよ」


「いつもすまないねぇ〜、俺が元気なら美味しいご飯を作ってあげられたのに」


「お兄ちゃん、それは言わない約束でしょ」


ピピピピッ


「お、鳴ったな」


俺とカエデがつまらない小ネタを挟んでいると脇に挟んでいた体温計が鳴った。


「やっぱり下がってるな。

ほら、カエデも見てみ」


「どれどれ?

あ、本当だ。

37.5°まで下がってる。

これならお母さん達に連絡しなくてよさそうだね」


「ああ」


「カエデちゃん。

ちょっとドア開けてくれない?」


カエデとそんな話をしていると部屋の外から沙耶の声が聞こえてきた。


「はいはーい」


「ありがとう。

快人くん、お粥持ってきたよ」


カエデが開けた扉からお粥が乗ったお盆をもった沙耶が入くる。


「ありがとう」


「じゃ、私は自分と沙耶さんのお昼ご飯作ってくるね〜」


「おう」


「カエデちゃん、ありがとう」


「いえいえ、ごゆっくり〜」


そう言ってカエデは沙耶と入れ替わりで部屋から出ていく。

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