第170話【風邪1】

「うぅぅ、頭いてぇ〜、身体だるい〜」


朝起きると体を起こすのが難しいと感じる程の身体のだるさと、ズキズキとした頭の痛さがあった。

おそらく久しぶりに風邪をひいてしまったのだろう。


「お兄ちゃ〜ん。

まだ起きないの〜?」


何時もは遅くても9時には起きているのにも関わらず、9時半をすぎても起きてこないことに心配たカエデが俺の部屋に入ってきた。


「おぉ、カエデか。

おはよう」


「うわっ!

お兄ちゃん顔真っ赤だよ!

風邪だよ風邪!

えっと、風邪ひいた時は何するのがいいんだけっけ?

とりあえず病院?

お母さんに電話?

えーっと、えっーっと!」


余程俺の顔色が悪いのか部屋に入ってきて直ぐに俺が風邪を引いていることに気づいたカエデが慌て出す。


「一旦落ち着け。

とりあえず、水と体温計を頼む」


「う、うん!

ちょっと待っててね!」


カエデの騒ぎ声が頭に響き、その痛みに耐えられなかったのでカエデに水と体温計を取りに行くよう頼み部屋から追い出す。


「はぁ〜、風邪なんて何年ぶりだろう?」


俺の記憶ではここ二、三年、風邪を引いた事が無かったので、風邪はしんどいものだというあまり前のことを忘れかけていた。


「お兄ちゃん、持ってきたよ」


そう言って、水の入ったコップと体温計を手に持ったカエデが部屋の中に入ってきた。


「ゴクッゴクッゴクッ、はぁ〜」


俺はカエデから受け取った水を勢いよく飲む。


「はい、体温計も」


「ああ、ありがとう」


飲み終わったコップと引き換えに体温計を受け取り、電源をつけ脇に挟む。


「お兄ちゃん、大丈夫?

病院行った方がいいんじゃない?」


カエデは余程心配してくれているようで、ソワソワしながら話しかけてくる。


「いや、いいよ。

母さんもいないし、このしんどさで歩いて行くのは無理だ。

それに一日寝てたら治るかもしれないしな」


母さんはまだ父さんのと旅行を楽しんでいる最中で家にいない。

電話をすれば帰ってきてくれるとは思うが、ただの風邪で久しぶりの夫婦水入らずの所を邪魔したくはない。


「で、でも。

ほら、タクシー呼べばいいしね?」


「んー、でもなぁ〜。

お、なったな」


ピピピピッと脇に挟んだ体温計がなり、体温を測り終えたことをアピールする。


「んー、38.2℃か。

思ったより高いな」


「ほら〜!

お兄ちゃん、病院行こ!」


「ああ、もうわかった、わかったから。

とりあえず眠たいから一度寝る。

起きてまだ熱が下がらなそうなら病院行くってことでいいだろ?」


「うぅ〜」


「そう、膨れるなって。

カエデ、水枕を作って持ってきてくれないか」


「うん、わかったよ。

絶対に起きたら病院行くんだよ!」


「ああ、熱が下がってなかったら病院に行くよ」


俺がそう言うとカエデは少し不安な顔をしながらも水枕を作りに部屋から出ていった。

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