第168話【ノーと言える人は珍しい?】

カエデがリビングから出ていってすぐお好み焼きが焼けたので鉄板の火を消してマヨネーズ、ソース、青のり、鰹節と乗せていき完成させる。

そして、先に食べるかもう少し待つべきかを考えていると、ドン!と勢いよく扉を開け部屋に入ってくる。

そして、キメ顔でグッとサムズアップをする。


「琴音が二つ返事でおっけーしてくれた!」


「なんでだよ!」


カエデが部屋から出ていってから十分程しか経っておらず、この短時間で将来に関わる事柄の説明、説得なんて出来るわけが無いと思っていたので、断られたのだろうと思っていた。

しかし、カエデの口から出た言葉は俺の予測に反し、琴音ちゃんが了承したとの報告だった。


「え?

普通に

『お兄ちゃんの力になるのが妹分として当然の責務だよね!?』

『え?ええ?』

『うん、やっぱりそうだよね。さすが琴音。じゃあ、将来の夢はお兄ちゃんを支えるために弁護士とか税理士になる事だよね!一緒に勉強頑張ろうね!』

『え?う、うん。頑張ろうね〜』

『じゃあ、私はお兄ちゃんとの夕食だからまた詳しいことは夜に話すね!また後で!』

『う、うん、わかった』

って感じであっさり決まったよ〜」


カエデが全く似ていない琴音ちゃんの声のモノマネをして電話での会話を再現する。


「いやいや、琴音ちゃんほとんどなんも言ってないだろ!

お前が押し付けただけだろ!」


会話っていうのは言葉のキャッチボールなの!

千本ノックしないであげてくれるかな!?


「違うよ〜。

琴音は今の日本人では珍しくちゃんとノーって言える人だよ!

どれだけ私が押しても嫌な事は嫌って言うもん!

だから断られなかったってことはオッケーって言うことだもん!」


「ほんとかよ」


「本当だよ!

可愛い妹を疑うなんて、もう、プンプンだよ!」


カエデは腕を組んで頬を膨らませプンプンと怒る。


いや、可愛いけどさ〜。

信用は出来ないよね〜。

後で琴音ちゃんにはちゃんとお詫びのメッセージ送っておこう。


「はいはい、ごめんごめん。

もう、お好み焼き出来上がってるから食おうぜ」


お腹がすいていた俺は適当にカエデの話を流して昼食を食べようと箸を取る。


「わーい!

って、誤魔化されんが!?」


「じゃあ、一人で食べるよ。

頂きます。」


「あー、待って待って、食べる食べるから〜」


「それなら早く椅子に座れ」


「はーい」


「「頂きます」」


こうして兄妹の和やかな夕食が始まるのだった。

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