第167話【お好み焼きと将来】

「カエデさんや」


「んー?」


「カエデって将来の夢とかあるのか?」


俺達はそのままダラダラと過ごした。

そして、夜になってお腹がすいてきたのでホットプレートを出してお好み焼きを作ることにした。


「今は無いかなぁー。

前まではお兄ちゃんのお嫁さんになるっていう立派な夢があったけっどっと!

あ、お兄ちゃんの愛人とかどう?」


カエデはそう言ってホットプレートに乗っているお好み焼きをひっくりがえす。


「それは立派な夢だな。

お兄ちゃん感激だよ。

で、本当に何かないのか?

入りたい大学や会社があるとかさ」


俺はカエデの戯言を流し少し落ち着いた声色で話す。


「んー。

本当に全く無いんだよねー。

それにしてもいきなりどうしたの?」


「いや、さ。

カエデが母さんの会社に入れてって言ってたからさ」


「まぁ、何となくわかってると思うけど母さんの会社とかどうでもいいんだよね。

私はお兄ちゃんの側にいたい。

それで出来ればお兄ちゃんに頼りにされたいの。

あ、これって一応夢になるのかな?」


「カエデがそう言ってくれるのは嬉しいよ、本当に。

でも、カエデの人生なんだ、俺の為じゃなくて自分の為に生きて欲しい」


「お兄ちゃんは勘違いしてるよ。

この夢はお兄ちゃんの為じゃなくて私の為なんだよ。

私自身のワガママなんだよ」


「そうか」


カエデの言葉に俺はどう返したらいいかわからず素っ気ない返事になってしまった。

先程も言った通りカエデが俺の事を慕ってくれているのはとても嬉しいことだ。

だが、俺がカエデの可能性を妨げる壁になっているのではないかという不安が同時に襲ってくるのだ。


「あー、改めてそう考えると別にお母さんの会社に入らなくてもいいのかな?

法律の勉強とか税理士の勉強としてそっち方面で支えるのもありかも」


「どちらにしろ勉強頑張らないと行けない職業だな」


カエデは決して勉強が出来ない訳ではないので本気を出せばどちらにもなれる可能性はあるのでは無いだろうか。


「勉強きらーい」


「おい」


「むーわかったてるよー。

琴音を巻き込んでちゃんと勉強しますー」


「琴音ちゃんは巻き込むなよ。

琴音ちゃんだってやりたいことの一つや二つあるたろうし」


「大丈夫大丈夫。

琴音もお兄ちゃんのこと大好きだから誘ったらホイホイ着いてくるって」


「琴音ちゃんをお前と一緒にするな。

琴音ちゃんはお前と違って賢い子何だからな?」


「むー!

そう言うなら証明してあげるよ!

ちょっと待ってて!」


カエデはそう言って椅子から立ち上がり携帯を手に持ちリビングから出ていった。

恐らく今から琴音ちゃんに電話をするつもりなのだろう。


「お、おい。

お好み焼き!」

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