第166話【カエデと二人きり】
「じゃあ、私達行ってくるから〜」
「父さん達行ってくるからな。
お前達に限って心配はないとは思うが仲良くするんだぞ」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「お土産よろしくね〜」
沙耶と美陽さんと夕食に行った次の日、母さんと父さんは昨日までの疲れは無いのかびっきりの笑顔でまた旅行に出かけて行った。
「おにーいちゃん♪」
母さん達が家から出て直ぐ、カエデが文字に起こした時に語尾に音符が着いてるとしか思えない弾んだ声でソファーに座っている俺を呼び、寄り添ってくる。
「どーしたんだ?
久しぶりだな。
カエデがこんなに甘えてくるなんて」
「久しぶりに二人っきりでゆっくり出来るんだからいいじゃん」
「そうだな」
昔はこうやってカエデがくっつきに来て一緒にテレビを見たり勉強をしたりしていたが、何時からかその頻度は減っていき、沙耶に告白されたあたりからは全くひっつきに来なくなった。
恐らくカエデなりに気を使ったのだろう。
俺的にも可愛い妹にくっつかれて嬉しい部分もあった為、段々回数が減っていき、全くひっつきに来なくなった時は少し寂しかった。
しかし、カエデがいい出会いを果たし、幸せになるためにもぐっと堪えるのが兄としての務めだろうと思っていた。
「せっかくだし二人でどっか出かけるか?」
「んー、今日はいい。
こうして二人でダラダラしてたい」
「おっけ〜」
それから昼まで二人寄り添いながらテレビを見た。昼飯は二人でぱぱっと作って食べ、またソファーで寄り添いながらボーッとテレビを見たり携帯を弄ったりしていた。
二人の間には特に会話をする事は無く、ただそこに互いが居るだけでいい、そんな雰囲気である。
「なぁ〜。
カエデは最近変わったことは無いのか?」
俺は何となくそんな話をカエデに振った。
「んー?
別にないけど?
どうしたのいきなり?」
「いや、最近俺と沙耶のことばかりでカエデの事とかあまり聞いてないなって思ってな」
「そういえばそうだね。
前までは私の事ばっかり話してたのに不思議なもんだ」
「母さん達もちょくちょく言ってたけど好きな人とかまだ出来ていないのか?
居るなら早く言えよ、どんなやつか見に行かないといけないしな」
「シスコン」
「何だい、ブラコン」
「てか、その話なんだけど私の好きにしてもいいのかな?」
「その話って好きな人の話か?」
「そそ。
漫画とかドラマだと政略結婚とかあるじゃん。
ほら、一応私って大企業の社長の孫で次期社長の娘になるわけだし」
「あー、なるほどな。
まぁ、大丈夫だろ。
おじいちゃんも母さんも政略結婚とか嫌いそうだし。
それにもしもの時は俺が護ってやるよ」
「だよね〜。
頼りにしてる」
そう言ってカエデは俺の膝に頭を乗せ目を瞑り寝息を立てはじめた。
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