第159話【位置について、よーい!】

「はい、位置についてー!

よーい」


ぴっ!!!


バシャーン!!!


沙耶の掛け声とカエデが何処からか持ってきた本格的な水泳大会とかで使われる電子式スタート音発生装置の音を合図に俺とカエデはいっせいにスタート台からプールへと飛び込む。


俺とカエデは別に水泳を習っていた訳ではないのでこの勝負は単純に運動神経が良いカエデの方が有利な気がする。

俺が勝てるとしたらカエデよりもある身長と筋力を使ってスタートとターンの時の加速で大幅なリードを取るしか無い。


俺の考えていた通りスタートで上手く差を開くことに成功したが徐々に差を詰められほぼ同じタイミングのターンになってしまった。


しかし、ターンでしっかりと差を開けることが出来たので後は気合いで頑張るだけだ。


「?」


75メールを過ぎたあたりでカエデとの差を確認しようと軽く左斜め後ろをに目を向けたがカエデの姿が見当たらない。


あれ?おかしい。

ターンまでの事を考えるともう追いついてきていてもおかしくないのに姿が全く見えない。

スタミナが無くなりペースダウンした結果か息が続かなくなったので一度立ち上がっていると考えるがカエデの運動神経やスタミナを考えるとその可能性はとても低い。現にカエデより運動神経やスタミナが低い俺がまだ泳げているのだから。


俺は慌てて泳ぐのを中断し立ち上がり左斜め後ろに振り返る。


そして、振り返った瞬間猛スピードのカエデが俺の横を通過して行った。

横を通り過ぎる直前、カエデの顔を確認することが出来たがその顔は「してやったり」と言わんばかりの顔だった。

今から急いで追いかけても勝ち目は無いのでカエデのゴールを見守るしか無かった。

こいつは俺が後ろを確認した時にカエデの姿が確認できなければ心配し立ち上がり確認するだろうと考えわざとスピードを落としスタミナを温存し、ちょうど俺が泳ぐのを中断した途端全力を出したのだ。

俺がシスコンであることを考慮した頭脳プレイと言えよう。


「ぷはぁ〜。

私の勝ちぃ〜!」


ゴールの壁をタッチし立ち上がったカエデは凄いドヤ顔で勝利を宣言する。


「この〜!

カエデ、騙しやがったな!」


「ふふ〜ん。

それも作戦だよ」


「あはははっ!

あいつ騙されてやんの〜!

このシスコン野郎!

あはははっ!」


「そんな笑ってやるなよ。

快人の優しさが出た結果だろ?」


プールサイドに置いてあるいい感じの椅子に座ってこの勝負を見ていた母さんが大爆笑する。


「まあまあ、快人くん落ち着いて」


慌ててゴールまで行きカエデに文句を言おうとした所を沙耶に止められる。

賞品にされている沙耶が止めるのであれば俺が何かを言うのは筋違いな気がしたのでぐっと堪える。


「勝負は残念だったけど快人くんのそういう優しいところが大好きだよ」


「ありがとう。

済まないが今日の夜はカエデに付き合ってやってくれ」


「うん。

カエデちゃんは私の妹になるんだからそのぐらいどうってことないよ」


「お、おう。

頼んだ」


______________________________

お久しぶりです!

サボり癖が、、、。

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