第147話【へんたーい】

「快人くん、起きて」


「んぁ?」


「あれ?

沙耶もう着替えたのか?」


「何言ってるの、もう夜だよ?」


「あ〜」


どうやら軽く寝るつもりが熟睡してしまったらしい今夜ちゃんと寝れるかな?


「晩御飯出来てるよ、早く行こ」


「おう」


俺は目を擦りながらゆっくり立ち上がりフラフラと沙耶に着いてリビングに向かう。


「やっと起きてきた。

早く座りなさい」


「お待たせ」


「それじゃあ皆揃ったし食べるか」


「頂きます」


皆がそれぞれ挨拶をして食べ始める。


「沙耶、今日の巫女体験はどうだった?」


「楽しかったのは楽しかったけど、あれは巫女体験って呼んでいい物じゃないよ。

皆が言ってたようにただのコスプレの写真会だったよ。

写真撮られてるだけで何も仕事してないもん」


楽しかったと言いつつも少し拗ねているようだ。

まあ、もっとちゃんとした巫女体験したかったんだろうな。

本当に変な神社でごめん。


「沙耶さんすごい人気だったよ!」


「そうそう!

おかげで今日の売り上げ凄いことになったぞ!

正月も頼みたいぐらいだ!」


「え、えーと」


叔父さんは上機嫌で沙耶を正月の手伝いに誘っているが沙耶は乗り気では無いみたいだ。


「ああ、そうかい。

ならちゃんと皆への小遣いプラスしてやるんだぞ。

それと正月は俺とのデートがあるから無理だ」


「やっぱり、そうだよなぁ〜。

仕方ないよなぁ〜。

でもよ、一日ぐらいなら大丈夫なんじゃないか?」


「あんたいい加減にしなさいよ。

沙耶ちゃんが嫌がってるのがわからないのかい?」


「すみませんでした」


叔母さんのすごい形相に叔父さんやられ、素直に謝た。


それからは晩御飯を済ませた俺達はテレビ見ながら喋りお風呂に入り後は寝るだけとなった。


「そう言えば叔母さん、俺達は何処で寝ればいいんだ?」


たまにこの家で泊まることはあるので寝る場所はある程度決まっているのだが、今日は沙耶もいるのでどうなるのだろうと思い聞いた。


「えっと、カエデには家の双子と寝てもらって、あんたの両親は私達は夫婦と寝る、それでいつもあんたが寝てるところは沙耶ちゃんと二人で使いなさい。

布団はもう敷いてるから」


「は?」


「あ、でもヤるなら声抑えてね。

この家そこまで防音じゃないからね。

じゃあ、おやすみ〜」


そう言って叔母さん達はそれぞれの寝る部屋に去っていった。


「快人くん、何ボーッとしてるの?

私達も行こうよ」


「お、おう」


この子なんで動じてないんだろう?


スーッと襖を開けて部屋に入る。


そこには畳の上に布団が二組ピッタリとくっつけて置いてあった。


「ん?」


俺は右側の布団の枕元に何か置いてあるのに気づき手に取る。

そこには皆も知っているであろうゴム製品の箱が置いてあった。


「本当に、叔母さんは」


「ん?

どうしたの〜?

あ〜そういうこと」


沙耶は俺の持っている箱を見て苦笑する。


「からかうのも程々にして欲しいものだよ」


「で、快人くん。

するの?」


「いや、この家は叔母さんが言っていたように防音がそこまでしっかりしてないから声や物音とかで気づいた誰から覗きに来る可能性があるからやめとこう」


「そうだね。

さすがに覗かれのは私も嫌だよ。

でも快人くん、帰ったらいっぱいしようね。

叔母さんが巫女服くれるって言ってくれたからコスプレプレイも出来るよ」


「まじ!?」


「ふふっ。

へんたーい」


沙耶はそのまま布団に入り、俺もそれを追って布団に入った。


「ねえ、快人くん。

手、繋ご?」


「ん」


俺は差し出された沙耶の手を握り目を瞑る。

沙耶の方からは俺の手を握り安心したのか、はたまたシンプルに今日の手伝いで疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてくる。

そして俺はというと。


「眠れん」


昼寝をしすぎたこと、最後の沙耶の言葉で息子がおっきしたのにも関わらず横には沙耶が寝ていて手を握っているのでムラムラが治まらないこと、この2つの理由から俺はなかなか寝付けなかったのだった。

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