第131話【浴衣と待ち合わせ】
17時半。
俺は、沙耶と約束した通り沙耶の住んでいるマンションの前まで来ていた。
本当は沙耶に現地での待ち合わせを提案されたが、着飾っているであろう沙耶が一人で外を歩くとナンパされるのは目に見えてるので却下した。
しかし、沙耶がどうしても待ち合わせがしたいとの事だったのでインターホンも鳴らさずに外で待っているのだ。
「お待たせ」
それから十五分ほど経ってから沙耶がソワソワしながらやって来た。
「おう、俺も今来たところだよ」
集合時間は18時だからまだ十五分も余裕あるしな。
「ど、どうかな?」
「似合ってるよ。
とても可愛い。
浴衣は赤にしたんだな。
俺のために普段は軽くしかしない化粧もしっかりしてくれてとても嬉しいよ」
俺は、沙耶を足元から頭のてっぺんまで見てから褒める。
浴衣は赤色で花柄のやつだった。
髪はいい感じにアレンにされていて簪が刺さっている。
先程言ったように化粧も普段に比べて少し濃くなっている。普段しない赤い口紅は誘っているのか?と思わせるほどの色気を感じさせている。
「あ、ありがとうございます。
快人くんもかっこいいよ!」
沙耶は照れながら俺を褒めてくれる。
「ありがとう。
カエデと母さんのおかげだよ」
「私も今日こんなに綺麗になれたのは快人くんのお母さんのおかげだよ。
この浴衣もレンタルしようと思ってたんだけど、「これはあなたのためじゃなく息子のためだから何の心配も責任も感じなくていいんだよ」って買って貰っちゃった。
それだけじゃなくてこの簪も化粧も全部用意してくれてもう頭が上がらないよ」
「俺もこの服とか時計抜いても三十万近くするんだぜ?
これ全部母さんもちで。
それで母さんに大丈夫なのか?って聞いたら必要なお金だから大丈夫だって取り合って貰えなかったよ」
「ははっ。
本当に豪快な人だよね。
私達が大人になったらちゃんとお返ししなくちゃね」
「そうだな。
とりあえず今日は母さんのためにもめいいっぱい楽しみますか!」
「おー!」
俺たちは自然に腕を組んでお祭りの会場に向かって歩き始める。
「それにしてもやっぱり凄いな」
「ん?
どうかしたの?」
「視線だよ、し、せ、ん。
男は勿論、女もお前を見てるぞ?」
「そんなの気にしなくていいよ。
別にあの人達のためにお洒落したんじゃないし。
快人くんにさえ喜んでもらえればそれでいいの」
そう言って沙耶はさらに密着してくる。
周りからは「チッ!」という舌打ちや「キャー」といった黄色い悲鳴が聞こえてくる。
「嬉しい事言ってくれるな。
そうだな。
視線を気にしすぎてお祭りを楽しめなかったら本末転倒だからな」
「そうそう!
さ、いそご!」
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