第126話【夏祭りに行こう!1】

「カイトくん!

今日、お祭りの日だね!」


「ああ、そうだな。

手が止まってるぞ」


夏休みのある日、俺の家で勉強していた沙耶がいきなり机をバン!と叩き言い放つ。


「今日は祭りなんだよ!

なんで私達は今日も今日とて勉強してるの!」


「それは沙耶がおバカさんだからだろ?

それに祭りは夕方からだろ?

まだ一時前だ、勉強する時間はある」


「ぐ、ぐぬぬ。

で、でも〜。

私、浴衣着たいのに着替える時間がないよ〜」


バンッ!

そんな話をしていると唐突に俺の部屋の扉が開かれた。


「沙耶ちゃん!

浴衣選びに行くわよ!」


そう言って入ってきたのは今日は仕事が休みの母さんだ。


「母さん、今勉強中」


「あんた達、今日の祭り行くんでしょ?

何勉強なんかしてんのよ。

女の子は色々時間がかかるんだから早く浴衣選びとかしないとせっかくの可愛い彼女の沙耶ちゃんが私服で行かなきゃいけなくなるよ」


母さんもそっちの味方か、まあ、わかってたけどこれは俺が折れるしかないかな。


「お義母さん、そうですよね!

さっきから快人くんにそう言ってるんですけど全然聞いてくれないんです!」


沙耶は、立ち上がり俺と母さんに向かって演説するかのように身振り手振りを使って熱弁する。


「あんた、そんなことばっかりしてたら沙耶ちゃんに愛想つかれちゃうわよ。

それに、あんただって沙耶ちゃんの可愛い姿見たいでしょ?」


「まあ、それもそうだな。

俺も沙耶に愛想つかされるのは嫌だし、今日の勉強はこのぐらいにするか」


「やったー!!!

快人くん、ありがとう!!!

飛びっきり可愛い姿を見せてあげるからね」


そう言って沙耶は笑顔でグルグルと回って喜びを表現する。


なんか可愛いな。

子供みたいって言ったら怒るかもしれないけどこういう無邪気な姿ってのは見てて和むな。


「ああ、期待して待ってるよ」


「じゃあ、沙耶ちゃん。

行こうか」


「はい、お母さん。

それと快人くん」


「なに?」


「私が快人くんに愛想つかすことはないから安心していいよ」


「ああ、俺も同じだよ」


「ふふっ。嬉しい。

じゃあ、行ってくるね」


そう言って沙耶と母さんは一階で準備してからどこかへ出かけて行った。


「行ったか。

じゃあ、俺はまだ時間あるし勉強の続きをしますかね」


そう言って机に向かった瞬間、バタン!


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん〜!」


次は、カエデが俺の部屋に突撃してきた。


「なんだようるさいな〜。

一回でちゃんと聞こえてるよ」


「お兄ちゃん、何また勉強しようとしてるの!

お兄ちゃんも早く準備して」


「は?

準備?」


「いいから早く!」


「お、おう」


俺はカエデの圧に負けて意味もわからないまま準備を始めるのだった。

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