第84話【寝坊】
沙耶のモデルの仕事を見学する当日になった。
「快人くん、お茶どうぞ」
「美陽さん、ありがとうございます」
俺は美陽さんから受け取ったお茶を飲む。
ただいま朝八時、松本家にて沙耶の準備を待っていた。
「ごめんなさいね。
あの子いつもはちゃんと時間に起きて準備をするんだけど、今日、快人くんがバイトの見学に来てくれるってことで張り切っちゃってあまり寝られなかったみたいなのよ」
「いえ、大丈夫ですよ。
いつも待ってもらってる立場なのでこのぐらいなんてことないです」
「沙耶!
いつまでかかってるの!
早くしなさい!」
「快人くん、ごめん!
もうすぐ準備出来るから!」
沙耶の部屋の方からバタバタと音が聞こえてくる。
「お、お待たせ」
それから程なくして沙耶が息を切らせながリビングに入ってくる。
「とりあえずこれ飲め」
そう言って俺の飲みさしのお茶を渡す。
「快人くん、ありがとう。
ゴクゴクゴク。
ふぅ、よし行こう」
沙耶は俺が渡したお茶を一気飲みしてから言う。
「美陽さん、ありがとうございました。
行ってきます」
「はい、二人とも行ってらっしゃい」
そして、俺達は電車に乗り撮影場所まで移動する。
「今日はどんな仕事なんだ?」
「普通の雑誌の撮影だよ」
「へぇー、俺は端っこに立って撮影を見てるだけでいいんだよな?」
「うん、それでいいよ。
ちゃんと今日行くことも言ってあるからある程度指示してくれると思うよ」
「わかった」
こんなこんなで、撮影場所に着き沙耶と一緒に楽屋みたいなところに入る。
「なぁ、俺ここにいていいのか?」
「うん、大丈夫だよ」
「変に一人にされるよりはいいでしょ?」
「そりゃ、知らない人だらけだから一人はきついからな」
「じゃあ、そこで大人しく私がスタイリストさんに髪の毛をいじって貰ってるのを見ててよ」
「わかったよ」
「沙耶さんお願いします」
「はい」
沙耶の順番が回ってきたらしくスタッフの人が呼びに来てくれた。
「じゃあ、行こうか」
「ああ」
俺達は撮影スタジオに入り、沙耶はカメラの前、俺はスタッフの指示に従い端の方に移動する。
「それでは撮影を始めます」
「よろしくお願いします」
沙耶が挨拶をし終わってすぐに撮影が始まる。
「へぇー、あんなすぐにいろんなポーズとったりいろんな表情が出来て凄いな」
それが俺が沙耶の撮影を見た感想だった。
「そうでしょう?」
そのまま沙耶の撮影を見ていると一人の男が俺に声をかけてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます