第70話【頑張れよ】

「ねぇねぇ、快人くん」


「どうした?」


映画が始まって一時間が経ったぐらいで沙耶に声をかけられた。

ついでに言うと、沙耶は俺の腕をガッチリホールドしながら映画を見ている。


「お手洗い行きたい」


「うん、行ってこいよ」


「もー!

快人くんわざとやってるでしょ!」


ん?

何怒ってんだよ?


「あ!

お前もしかして怖いからついて来いって言ってんのか?」


「うぅ~。

ばか~」


沙耶の顔が赤くなり目尻に少しなだが溜まってる。


合ってるっぽいな。


「わかったよ。

行こうか」


「お願いします」


俺は沙耶の手を取りトイレに向かう。


「俺はここで待ってるからな」


「え?」


沙耶が女子トイレの中を指さし俺の方を見る。


「いや、流石にそこまでは無理だからな!」


「ふふふっ。

ごめん、ちょっとふざけ過ぎたね」


そう言って沙耶がトイレの中に入ろうとする。


今イラッとしたぞ。

俺も少し仕返ししようか。


「じゃあ、俺先戻ってるわ」


俺は自分の席に戻るべく歩き出す。


「ごめんごめん!

怒らなでよ!

待っててよ!」


沙耶が慌てて俺の方に戻ってきて腕を掴んでトイレの近くまて引っ張る。


「わかったから服を引っ張るな!」


「ちゃんと待っててよ!」


「ああ、わかってるって」


それからは何事もなく沙耶がトイレから出てき、自分達の席で映画を楽しんだ。


「快人くん!

面白かったね!」


「そうだな。

俺はお前にずっと凄い力で腕を持たれてたからめっちゃ痛いけどな」


冗談抜きでめっちゃ痛いよ!

多分手形とか普通についてんるんだろうなぁ。


「とりあえず喫茶店でも入ってゆっくりしようよ」


「了解」


俺達は近くにあった喫茶店に入った。

ここも前に奈緒とかと一緒に来たところだ。

それから俺達は席に座り飲み物を注文した。


「そう言えばそろそろテストだけど沙耶は大丈夫なのか?」


テストが五月二十八日からで今日が五月十九日だからあと十日程でテストだ。


「そう言えばそうだね。

まあ、いつもどうり何とかなるんじゃない?」


「おい、それでいいのかよ」


沙耶の言葉に呆れてしまう。


「まあ、程々に勉強はするよ」


「一週間前ぐらいからジンとかと勉強するけど来るか?」


「え!

いいの?」


「奈緒も来ると思うし。

全然いいぞ。

別に木下さんも呼んでもいいし」


「じゃあ、お願いしようかな。

美波も誘っとくね。

バイトも開けとかないと」


「わかった。

そういえば沙耶って卒業したらどうするんだ?

普通に大学か?」


「んー、普通に大学かな?

奨学金は借りないとだけど。

快人くんは?」


「俺も大学かな。

今のままの成績で行けば余裕で推薦取れるし」


「じゃあ、私も快人くんと同じ大学行きたい!」


「いや、今のお前の成績じゃ無理だぞ?」


沙耶の成績はちょうど真ん中付近なので成績上位の俺と同じ大学に行くのは今のままでは難しい。


「え!

そんなに高いとこ行くの!?」


「俺こう見えて成績は結構いいんだぞ?」


「今回のテストからちゃんと勉強する!

快人くん、勉強教えて!」


やる気満々だな。

このやる気はどこまで続くのか楽しみだ。


「いいよ。

頑張れよ」


「うん!

頑張るよ!」

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